日本の安全保障環境について説明し、学生からの質問に応じる山中洋二福岡地方協力本部長=北九州市小倉南区の北九州市立大学
そのため福岡地本では05年度から大学への募集活動を本格的に始めた。従来、幹部候補生の採用が中心の大学に対して、講義や就職説明会を通じて、幹部に登用しない一般曹候補生(09年度の募集は約4250人)や任期制隊員(同約2190人)の募集も呼び掛ける。不況が続くうちに公務員志望の学生を囲い込みたいとの思惑もある。
福岡地本では九州国際大や福岡大などでも講義を行い、大学生対象の2週間程度の就業体験も実施。同地本の弓場信行募集課長は「まずは国防の現状について大学生に関心を持ってもらいたい。その延長線上で自衛官の仕事を知り、自衛隊に入ってもらえれば」と期待する。実際、講義を行う大学からの受験者は徐々に増えているという。
■「国防考える契機に」
北九大で連続講義を企画した戸蒔仁司准教授(安全保障)は講義の目的を「平和教育を行う中でリアリティーを持たせたかった。国防問題を通して極東アジアなどの国際関係が見えてくる」と話す。
学生の評判は、上々だ。冷戦終結前後に生まれた学生の多くにとって、自衛隊は戦争や軍隊という負の印象より、国際貢献活動や災害派遣で頼りになる存在との印象が強いのかもしれない。
国際関係学科3年の女子学生は「日ごろ、接する機会のない話で国防を考えるきっかけになった。今後、国連平和維持活動など日本の国際貢献の役割をさらに学んでいきたい」。政策科学科2年の女子学生は「両親は自衛隊があまり好きではないが、必死に私たちを守ってくれていることを知って、そんな態度は良くないと思った。自分が自衛官になろうとは思わないが弟に勧めようかな」という。
一方で、大学は講義での露骨な募集は自粛を要請し、あくまでも教養教育の一環と位置付ける。戸蒔准教授は「(教育と募集という)お互いの共通利益があるのは事実。学生が『自衛隊も将来の選択肢の一つ』と考えれば良いのではないか」という。(石松恒)