きょうの社説 2010年8月30日

◎のとじま水族館 地域の魅力発信へ役割大きい
 のとじま臨海公園水族館(七尾市)で、七尾沖の定置網で7月に捕獲されたジンベエザ メが公開され、巨大な水槽で悠然と泳ぐ姿が親子連れや観光客の人気を集めている。体長10メートルにも成長する世界最大の魚が暖流に乗って能登沿岸まで泳いできていることを知って驚く人も多いだろう。ジンベエザメもまた、ふるさとの海の豊かさの象徴といえる。

 全国的に巨大な都市型水族館が人気を集めるなかで、のとじま水族館の強みは地元の海 と一体化した演出ができる点にある。能登島沖は野生イルカの群れがすみ着き、イルカと泳げる「ドルフィンスイム」が楽しめるほか、ダイビングでも人気を集める。釣りを含め、能登島全体が水生生物と触れ合える空間になってきた。

 「生物多様性」や「里海」という概念にも関心が高まり、地域の魅力発信へ水族館の役 割はますます高まっている。環境教育、研究機能も充実させ、ふるさとの海の魅力を存分に伝えてほしい。

 ジンベエザメは県が20億円を投じて巨大なアクリル水槽を整備し、国内4番目、日本 海側では初めての展示が実現した。今は5メートルの大きさだが、成長後は海に放し、回遊ルートを調べる計画もある。生態は謎に包まれているだけに調査活動は大きな意義がある。

 クラゲのコーナーも巧みな光の演出で癒やしの空間に変わるように、海の神秘や水生生 物の不思議は、展示方法の工夫によってアピール効果が高まり、臨場感も一段と増す。さまざまなテクノロジーが生かせるのが水族館の魅力であり、スタッフの腕の見せ所でもある。

 能登の海岸ではウミガメが産卵し、水族館で育てて放流する取り組みも行われた。環境 教育の素材は長い海岸線に限りなくある。石川の沿岸一帯が水族館のフィールドでもある。近年はリュウグウノツカイなど深海魚の漂着も相次いだ。人々の関心を呼ぶ海の異変についても研究の進展が望まれる。

 能登では魚のブランド化事業やクロマグロ畜養計画、トリガイ養殖など、水産分野で多 彩な取り組みが進む。そうした海の営み、魚食文化とも連動し、地域に役立つ幅広い情報を発信してほしい。

◎港湾機能の強化 コンテナの大型化が課題
 国土交通省が成長戦略の一環として、港湾機能と海運の強化を掲げ、「国際コンテナ戦 略港湾」に京浜港と阪神港の2カ所、重点港湾に金沢など43港を指定したほか、日本海側の拠点港も選定する方針という。公共投資の「選択と集中」方針に沿って重点整備を図るものであるが、港湾の国際競争力を高めるためには、内航や陸上輸送の強化、国際規格に合わせた規制の見直しなど総合的な戦略が必要である。

 国際物流の主流である海上コンテナの取扱量でみると、東京、横浜、神戸など日本の主 要港は、シンガポールや中国、韓国などの港湾に大差をつけられている。そこから浮かび上がる課題の一つは、大型化が進むコンテナへの対応力を強めることである。

 海上コンテナのサイズは、国際標準化機構(ISO)で規格化されており、国内で流通 する海上コンテナの主役は、20フィートコンテナから40フィートコンテナ、さらに高さのある40フィート背コンテナへと移っている。

 こうした変化に対応して、国交省は40フィート級の国際標準コンテナ積載車が公道を 通れるよう重量や車高などの規制緩和を進める一方、実際に通行可能な「国際物流基幹ネットワーク道路」として約2万9千キロ(新潟を含む北陸は約1590キロ)を選定し、橋の補強やバイパス、交差点整備などを行ってきた。この基幹道路網の拡充とアクセス道路の整備をもっと推進する必要がある。

 問題はそれだけではない。ISO規格のコンテナは大型化がさらに進んでおり、アジア ・北米間では45フィートコンテナが増えている。これに応じて米国や中国、韓国、タイなどは45フィートコンテナの陸上輸送を許可しているが、日本ではまだ認められておらず、国際的な流れに遅れをとる懸念も生じているのである。

 45フィートコンテナの利用を望む荷主企業は増えており、道路通行を特別に認める「 物流特区」を政府に提案する自治体も出ている。安全性の確保など種々の課題はあるが、まず特区で試行するのも一つの方法であろう。