児童虐待の恐れがあるとして全国の児童相談所が保護者らに改善を指導中、転居して行方が分からなくなったままの児童(18歳未満)が05年度以降、少なくとも97人(3月末現在)いることが毎日新聞の調査で分かった。09年度だけでも39人が行方不明になっていた。住民票を残したまま児相にも知らせず転居すると、居所を確認するすべがない。児相のチェックが行き届かない家庭で虐待が深刻化している恐れもある。
指導中の家族が行方不明になると、担当の児相は全国の中央児童相談所に不明児童の氏名、年齢、性別を記載した手配書「CA情報連絡」をファクスする。CAは「Child Abuse」(児童虐待)の略。虐待事件の深刻化をきっかけに、99年10月からこの情報交換が始まった。
毎日新聞は今月、各都道府県・政令市などの中央児相にCA数を聞き取り調査した。その結果、09年度に行方不明になった児童は173人。このうち39人は同年度末現在で行方が分からないままだった。
05年度以降では、少なくとも97人の児童の行方が不明になったままだ。県別では多い順に栃木15人▽滋賀11人▽岐阜・岡山8人▽愛知7人▽千葉6人--など。
複数の児相幹部は「CA情報には子供を捜し出すための強制力はない」と強調する。不明児童のうち7割程度は生活保護申請など福祉関係の手続きによって年度内に居所が判明するが、残りは「打つ手がない」(近畿の児相所長)のが現状だ。【稲生陽、遠藤孝康、平野光芳】
毎日新聞 2010年8月30日 11時49分(最終更新 8月30日 14時37分)