家庭で使う水の用途のうち、多いのは何だろうか。
東京都水道局がまとめた円グラフを見てほしい。1人1日あたり約240リットル(08年)を使うが、一番多いのはトイレで、次に風呂、炊事、洗濯。意外にも、飲み水は1日あたり2リットル程度で全体の1%以下だ。
「トイレと台所の水まわりで節水する余地が大きい」。節水機器の普及を所管する高辻育史・経済産業省日用品室長はそう話す。
メーカーも新商品の開発に熱心に取り組む。
衛生陶器大手のTOTOは昨年8月、究極の節水型トイレ(約20万~36万円)を出した。1回で使う水量は、大で4・8リットル、小は3・8リットル。水洗トイレが出始めた60年代は、1回の使用量が約20リットルもあった。70年代は13リットル、90年代は8~10リットルとなり、ついに4・8リットルが実現した。
ナノテクノロジー(ナノは10億分の1の単位名)を生かして、陶器の表面をつるつるにして、水を流れやすくしたり、少量の水を渦巻き状に流して、汚物を流すなど涙ぐましい技術のおかげだ。
「長い配水管を10メートル以上も押し流すには最低限の水がいる。もはや限界に近いところまで節水技術は進んだ」(TOTO)
しかし、トイレは進化しても、人の意識は進化していない。
業界では6リットル以下を節水型トイレと呼ぶが、買い替え費用が高いことや節水意識が低いため家庭での普及率は7%程度。いまなお家庭で一番多いのは13リットルタイプだ。
1回で13リットルもの水を使うといっても、だれもが節水に努めているわけではない。家庭内のトイレで大小の切り替えレバーを守っていない女性が約40%、男性でも約27%いることが日本衛生設備機器工業会の水使用実態調査で分かっている。
大と小で水の使用量は約1~2リットルの差がある。小用なのに大のレバーを使うと、「1日3回の使用で4人家族だと年間約9トンの水を捨てることになる」(同調査)。全国だと、莫大(ばくだい)な量になる。
女性の場合は、微妙な問題もある。自宅外でトイレを利用する場合、気になる排せつ音を消すために2回以上流すケースが多い。擬音装置があると無駄に流すことはなくなるため、今後は擬音装置の普及が鍵を握る。
公共施設や事業所ではいまも13リットルが主流だ。事業所で6リットルにすると長い配管の途中で汚物や紙が詰まり、下水管まで流れていかない。「配管の設計システムを根本的に見直す研究が必要だ」(独立行政法人・建築研究所)といい、節水型トイレの普及は容易ではない。〇
年々進化する洗濯機。従来の縦型と、前面にドアのついたドラム式と、どちらが水を使うのだろうか。縦型は多量の水に衣類を入れて、水流で汚れを落とすのに対し、ドラム式は衣類をたたいて汚れを落とすため、「ドラム式の方が水の使用量は少ない」(シャープ)。
ただ、縦型でも節水型が登場している。少ない水を循環させる循環ポンプ型洗濯機(日立アプライアンス、約19万円)は今年6月に発売された。通常の洗濯機は8キロの衣類を洗うのに約100~120リットルの水を使うが、循環ポンプ型だと9キロの衣類に73リットルの水ですむ。すすぎが1回ですむ新しい液体洗剤(花王)も開発されている。【小島正美】=おわり
節水には一人一人の意識改革が大切だ。
「蛇口の水を1分間、流し続けるとバケツ1杯分の約10リットルになる。この分が節約の目安です」。リサイクル問題に詳しい生活環境評論家の松田美夜子・元富士常葉大学教授はいう。
たとえば、歯磨き。コップ1杯の水で十分に磨けるのに、歯を磨きながら、流しっ放しにすると、バケツ1杯の水が無駄になる。「5人家族で朝晩2回流し続ければ、相当な無駄遣いになりますね」と松田さん。
風呂場のシャワーでも、体や頭髪を洗っている間、流し続ける人がいる。5分間でバケツ5杯分の50リットルの消失だ。手元に開閉スイッチのついた節水シャワー機器を活用する手もある。
皿を洗うときも、水を流しながら洗うのではなく、いったんボウルにつけ置きし、その後、2回のすすぎで洗えば、水は少なくて済む。
皿についた油分を流すと水質浄化に多量の水がいる。「新聞紙のような紙で油をふき取ってから洗いたい」(松田さん)
つけ置き洗いが面倒な人は食洗機を使うのも選択のひとつだ。食洗機は水を流しながら手洗いするのと比べ、水の使用量ははるかに少ない。だが約5万~10万円という値段や置き場所がネックとなり、家庭での普及率は約30%と低い。財団法人・省エネルギーセンターによると、水を流し続けて洗った場合の年間の水使用量が約47トンなのに対し、食洗機を使った場合は約11トンと4倍以上の差がある。
食洗機なら家事を手軽に分担できる。経産省の高辻さんは「洗ってくれている間に他のことができ、水と時間の両方の節約になる。私でもできる」と約10年前から食洗機を使っている。
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毎日新聞 2010年8月27日 東京朝刊