『ミュージカル李香蘭』 劇団四季
出演:野村玲子(李香蘭)、芝清道(杉本)、濱田めぐみ(川島芳子)、芹沢秀明(王玉林)、五東由衣(李愛蓮)、松宮五郎(山口文雄/高橋是清/海軍大将)、青木朗(李将軍/参謀/丸ノ内警察署長)、川地啓友(参謀/関東軍中佐)、前田貞一郎(検察官/永井荷風/斉藤隆夫)、飯村和也(弁護官/連合艦隊通信員)、種井静夫(裁判長/参謀/将軍)、中村匠(奉天放送局員/新聞記者/負傷兵)、朝隈濯朗(検察官/憲兵/新聞記者)、星野光一(溥儀)、坂本岳大(劇団昴)(参謀/関東軍少佐)、川原信弘(青年軍将校/参謀)、天野陽一(リットン卿)、池田英治(検察官/参謀)、長谷川浩司(伝令兵/参謀)、木村不時子(山口夫人)、佐和由梨(李夫人/声楽教師)、石路、白倉一成、張沂、張野、杜彦昊、牛俊杰、劉志、王斌、礒津ひろみ、岡本和子、山本貴永、大西利江子、前川遙子、松尾千歳、光武礼子、西田ゆりあ、増田朱紀、森田かおり
企画・構成・演出:浅利慶太
作曲:三木たかし
時間:2時間40分
劇場:京都劇場
日時:2005年12月7日昼
「昭和の歴史三部作」の1作目です。本作だけでは、見に行くかどうか迷っていたのですが(見たかったのは異国の丘と南十字星)、三部作と言われると見るべきかなと思って行きました。
第1幕、開始早々日本は敗戦、中国人の「殺せ、殺せ」から始まる。日本に協力していた者は次々と銃殺、殴殺される。満州国の将軍であった川島芳子(皇帝溥儀の従姉妹)も銃殺に。が、これはこの話の趣旨ではない、と彼女はこの物語の語り部になる。この濱田めぐみ、凛々しくてとてもかっこいい声。素敵。冷たいくらいだけど、それが清国に対する情熱を感じた。保坂知寿だと少し可愛い感じがする。(関係ないけど、クレイジー・フォー・ユーで濱田めぐみのポリー聞きたかったなぁ)
そして同じく漢奸(祖国反逆者)として引き出され、みんなから殺せ!と責められる香蘭。そこで、日本人だと告白する。日本人だという証人として、義理の姉妹、愛蓮が出席し、そこでその経緯へと話が移る。
13歳の時、李将軍のところへ養女に入り、李香蘭という名前になる。そのお祝いの席。まだ日中が仲良かった頃。
「中国と日本 日本と中国 黒い髪 黒い瞳」
川島芳子が皮肉気に歴史を綴っていく。
7歳の香蘭。子供風の短い服で、遠目にはほんとに幼く見えるのに驚く。
溥儀はやはり可哀想? やってられないという感じでコミカルになったり。国土を踏みにじられたら腹が立つのは当然だけど、それもアメリカの陰謀(セオドア・ルーズベルトによるポーツマス条約斡旋。日本にこの前代未聞の差別講和を結ばせた功績で、ノーベル平和賞を貰った。つまり、アジアが結ぶことを阻止し、白人社会に平和をもたらした功績によって)だと思うと、まさに白人社会の思うつぼだったんだ。
李香蘭としてのステージ。先ほどとはうってかわって、美しい大人の女性として登場し、魅了する。
「蘇州夜曲」「夜来香」
なんとなく、知ってる。
スター・李香蘭としてのステージがないと、この舞台、衣装が寂しすぎる(^^;。
「兵隊さんよありがとう」
「月月火水木金金」
「海ゆかば」
なぜか知っている歌が次々と流れ、でも古くさいとか懐かしいとかではなく、哀しさを感じました。甲板掃除のダンス。勇壮。
戦士たちが辞世の文を次々言うシーンは、靖国神社の英霊たちの言葉のようでした。
各戦線の悲惨な状況がスライドで流れます。(なんで「男たちの大和」ではラストが削られるんだ!)
全編通して香蘭の歌声がとても無垢な感じで、何も知らない、利用されていたと言うことが理屈でなく感じられる。ただ、日本と中国、どちらも愛していただけだったのに。
「李香蘭」というタイトルだけど、香蘭は主役じゃないみたいに思えます。
また冒頭に戻るのですが、同じシーンを繰り返すので、少しくらい省略すると思っていたのでちょっと驚きました。
裁判長(種井静男?)のバリトンが素敵。
「徳を以て 怨みに報いよう」というのは蒋介石の言葉だと聞いた覚えがあって(老子、孔子ですが)、それを聞いた当時は感激したのだけれど、そのまま素直に取れるような事情でもないようだと今は考えを変えています。でも、このシーンはやはり感動的でしょうね。
中国でも上演して、拍手喝采だっただけあって、かなり中国の良い点を強調してあるようです。日本の軍部はぼろくそ。視点が川島芳子からだし。
でも、五族協和を理想に掲げて満州国に夢を描いた人たちや、戦争への道を止めようとした政治家、愛する国や残していく家族のために死地に赴く兵士たちの姿も描いているので、それぞれの立場を客観的に描いているのだと思います。
結局、ずーっと心の中で突っ込んだり、文句を言っていたので、今まで見た舞台の中で、一番しんどい舞台でした。疲れた…。
2006年01月20日
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