韓国のソウル中央地裁は30日までに、1984年にソウルの高麗大に留学中、北朝鮮スパイとして連行され国家保安法違反罪などで有罪が確定、3年8カ月間服役した在日韓国人、尹正憲さん(57)=奈良市=の再審開始を決めた。
人権侵害を調査する韓国政府機関が昨年、尹さんの容疑は「虚偽自白に基づく捏造だ」と結論付けており、無罪判決が出るのは確実だ。在日政治犯への再審実施は7月に無罪判決を受け確定した李宗樹さん(51)=京都市=に次いで2人目。
韓国では70~80年代、少なくとも109人の在日韓国人がスパイとして起訴されたが、民主化運動つぶしや報奨金目当てにでっちあげられた事件も多く含まれていたことが確実視されている。
地裁の再審開始決定では、軍保安司令部(現・機務司令部)が尹さんを令状なしに43日間不法監禁し、拷問する違法捜査をしたと認めた。
尹さんは留学前に北朝鮮工作員から機密探知指令を受けたとして懲役7年の刑が確定。88年に特赦で仮釈放された。しかし指令を受けたとされる京都市内の喫茶店は当時既に廃業していたなど、ずさんな起訴事実がそのまま確定判決になった。