「全日本」(9月10日、後楽園ホール)
夢の一騎打ちが四半世紀ぶりに実現する。全日本は30日、都内で会見し、4月に右ひざ手術を行った武藤敬司(47)の9・10復帰戦の相手が船木誠勝(41)に決まったと発表した。1984年に新日本に入団した同期の2人にとって85年4月以来のシングル戦となる。武藤が「(全日本では)最初で最後の対戦になるかも」と気合を込めれば、船木も「無我夢中でぶつかる」と応戦し、王道マットに骨をうずめる覚悟を示した。
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アントニオ猪木が率いた闘魂マットを振り出しに、武藤は日米をまたにかけて純プロレスを追求し、船木は旗揚げしたパンクラスで90年代に総合格闘技の先駆者となった。正反対の道を歩んだ両雄が、ぐるりと互いのレスラー人生を一周し、25年前に原点回帰する。
4月に右ひざを手術し、半年ぶりの復帰戦の相手が船木に決定。武藤は「一番最初にやりたかった。船木にはいろんな思いがある。亡くなられた山本小鉄さんのコーチを互いに受けた仲でもある」と感慨を込めた。
船木は全日本と継続契約を結び、腰を据えて武藤を迎え撃つ。「若手時代の対戦では軽くあしらわれた。まだ子どもだったので、まともにぶつかっても歯が立たなかった」と振り返り、「全日本の頂点にいる武藤さんと、僕が成人してから初めての試合。心に残る試合にしたい」と武者震い。さらに「人生の残り半分は全日本で修行する。所属選手として他団体にも出たい。格闘技をやる可能性が絶対にないとは言えないが、正式に入団した以上、必然的にプロレスに100%の重きを置く」と生涯プロレスラー宣言が飛び出した。
船木は前日の両国大会で3冠王座を奪取した諏訪魔に挑戦を表明した。「武藤さんに勝つことで3冠挑戦が見えてくる。挑戦者は自分しかいない」と“天才”を踏み台にする構えだ。武藤は「(化身の)ムタは魔界に帰って“鬼軍曹”の小鉄さんと特訓しているから、俺は船木とタイトルマッチのつもりで全力投球する。これが最初で最後ぐらいの感覚で」と誓った。スポットライトの下で、新たな伝説が生まれる。