試合前、渡辺謙(左)と話すマートン
「ヤクルト5‐12阪神」(29日、神宮)
打つわ打つわの舶来安打製造機。どうしてそんなに打てるのか‐。帰りのバスの前で足を止めた阪神・マートンは、少し考えてからこう言った。
「う〜ん…神様のおかげかな?」
毎回の20安打。神懸かり的な猛爆の第一歩は、やはりこの男のバットから放たれた。初回先頭で山本の内角直球を鮮やかに左前に運んで先制のおぜん立て。二回には金本、城島の連続弾の後に内野安打でさらなる追加点を呼び込んだ。四、八回にも安打を放ち、阪神では05年の今岡以来となる2戦連続4安打。「感触も調子もいい。チームのために打てたのがよかった」。虎党の声援に応えながら笑みを浮かべた。
27日には館山の前に4打席4三振と苦しんだが「手に余分な力が入っていたので、緩めるようにした」とすぐさま修正。翌日には4安打4打点と打線をけん引した。さらにこの日の試合前には、俳優・渡辺謙と感激の対面。「君のプレースタイルが好きなんだ。きのう(28日)のスーパーキャッチもかっこよかったよ。この秋のスケジュールも空けてるからね」。米国時代に映画「ラスト・サムライ」を見たというマートン。世界のワタナベからの熱いエールに、一層闘志を高めた。
「ホームに戻れるのはうれしい。たくさんのファンの前でプレーしたいね」
ロード最終戦の快勝劇に、思わず声も弾む。113試合で両リーグトップの165安打は、年間210安打ペース。広角に降り注ぐ安打のシャワーを、聖地の芝生が待っている。
(2010年8月29日)