2010年8月31日
高校無償化制度をめぐり、朝鮮学校への適用の可否を検討してきた文部科学省の専門家会議の報告書の全容がわかった。判断基準として、日本の高校に類する授業科目を教えているか、専門教育を受けた教員を確保しているか、学校の情報が適切に公表されているかなどを列挙。それらの基準を満たしているかを3年ごとに検証するほか、国の支援金が生徒に還元されているかを毎年点検することが必要だとしている。
文科省は31日午後、この報告書を公表する。同省の政務三役はすでに朝鮮学校への適用方針を固めているが、民主党や政府内に異論があることから、教育問題を担当する民主党の部門会議などにはかって意見を聞いた上で、最終判断する方針だ。
報告書が示した適用の判断基準は、3年の修業年限を設けている▽体育、芸術なども含めて日本の高校に類する授業科目を設けている▽必要な専門的教育を受けた教員が教えている――などで、専修学校の高等課程の水準を基本に置くとしている。朝鮮学校の高校段階の課程は日本の全日制高校同様3年で、教員のほとんどが朝鮮大学校で高等教育を受けているとされ、文科省は朝鮮学校がこれらの基準を満たすとみている。
朝鮮学校をめぐっては、「教科書に故金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)父子を礼賛するような記述がある」といった批判があるが、報告書は、教科書の記述については「判断基準にしない」とした。専門家会議や文科省の内部は「各外国人学校はそれぞれの方針や背景があって教育を進めており、それを部分的にとらえるのは妥当ではない」「カリキュラムや学校の体制の全体で判断すべきだ」との考え方でまとまっているという。
高校無償化制度では、公立の授業料を無料にすると同時に、私立の生徒には公立の全日制高校の授業料に相当する年間約12万円を支援している。この支援金は生徒ではなく各学校に直接支給されるが、報告書は、「学校に入る支援金の管理が適切であること」も判断基準とした。生徒から徴収する授業料が12万円分きちんと減額されているかを確認するために、制度を適用した場合は、文科省に毎年財務諸表を提出することを義務づけるべきだとした。また、3年ごとに検証を行い、基準を満たさなくなっている場合は適用を取り消す必要があるとした。
報告書は、制度を適用する場合の「留意事項」も記述。朝鮮学校に「我が国社会や国際社会の担い手として活躍できる人材の育成に努めること」を求めた。根強い批判を念頭に、日本社会に広く理解を得られる内容の教育を求めたとみられる。
専門家会議は教育制度に詳しい大学教授や大学の学長経験者ら6人からなる。5月に設置され、非公開で議論してきた。(見市紀世子、青池学)