
京祭り雅色 〜 お祭追っかけシーズン到来! 〜
♪ はしら〜のき〜ずは おととしの〜
端午の節句が近づくと、京都の和菓子屋さんには、柏餅や粽(ちまき)が並びます。
私は「味噌あん」の柏餅が大好きで、毎年この季節が楽しみ。柔らかいお餅の中から、甘しょっぱい味噌あんが、むにゅっとお口の中に広がる美味しさは一押しです。
味噌あんの柏餅は、色んな和菓子屋さんで作られますが、錦市場の畑野軒老舗、南座横の祇園饅頭、出町のふたば等が有名。それぞれお店の味があるので、食べ比べてみるのもおもしろそうです。
しょっぱなから、甘いもの好きを露呈してしまいましたが、食べてばかりではおデブになるので、せっせとお祭を追っかけています。 |
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五月の京都といえば、葵祭をはじめ、たくさんのお祭が目白押しなんです。
旧暦の五月が午(うま)の月といわれることと関係があるのか、馬に関するお祭が多いのも特徴。五月一日の競馬会足汰式(上賀茂神社)から始まり、三日の流鏑馬神事(下鴨神社)、五日の競馬会神事(上賀茂神社)、駈馬神事(藤森神社)とゴールデンウイークは馬尽くしです。疾走する馬を間近で見るのは迫力満点で、五月早々私のテンションは上がりっぱなし。このうち藤森神社の行事以外は、京都三大祭りのひとつ、葵祭の前儀式でもあるんです。勇壮な騎馬神事が雅やかな葵祭の一部だなんて、面白いですね。
葵祭が終わり、ちょっと一息ついた頃、これまた雅系のお祭、「三船祭」が催されます。平安時代の船遊びを再現した三船祭は、芸能神社として有名な車折神社のお祭で、五月の第三日曜日に嵐山で行われます。
初観覧した昨年、たまたま友人が扇流しの姫として参加していたため、ちょっとした内輪話も聞けました。
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三船祭は、車折神社で神事の後、ご神体や牛車(模型)、舞人等の行列が出発するところから始まります。道中30分ほど歩いて、見物人が待ち構える嵐山の大堰川に到着すると、いよいよお待ちかねの水上での祭事。渡月橋上流には、ご神体を乗せた御座船、龍頭船、鷁首(げきす)船といった王朝風の船をはじめ、詩歌、書画、謡曲、尺八、琴など20隻程の芸能船が浮かべられます。
船上では舞楽などの芸能が奉納され、そのひとつが、私のお目当ての「扇流し」です。
流扇船には十二単衣の姫と振袖姿の姫君達が乗っていて川に扇を流していくのですが、十二単衣の姫は衣装の重みのためか動きもままならないようで、かわりに振袖姫達が次々と扇を流していました。
この扇、以前は、「芸能上達祈願」として、使い古した扇に名前と願い事を書いて奉納されたものを流していたそうですが、公害問題(扇に鉛などの有害物質が使われていることがあるため)の対策として、昨年は「扇流し用」に作られた五色の扇だけが流されました。なんと扇だけでなく、五色の「団扇流し」もありましたが、やっぱり扇の方が優雅でしたね。 |
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お祭の様子は川岸から見ることができますし、貸しボートで川に出て、見ることもできます。(但し昨年は、前日の雨で川が増水したため、貸しボートは休業されました。)
例年は、流された扇を拾おうと、川には貸しボートがあふれかえり、水に浮かんだ扇は残らず拾われていたそうですが、貸しボートが出なかった昨年は、川に残った扇を後で回収しなければならないため、「せっかくなら見物している人達に」と、流扇船の船頭さんが、岸辺の見物人に扇が届くようにと、わざわざ水際まで近づいてくれたり、水面を漂う扇をかき寄せて拾い上げ、岸の方に投げてくれたりと、嬉しい心配りがありました。
あとで聞く所によると、拾った扇がお守りになる・・・という訳ではないようですが、一部の見物人は、なぜか、流れてきた扇を手に入れようと必死。でも、なかなか思うように取れません。その姿に、「あれを拾えばご利益があるのかも・・・」と、私もつられて水際に近づいた途端、ザバっと波が押し寄せ、靴はびしょ濡れ。川って、案外波が立つんですね。おかげで、扇は拾えましたが・・・ |
せっかく手に入れた扇なので、「いい写真が撮れますように」と願いをこめて、フィルムと一緒にしまっています。
さて、水上では小船同士で、ご挨拶がてらに物々交換が行われているそうです。交換される品々は、流扇船ならもちろん扇ですが、芸能船ごとにそれぞれ特徴があるらしく、和歌を書いた短冊や、一升瓶のお酒、名前入りの手ぬぐい、お菓子など様々。
振袖姫の友人は御座船に扇を奉納した際に、車折神社のお守りを頂いたそうです。お守りのご利益か、以前の扇流しの姫の中には、現在、舞台女優になった方もおられるとか。
ちなみに扇流しの姫は一般公募で、4月初旬にラジオでも募集しているのを耳にしました。
えっ?私? お祭追っかけカメラマンをやっていなければ、応募してみたかった・・・かな? |
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文・写真:星野 佑佳
■星野 佑佳(ほしの ゆか)
京都市生まれ、在住の女性カメラマン。エッセイニスト。
2000年、海外放浪の撮影旅に出、帰国後自然風景や旅風景を求め、日本全国を旅しながら撮影。桜を追いかけて全国を旅する女性カメラマンとして、TBS系のTV番組に出演。2005年頃から再び、地元である京都の風景や行事を中心に撮影、現在に至る。
2007年度クラレ社の企業カレンダー(B3サイズ14枚)
JR北海道 2007年春の海峡物語キャンペーンポスター(2007年4月著) ほか
夢は「今までの旅で撮影した写真をフォトエッセイ集としてシリーズで出版すること」
※JASRAC 作品コード 044-0007-1 背くらべ |
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