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[21157] [習作]きっと本人はいたってまじめなストーリー(リリカル・オリ主?)[ネタ・ギャグ]
Name: 電卓◆46bcffbe ID:223e99a2
Date: 2010/08/16 20:26
それは4月も終わりに近づいた、ある日の出来事でした。
最近に日課になりつつある、お父さんによる晩御飯の支度。順調に進むかと思われたそれは残念ながら暗礁に乗り上げたんだ。

「ふむ。困ったな」
「どうしたの、お父さん?」

ガサガサと物音がするから台所を見に行くと、お父さんが見慣れた印がプリントされたビニール袋からレシートを取り出して、

「ああ、少々問題が起きてね。一緒に買ったと思ったが、どうやら玉子を買い忘れていたようだ」

と、まじまじと見つめながら言ったんだ。すると――。

「あら、将司さん。それなら私が買いに行きますよ」

なんて事をお母さんが言うんだけど、そーは問屋は卸さない。だってお母さんはお腹が大きく膨らんでいるんだもん。
え、何が言いたいかって?2ヶ月後くらいには我が家、白鷹(しらたか)家に新たな家族が増えるんだよ、つまり私に弟か妹ができるって意味です。

「あ、お父さん。それなら私が行くよ♪お母さんはダ~メ~です。家でお留守番」
「うう~将司さん。巴ちゃんがお母さんをイジメル。これが家庭内暴力なのかしら。お母さん負けないわ」
「まあまあ、香織も落ちついて。巴は香織とお腹の子を心配しているのだぞ」
「そーそー。ダメだよ、お母さんはちゃんと静かにしてないと~」
「でも、将司さんも巴ちゃんも、私に最近家事とかぜんぜんさせてくれないじゃないですか。香織は皆の除け者なのね~しくしく」

よーよーと泣くまねをするお母さん。そーだね、お腹が大きくなって以来家事とかぜんぜんさせてもらえてないよね。でもダメだよ。何かあったら大変だもん。
小さな子供みたいに頬を膨らまして、ぐちを溢すお母さんをお父さんと私の二人でなだめるとお父さんから竹と橘の彫られた硬貨をいただきました。


――という訳で、私、白鳥巴(しらたかともえ)が晩御飯に足りない玉子を買いに近くのスーパーに行くのだよ。もちろん、お釣りでお菓子を買ってもいいと我が家の大蔵大臣のお墨つき♪
だけどね、家を出てしばらく歩くと、こーいうの神隠しって言うのかな?何だかよく解らないけど、とつぜん暗くなったと思ったらぜんぜん人が居なくなっちゃって、

「誰かー!誰かいませんか~?」

と、ちょっぴり泣きそうな声で何度も何度も言うんだけど、返事はなくて、だけど大通りに出れば、もしかしたら誰かに会えるかもしれない、そう考えたんだ。
それがあんな事になるなんて……。で、でも仕方ないよね。小学3年生の子供一人で誰もいない夜の町並みを歩くなんて、ふつーなら怖くて心細いよね。

「………」
「……!」
「…」

だからね、誰かの話し声が聞こえて、涙を拭って声のする方向に走ると、女の子がいたんだ。その子、魔法少女?みたいな変わった白い服を着てて、だけど手にしてるのは可愛らしいハートステッキなんかじゃなくて…なんだろう、見るからに危なさそうで邪な気配が漂う物で、
それと定番のお付きのマスコットなのかな…肩にね、フェレットっぽい小動物がいたんだ。とにかく、私一人じゃないってのがわかって嬉しくて近づいたら――。

「えっ?結界内に!?あの娘「ユーノくんは黙ってて!!」…はい」
「だいたいね、ユーノくん…私は普通の女の子なの!!それが、ある日とつぜん魔法少女になったと思ったら実は魔砲少女で、しかも熱血バトルしなきゃいけないんだよ!?(中略)
そんなに戦いたいなら、おにーちゃんかおねーちゃんに任せればいいの、ね、わかる?」
「ご、ゴメンなさい…」

なんと魔法少女は同じクラスの女の子でした!!
驚いた私はその事を声に出したちゃったんだ…。

「高町…ちゃん!?な、何、その格好!!」
「うにゃ!!巴ちゃん!?わ、私はなのはじゃないなの……そう、私は星光の殲滅者なの!!!……ところで…見たよね?」

だけど返ってきたのは冷たい言葉。まるでお、お尻に氷柱を…あう~こ、こんな表現書けないよ!
と、とにかく『ぞっとする』雰囲気を醸し出す知り合いの女の子の質問に私は、ふるふると首を振って答えたんだけどね。

「に、にゃ!こんな格好見られたからには、キルゼムオールでデストロイオールヒューマンなのっ!それしか私が明日を迎える方法はないのっ!!」
【目撃者はサーチアンドデストロイですね。さすがは私のマスターです♪どこぞの駄フェレットとは違いますね。嗚呼、デバイス冥利に尽きると言うものです】
「レイジングハート、お願いっ!」
【No problem,My master.Count 10seconds】

高町ちゃんもとい自称星光の殲滅者ちゃんはね、こーなんというか正気を失ってそうなグルグルとした瞳で私を見つめると、桜色の怪しげな光を湛える杖?ソレを私を向けたの。
アレは危険だ、はやく逃げるんだ、なんて私の本能はガンガンと警告を鳴らすんだけど、肝心の私は、蛇に睨まれたカエルみたいに怖くて動けなかったんだ。

「巴ちゃん、痛いのちょっぴりだけガマン出来る?」
【8,7…ひゃあ!もう我慢できませんねっ! ゼロだー!】
「いっ、イヤぁあああー!!」

ロボットアニメに出てくる武器みたいなソレから轟々と音を立てて桜色の光放たれ、私の目の前一杯に広がった時は死を覚悟したんだ。
それで怖くて目を瞑って…だけど、優しげな声がして、気がつくと私と同じくらいの歳の女の子にぎ、ぎゅ~っとだ、抱っこされてたんだよ。あ、あう~。

「ここは危険だ。キミは早く逃げるんだ…」
「は、ハイ」
「チッ…フェイトちゃん…もう来ちゃったんだね。ユーノくんの役立たず!」
「ご、ごめ「謝る暇があるなら今度からは強固な結界を張るよう努力しろ、なの!」…」
【おやおや、誰かと思えばフェイト嬢ではありませんか、目的はジュエルシードですね?しかし残念ですが、貴女には私のマスターの覇道の礎となってもらいましょう】
「断る!ジュエルシードは渡さない。そして…私が、あなた達を倒す!征くよバルディッシュ!!」
【Get set!】

女の子は、闇のように黒い衣装。だけど紅い瞳には強い意志を秘めて、夜風に揺れる金色の髪が印象的で、でもどこか悲しそうでした……。
黒い少女は、私を降ろすと空を舞う。対するのは白い闇と呼ばれる女の子。皆の笑顔を守ると心に決めた戦士と究極の闇をもたらす者との戦いが…あれ?なに書いてるんだろう?

「アルフ!」
「あいよー」

それでその子が誰かの名前を呼ぶと、いつの間にか私の後ろに茜色の髪のお姉さんがいて、あまりの突然さに驚いて、アルフってのはお姉さんの名前かな?なんて突飛な事を考えていると――。

「さー嬢ちゃん。ここにアンタがいるとアタシのご主人様の戦いに邪魔になるからね。行くよ!」
「わ、私、きゃっ!?」

お姉さんに抱きかかえられ、空を飛ぶんだけど、こ、こんどは…お、お姫様抱っこだよ!!しかもふくよかなム、ムネが当たってたし。
顔を赤くした私を見て、お姉さんはニカっと笑って頭を撫でてくれて…まあ、いいよね。紅くなった頬に夜風がひんやり心地良かったけど、その私、男の子だよ



「さ、ここまでくれば大丈夫だ」
「え?え?あ、ほんとだ…その、ありがとうございます」

気がついたら、あの変な空間じゃなくて普通の夜の街でした。電灯や星明かり、行きかう車の喧騒が聞こえたから、間違えようがないもん。
それでお姉さんに適当な場所で降ろしてもらうとお礼を言ったんだ。するとちょっと照れくさそうな顔で、

「なぁに、アタシは自分の仕事をしただけさ」

なんて言うんだよ。すごっくカッコいいよ!ぴょこんと出てる犬耳もアクセントになって。
ん?犬耳?美緒さんの親戚かな?まーいっか、魔法少女だもんね…。

「お姉さんにも、あの女の子にも、ご武運を!」
「なーに、アタシのご主人様のフェイトは無敵さ。ま、嬢ちゃんのお礼として受け取っておくよ」

お姉さんが夜空に溶け込むように見えなくなるまで手を振って、それで私はお使いをして無事家に帰ったんだ。
お父さんの作った晩御飯を食べて、お母さんと一緒にお風呂に入って、いつもの日常が待ってて幸せで。
だからかな、あの事を頭の片隅に置いたのは。だけどね、寝る前に今こうして思いだしちゃったんだ。


明 日 、 学 校 に 行 く と 高 町 ち ゃ ん に あ う こ と を 。


「お父さん、お母さん、ごめんなさい。それからお母さんのお腹の子にも、一緒に遊んであげれなくて、ごめんね。さき逝く親不幸な巴を許してください。巴は明日死ぬのかもしれません…。
だけど、それで高町ちゃんを恨まないでください。きっと、高町ちゃんにもやむ得ない事情があったのだと、巴は思います。…って、何これ?これじゃまるで遺書だよ、遺書!ぜんぜん日記じゃないじゃん!!」

ふーふーと荒い息をして私は、日記の内容を訂正したのでした。けど、ほんとにどうしょう…明日…。





あとがき:むしゃくしゃして書いた反省はしていない。
別の作品がスランプでぜんぜん進まないから、短めのギャグSSならいけると思って書いたけど次回のネタが思いつかない件。



[21157] 2話
Name: 電卓◆46bcffbe ID:223e99a2
Date: 2010/08/23 15:37
[前回までのあらすじ]

ここではないどこか。いまではないかこ。

20世紀の半ば。ある日忽然と現れた魔法少女は、その愛くるしさをもって、恐るべき殺人ゲーム・ゲゲル※1を開始した。
しかし、たび重なるシリーズ展開により、似たようなキャラの乱造、話のマンネリ化などと疲弊し、魔法少女は20世紀の終わりには、急速にその規模を縮小し眠りについた。

時は流れ、21世紀。ここ海鳴市で、最近、奇妙な事件が多発する。
ちかごろ肌荒れなどの更年期障害に悩む祖母のような母親からお使いを頼まれた心優しき少女、フェイト・テスタロッサは突如出現した怪物から子猫を守るべく、今は亡き教育係・リニスから託されたバルディッシュを起動した。
かくして現代に甦った魔法少女、フェイトは皆の笑顔を守るべく、人々を脅かす怪物との戦いを決意する…!

戦いは熾烈を極めた。そして怪物を生む元凶、青い宝石も残すところあと僅かとなった。だが、現れたのは、究極の闇※2をもたらす者、白き闇、ン・ナノハ・フハ。
圧倒的なナノハの力を前に一度は敗れるフェイトだった。しかし、彼女は挫けず新たな力を手に、優しい心を胸に秘め、ナノハと最後の戦いを挑むべく、決戦の地に赴くのだった…。

「フェイトにはこんな事させたくなかった…」
「え、どうしたのアルフ?」
「フェイトには、笑顔でいてほしかった。それを…こんな事につき合わせて」
「アルフ…でも、ごめんね。これが終わったら、きっと本当の私に…だから見ていて、私とバルディッシュの戦いを!」
【Get set】

黒衣の少女は、誰が為に『人形』の仮面をかぶり、戦い、仮面の下で涙を流す。

「なれたんだね、究極の萌えを、持つ者に」
【Congratulationと、でも言っておきましょうか…私を楽しませてくださいよ?】

白衣の少女は、己が為に力を奮い、悲痛な決意を無邪気に笑う。

ビルのガラスに月夜が映え、どこか幻想的な景色を背に二つの影が交差した。
二人の間に言葉はなく、されど刃の如き視線が雄弁に物語る。守る者と壊す者、相反する想いを胸に秘めた二人の最後の闘いが、いまはじまる!!


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「はぅわ、ゆ、め…?」

頓狂な声をあげた私は、あたりを見渡すとカーテンから朝日が木漏れ溢れていた。ちなみ、夢の内容は頭に霞がかっているみたいで思い出せない…。
SAN値的な意味で思い出さなくてもいいよね?

「もう朝、か…どーしょう…」

ベッドから起き上がり、着替えると頭の中には…その、高町ちゃんの事で一杯で一杯で…。
だって昨日の今日だよ?このままだと学校で殺人事件がおきちゃうよ…被害者は私、犯人は小学3年生の同級生の女の子……。

どうしたらいいか考えれば、考えるほど、どんどん悪い方向に心がいっちゃって、だから何時までも悩んでいたらダメ、冷静にならなきゃっと思ったんだ。
それで洗面所に行って顔を洗うと鏡に向かって、

「学校…行きたくないな……」

なんて事をじゃ-じゃーと流れる水道の蛇口をきゅっと捻りながら言ってしまったんだ。

「どうしたの巴ちゃん?ま、まさかイジメ!?えいっ!!」
「お、お母さんやめて!!

それをいつの間にか後ろにいたお母さんが聞いていて、その身重な見た目とは裏ハラに軽やかな動きで、あっという間にパジャマを脱がされて―。

「体に怪我は…ない。ということは精神的にくるものかしら?」
「ち、ちがうよ、お母さん。そのね、朝起きたら、なんだかちょっぴり体調が優れなくて…」
「そう…よかった。でもね、巴ちゃんも、お母さんと同じであまり体は丈夫じゃないから…おクスリ飲んで、横になって、少し好くなったらフィリス先生のところに行きましょう、ね」
「う、うん…」

優しく諭すような口調で、背中をぽんぽんと叩く。だけど、ほんとは、お腹に赤ちゃんがいてクスリが飲めないぶん、お母さんのが辛いのに。
だから、そんなお母さんに嘘をつく私が嫌で、嫌で…。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「おっはよー!あかねちゃん」
「うん。さつきちゃんもおはよー♪」

高町ちゃんと出会わないように、なるべく隠れて教室に行くと普段どおりの日常があって、皆の、その無邪気な姿にちょっぴり涙が零れてしまった。
正気と狂気は薄皮1枚隔てただけの隣合せの世界―って、別に某暗黒神話的な意味合いじゃないよ。あ、ところでウルトラ○ンって旧神だよね?M78星雲とベテルギウス的に考えて。

「ねぇ、すずか…最近、なのはの様子が変だとは思わない?」
「うん。声をかけても上の空で、元気なさそうだし…どうしちゃったんだろう…なのはちゃん」

席に向かうとき、紫色と金色の髪の少女たちの会話を聞いてしまった。すずかちゃんに、たしかバーニングちゃんだったかな?高町ちゃんの友達の。
心配そうに呟く二人に何て声をかけていいか、今の私にはわからない。だって、

「あなたたちの大切な友達の高町ちゃんは、魔砲少女をしています」
「誰か、誰か!巴ちゃんが、巴ちゃんがおかしくなっちゃったよぅ~!!」

――ってな具合で、普通だったら黄色い救急車呼ばれちゃうよ!!あるいは、

『目撃者はキルゼムオールでデストロイオールヒューマンなのっ!』
【フフフ、マスター。そろそろ、究極の闇をはじめませんか?】

と、昨日の高町ちゃん的に考えると学校の教室どころか街が一つ消し飛ぶよ…。私は、高町ちゃんを大量殺人犯にはしたくない!!

「「せんせい、おはようございます」」
「皆さんも、おはようございます」

むーむーと頭を抱えていたら、そーこーしているうちに予鈴が鳴って先生が教室に入る。それに併せて皆も挨拶する。

「赤石くん」
「はいっ」

やがて先生は皆の名前を呼んで出席を取るんだけど、

「高町さん、高町なのはさん…居ませんね。欠席ですか?」

高町ちゃんの順が来て、何度も名前を呼ぶんだけど肝心の高町ちゃんからの返事は返ってこない。あるのは主のいない、ぽっかりと空いた机。
ちなみに私の席は高町ちゃんの後ろも後ろ、だいたい教室の真ん中くらい。

「フッー!何とか間にあったなの!」

とつぜん、大きな音がしたと思うとドアが勢いよく開いた。そこから現れたのは、問題の高町ちゃん。
寝起きなのかな。特徴的な二つのおさげも今は、左右非対称で冒涜的な位置になってる。

「高町さん。ダメですよ。今日は遅刻にはしませんけど、今度からはしっかりとしましょう」
「はい。ごめんなさい、先生…」

高町ちゃんがぺこりとおじぎをして教室に入るとき、一瞬すごい視線を感じて、思わず悲鳴を溢しそうになった。

HRも終わり、休み時間になると高町ちゃんが、私に何か言いたそうな視線を送るんだけど、件の二人が近寄って遮るんだ。
ぜひとも、このまま休み時間が終わるまでビーイングちゃんには私の盾になってほしいな。

「だから――!」
「うぅ~アリサちゃん。なのはが悪かったから~」
「くすくす」

あ、高町ちゃんがブーイングちゃんに頬をひっぱられてる。よく伸びるな~。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


それで、学校があっという間に終わってしまって、だけど、まだ高町ちゃんとしっかり話し合いができていない。
このままだと、今朝のお母さんとの約束も守れない子に…。

「あのね、お母さん。ほんとうはね……」
「それでたまたま巴ちゃんが、その子の、人には言えないような『秘密』を知ってしまって、だけど、どうしたらいいのかわからない、と」
「うん…」
「そんな事があったのね。でもね、巴が…しっかりと誠意をもって、本当の事を言えば、きっと、その子もわかってくれる、とお母さんは思うな……」
「けど、どうしたらいいの?」
「そうね、まずは気持ちを落ち着かせて、静かに話合いができるような場所で、その子の目を見てしっかりと――。できるかしら?」
「うん。やってみる!」

だから、私は逃げないで頑張る。明日を笑って迎えるためにも!
『秘密』を打ち明ける仲になれれば、きっと、きっと…。

「高町ちゃん…ちょっと、いいかな?」
「え、巴ちゃん!?」

放下後、二人といっしょに校門から出ようとする高町ちゃんの手をとる。すると驚いた顔をでこちらを見るけど、すぐに落ち着いた表情を見せる。
うぅ…ボーイングちゃんの鋭い視線がちょっぴり痛い…。

「なのは!?」
「ごめんね、アリサちゃん。すずかちゃん。今日は巴ちゃんといっしょに帰る約束をしてたんだ」
「がんばってね~」
「ほら、アリサちゃん落ち着いて。どうどう」
「べ、べつに私は…」>

がんばってね、すずかちゃんのその言葉は私にかけたのか、それとも高町ちゃんに宛てたのかはわからない。
でもね、私は頑張らなくちゃ!

【こちらから、出向かなくてすみましたね。マスター】
「そうだね、レイジングハート。覚悟しろなの、巴ちゃん」

あう~そんな事言わないで…。








[用語]

ゲゲル:主に財布の住人、諭吉さんと漱石さんがターゲット。
闇:人生オワタ的な意味で。わからない人は、なの破産でググルべし。


8・16投稿



[21157] 3話(加筆修正)
Name: 電卓◆46bcffbe ID:223e99a2
Date: 2010/08/24 13:43
むかし、むかし。あるところに女の子がいました。

その女の子は生まれつき体が弱く、病気がちで、あまり長くお日様の下に居ることができませんでした。

外に出ることができずにひとりぼっちな女の子を神様は不憫に思いました。

そこで、せめて話し相手に困らないようにと、その子に動物たちと話せるような不思議な『力』を授けたのです。

もう、わたしはひとりじゃない。女の子は神様からの贈り物に感謝しました。

なぜなら、話し相手は窓による小鳥たちや時折ふらりとあらわれるノラ猫たちといっぱいいるのです。

あるとき、女の子はひとりの男の娘と出会いました。

きっかけを与えてくれたのは、神様からいただいた、不思議な『力』でした。

やがて、恋におちた二人は、大人になると結婚をしました。女の子の家族、男の子の家族、いろいろな人たちに祝福されたのです。

さらに幸せなことは続きました。ほどなくして女の子はお母さんになったのです。

二人の間に生まれた子供は玉のような子でした。

そして、その子にもお母さんのもつ不思議な『力』が受け継がれていたのです…。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


探したのは、まずは気持ちを落ち着かせて、静かに話せる場所。体が弱く、あまり外出を控えていて海鳴の地理に疎い私がそこで思いついたのが、ここ臨海公園。
病院帰りのお母さんといっしょに鯛焼き屋さんの屋台に行くところ。カレーチーズ味なんて邪道だよ!誰が食べるんだろう?

平日だからかな、ひとが少なくて静かで、海からの潮風がほほをなでてるのが、すっごく気持ちよかった。
ここでなら、しっかりと『お話し合い』ができるかな?

会話の切欠を作ろうとして、鯛焼きを買ってきたんだけど、高町ちゃんは、今にも泣き出しそうな表情で、ただただ俯きがちでした。
だから、深く呼吸して、いざ喋ろうとしたんだけど――。

「高町ちゃん…その昨日の、事なんだけどn「なのはァ!」…」

とつぜん、遮られた。草陰から飛び出るように現れたのは、砂色の毛並みのフェレット。昨日、高町ちゃんの肩にいた子。
高町ちゃんは、驚いた顔をして、だけどすぐに冷たい表情をしました。そして――。

「ユーノ…くん…そんなに、なのはの邪魔をしたいんだ…」
【何をしているのですか、駄フェレット…私でさえ、マスターの為に黙っていたのに…】
「え、え、え?」

死刑宣告。高町ちゃんが懐から取り出した赤い宝石が、瞬く間に変化して、その砲口に桜色の光が収束し、放たれた!!
フェレットくんはメガ粒子の閃光から逃げようと必死に走るんだけど、とつぜん桜色の輪に捕縛されて、動けなくなったところを光に飲まれ――。

【レストリクトロック】
「ありがとう、レイジングハート♪それにしても汚い花火なの」

さらっと呟く高町ちゃん。
跡に残されたのは高熱にさらされガラス化した大地と黒く焦げながらも奇跡的に原型を保ったフェレットだったもの……一応は非殺傷設定だよ。あれ?おかしな電波が。

「これが魔法少女のする、こと?」

目の前に惨劇に私は、カタカタと歯をならしました。すると――。

「ちがうよ、巴ちゃん…魔砲少女だから、するんだよ……そして、巴ちゃんにも、ユーノくんの後を追わせてあ・げ・る♪」

昨日と同じように正気を失ったグルグルとした瞳で私を見つめる高町ちゃん。手には暴虐の魔弾を放つ杖。プランD、所謂ピンチです。
一歩、一歩、後ずさり、何かにぶつかり尻餅をつく。動けない私は、こくりと唾を飲み込みました。

お母さん。巴は、今日ひとつの事を知りました。
たとえ言葉が通じ、意思の疎通ができても、同じ価値観を共有できない相手とは、本当の意味で解り合うことはできないんだって……。

「大丈夫だよ。そんな泣き出しそうな顔で、なのはを見なくても。ただ、私は巴ちゃんとお友達になりたいんだ」

優しげな、まるで母親が子供に聞かせるような安心感のある口調。
一度飲み込まれたら二度と抜け出せないような甘く強烈な瘴気を放ち、こちらへと近寄る。

「ふふふ、もう逃げられないよ?」

と、くすりと笑って手を差し出す。
優しさではない。その本質は全くの逆。獲物を決して逃がさないために。

【これは!?マスター、ジュエルシードです!!】
「ジュエルシード!?こんな近くに?」
「ぼ、僕は、じゅ、ジュエルシードのはつ…どうをしらせる、ため…念話が通じ…ったから…」

とつぜん、杖が声をあげた。それに釣られて高町ちゃんも。
そしてフェレットくんは、息も絶え絶えで、よろよろと傷ついた体で私たちの前に出て、そこで力尽きたのです。

「に、にゃー!?じ、じゃあ…もしかして?」
【気になさることはありませんよ、マスター。これはユーノの常日頃の行いが悪かった結果なのです】
「そ、そうだね。レイジングハート…うん、ユーノくんが空気を読まないからだもん、ね」
【では、気を取り直してジュエルシードの封印をしましょう】

高町ちゃんたちが言うジュエルシードが何なのかは解らないけど、私はこの隙に逃げようとしたんだ。だけど…。

「この感覚、昨日と同じ?」
【結界魔法です。マスターほどの魔力があれば雑作もありません】

「だめだよ、巴ちゃん。ユーノくんとジュエルシードに邪魔されたけど、まだなのはと『おはなし』の途中だよ?」

と、高町ちゃんは少し変わったイントネーションで言いました。

「あうぅ…『おはなし』ってお話し、じゃないの?」
「ふふ、それはどうかな?巴ちゃんしだいだよ?」

先ほどの曖昧ではなく正気で。これ、本当に高町ちゃんは大丈夫なのでしょうか…。

その時でした。青い光が放たれたのは。
最初に来たのは光。続いて何かが生み出す力が奔流となって私たちを襲いました。

「きゃっ――あぅう!?」

お腹に衝撃。すごく眩しいなかで、目を凝らして見るとボロボロとなったフェレットくんが流されてきたのです。
ちなみに、いつの間にか白い服に着替えた高町ちゃんは平然としていました。

「巴ちゃん。別にユーノくんなら、ほっといてもそのうち元気になるよ?」
【ユーノの数少ない利点といえば、そのタフネスバイタリティーくらいしかありませんよ。『バリアジャケット』を展開していないあなたはご自分の事をまず第一にお考えください】
「えっ?でも…」
「う~ん。だいたい一時間くらい寝かせとけば、どんなに酷い怪我もすぐ治るよ」

何だろう…高町ちゃんたちは、一応はこのフェレットくんを信頼しているの、かな?あっちで高町ちゃんが、お姉ちゃんの手料理を食べて~なんて言ってるけど、どういう意味なんだろう。
それと『バリアジャケット』ってのは高町ちゃんが着ている白い洋服の事かな。私は自前の『力』で何とかしてるけど……もしかして気づいてない?

「巴ちゃん…私の話を信じてくれる、かな?」
「う、うん…」

ぜんぜん高町ちゃんの話を聞いていなかった私は、とりあえずバレないように、静かに、頷くことで答えました。
やがて光が収まり現れたのは――。

「なにあれ……ハロウィンのお化け?」

デザイン仕事しろ、と言いたくなる様な何とも微妙な木のお化けでした。

【ささっと封印しましょうかマスター】
「そうだね、レイジングハート――発射!」

そんな感じでお化けが桜色に飲み込まれるました。色々と書いといて呆気なさ過ぎです。
すると公園で見かける普通な木と青い宝石としか言いようのない物が残りました。

【あれがジュエルシード。見る者の心を昂らせ、持ち主の塩基配列をゲフンゲフン。…まあ、願いを叶えるただの宝石です】

途中で何かすごい事を言ってたような気がするよぅ……。きっと高町ちゃんの言動がおかしいのは、それが原因なのかな……私が、私がなんとかしないと!

だいたい私の胸元とほぼ同じ高さに浮かぶ青い宝石へと杖を近づける高町ちゃんに、黄色の光弾が襲う!!
だけど当たることはなくて、まるで頭上が見えているような、いつもの鈍さを微塵も感じさせない華麗なステップで避けるのです。

光弾が巻き上げた土ぼこりが収まり、現れたのは先日、私を助けてくれた子。

「フェイト、ちゃん…」

名前を呼んだのは私か、高町ちゃんか、あるいはその両方か。

茜色に映えるその黄金色の髪を風になびかせて。無言で、こちらを見るその瞳に悲しみを湛えて。

その子はいました。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「フェイト、ちゃん…」

と、高町ちゃんは小さく呟くと、持っていた杖をじりっと持ち直す。

誰も動けなかった。いや実際には、動けないのは高町ちゃんと私の胸元でボロボロとなったフェレットくん…まあ、別の意味で動けないのです。涅槃とか三途の川とかそっち方面で。
ちなみに、私は事態が飲み込めずに、おろおろと右往左往していました。

「キミは…」

フェイトちゃんが口を開き、何かを呟く。音楽学校でしっかりと練習を積めば、きっと将来、ゆうひさんにも負けない立派な歌うたいになれそうな、綺麗な声でした。
負けないという意味では、アウトソーシングちゃんもⅠm@s的に考えて……やっぱり、何か毒電波を受信してるよ、私!!

「キミは、その白い魔導師の知り合い!?とにかく離れて…その子は危険すぎる!!」
「え、うん。そーだよね…たしかに高町ちゃんは危険だよね」

フェイトちゃんの言葉に私は、ついつい反応して、頷きました。するとひどいよーと怒る高町ちゃん。
でもね、私はうそをついていないよ。高町ちゃんは一度、自分の胸に手を当てて、これまでのことをしっかりと振り返るべきだと思います。

「ジュエルシードは、頂いていきますっ!」

そんなやり取りする私達を尻目に、フェイトちゃんは小さな体をゴムのように弾ませ、一気に距離をつめると同時に黄金色の光弾を5つ、放つ。
その姿はまるで列伍を組み、突撃する中世の騎士達のごとく。あるいは獲物を狙うシャチの群れのようでした。

刃を携え光弾と共に迫り来るフェイトちゃんを前に、高町ちゃんは微塵も怯える気配はなく、ある物は手にした杖で切り払い、またある物は半透明の盾で防ぐ。その姿はまるで舞のように綺麗で淀みない流れでした。
あれ、本当に運動神経が擦り切れてる高町ちゃんなのかな…私、自信がもてなくなってきちゃった……やっぱり、さっきの杖さんが言ってた通りなのかな…。
そして刃と杖で切り結ぶ二人。だけど、高町ちゃんはとっさに私の胸元から黒く焦げた物体――フェレットくんを掴みました。

「フェイトちゃんは…囮っ、本命はアルフさんか、なのっ!!」

すごい勢いで投擲された弾丸・フェレットは空を切り――いや、何かにぶつかりました。
その場所だけ、ゆらゆらと陽影が漂うにようにぼやけ、やがて保護色を解いたカメレオンのごとく、見知った顔の女性が現れました。

「アルフっ!大丈夫?」
「あっっ…こいつ、本当にただの娘っ子かい…信じられんよ」

フェイトちゃんは高町ちゃんの下から飛び退き、アルフさんに心配そうに尋ねました。
アルフさんは、口では言うものの、大して痛そうなそぶりを見せません。

「すごいね…それも魔法なんだ…フェイトちゃんを囮にして、姿を消したアルフさんが近づいて巴ちゃんを人質に…ううん、最初からジュエルシード狙い、かな」
「くっ…どうして…」
「簡単だよ。だってアルフさんの姿が見えなかったんだもん。いつもならフェイトちゃんにべったりなアルフさんが、今日に限って姿を見せないなんて変だよ」

高町ちゃんは、さも当然とばかりに言い放ち、フェイトちゃんは悔しそうな声を溢しました。

「アンタっ!自分の使い魔にこんな事をして正気かい!?」
「つかいまぁ?ユーノくんがなのはの?じょーだんじゃない、なの。だいたいね、ユーノくんのせいでなのはは、こんな危険なことをしないといけないんだよ?夜おそくまでジュエルシードを探さないといけなくて、おにーちゃんやおねーちゃんに怒られちゃったし(中略)だいたいね、家族を守るとかなんとか言って、いっちばーん傷つけてるのはおにーちゃんなんだよ。なのはは、何度も剣を振るのを辞めてもっといっしょの時間がほしいって言ってるのに、
のーみそ筋肉なおにーちゃんは、ぜんぜん分かってくれないし(中略)忍さんみたいな美人さんの婚約者だなんてぜったい、ぜぇーったいありえないの。それなのに朝からおにーちゃんはおねーちゃんといちゃいちゃして、しかもおかーさんは止めようとしないでいっしょになっておとーさんといちゃいちゃしてっ!!なのはは、みんなから邪険に扱われているの!家族に甘えたい年頃なのにそれができない!わかる?この気持ち?
それになのはは、ぜんぜん悪くないのに、ちょっとうたた寝してたぐらいでアリサちゃんにお友達に怒られちゃったし、昨日だって巴ちゃんに恥ずかしい格好見られちゃったんだよ!!魔法が日常生活の一部で存在する世界ならともかく、こっちだとね、見られるだけですっーごく恥ずかしいんだよ。だいたい何あれ、あの変身シーンは!はだかだよ、はだか!!生まれたときの姿だよ!下手をしたら、なのははお嫁にいけなくなっちゃうんだよ?
(中略)つまりね、なのはが今こうしてフェイトちゃんやアルフさんとケンカしてるのも、何もかも、ぜんぶ、ぜぇーんぶアルフさんが腕に抱いてるユーノくんのせいなのっ!!!」
「そ、そうかい…」

早口で、だけど舌をかまずに、とても女の子らしからぬ発言をする高町ちゃんの剣幕に押し負けたアルフさんは、ばつの悪そうな顔をしました。
う~ん、途中から家族のぐちを叫んでたり、原作(とらいあんぐるとかの)への文句を言っていたような気がするけど、ただの気のせいだよね……って、やっぱりまた変な電波受信してるよっ!!
うう…高町ちゃんといっしょにいるようになって、何だか私のSAN値がゲリゲリ減ってるよ~~こんど、くーちゃんをもふもふしたいなぁ…。

「もういい…ジュエルシード…なのはの願いを、叶えて」

瞳のハイライトをなくした高町ちゃんは、ふよふよと浮かぶジュエルシードを掴みました。
そして青い光が私たちのいる薄暗い結界を照らすのです。

「な、何をする気だいっ!」
「『何を』だって?くすくす。魔法少女ならお約束を守らなくちゃ、ね」

恐怖の混じったアルフさんの質問に、ぞくぞくとする口調で、高町ちゃんが静かに答えました。
そして、『お約束』とは何なのか私は気づいてしまいました。だけど、それは叶えてはいけない願い。一人の人間の一生を歪ませてしまう願い。
でも、遅すぎたのです。私に出来ることは声をあげることだけ。ただ、見ているだけ。

「まさかっ!?高町ちゃん!!!」
「巴ちゃんはわかっちゃったみたいだね、くす。でも、もう遅いよ」

「ダメっ!フェイトちゃん、逃げてぇ!」

私が最後に見たのは、青い光に包まれるフェイトちゃんたちでした。









[あとがき]

まずは一言。ごめんなさい。アルコールを摂取しながら、SSは書くものではありません。プロットは捨てるもの(キリっ

そろそろタイトルからギャグを抜かないといけないな。ハートフル(ぼっこ)に路線変更だ!

いい話が思い浮かばず両親の話を出してしまった…別に突っ込みはいらんですよ?

さて、いよいよもってなのはのヒロイン覇王化が進んできました。もう覇王少女フィジカルなのはでいいよね?

果たしてなのはは、翠屋2代目こと、なのちゃん化できるのか!?ユーノとレイジングハートをどうにかしないと…あとジュエルシード…は別にフェイトちゃんが何とかしてくれるはず!

某所でみたショタフェイトくんのせいで、この物語のフェイトもTSさせたくなってきたふしぎ!別に男の子でもいいよね?テスタロッサ家はきっとみんなショタ婚で大回転してるんだよw異論は受け付けない(キリっ



投稿 8・23

修正 8・24



[21157] 4話
Name: 電卓◆46bcffbe ID:223e99a2
Date: 2010/08/26 02:47
事故に遭った瞬間や一部のプロスポーツ選手は、たとえばF1など一瞬の油断が死に直面する競技では時折、世界がスローモーションで見えると聞いたことがあります。
なんでもフィリス先生が言うには、脳内でアドレナリンやらなにやらの化学物質が過剰に分泌された結果、そう見えるようです。
そして以前、入院したときに知り合ったおじさんがそれと同様のことを鍛錬により習得する怪しげな武術の流派があるとか、なんとか言っていました…。

あ、話が少しずれてしまいました。
つまり、その時、私もたしかにゆっくりと時間が進む世界を感じることが出来たのです。

「フェイトちゃん、逃げてぇ!」

1秒が1時間にも2時間にも感じるコマ送りの世界のなか、私は出来る限りの大きな声で叫びました。
そして、ようやく私の言葉に気づき、フェイトちゃんは逃げようとしました。だけど、遅すぎたのです。すでに青い光が眼前にまで迫り、脱出は不可能でした。

その光景を私は見ていることしか出来ません。
世界が静止しているのは感覚的なものであり、私の『肉体』が自由に動くことは無理でした。そう、『肉体』は。

ならば、『精神』は?
ごらんの通り、いま私が思料することが出来るように『肉体』に阻害されることなく自由です。

はたから見たら、その時の私はどのように見えたのでしょうか。

ジュエルシードが放つ輝きは、フェイトちゃんに到達することなく私の体に阻まれました。
瞳を閉じてさえも映りこむ白昼の太陽を思わせる輝きのなか、そこで私の意識は飲み込まれたのです。

その後は、我に返った高町ちゃんの悲鳴か、フェイトちゃんの声か、それとも二人の声が、ただむなしく結界内に響いただけでしょう。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「んんっ…くんくん…むむむ、これは黒糖で煮た、あんこの香り?」
「むぅ!むぅ!こっくん」
「むしゃむしゃ、はぐはぐ」
「おーけっこう甘いんだな、これ」

ほどなくして、空腹のお腹にひびく甘い香りに誘われて、ぱっちりと目が覚めると大きな胸が広が…って!コホン、そこには高町ちゃんとフェイトちゃん、アルフさんたちがいました。
三人とも美味しそうに鯛焼きをほおばっています。
えっと…先ほどのは、その…気を失なって倒れていた私を、どーやらアルフさんが膝枕してくれていたそうです。そこっ!羨ましいとか言わないの!!
あうぅ…やっぱり…毒電波が…もう、すっごく嫌だよ…私のSAN値が…。

「キミは「巴ちゃん「アンタ、大丈夫かい」」」

それで起き上がった私を見て、三人がそれぞれ一度に言うけど、聖徳太子じゃないからね?ちゃんと一人ずつお願いします。

「えっと、たぶん…大丈夫、かな?ちょっと…見てきます…
「う、うにゃー!」
「「?」」

私がそう言うと、高町ちゃんは顔を真っ赤にして背け、フェイトちゃんとアルフさんは?マークを頭上に浮かべています。
いそいそとトイレに走って確かめに行きました。ちなみに、ちゃんと有りました。高町ちゃんの望んだ願いが、『凹を凸にする』でなくて『具体的なもの』でよかったぁ…ぐすん。

そんなこんなで帰ってくるとアルフさんが鯛焼きの下半分、お腹からしっぽをくれました。

「あ、ありがとうございます」

と、お礼を言うんだけど、

「ああ、遠慮はいらんよ」
「ふぇ?」
「ん、なんだい、わかってないんだね。これ、あんたがさっき買ってきたのらしいよ」
【さきほど、あなたがマスターに渡したものを騒ぎのときに私が格納しておいたのです】

と、杖のひとが言いました。
ところで圧縮だとか、格納だとか食べ物にむけて使う言葉なのかな…なんだか不安になってきました。

「こくんっ…それよりも、どうしてこんなことしたのかな?下手をしたら、ううん、下手をしなくても、女の子の一生をダメにしちゃうところだったんだよ」

それで鯛焼きを食べ終わると私は高町ちゃんに訪ねるました。
するとアルフさんは驚いた顔をし、高町ちゃんに今まで見せたことのないような怖い顔で詰め寄るのです。

「ちょっと待っておくれ。アンタ、アタシのフェイトに何する気だったんだい、てかどんな願いを望んだ言いな!!」
「ど、どんな願いと言われましても…うにゃ~なのはの口からは…そ、そうだ巴ちゃん!巴ちゃんなら言っても恥ずかしいくないから言ってよ!!」

どうして…そこで私の名前がでるの?てか、アルフさん、そんな顔で見つめないでください。怖いです…あうぅ~。
恐怖に負けてそれで言ってしまいました…。私の話を最後まで聞くことなく、アルフさんは憤怒の顔を浮かべ、高町ちゃんを連れて行きました。

「うにゃー!」

どこかで可愛いらしい悲鳴が響いてます。願わくば、これで私のもとに平穏が訪れますように…。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


騒がしい二名がいなくなり私たち二人がベンチに残されました。
そして、静寂を破るようにフェイトちゃんは呟くように尋ねます。

「どうして…どうして、キミは見ず知らずの私を助けてくれたの…?」
「『どうして?』その言葉は、そっくりそのままに返してあげます。じゃあ、どうしてフェイトちゃんは昨日私を助けてくれたの?」
「キミが…危険な目に遭ったから…それに助ける力が私にあったから…」
「私も、フェイトちゃんと同じ、じゃあダメかな?」
「だけど!キミは!!」
「むぅー私のことはキミじゃなくて名前で呼んでほしいな…私の名前は、巴、白鷹巴(しらたかともえ)だよ…それに、一応は『ふつう』じゃないのかな…ねぇ、フェイトちゃんは約束を守れる?」

その言葉にフェイトちゃんは驚いた顔をして、静かに頷きます。ちょっぴり嬉しかったです。
そして、フェイトちゃんの手を握りました。白く透き通った肌に、子供らしい温かく柔らかな感触。力を込めて握れば折れてしまいそうな儚さ。
私は、こちらをまじまじと見つめるフェイトちゃんの仕草に、どきりと顔を赤くしました。

「よかった……その、驚かないで…」
「と、トモエ…!?」
「落ち着いて…ね、ほら?」

落ち着かせるようになだめ、そして念じました。
注意してみれば、ベンチの周りにあった小石たちがカタカタと揺れていたかもしれません。

私やお母さんの『羽』はリスティさんやフィリス先生、千佳さんの『羽』と違ってはっきり見えるタイプじゃないけれど、でも、確かに見えているはずです。
私の背中、後ろの景色がゆらめいて見えるのが。

フェイトちゃんは興味深そうに見つめ、手を伸ばし、それに触ろうとしました。

「ふぇ?」

しかし、かすりともしませんでした。諦めずに何度も何度も試しますが、やっぱり触ることができません。
そんな様子に、私はくすっと笑うのです。

「ん~うまく言えないけど、これ、蜃気楼みたいなものかな。それで触れないんだ」
「あ、うん…はじめて見て、ちょっと…」
「あは♪はじめて見たひとはみんなそう言うんだ~それにね、ちょっと痛いかも……」

私は左手で、フェイトちゃんの手を握る自分の右手を抓りました。あまり痛くないようにちょっぴりとです。

「!!」
「大丈夫だよ…こわくない、よ」

一瞬、驚いた顔をします。なぜなら、抓る感触。抓られている感触。握り握られと、一度にさまざまな信号が脳へと伝わったからです。
未知の現象を前に、これはいた仕方がないことなのです。

――――――
―――――
――――

「うにゃ…痛いよ…」
「ったくアンタは…フェイトを傷ものにしようとしておいて!!」

そうこうしている間にアルフさんたちが帰ってきました。
しかも、ちょっと見ないうちに高町ちゃんの身長が私よりも高くなっていました(とうちょう部のおだんご的に)。

「アルフ、おつかれ」
「私からも、アルフさんお帰りなさい………あと、おまけで高町ちゃんも」
「ああ、二人ともありがとうよ…別にこいつには要らんよ」
「うぅ…ひどいよぅー巴ちゃんたちがイジメル…」

アルフさんはぶっきらぼうに言い放ちました。でも、嬉しそうに耳と尻尾をピコピコと動かすのがまる見えです。この前、会ったときは美緒さんの親戚かと思いましたが、どうもくーちゃんに近い気配がします。
あと、そこでむーむーとふくれる高町ちゃんは、どうやら反省が少し足りないようです。アルフさんとロスタイム、延長戦をしてきてもいいと私は思います。

「それにしてもなんだい、二人ともいつの間に仲良くなったんだい」

アルフさんが何やら思慮すべきところがあるのか、目を細めながらこちらを見て言いました。
その言葉にフェイトちゃんは俯くのです。これはアレですか…私が説明しなきゃいけないのですか?でも、一応は『秘密』だから…そうだ!話をうやむやにしょう!それがいい!!

「あ、あのぉ…ところでフェイトちゃんやアルフさん、二人はどうしてジュエルシードを集めるんですか?」
「ん?ああ、自分たちの住む街の近所に危険なものがあったら誰だって何かしら行動するだろ?」

答えたのはアルフさん、それも至極当たり前の答えでした。まあ、ジュエルシードがどれほど危険なものかは、木のお化けと、あと、杖のひとが言ってことくらいで判断しずらいですけど。
うん、私だって家の近所に蜂の巣が出来たら、リスティさんにお願いしてどこかに飛ばしてもらうなり、業者さんに頼んで駆除してもらうなり、何かしらの行動をしますね。

「ほぇ?じ、じゃあ…高町ちゃんは?」

私の言葉に高町ちゃんはカタカタと震えだしました。

「れ、レイジングハートが……」
「えっと…つまり、その杖の本来の持ち主さんが、ジュエルシードのほんとうの持ち主で、事故で海鳴に撒かれたのを集める手助けをしていると?」
「うっ!そ、そうなるわけなの…」

私の言葉に、高町ちゃんは首が外れんばかりにガタガタと振るのです。
う~ん、高町ちゃんは案外思い込みが強い娘なのかな?今年はじめて同じクラスになったからよくわからないけど…こんど、すずかちゃんに聞いてみよう。

「ま、まあ…いま、ここで仲直りすればいいと思うよ。ほら、誰だって間違いの一つや二つはするものだから、ね」
「そうなのっ!ここでフェイトちゃんやアルフさんとお友達になれば、ぜんぜん問題ないのっ!」
「いいわけないだろ!」
「あ、アルフおちついて!!」
「にゃー!だってはじめてあったときはフェイトちゃんは、ぜんぜん、なのはのお話し聞いてくれないんだよ?」

女の子が三人よると姦しいといいますけど、私たちもそんな感じで公園を後にしました。

あれ?誰かを忘れているような……気のせいですね。








[あとがき]

あれだよ、ちょっとした相対性理論の応用だよ。好きな子といっしょにいる時間は短くて、嫌いな上司といっしょにいる時間は長く感じるのと同じだよ、たぶん。
おじさんと出会ったのは、今からだいたい4年くらい前…家族にキミと同じくらいの歳の子がどーたらこーたら。

フェイトちゃんTS化は、書いてみたけどシリアスすぎたので却下。このフリーダムでネタとカオスにまみれた作品には似合わなかった。
需要があったら別作品で。それにしてもフェイトちゃん主人公すぎるだろ…。

うちの子の能力は日常生活に微妙に役立つサポート的なものがあと1,2つ。詳しくはそのうち。
今回出したのは接触した相手と五感の共有。XXX板に向けてネタが作りやすいから。ちなみに白鷹夫妻の夜の営みは非常に激しいのです。

ある学説によると、人類がここまで発展した理由の一つに生殖行為に快楽を感じるからだという話があり、HGSが我々ホモサピエンスとは違う別種の人類だと考えるとこの能力は自身の遺伝子、つまり子孫を残すにあたって非常に便利です。

HGSのフィンの形状は遺伝もあるけど、とらハ3のフィアッセさんみたいに本人の深層心理を反映したものだと考えているので、そのうち変化するかも?

時空管理局なんてブラック企業はなかったんや!!!いるかわからない黒い光するアヤツ(notクロくん)のファンや、砂糖大好きな未亡人好き、姉さん女房好きの方々には申し訳…。

これらはオリ設定なので、気に食わなくても、いのちだけは、お助けください(ry

投稿8・26



[21157] 5話  おまけ追加
Name: 電卓◆46bcffbe ID:223e99a2
Date: 2010/08/28 20:04
それは家というにはあまりにも大きすぎた。広く、でかく、黒く、そして圧倒的すぎた。それはまさしく塔だった。


「巴ちゃん…こいつを見るなの、どう思う?」
「すごく…大きい、です……って高町ちゃん!?私に何言わせるの!!」

こんなことを恥じらいもなく言える高町ちゃんは、本当に女の子なのでしょうか…私は一抹の疑問を感じざるをえません。
えっ、何で知っているかって?それは、その…春休みに、さざなみ寮に遊びに行ったときに、現役の漫画家である真雪さんのお部屋におじゃましました。それで何気なく本棚から本を…ああ、棚に、棚に!う、うわぁ~ん!!

「ひっぐ、ひっぐ…たかまちおねーちゃん…ともえと…ともえと、いっしょにいて?」
「にやー!巴ちゃんがおかしくなっちゃったの!でも、まあいいかな?」
【何が起きたのかは、解りませんが、いまのうちにマスターの色に染めあげてしまいましょう♪】
「そ、染めるって…こくり…」


とかなんとか、しばらくの間、幼児退行化しておりますのでお待ちください。

―――――
――――
―――

あ、いま、私たちの前にそびえ立つもの、それは100m以上は優にあるビル。
聞いた話では、フェイトちゃんとアルフさんが住むマンションらしいです。

「ね、ねぇ…ほんとうに、住所、ここであってるの?」
「う、うん…レイジングハートにナビしてもらったんだけど…」

と言って、高町ちゃんは英語で書かれたメモと地図を見ます。高町ちゃんはどうやら英語ができるようです。
それにしても小学3年生でこれはすごいです。あと、菓子折りを片手に持つ高町ちゃんの姿はまさしく友達の家に遊びに行く女の子そのものでした。

私もお母さんも話す分には問題ありません。え?英語で話せるわけではありませんよ。テレパスですよ、テレパス。
私たち親子の能力の一つは、言語や種族の壁を越えて意志の疎通ができる力なのです。まあ、思考形態が人間のそれとあまりにもかけ離れすぎた生き物とは会話できませんけど…。

ちなみに、ゆうひさん、以前さざなみ寮に暮らしていたかたは、魂言語(ソウルラングエッジ)で会話できるそうです。
なんでもイギリスの音楽学校に留学したとき、周囲のひとたちの英語の会話に気合で日本語で受け答えしていた、とのこと。便利ですね、気合って。

とまあ、飛躍した意識を戻すと私はこくりと唾を飲み込み、くるりと周りを見渡しました。

ビル、ビル、ビル。ここは遠見市、オフィス街。私たち、一般的な?小学3年生がいるには余りのも場違いなところでした。

ほんとに、ほんとに、どうしてこんなところにいるのでしょう?

話は昨日にさかのぼるのです。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆


週末、それは最後のフロンティア。
これは私、白鷹巴(しらたかともえ)が、某基督教徒ではないけれど、神さまの造りたもうた安息日を満喫し、
惰眠の限りを模索して、美味しいお菓子と紅茶を求め、人類希求の安息日を享楽的に過ごすことである。



「天気は、快晴っ!体調も良好!お昼ごはんに食後のお薬、お菓子の詰ったバスケットもOK!というわけで、お父さん、お母さん、巴は八坂神社に遊びに行ってきます!!」
「ちょっとでも気分が悪くなったら、ガマンせずに病院に電話して、周りのひとに助けを求めるんだぞ?」
「うんうん。わかってます!那美さんがいるから、だいじょうぶだと思います。というわけで、では!」
「ほらほら巴ちゃん、帽子忘れているわよ~帽子~!」
「はぁ~い」

そう言うわけで私は日ごろ、高町ちゃんたちのせいでスリ減ったSAN値を回復しに、くーちゃんのもとへと遊びに行くのでした。

「那美さん、こんにちは♪」
「あ、ともe…あわわ…はぅう…巴ちゃん、こんにちは…うう~」

八坂神社の境内。那美さんは白い巫女装束に身を包み、竹箒でごみを掃いていました。ちなみに、那美さんは高校生として鹿児島からこちらに来て以来、ここで巫女さんのアルバイトをしているのです。
そこに私が声をかけると那美さんは振り返って挨拶しようとしました。ですが、箒に躓き転びました。
おでこをぶっけて、けっこう痛そうです。しかし、これは様式美というやつなのです。これを見るとほんと、日常なんだと思います。え?展開が可笑しいって?昨日(4話)は金曜日だよ?

「那美さん、大丈夫ですか?」

私は、那美さんの下へと近づき、しゃがむとポシェットから絆創膏を取り出しました。

「はい、これ、どうぞ」
「うう~ありがとう巴ちゃん…くすん」

う~ん、ほんとうに那美さんは私よりも年上なのでしょうか…いつものこととは言え、なんだか心配になってきました。

「巴ちゃんは、久遠と遊びに来たんだよね?」
「もちろんです♪」
「久遠。くおーん。巴ちゃんがきたよーっ!」

私たちは社の縁側に座りました。そして那美さんは何度か久遠と名前を呼びます。
すると茂みのほうから、ガサガサと物音、チリンチリンと鈴の音が近づいてきました――。

「くぅーん、ともえ♪ともえ♪」
「くーちゃん♪くーちゃん♪」

出てきたのは、那美さんの家族の可愛らしい子狐、くーちゃんこと久遠ちゃんです。そして、くーちゃんは、私の胸元へと飛び込むのです。ぽふんと柔らかい感触がしました。
はあ、癒されます。もふもふです。幸せです。さいわい、ここは神社、神聖な場所です。つまりこのまま、俗世の不浄なことなど全て忘れてしまいましょう。

「久遠は巴ちゃんのこと、ほんと好きだね」
「なみも、すき♪」
「「えへ~」」

くーちゃんはどうやらかなりの誑しみたいです。でも許せます。だって、すっごく可愛いんだよ?
昔、誰かが言っていました。

可愛いは正義、だと。

「くーちゃん♪くーちゃん♪」
「くぅーくぅー♪」

「那美さん、那美さぁーん!」
「ふぇ?はぅわ~!」

ドンガラガッシャーン!!

と、こんな感じで、社のなかでころころ転がったり、那美さんのお手伝いをしたりと、いろいろなことをしていました。
あっと言うに間にお昼が近づいてきます。

「那美さんも、お昼ごはん、ごいっしょしませんか?もちろん、くーちゃんも♪」
「あ、いいんですか?」
「くぅーん♪」

くーちゃんは可愛らしく、ひと鳴きすると、ぴょーんっと私の胸元から飛び降ります。空中でくるりと小さな体が一回転し、光に包まれました。
光が収まり出てきたのは、私と同じくらいの歳の女の子。そうです、くーちゃんは永い時を生きた妖狐なのです。なぁに、私たち白鷹親子や、魔法なんてものがあるんだし、妖怪がいても何も問題はありませんよ。
そして、私たちのもとへ、とてとてと歩いてきました。うんうん、ひとの姿で歩くのもラブリーです。カメラを持ってくるべきでした。

「ごはん…」
「ほらほら、くーちゃん。ちゃんと食べる前に手を洗わないとダメだよ」
「うん、わかった」
「えっと…これ、本来の使い方とちがうと思うのですが…」

とまあ、皆で境内にある手水舎で手をバシャバシャと洗いました。え、使い方がちがう?手水は手を清める水のことだよ?
何も問題はないよ。うん、大丈夫。たぶんだけど…。

「那美さんのお弁当はこーすけさんが作ったんですよね?」
「は、恥ずかしながら…あう~」

私のお弁当のなかみは、パニーニが2きれ、もちろん表面はこんがりカリカリに焼いてあります。そして、イチゴやオレンジといった果物がいくつか。
那美さんとくーちゃんのお弁当は純和風で色鮮やかで、とても美味しそうです。

「えっへへ~実は、くーちゃんのために作ったのもあるんだ~」

ごそごそと私が取り出したのは稲荷ずし。朝、早起きして作ってきた、自慢の一品です。
ところで妖狐なくーちゃんなら、玉ねぎとか食べれるような気もしますがどうなんでしょう?

「久遠。巴ちゃんに、ありがとうって言わないと駄目だよ?」
「うん。ありがとう、ともえ」
「はい、どうぞ♪」
「あむあむ、はぐはぐ」

―――――
――――
―――

やがて、那美さんのアルバイトも終わり、時刻は夕方、太陽の沈む時間になりました。つまり、くーちゃんとのお別れの時間がきました。
楽しい時というものは時間があっという間に過ぎてしまうようです。これが『お願い!!愛に時間を!』というものでしょうか?

「那美さん、くーちゃん、また明日~」
「はい、巴ちゃんもまた明日」
「くぅーん、ともえ、あした」

私は長い石畳を那美さんたちと降り、名残を惜しみつつも二人と別れるのでした。
そして家に向かってしばらく歩くと、あの感触―まるで甲高い鈴の音を鳴らしたような―結界が展開したときに生じる気配がしました。
結界の向こうにフェイトちゃんたちか、高町ちゃんたちか、或いはその両方がいる。そう考えた私の足は自然とそちらに向かうのです。

しかし、私が結界が張られた場所にたどり着く前に、すでに終わっていたようです。
私服姿の高町ちゃん、フェイトちゃんたちが仲良く?お話ししていました。

「高町ちゃん、フェイトちゃんたちも、こんにちは…こんばんは、かな?」
「あ、うん。トモエもこんばんは」
「こんばんは、巴ちゃん」

私は、高町ちゃんが手に何かを持っているのを見つけました。

「それ?高町ちゃん、何もってるの?」
「これ、フェイトちゃんからもらったんだよ」

「その、よかったら…トモエも……明日、わたしの家に来てくれる、かな?きっと、母さんたちも喜ぶと思うんだ…」

と、フェイトちゃんは顔を赤らめ恥ずかしそうに言うのでした。

こっ、これはあれですか、先日まで高町ちゃんとフェイトちゃんたちはケンカ?をしていて、それでフェイトちゃんの親御さんが怒っていらっしゃるといいますか、なんといいますか……。
それでとなりの高町ちゃんを見ると顔を背けて、こう、ビクビクと震えるような……わ、私、ぜんぜん、何も関係していないよぅ……。


[おまけ]


フェイトちゃんから手紙をもらったその夜。なのははおかーさんとテレビを見ながら、ゆったりと食後のひと時を楽しんでしました。
え、家族が足りない?それはね、おにーちゃんにおねーちゃん、おとーさんたちはいつもの"修行”です。
ほんと、のーきんさんです。どうしておかーさんは、あんなひと(おとーさん)と結婚なんてしたのでしょうか…とっても、とっても不思議です。だけど、そのおかげで、なのはは生まれたので少しは感謝です。
ちなみに、いぜん聞いたら、おかーさんとおとーさんから、のろけ話を何時間も延々と話されました……ほんとに、あれは懲りました。
やれ、士郎さんはどーだとか、桃子はとか…そ、それで、ふ、夫婦の夜の営みうにゃーーっ!を、子供に逐一聞かせるのもどうかと思います!ぜったい、ぜったい、なのはの情操教育に悪いです!!

考えるだけで、気が滅入りました。何か、気分の良くなる話でもレイジングハートとお話ししようとしたら――。

トゥルルルと、電話が鳴るのでした。

おかーさんは手が離せないみたいなので、なのはが電話を取ります。

「はい、こちらは高町ですけど、どちらさまですか?」
《あ、高町ちゃん?私だよ、白鷹巴(しらたかともえ)だよ》
「巴ちゃん?どうしたのこんな時間に」
《うん、その…明日のことを聞こうかと思って…》

電話越しに巴ちゃんが小さく呟きます。
あ、巴ちゃんってのは、今年からなのはと同じクラスなった、男の子のような、女の子のような…う~ん、たしか男の子だったはずです。
それでね、巴ちゃんは肌が雪みたいにすっごく白くて、黒い髪で、すずかちゃんとはまた違うタイプの、深淵の令嬢という言葉がよく似合う娘です…あれ?娘…まあいいや。

『明日のこと』…つまり、それは私たちがフェイトちゃんのお家にお呼ばれしたことに他なりません。
フェイトちゃんは、なのはたちとジュエルシードをめぐって対立していたけど、何だかよくわからないうちに集める理由を知りました。
戦うのは誤解で…だけど、『ごめんなさい』が言えなくて…だから、明日、なのははフェイトちゃんと仲直りしたいと思います。

《もしもし、高町ちゃん?》
「あ?うん聞いてるよ――」

それでフェイトちゃんとお友達になれたら……あのひととも…。








[あとがき]

くーちゃんかわいいよ、くーちゃん。ちみっ娘モードだと袴を穿いているのに、なんで大人モードのくーちゃんは生足なの?しかも、下は何も穿いていないように見える…これは誘っているのか?よろしいならばXXX板だ!

件の物品は真雪さんによると、『資料』らしいです。

現在ネットブックのため、とらハ3がプレイできる環境ではないので、那美さんやくーちゃんの言葉遣いがおかしくても、命だけは(ry

1話が短い?だが、私は(ry

信じられるか…これ、なのはなんだぜ?レイハさんの毒電波がないとこんな綺麗に…これならフィアッセさんとの和解もいけるな…ちなみに、本人はすでに巴とは友達だと思っています。

なんでもフィアッセさんがアニメ本編にいないのは、士郎パパンが入院する原因を作ったとかで、なのはがすごく嫌っているそうで…。

おまけは現在書いている6話には、あわなかったのでこちらに移動。

投稿8・26

修正8・27

修正8・28


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