祇園祭でお買い物!


祇園祭

祇園祭といえば、14日〜17日にかけての宵山〜山鉾巡行が有名ですが、実は7月1日の吉符入、長刀鉾お稚児さんのお千度から始まって、31日の疫神社の夏越祭まで、まる一ヶ月をかけて行われます。
とにかく一番蒸し暑い時期なので、夏バテ気味のことも多く、私は京都のお祭を撮り始めるまで、宵山にしか行ったことがありませんでした。
昼間に行われる山鉾巡行も、曜日に関係なく行われるので、しっかり見たのは、数年前が初めて。生れた時から○十年間、京都に住んでいても、案外こんな人もいるんです。
さて、京都のお祭を撮り始めて3年。7月は毎日のように四条通りに通いつめ、今ではファン歴3年のにわか祇園祭フリークの私。
宵山、山鉾巡行はもちろんお薦めですが、「こんなん、知らんかった」お気に入りの行事を、いくつかご紹介したいと思います。

皆さん、山鉾はよくご存知ですよね。
10日から組み立てが始まり(あの大きな山鉾を釘も使わず、なんと、縄だけで組み立てます)、宵々々山、宵々山、宵山の14日から16日の夜は、提灯の明かりで飾られた山鉾の幻想的な眺めと、露店が並ぶ夏祭り全開の賑わいが味わえて、私は「祇園祭といえば、宵山」「宵山といえば、夜の山鉾」という青春時代を送ってきました。
17日、32基の山鉾が四条〜河原町〜御池と巡行する様子も、必ずニュースで放映されるので、ずっと、これが祇園祭のハイライトだと思っていましたしね。
そう、祇園祭で八坂神社のお神輿が3基も巡行するなんて知らなかったんです。
何年か前、山鉾巡行を見に来京していた友人を京都駅まで送る途中に偶然見かけて、初めて知りました。3基のお御輿には、スサノヲノミコト、その奥さん、その子供の神様の御霊が乗られているそうです。
誰に聞いたか「この神輿渡御が祇園祭の要」・・・という言葉に、二度びっくり!もちろん知っている人は知っているので、ものすごい人出と熱気に溢れていましたが、それまでの私は、山鉾しか見に行ったことがなかったので、知らなかったんですね。
山鉾を見るとなれば、大丸より西で、巡行の時も山鉾は河原町より東には行きません。
そのせいか、祇園祭が八坂神社を核とするお祭りにも関わらず、私は肝心の八坂神社に近づいたことがなかったんです。
これは一説によると、昔、鴨川(※他説もあり)を結界として、そこから東は神域だったので、人界のものである山鉾は、鴨川より東には入れなかったのだとか。
17日の山鉾巡行では、麩屋町通りに張られた注連縄(しめなわ)を、長刀鉾のお稚児さんが太刀で斬り、結界を解き放つことにより、山鉾は鴨川の手前、河原町通りまで東へ進んでいきます。(注連縄切り)
山鉾巡行には、神輿渡御の露払いとしての役目もあるそうで、この日の晩、神様の御霊はお神輿に乗り、山鉾巡行で清められた町(人の世界)に、結界を越えて渡って来られます。
そして、17日から24日の7日間だけ、神様のお宿であるお旅所(四条寺町)に滞在されるそうです。舞妓さん芸姑さんの世界では、この七日七夜の間、道中誰とも話さずにお旅所へお参りすると願いが叶うといわれています。この「無言参り」、私もチャレンジしようと、毎年、思うのですが、なかなか・・・
というわけで、「祇園祭に行く」からには、お神輿は重要ポイントです。
10日と28日は神輿洗い、17日と24日はお神輿の巡行があるので、出来ればこの「動」のお神輿を体感されるのがお勧めですが、10日から28日の間、八坂神社もしくはお旅所に飾られている、「静」のお神輿も素敵です。

さて、丸一ヶ月間かけて行われる祇園祭ですから、語り始めると、きりがないほどのボリュームで、一冊の本が出来てしまうほど、あれもおすすめ、これもおすすめ・・・なんですが、ちょっと面白いのは、宵山最終日16日の真夜中(11時頃)に、南観音山で行われる「あばれ観音」
ネーミングを聞いただけでも興味シンシンですね。
新町通りにある南観音山では、町内の日和神楽が戻ってきた後、黄色い布でグルグル巻きにしたご本尊の楊柳観音を台座に縛り付けて担ぎ上げ、町内を三往復します。「あばれ観音」の名のとおり、町の端っこでは台座を激しく揺する、エキサイティングな行事です。
最後に、黄色い布をはずし、翌日の巡行に備えて、観音様を「山」に上げます。
観音様を暴れさせる理由は・・・実はこれ、はっきりとはわからないそうですが、翌日の巡行の時にじっと座っていてもらうため、前夜のうちに暴れさせておく・・・とか、お隣の北観音山の観音様への恋心を暴れることで冷ましてもらう・・・など、色んな説があるようです。
ところで、もうひとつ、祇園祭で楽しみにしていることがあります。
それは、14〜16日の真っ昼間の山鉾巡り。
この期間、山鉾町界隈では、「屏風祭」といって、代々受け継がれている美術品などの宝物が展示されるんです。
また、普段小売りをしていないお店でも、店先に在庫処分セール並みのお値打ち品がずらりと並びます。
夜の宵山もすてきですが、まだ人出の少ない日中に、ゆっくりと逸品を鑑賞したり、山鉾町でお買い物&ご朱印(スタンプ)集めもお勧めです。
お値打ち品には着物や和柄の衣料品、柄付足袋などの和装小物もあるので、着物好き、和物好きにはたまらないようです。私は毎年、一年分のちょっとしたお土産にと、ハンカチや和物のポーチ、小物を買いだめします。現品限りの商品がほとんどなので、早いもの勝ちですよ!
ご朱印は、各山鉾で無料〜志納で頂けます。
これがまた、シンプルなのから凝ったデザインまで、色々あって面白い。
私のお気に入りは「鯉山」と「浄妙山」です。
鯉山のご朱印は、なんと6種類もあって、岩を昇る鯉の絵柄の他に、「入試合格」なんてのもありました。
浄妙山のご朱印は、橋の上で長刀を構えた僧兵の頭の上に、片手逆立ちをしている若武者が描かれたもの。一瞬、牛若丸と弁慶かと思いましたが、平家物語の宇治川の合戦が題材だとか。ちなみに牛若丸と弁慶の五条橋のシーンは、「橋弁慶山」のご朱印に描かれています。
こんなふうに、各山鉾では、独自の絵柄を使った手拭いや扇子などの小物、絵馬などが売られているので、コレクションとして集めてみるのも楽しそうです。
そうそう、各山鉾で授与される護符や粽(ちまき)には、それぞれ独自のご利益があるので、自分のお願い事に合った山鉾を探すのもいいかもしれません。
ご利益は、例えば、菊水鉾は不老長寿、鯉山は立身出世、浄妙山は勝守り、魔除け盗難除けの黒主山、迷子除けの木賊山など様々。
安産のお札、腹帯が授与される占出山では、巡行の順番が早いと、その年のお産が軽いといわれますし、保昌山のお守りは、恋愛成就に効くと、若い女の子に大人気です。

文・写真:星野 佑佳

■星野 佑佳(ほしの ゆか)
京都市生まれ、在住の女性カメラマン。エッセイニスト。
2000年、海外放浪の撮影旅に出、帰国後自然風景や旅風景を求め、日本全国を旅しながら撮影。桜を追いかけて全国を旅する女性カメラマンとして、TBS系のTV番組に出演。2005年頃から再び、地元である京都の風景や行事を中心に撮影、現在に至る。

 2007年度クラレ社の企業カレンダー(B3サイズ14枚)
 JR北海道 2007年春の海峡物語キャンペーンポスター(2007年4月著)      ほか

夢は「今までの旅で撮影した写真をフォトエッセイ集としてシリーズで出版すること」


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