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麻生区で乗り合いタクシー試行終盤、本格運行へ正念場/川崎

2010年8月23日

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次々と「山ゆり号」に乗り込む地元住民ら=川崎市麻生区

次々と「山ゆり号」に乗り込む地元住民ら=川崎市麻生区

 幅4メートルほどの細く急な坂道が続く川崎市麻生区の高石地区周辺。急速に高齢化が進みながら、路線バスが通れないこの一帯では、新たな交通手段の確保に向けて、地元住民らが乗り合いタクシー「山ゆり号」(8人乗り)の試行運行を展開中だ。ただ、本格運行への移行は「採算性」が鍵を握るとあって気になるのが利用者の数。試行は残すところ1週間余り―。


◆「希望の星」

 「あら、こんにちは」「元気?」―。猛暑が続く8月中旬。年配の住民が冷房の効いたワンボックスカーに次々と乗り込み、会話を弾ませていた。利用者の女性は「こうやって会話を交わして、ちょっとしたコミュニティーになっている」と笑う。

 「この便利さを知ったら、もう歩けない」と話すのは別の年配女性。中には、足腰は丈夫ながら乗り合いタクシーを将来のために根付かせるため、“先行投資”と考えて積極的に利用する住民も。「今後もっと高齢化が進むんだから絶対に必要。この地区の『希望の星』なのよ」と続けた。


◆地域の支え

 試行は6月から3カ月間。同地区や多摩区など周辺住民で構成する「麻生区コミュニティーバス協議会」(碓井勝次会長)が実施している。数年前の試行では、運賃収入が経費の半分程度と低迷したため、今回は車両数やルートなど採算性を見据えて修正。「高石団地前」から小田急線「百合ケ丘駅」間の約3キロで、計20カ所に停留所を設置し、同区のタクシー会社「コスモ交通」が1日12往復運行している。

 運賃は300円(子ども100円)で、70歳以上や障害者は200円。登録すると運賃が値引きされる「サポーター割引制度」も導入し、本格運行になった場合には収支の安定に向けて登録料(年6千円)を支払う仕組みになっている。

 同協議会では現在、区間や年代など利用者の動向を毎日調査している。利用者は徐々に増え、現在は1日約100人(1便平均約4人)が利用。サポーター登録も200人を超え、広告収入などを入れると、採算ラインの月額60万円強の収入が見えてきた。


◆鍵は採算性

 「ただ、8月は利用者が多い傾向がある。本格運行した際、どれだけ利用してくれるか。もっと地域で盛り上げないと」と同協議会副会長の岡野幸雄さん(80)。運行するのは民間会社。採算が合わなければ、撤退もあり得ることを危惧(きぐ)する。

 また、試行結果の分析や本格運行への手続きを考慮すると、半年程度の「空白」が生じる。「せっかく利用者が根付き、地元住民の生活の一部になってきただけに」と岡野さん。熱が冷めることも心配の種だ。

 住民が奮闘している地区は他にもある。多少の赤字は、行政が補助をしたらと思うのだが…。市交通政策室は「市の財政状況によって補助打ち切りというケースもあり得るので、望ましいのは自立した安定的な運営。本格運行に向けて、収支が安定するためのアイデアを住民と一緒に考えていきたい」と話している。

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