住宅

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

知らなかった水のはなし:/3 水道、いまや味で勝負

 ◇高度処理で不純物除去 「脱ボトル水」運動も

 水道水を飲まず、ボトル入りのミネラルウオーターを買う人が多い。水道水のイメージが悪いせいだが、いま水道水はどうなっているのだろうか。

 水道水の製造工場に行ってみた。淀川のほとりにある大阪市水道局の柴島(くにじま)浄水場。ここを選んだのは昔から、大阪の水はカビ臭がして、まずいという印象が強いからだ。1914年から給水を始め、いま大阪市の給水量の約半分を供給する。

 真っ暗な地下に案内された。厚いガラス越しに照明灯を向けると、太いパイプから真っ白な泡がぶくぶくと舞い上がっている。用勝弘・同浄水場副参事は「あの泡はオゾンガスです。酸化力が強く、水中のカビ臭の原因となる有機物を分解・除去したり、病原性微生物を不活性化したりします。農薬も除去できます」と話す。

 この浄水場では、オゾン処理を2回行う。処理後の水は、砂粒ほどの大きさの粒状活性炭を敷き詰めた吸着池に回される。活性炭には吸着効果があり、ここでさらに発がん性物質の原因となる有機物などが付着し、分解される。

    〇

 大都市の浄水場では、塩素や凝集剤などの薬品で、水をきれいにしていく手法が一般的だ。水を大量に速く製造できるので「急速ろ過方式」という。ただ、原水の汚れが大きい時にカビ臭などを完全には除去できない。

 これに比べ、いつも安定した品質の水を作れるのがオゾン処理と粒状活性炭を取り入れた高度浄水処理だ。大阪市は全3カ所の浄水場で、約753億円かけて、00年3月までに高度浄水処理を導入した。

 大阪市の取水源は淀川。上流に宇治川や木津川があり、京都など淀川上流の人たちがいったん使って捨てた水が混じる。高度処理はその水をミネラルウオーターに匹敵する水にした。自信を深めた大阪市は3年前から高度処理された水をボトルに詰めた「ほんまや」(1本500ミリリットル100円)を売り始めた。塩素のにおいもなく、口に含むとすっきりしておいしい。

 いま高度処理は東京都、兵庫県尼崎市など大都市を中心に次々に導入されている。東京都も高度処理の水を「東京水」として売る。

 日本で製造される水道水は約155億トン(08年度)だが、そのうち3割近くの約42億トンがすでに高度処理水だ(日本水道協会)。世界の水事情に詳しく、「67億人の水」(日本経済新聞出版社)の著者でもある水ジャーナリストの橋本淳司さんは「東京の水道水は味、水質とも世界的に評価が高く、間違いなくおいしい」と太鼓判を押し、水道水を再評価する。

    〇

 一方のミネラルウオーター。飲み終わると容器のごみがたまり、価格も割高だ。

 市販されている500ミリリットルのミネラルウオーターは約100円なのに対し、大阪市の水道水の価格は1リットルあたり約0・1円。ミネラルウオーターは水道水の2000倍だ。

 このため、いま世界的に水道水を見直す動きが強くなっている。米イリノイ州では複数の部局で、州の予算を使って市販のボトル水を買うことを禁止している。ニューヨーク市は水道水を飲むよう市民に呼びかけている。

 国内でも名古屋市上下水道局ではガラス瓶を職場に置き、水道水を飲んでいる。ほかの職場にもガラス瓶を貸し出し、会議などで水道水を飲むよう促している。

 どこでも安全な水が飲める国。これが世界に誇る日本の水道水だ。水を科学的な観点から考える理科教育を実践している左巻健男・法政大生命科学部教授は訴える。

 「水道水は50項目にわたる基準値があり、合格した水だけが給水されている。もっと水道水に誇りをもとう」【小島正美】=つづく

 ◇学校、集合住宅…貯水槽なくし品質向上

 これだけ水道水がおいしくなっても、なおイメージが悪い背景には、学校やマンションなどで貯水槽を経由した水道水への不信感があるようだ。いったん貯水槽にたまると、水がぬるくなったり、管理不足で水がまずくなったりするからだ。

 それなら、「貯水槽なしで直接、蛇口から飲んでもらおう」と東京都は小中学校を対象に「直結給水」事業を3年前から始めた。水道管から増圧ポンプを使って蛇口まで水を送る方式で、10階建ての集合住宅でも給水可能という。

 都内ではすでに約200校で工事が終わった。江東区は特に熱心で全小学校で実施した。平均工事費用は約900万円で、区や私立学校も応分に負担する。人気が高く、2016年度まで事業を続ける。

 都水道局給水部は「学校での貯水槽の管理が不要になるだけでなく、水もおいしくなる」とメリットを話す。直結給水にした約130校の児童、教職員約2万6600人へのアンケートでは「家から水筒をもってくる」児童が12%から4%に減り、「水の満足度」は工事前の33%から工事後は62%に上がった。

 都水道局は民間の集合住宅向けに、直結給水工事の見積もりサービス(無料)まで始めている。

毎日新聞 2010年8月25日 東京朝刊

住宅 アーカイブ一覧

PR情報

住まいを探す

  • 賃貸
  • 中古/新築購入
  • 新築分譲マンション
  • 新築一戸建て
  • 注文住宅
  • リフォーム
買う
買う
借りる
借りる
新築分譲マンション
不動産会社

住まいを買う

事業用物件を買う

住まいを借りる

事業用物件を借りる

新築分譲マンション

不動産会社

検索
住まい
事業用
住まい
事業用
新築分譲マンション
不動産会社

Powered byathome

 
PR

おすすめ情報

注目ブランド