チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[21386] 【習作】親馬鹿花妖怪(東方)
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/29 17:43
はじめまして、にんぽっぽと申します。

習作なので未熟な点もありますがお許しください。
ミス、誤字、おかしな文体等のご指摘ありますと助かります。

注意
・東方projectの二次創作です。

・一人だけオリジナル(女)がいます。これ以上はだしません。

・設定など確認していますが、間違っていたら許してください。

・東方キャラ全員可愛すぎて生きているのが辛いです。

・ドタバタ系目指したいです安西先生・・・・・・

・感想がもらえて本当に嬉しいです。感謝の極みです。

・地の文と会話文のバランスに注意したいです。



[21386] 1話目 牧場物語
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/23 03:09


「今年も見事に咲いたわね。本当に素敵」

一面に広がる黄色の大地。
空には燦々と照りつける黄色い光。青空と入道雲。
今年も見事に咲き誇る花を見渡し、私は満足げに目を細める。
能力を使えば咲かせるぐらいわけは無いが、やはり必要以上に手を掛けるのは美しくない。
自然が一番など安っぽい台詞ではあるが、私はそう思うのだ。
豊かな土、太陽の光、それに水。これさえあれば十分だ。


それは分かっていても手をかけまくりたい、寝食忘れて世話をしたい花が私にはあるのだ。
目に入れても痛くない、むしろ入れたい。

「ねぇそう思わない?あなたが丁寧にお世話をしてくれたお陰よ」

「はい母様。本当に綺麗です・・・」

「今日はここでお昼ご飯にしましょう。お弁当を作ってきたわ」

いそいそと弁当をバスケットからとりだす。
今日はもう一段と気合を入れて作ってしまった。驚きの重箱仕様だ。
玉子焼き、ハンバーグ、タコさんウインナー、おいなりさん、うさぎ型のリンゴetc・・・
朝早く起きて調理した甲斐もあり、大満足の出来栄えだ。
シートに広がる作品を前に、驚きの顔を浮かべた後に笑みが漏れるのをみて
私は心の中でガッツポーズをとる。

何しろ今日は私たちにとって特別な日なのだから。

「おめでとう美咲。今日は幻想郷に来て初めての誕生日ね。」




そう今日は我がいとしの娘、風見美咲の誕生日なのだ。
なんという素晴らしい日なのだろうか。幻想郷の記念日として休日にしてもいいぐらいだ。
外界では偉い人の誕生日が休日という制度があるらしいじゃないか。
こっちにも早速導入するように隙間に申し入れてみよう。
『風見幽香の娘 美咲の誕生日』
是非カレンダーに載せたいものだ。
というより作ってしまおう。そう決めた。
作ると心の中で思ったなら、行動を起こすそれが決まりだったような?

話が脱線してしまったが美咲は正真正銘私の娘である。
細かいことは割愛するが、種族としては半人半妖となるだろうか。
容姿は私をそのまま小さくしたような愛らしさ。歳は花も恥らう6歳だ。
ああ可愛い。
カリスマ溢れる超クールな母親を目指す私は、超スパルタ教育を施してきたつもりだ。
一人でお花のお世話をさせたり、一人でお風呂にはいったり、一人でトイレにいったり
一人で着替えたりと、涙をぐっと堪えてムチを振るってきた。当然陰から見張っていたが。
その甲斐あって見事に箱入り娘となりました。本当にありがとうございます。

美咲は私に似て穏やかで優しい心をもっているので、
花畑で妖精たちといつの間にか仲良く遊ぶようになっていた。
挨拶をしようと笑顔で近づいたら、妖精たちは泣きそうな顔をして散り散りに去っていったこともあった。

「母様。その笑顔では泣く子も黙ると思います」


などと言われたりして凹んだりしたこともあったが、健やかに平和に過ごしてきたのだ。
・・・そう娘が可愛すぎて生きてるのが辛い状態だったのだが。


「・・・そろそろ私もこの幻想郷を見て回りたいです。色々な人たちとお話してみたい。
 飛ぶ練習も一杯してきました。お願いです母様」

「・・・・・・」
お昼を食べ終わりまったりしていた所、娘から真剣な顔で懇願される。
ああアルバムに残しておきたいシーンだわ。
『幽香心のアルバム』に今の光景を残しつつ、私は考える。

問題点はいくつかあるが、一つ目は私に子供がいることを誰にも教えていないのだ。
花畑の妖精たちは3日立てば細かい事を忘れてしまうようで、楽しく遊んだという記憶しかないらしい。
人間たちは人間友好度:最悪の妖怪のテリトリーになど近づかないし。
妖怪たちは私の警戒する空気を感じて近づいてこない。
それがいきなり颯爽と登場して『私の娘です。コンゴトモヨロシク』などといったら、
どこで攫って来たんだこの糞妖怪!などと濡れ衣を着せられかねない。
そんな展開になったら、思わず相手の顔を軽く何回も撫でてしまいそうになるだろう。
厄介そうなのは隙間、天狗、貧乏巫女、人里の教師といったところか。
弾幕ごっこではなくリアルバトルに突入してしまう可能性が非常に高い。

2つ目は何にでも首を突っ込んでる白黒魔法使いと出会う可能性が高いことだ。
万が一にも美咲が懐いてしまい、だぜだぜ言うようになったら恐ろしい。
非常に恐ろしい。
『ようおふくろ!今日も絶好調だったZE☆』
とマスタースパークをそこら中に撃ちまくり

『落ち込んだりもしたけれどワタシは元気だぜ!』
箒やらデッキブラシに乗って、黒猫と共に幻想郷を駆け回るのだ。





思わず卒倒しそうになる。オラの美咲ちゃんが不良になっちまっただ!と叫びそうになった。
とここまで考えること3秒。
正直デメリットばかりだが私は、娘の願いを聞き届ける以外に道はない。
なぜなら・・・


「いいわ。但し悪い魔法使いには近づいちゃダメよ。後弾幕ごっこの練習も少しだけやりましょう」

「ありがとう母様!いっぱい練習します!」

満面の笑みを浮かべて抱きついてくる美咲。
この笑顔が見れるなら他のことなど些細なことではないか。
私は心のアルバムにまた一枚納めつつ、今度は本当のアルバムを作ろうかと思案するのだった。




風見幽香
花を操る程度の能力






[21386] 2話目 突撃!隣の博麗神社
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/23 21:31



紅い―
私はその瑞々しい肉体に齧り付く。何度も何度も。
滴り落ちる液体が取り返しの付かないことを表していた。
大事に大事に育ててきた結果がこの有様だ。
なぜか私は空虚なモノを感じて空を見上げた。

ああ今夜は、こんなにも月が綺麗だ――




「今日も私のポエムは冴え渡るわね」
収穫したばかりのトマトを齧りながら、ペンをぐるぐる回す。
日常生活にアクセントをつけたクールな日記をつけることが私の密かな趣味なのだ。
ただ娘が収穫した赤く熟れたトマトをおいしく食べました。まる。
ではなんとも味気ないではないか。
絵日記verも試してみたが、なんというか抽象画?になってしまうので断念した。
娘と私を書いたつもりが、おぞましいよくわからないなにかを描き上げてしまったのだ。
そのノートからはチョッチ妖力を感じたので、念のため博麗神社の賽銭箱に投げ入れておいた。
困ったときの巫女頼みだ。普段だらけているのだからお払いぐらいするべきだろう。

「ふーそろそろ寝ましょう。明日はいろいろと大変でしょうから」

日課を終え軽く伸びをする。
娘の眠るベッドに入り、目を瞑る。
いよいよ明日ははじめてのおでかけだ。
もしかしたら一騒動あるかもしれないかと思うと
興奮してなかなか寝付けなかった。



「おはようございます。母様」

「・・・おはよう美咲」

・・・結局眠れなかった。
ふらーと立ち上がり身だしなみを整え、朝食の準備をする。
鏡を見たときは、あまりの目つきの悪さに自分でも驚いた。娘も驚いた。

朝食を食べながら注意することを再確認する。

「昨日も言ったけど、今日でかけるのは博麗神社よ。幻想郷の異変解決を担当する巫女がいるわ。
・・・万が一戦闘になったら貴方はすぐに逃げなさい。いいわね?」
あくびを堪えながらキリッとした顔を作る。
カリスマを維持するのも大変なのだ。

「巫女は怖い人なんですか?」

「口よりも先に手が出るタイプよ。異変解決に定評のある、幻想郷において最強の人間でしょうね」
貧乏で賽銭が少ないことにも定評のある博麗霊夢だけどね。

「私の収穫したお供え物もありますから、仲良くしたいです・・・」
しょぼんと下をむく。ああ、可愛すぎて困る。
今日は博麗神社なんかいかないで湖あたりへのピクニックに変更しようか。
なぜ貧乏巫女に娘が大事に育てた野菜をプレゼントしなければならないのだ。

あの子は野菜を育てる能力があるらしく、少し教えただけですぐ覚えてしまった。
その上味も抜群で、私も思わず唸ってしまう出来だ。
これなら至高との対決にも勝てるというのに。
瑞々しい夏野菜達が泣いているわ・・・
私が葛藤を繰り広げている間にテーブルの上は綺麗に片付けられていた。

「そろそろ出かけましょう母様。まだあまり早くは飛べないので頑張りますね」

「心配いらないわ。私が手を繋いでゆっくり飛ぶから大丈夫よ」
妖力は十分あるのだが、まだ上手くコントロールできていないのだ。
弾幕も不味いながらもそれなりに張ることができるようになった。
まぁ闘わせる気など全くないので、人間やら下級妖怪相手に自衛できる程度で構わない。
というか私が目を光らせている限り、そんな心配はないけどね。



・博麗神社

人里から離れた山奥に存在する、幻想郷と下界との境界に位置する要ともいえる存在だ。
私にとっては寂れた、貧乏くさいほったて小屋という認識なのだが。
娘と手を繋いで境内に降り立つ。

「ここが博麗神社よ。貧乏くさい建物でがっかりしたでしょう?」

「いえなんだか厳かな空気を感じます・・・緊張してきました」

「流石我が娘ね。貧乏くさいけど重要だから一応覚えておいてね」
しかし巫女は見当たらないか。どうせ惰眠を貪っているのだろう。
相変わらずのだらけ巫女だ。娘の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいところだ。

丁度良いので例のブツをもう一冊始末させてもらうことにしよう。
上達を目指して書いた絵日記2である。またチョッチ妖力を感じるので困っていたところだ。

「ではお賽銭がわりにコレをいれておきましょう」
笑顔とともにソレを賽銭箱にいれようとした時、


「ちょっと!そんな呪われたもの賽銭箱にいれんじゃないわよ!」
馬鹿でかい声と共に腋巫女Aが現れた!コマンド?

「この前の呪い絵もアンタの仕業だったのね。なに?私への挑戦状かしら。受けて立つわよ糞妖怪!」

「違うわよ。ちょっと妖力を感じたからお払いしてもらおうと思って」

「ふざけんな。ちょっとどころか忌しすぎて眩暈がしそうだったわ。更に具現化しようとしてて
調伏するのにどれだけ手間取ったと思ってんのよ!」
青筋を立てて怒る巫女。友好的に会話していたのになぜか険悪なムードに。
このままではいけないわね。

「そんないきり立っていてはお話もできないわ。お茶でも飲んで落ち着きましょう」
ささっと湯のみを差し出す。こんなこともあろうかとさっき用意しておいたのだ。

「アンタそれウチのお茶じゃないの!」

「細かいことは気にしないで。さぁグッといってグッと」

「ハァ・・・もういいわよ。なんか疲れてきたわ。それで何の用な訳?賽銭入れる気はないようね」
湯飲みを受け取りながら、縁側に腰掛けてため息を付く巫女。
幸せが一匹逃げていったわね。

やりとりを唖然とした顔で見ていた娘を呼び寄せる。

「ええ。実はこの娘に幻想郷案内をしていたのよ。まずはここからと思ってね」

怪訝な顔でこちらを見る巫女。

「・・・同じ服装みたいだけど、その子供は一体なに?分身?」

「さぁ美咲、ちゃんと挨拶をして。練習したとおりにね」
肩に手を置いて促す。頑張れ頑張れと心の中で旗を振る。

「・・・はじめまして風見美咲です。風見幽香の娘です。今後ともヨロシクお願いします」
ワンダフル!まさにパーペキ。グッド!
100点満点の大はなまるをつけてしまおう。赤ペン先生も納得するわね。


・・・
ヒューと一陣の風が境内に吹いた。巫女はなんともいえない表情のまま固まっている。
娘もなにか失敗してしまったかと不安気な表情を浮かべたまま固まっている。
私はというと、初めての挨拶のシーンを心のアルバムにしっかりと刻み付けるのだった。



博麗霊夢
空を飛ぶ程度の能力





[21386] 3話目 神社のぬし釣り
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/23 22:55
チリンと風鈴の音が聞こえ、部屋に入ってくる一陣の風に夏の風情を感じていると、
その後に一斉に響く、ジージーやらカナカナやらミーンミーンといった大合唱が私のイライラを増幅させる。
イライライライラ。

「なぁ。そんなにイライラしてどうしたんだ?珍しい客なんだからなんか話せよ」

ニヤニヤと笑いながら軽口を叩いてくる金髪娘。
生意気そうな頬を抓りたくなる衝動になんとか耐える。
別に我慢するひつようなどないのだが、あまり無様な姿をみせるわけにはいかない。
カリスママザーたるもの、常に威厳溢れる姿勢を保たねばならないわ。

「別にイライラなんてしていないわ。放っておいて頂戴」
机を人差し指でドンドンドンドンと連打しながら返事をする。
ああ、早く戻ってこないかしら。

「それで結局、お前はなんでここにいるんだ」
呆れたような表情で問いかける白黒。

「・・・・・・お茶でも飲んでなさい」

さっきからこの繰り返しである。大体10回くらいだろうか。
なぜこうなったかというと、話は30分くらい前に遡る。




完璧すぎる挨拶の後、とりあえずと居間に通された私たちは
美味しくない湿気た煎餅と、そこそこ飲めるお茶でもてなされたのだ。
巫女はよっこらせと座布団に座り、机に肘をついて湿気た煎餅をバリバリと齧りつく。

「・・・で、この子がアンタの娘っていうのは本当なわけ?」
強い疑いの目を向けてくる貧乏巫女。
とりあえず疑ってかかるタイプなのだ。この女は。


「さっき挨拶したでしょう?本当も何もそれ以外何があるっていうの」
胸を張って言い切る。豊かな胸を強調するように。
一瞬だけ殺意の篭った視線を感じたがすぐ元に戻る。
胸で女の価値は決まらないわよ博麗霊夢。これは持ちたるものだけが言える台詞ね。

「里から攫ってきたと言われたほうが現実味があるわ」

里から攫って、知らない子供を育てて何が楽しいのか教えてもらいたいところだ。
今私は自分のプリンセスをメークするのに全力を尽くしているというのに。
ところで育ての親と結ばれるというのは道徳的にどうなのだろう。
私としては超おk!ともそれは引くわという気持ちのフィフティーフィフティーだ。
心のライフラインを使ってお友達のメディスンにでも聞いてみるとしよう。

『ねえメディスン。育ての親と結ばれるENDはありかしら?30秒以内に答えるように」

『超おkだよ!』

『そうありがとう。助かったわ』

3秒で答えが返ってきた。ディモールト良い!
結論がでたところで現実に戻ってくる。

「そんなわけ無いでしょう。そんなことしたら里の守護者やらが黙っていないわよ」

「じゃあ父親は誰なのよ。そもそも妖怪なの?半人半妖?
 妖力を感じるから人間とは思わないけど」

「秘密よ」

「いつからいるのよ。流石にその歳まで隠れて育てていたとは考えにくいわ」

「フフ、教えてあげないわ。絶対に教えてあげない」
大事なことなので2回繰り返してみた。
満面の笑みで。

「つまりアンタの娘で、名前は風見美咲ってこと以外は秘密なワケ?」

「Exactly(その通りでございます)」

巫女はガバッと立ち上がると、笑いながら怒るという器用なことをしながら親指を外に向ける。
「ちょっと表にでなさい。やっぱりちゃんとお話しないとダメなようね。主に身体に」

「そんなに怒ってはシワが増えるわよ。さぁお茶でも飲んで落ち着いて」
ササっと湯飲みを差し出す。

「だから私のお茶だって言ってるでしょうが!!」

私は美咲に視線を向ける。仕方ないのでアレで釣るしかないでしょう。

「あ、あのこれ私が育てた野菜です。よ、よかったらどうぞ」
おずおずと小さな手で満杯の籠を差し出すMY娘。
籠いっぱいにはいった夏野菜。キュウリやらトマトやらナスやらピーマンだ。
そして夏の代名詞ともいえる萃香、いや西瓜もついでに渡す。
なんとも手刀で叩き割りたくなる素晴らしい形をしているではないか。
家に帰ったらさっそく冷やしておいた萃香を叩き割りましょう。

巫女も振り上げたこぶしを下ろして両手で籠を受け取り、西瓜を足で確保する。
まるで蹴球でもはじめそうなポーズである。
『レイム、蹴球好きか?』

「・・・最初からそういう態度ならこんな面倒なことにならないのに。
こういうものは早く渡しなさいよ全く」
思わずこぼれる笑みを全く隠せていない。

「美咲よく見ておきなさい。物で釣るというのはこういうことを言うのよ。
 魚釣りのことじゃないのよ。理解できたでしょう?
 そして釣られた人間の顔はコレよ。勉強になったわね」
百聞は一見に如かずと言うけれど本当ね。
 
「は、はい母様。頭ではなくこの目でしっかりと理解できました」
にっこりと可愛らしい笑顔を浮かべる我が娘。ベリグ!
親指を立ててよく出来ましたと褒める。
娘も親指を立てて応える。
褒めて育てるのが風見流よ。

「・・・アンタらやっぱり親子だわ」



そんなこんなでだらだらと雑談していたら
「母様。・・・ちょっとだけ博麗の巫女様とお話したいことがあるのですが」

「み、みみ巫女様って。幽香・・・アンタ素晴らしい教育をしているわね。
 それで何かしら。厄介ごとは勘弁願いたいわね。面倒だから」

「いえ、その・・・ちょっとあっちでお話してもいいですか?」

「仕方ないわね・・・まぁいいわ。野菜ももらっちゃったし、当分飢えなくてすむし。
 幽香、多分もうすぐ魔理沙が来ると思うからお茶だしといて」

立ち上がって奥の部屋に去っていく巫女様と娘様。
・・・あれれー?
ありのままに起こったことを話すと、そして誰もいなくなった。私以外。
というか巫女様って。突っ込むタイミングを忘れるほど唖然としてしまったわ。


――そして冒頭へ。


・夏野菜とは
野菜の中での特に夏期に収穫されるものをいい、
キュウリ、ナス、トマト、ピーマン、オクラ、
トウモロコシ、ニラ、カボチャ、ズッキーニなどが代表的である。
wiki先生より






[21386] 4話目 時報を聞いたらサヨウナラ
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/24 02:18


『それであの娘はどうだったかしら?母親に似ず素直で良い子だったでしょう』
『アンタまた覗いてたわけ。まぁ姿はそっくりだけど、性格は正反対ね』
『あの風見幽香が親馬鹿妖怪になるとはね。年月は妖怪をも変えるのかしら』
『ババ臭い台詞ね』
『それだけ長く生きてきたということよ。私も、あの子もね』






二人が居間に戻ってきた後、
娘を見て驚きの表情を浮かべる霧雨魔理沙。
それを無視して、私たちはささっと博麗神社を後にした。
しかし白黒に美咲の顔を見られてしまったのは失敗だったわ。
あいつは好奇心の塊だからいずれ必ずちょっかいを出しに来るだろうし。
更にうっとおしいのが、ゴシップ記事ばかり書いている天狗だ。
神社にいる頃から気配がしていたので、今頃トンデモ記事を嬉々として作成しているはずだ。
見出しは『花の妖怪に隠し子発覚!? 博麗神社での謎の密会を激写!!』
あたりか。見つけしだい全て焼却処分にしてやるわ。
ついでに不埒な悪行三昧を裁いてやりましょう。

「それで巫女と何を話していたのかしら。教えてくれるわよね?」

手を繋いで飛びながら、ニッコリと笑顔で娘の方を向く。
できるだけ優しくエレガントに聞き出さなければ。

もしくは取って返して、あの巫女に強引に吐かせるかだ。
流石に博麗霊夢相手は、しんどいので却下である。
弾幕ごっこというルールの中であれば、あの巫女は最強だと私は考えている。
肉弾戦に持ち込めば負ける気はしないが、美しくない。
美しい魔闘家風見としては、戦いの中にも優雅さを追求し、極めるべきだ。


「ごめんなさい母様。今は秘密です」

「・・・どうしても?」

「はい」

「私がお願いしても?」

「ごめんなさい」


こうなってはテコでも動かないでしょうね。
この娘はとても強情で頑固なのだ。誰に似たのかしら。
だがこのように意地を張る姿も、心のアルバムに残しておきたい一品である。

アルバムで思い出したが、実は使い捨てカメラとやらも裏ルートから手にいれてあるのだ。
1個では全然足りないと思ったので箱買いしてしまった。
店主にお願いしたら格安で売ってくれた。私の笑顔が見れたのだから安いものだろう。
一度こっそり撮ってみたのだが、勘が良いのかこちらを振り向いてしまう。
それではダメなのだ。やはり被写体は自然体でなければ・・・
仕方ないので記念撮影をして、写真立てに入れて部屋に飾ってある。
笑顔がぎこちないのが残念なところね。厳しく評価して90点といったところか。


そういえば逆に私を撮影してもらったら、とんでもないものが撮れたのよね。
全ての写真がぐにゃーっと歪んでいるのだ。誰だか判別出来ないくらいに。
あのカメラだけ不良品だったのかしら。流れ物だから仕方ないけれども。
なんとなく見てると気分が悪くなるので、人里のとある場所に置いてきた。
きっと拾った人にひとときのサプライズをプレゼントできるわね。

「そうわかったわ。いつか話してくれるのを楽しみにしているわね」

「はい。頑張ります!」

「じゃあ今日は家に帰りましょう。もうお昼の時間だし、メディスンが遊びにくるかもしれないわよ」

何を頑張るかを聞くのは野暮というもの。空気の読める女、風見幽香は動じないのだ。
しかし何を頑張るのかしらね。歌のレッスンやらダンス・・・?
歌って踊れる妖怪を目指すのも悪くはないわ。
夜雀やら幽霊楽団とともに幻想郷デビュー。そして仲間との別れ、ソロ活動への道。
華々しく活躍する娘をみつめ、私は嬉し涙を流すのだ。


「つきましたよ母様。私は冷やしておいた野菜をもってきますね」

それなりに板についてきた飛び方で小川の方に向かっていく。
劇場版「うたう!大幻想郷」を一時停止して、娘を視線で追う。
あの調子ならそのうち自由自在に空を飛びまわれるでしょうね。
それに比べ私は、飛び回ったりするのは億劫であるのは否めない。
そんなことだからどっかの本に、花の近くから動き回ることはないなどと書かれるのだ。


「はぁ・・・どこかのお子様閻魔にも言われたけれど、少し長く生き過ぎたのかしらね」
幸せが逃げていくようなため息をつき、家のドアを開ける。

「やぁ。遅かったじゃないか。待ちくたびれたぜ」

ガチャン

すぐにドアを閉めて、青く広がる空を見上げる。
もう一度盛大にため息をついてしまう。逃げた幸せはあの子が一杯掴めばいいわ。



霧雨魔理沙
魔法を使う程度の能力



[21386] 5話目 タワーリング・いんふぇるの
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/24 23:20
文々。新聞 号外
『花の妖怪に隠し子発覚!? 博麗神社での謎の密会を激写!!』
 突然ではあるが1面に掲載した写真を見ていただきたい。
幻想郷でも指折りの実力者と評される花畑の妖怪風見幽香氏と、
容姿をそのまま小さくしたような女の子の2ショットである。
このスクープ写真は、たまたま博麗神社付近を飛んでいた本紙記者が撮影に成功した。
本人に突撃取材を試みたところ、

「取材費は貴方の命で構わないわよね?勿論先払いよ」
と恐ろしい台詞が返ってきたため、這々の体で逃げ出してしまった。
真実を追究する新聞記者として全くお恥ずかしい限りである。

この件については、さる筋の情報によると、
『長く生きた妖怪は、口から卵を吐いて自分の分身を作る』
『擬態が得意な妖怪を手下にしたのだ。本体はアメーバ形状のはずだ』
『魔法の森の人形遣いに作らせた精巧な人形だろう。能力により操作しているのだ』
ということである。
もし貴方が真実を追い求めるのであれば、本人に尋ねてみるのも良いかもしれない。
但し、何があっても本紙では責任をとることは一切ないので悪しからず。
(射命丸 文)



――――――――――――――――




可愛らしい花柄のカップを手に取り、その馨しい香りを堪能する。
やはりコーヒーはブラックに限る。上質を知る女は一味違うというわけよ。
職人による焙煎、挽き、その淹れかた。全ての英知がこの一杯に詰まっているのだ。
ペーパードリップだけどね。
とにかく砂糖やミルクを入れるなど邪道よ邪道。

「母様、お砂糖とミルク使いますか?」
「あらありがとう。気が利くわね」
ああ娘の心遣いが身に沁みるわ。
心に沁みるこの甘さ・・・これぞ至高の一時ね。

「魔理沙さんはどうされますか?」
「私はブラックでいい。砂糖とかミルクは邪道だぜ?」

ふふん、分かってない小娘だ。
少しずつ調節していくのが玄人というものなのに。
それにしてもなぜ我が物顔で、人の家に居座っているのだこいつは。

「寛いでる所悪いのだけど、貴方何しにきたの。というより勝手に家に入るのは泥棒よ」
「細かいこと気にしてるとシワが増えるぜ」
「いいから要件を話しなさい。殴るわよ?」

減らず口ばかり叩く生意気娘め!
美咲の教育に悪いから近づけたくなかったものを・・・

「いやいや。お前に娘がいたと小耳に挟んで、ついつい遊びにきてしまったのさ。
 お前らがタラタラ飛んでる間に追い越してしまったので、失礼していたというわけだぜ」

なぁ、と笑顔を美咲の方に向ける。いつのまにか自己紹介まで済ませていたらしい。
巫女やら、人形使いやら、図書館女、河童など手広くちょっかいを出してる癖に
まだまだ足りないらしい。恐ろしい女だ。
 
この女、魔法使いとしては平凡だが、弾幕ごっこルールの中では
その速度を活かしつつ、大出力の魔法でかなりの勝率を納めている。
人間でも強力な妖怪に勝てるのがスペルカードルールとはいえ、小憎らしい。
更に憎たらしいのが私の魔法を平然とパクリやがったことだ。

「そう、じゃあ満足したわね。お帰りはあちらよ」
ドアの方に視線を向ける。さっさと帰ってもらいましょう。

「慌てるなよ。実はお前とゲームをしようと思ってさ」
ドンと机の上に大き目の袋を置く白黒。全く意味が分からない。

「なぜ貴方とゲームをしなければいけないのか、まるで理解できないわ。
 さっさと帰りなさい」
 
「フフン、負けるのが怖いのか?」
「そんな安い挑発には乗らないわよ。顔を洗って出直してきなさい」
そんな挑発に乗るのは知力30以下の猪武将だけよ。

「おい聞いたか美咲。お前の母ちゃん負けるのが嫌で、逃げ出すらしいぞ。情けないなぁ」
「そ、それでいったい何で勝負するのかしら。仕方ないから付き合ってあげるわ」


「弾幕ごっこ・・・と言いたい所だが、それは次の機会だ。
 今日の勝負はこれだぜ!」
 
ジャジャーンという効果音と共に袋から、妙な円盤が何枚かついた塔の模型が現れた。


「こ、これは・・・!?」
隣で見ていた娘が驚きの声を上げる。

「知っているの?美咲」

「はい母様。古代イタリア、ピサの斜塔にて行われた処刑方法をモチーフにしたといわれる・・・」

「そう知る人ぞ知る、ぐらぐらゲームだぜ。ちなみに対象年齢は6歳以上だ」
そう言いながらカラフルな人形を並べはじめる白黒。

「この色つきダイスを振って、出た色と同じ色の人形を同じ色の階層に交互に乗っけていく。
 24体の人形が先になくなったほうが勝ちだぜ。
 バランスを崩したらアウト。人形は落としたやつが引き取るんだ。簡単だろ?」
 
「・・・先攻は私で良いのかしら?貴方、遊んだことあるでしょうから当然良いわよね」

「ああ勿論だぜ。ちなみに負けた方はひとつだけ言うことを聞くってのはどうだ?」

「構わないわよ。勝負を終えた後の貴方の顔が楽しみね」

・・・掛かったなアホが!
この風見幽香に精神的動揺によるミスは決してないわ。
つまり単純に人形を置くなどという作業に、負けはありえない。
幻想郷の精密殺人機械と呼ばれた私からしたら超easyレベルね。
ちなみに命令は既に決まっているわ。おまけに悔しがるこの小娘の顔を見れるなんて一石二鳥。
既に見えた勝負の結果にほくそ笑んでいると、

「っと美咲こっちに来いよ。お姉さんと一緒に遊ぼうぜ」

「わ、私が一緒で良いんですか?」
「見てるだけなんてつまらないからな。さぁ来い我が妹よ」
美咲を膝の上に乗せて、私と相対する霧雨魔理沙。
は、話が全然違うわ。この構図には決定的な過ちがあるじゃない!

「ちょっ、ちょっと待ちなさい!私と一緒に遊びましょう。さぁこっちへいらっしゃい!」
両手を広げてアピール。血は水よりも濃いのだ。

「えっとその・・・」

「おいおい嫉妬か?いいから早くダイスを振れよ。さぁさぁ」
強引にダイスを私の手に握らせる白黒。・・・後で覚えておきなさいよ。



―――少女遊戯中―――



流石に22ターン目まで来ると、かなり微妙で絶妙なバランスになってきたわ・・・
いつ崩壊してもおかしくないように見える。
しかしながら私に敗北の二文字はありえないのだ。

「さぁ貴方の番よ。後2つ乗せたら私の勝ちが自動的に決まると言う訳ね
 言い訳の準備は宜しいかしら?」
ニッコリと微笑んで睨んでやる。もちろん魔理沙だけをガン見だ。
視線で人を殺せるならば、こいつは100回ぐらい閻魔の顔を見ていることだろう。

「おおこわいこわい。さぁ美咲ドンと良い目を出してくれよ」
娘の頭を撫で撫でしやがる。さっきからやたらとスキンシップをしている気がしてならない。
このタラシめ、女なら種族も年齢も気にしないというの!

「はい魔理沙さん。頑張ります!」

ここは我慢よ・・・安い挑発に乗ってはいけないわ。心頭滅却心頭滅却。

「ほいっと、さぁお前の番だ。そろそろ何かが起こりそうな予感がするぜ」
この白黒、崩壊しそうだというのにホイホイと人形を置きやがる。
しかしながら先攻はこの私だ。ミスしない限り私の勝ちは絶対に揺るがない。

「ふふ、動揺を誘おうとしても無駄よ。年季が違うのよ貴方とは」
ひよっこが心理戦を仕掛けるなど100年早いわ。


ダイスを振り、手先に神経を集中させ人形を塔に乗せる。
左手は添えるだけよ。
そーっと揺らさないように・・・そーっとよ
さぁ後は指を離すだけ・・・


「きゃっ!ま、魔理沙さんそこは駄目です!」
「ふふ、まぁ固いこと言うなよ。そらそら」

「あアアアアアアンタっ何してんのっ!!!!!!」
し、しまった!手に思わず力がっ!!


アッー





塔方花映塚
人生の勝利者 霧雨魔理沙&風見美咲
負け犬    風見幽香



[21386] 6話目 逆転のない裁判
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/25 23:44
・是非曲直庁?

トンネルを抜けると、そこは裁判所だった。

「・・・・・・それでは被告人、風見幽香に対する判決を申し渡します。
 って人の話をちゃんと聞いていますか?」

偉そうに人を見下ろす子閻魔。何を言っているかさっぱり意味不明だわ。
大体ここはどこなのよ。白黒と勝負した後の記憶があやふやで何が何だか。
とにかく私の家でないことは確かみたいね。
さっさと帰るとしましょう。晩御飯の準備をしなくてはいけないわ。


「なんだか良く分からないけれど、ご高説は結構よ。早速で悪いけど私は家に帰らせてもらうわね。
 お説教はまた100年後ぐらいにお伺いするわ」

「貴方は今までの話を全く聞いていなかったのですか? 
 死んだものが一体どこに帰るというのです。
 長く生き過ぎてさらにおかしくなったのですか」
元からすこしおかしかったから、仕方のないことかもしれませんと呟き、
呆れた視線で私を更に見下ろすお子様。

「一生そこで妄言を吐いていなさい。それでは、御機嫌よう」
ふうっと溜息をついて飛び立とうとするが、脚がまるで鉛のようになったかのように微動だにしない。
一体どういうことだ。自分の体の一部ではないような感覚だ。
何らかの攻撃でも受けているのか。

「貴方の行き先はもう決まっているのだから、自由に飛べるわけがないでしょう。
 既に白黒はついてしまっているのです。
 己が死んだことも忘れているようですし、もう一度体験させてあげます」
特別の特別ですよと、ニッコリと人差し指を立てる子閻魔。実に憎たらしい。
閻魔が手に取り出した鏡から光が溢れ、私の体を包んでいく。

ああ、光が見える。


――――――――――――――――――




「さてさて、敗者はひとつだけ、勝者の言うことをきかなくちゃいけないはずだったよな。
 恥ずかしい話でも暴露してもらおっかな~、それとも王道の焼き土下座かな~」
ニヤニヤ微笑みながら、勝利宣言を行う白黒。
グゥの音もでない。あんなみえみえの罠に嵌ってしまうとは。

悔しさと恥ずかしさで机に突っ伏したまま、顔を上げることができない。
手には赤の人形を握り締めたままだ。
たかが人間の小娘ごときに不覚を取るとは、一生の不覚ッ!
思わず心の中で二度繰り返してしまう。


「なーんてな。要求は単純、シンプルこのうえない話だ。
 この夏の間、美咲をウチで預からせてもらうぜ」

えーと、なになに? このなつのあいだ、みさきをうちであずかる。
預かる?

ガバッと起き上がる。何をほざいてやがるのだこの不良娘は。
冗談はその時代錯誤の魔女服だけにしなさい!
「そんな命令呑む訳がないでしょうッ! 良く考えて物を言いなさい!!」

思わず顔を真っ赤にして、家中に響くぐらいの大声を上げてしまう。
手が出なかっただけでも自分を褒めてあげたい。
娘の見ている前で暴力はいけないわ。くっ、鎮まれ私の右腕よ!

「おいおい、そういきり立つなよ。これは美咲のお願いでもあるんだぜ? なぁ美咲」
えっ・・・?と右腕を押さえつつ、視線を我が娘の方に向ける。

「は、はいお願いします、母様。しばらくの間だけ許してください」
いいい、いくらなんでもそのお願いには応えてあげることは出来ないわ。
ぜええええっったいにNOよ。私はNOと言える妖怪なのよ。


「ダメに決まってるでしょう! ・・・美咲、貴方少し疲れているのよ。
 さぁ今すぐベッドで一緒に休みましょうね。子守唄を歌ってあげるわ」
美咲の手を握り寝室の方へ向かおうとする。
一休みすれば気持ちもリフレッシュするに違いないわ。
もう二度と未確認飛行物体なんか見ることの無いように、私がいつまでも隣にいてあげる。

「違うんです母様。私が魔理沙さんに、弾幕ごっこの特訓をしてくれるようお願いしたんです」
今まで見たことがないくらい真剣な目で私の目を見つめてくる。
こ、心のアルバムにいれなくてはいけないが、そんなことをしている場合ではない。

「だ、弾幕ごっこなら私が教えてあげてるじゃない。何を言っているの」

「お前こそ何を教えてきたんだ。あんなもの『弾幕』じゃないじゃないか」

「そんなもの張る必要ないわ。私が教えたスペルだけ使えればそれでいいのよ。
 敵がきたら私が出て行ってコテンパンに叩きのめしてあげるわ」
腰に手を当てて言い切る。
流石に常に私が付きっ切りというわけにもいかないわけで。
万が一の場合に備えて、スペルカード 花妖「風見幽香」を使えるように教えたわ。
大きな弾を空高く打ち上げて、大きな一輪の花を咲かせる美しいスペル。
別名打ち上げ花火とも呼ぶらしいわね。
それを見た私がどこにいても、超高速で駆けつけるという寸法よ。

「・・・餡蜜にハチミツをたっぷりかけて、さらに砂糖をぶちまけたぐらいにゲロ甘だぜ。
 お前は物事を教えるのに全くもって向いていないな。
 このままじゃ無菌超箱入り娘一直線だぜ」
 
「それで基礎からちゃんと弾幕ごっこを勉強しようと思って、
 ルールを考案したと言われる博麗の巫女様に相談したんです。
 そうしたら私は面倒だから、代わりに向いているやつを紹介してやると言われて」
 
「私が呼ばれたというわけさ。ちなみに報酬はきのこ養殖の手伝いと、新鮮な野菜だぜ。
 それじゃさっそく行くとするか。善は急げってな」
娘の手を引いてドアから出て行こうとする魔理沙。

ままま、待って!私の言うことを聞いて頂戴!
今度からきちんと厳しく・・・

「・・・本当にごめんなさい。母様は優しすぎるから」


バタン





――――――――――――――――――


眼前に起きた光景が信じることができずにぼけーと立ち尽くす私。

「思い出しましたか? 貴方は親馬鹿すぎてついには死んでしまったのです。
 最期は愛する娘に愛想を尽かされて、捨てられてしまうなんて可哀想に」
光が鏡に納まっていく。さっきまでのは幻だったのかしら。
そんなことより! 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。人はそんなに簡単に死んだりしないでしょう?
 あんな幻影なんかみせて私を騙そうとしたって、そうはいかないわよ。
 早く私を元の場所に帰しなさい!」
 
「このまま生き続けてもろくな事にならない。あの時言った通りの結末になりましたね。
 独りよがりな愛情はもはや罪です。貴方は業が深すぎる。
 賽の河原で永遠に、色付き人形を斜塔に積む作業を繰り返すと良いでしょう」
 
ポチッとボタンを押す子閻魔。パカっと開く床。ヒューと落ちる私。
これはいわゆる落とし穴という装置ね。
今起きていることが夢であることを確信しつつ、私は更に深い闇の中に堕ちていくのだった。





親馬鹿花妖怪  第一部 完!


四季映姫・ヤマザナドゥ
白黒はっきりつける程度の能力





[21386] 7話目 TANPOPO
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/26 21:07
第一部 完! とかこの前言ったわよね。ごめんなさいあれはウソだったわ。
もうちょっとだけ続くのよ。
だからお願い。早くこの悪夢から、誰か覚まして頂戴。


・賽の河原?

ひとつ積んでは娘のため、ふたつ積んでは娘のため、みっつ積んでは・・・
目の前の河を虚ろな瞳で見つめて指を動かす。
また今日も意味もなく、人形を斜塔に乗せまくる作業が始まるわ。


「おーい、ブツブツ独り言呟いてないで
 さっさとその人形を塔に積むんだ。さぁさぁ」
 

 
酒臭い息を吐き散らしつつ、私に命令してくる子鬼。
というかなんで、こいつがここにいるのよ。
意味がわからないわ。同じ鬼とはいえおかしいでしょう。
貴方はお山の鬼さんじゃない。

「いやなに、面白い妖怪がここにいるって紫に聞いてさ。短期アルバイトってやつさ」
ハッハッハッと豪快に笑いながら私の肩をバンバン叩く、泥酔2本角。
ってそんなに揺らすと塔が倒れるじゃない!

「親馬鹿が酷すぎて地獄行きって。ププっ前代未聞だよ本当。
 聞いた瞬間、息もできないくらいに大笑いさせてもらっちゃったよ。
 天狗も馬鹿笑いしながら、新聞を狂ったように配っていたよ!」
そんなことを聞いても全然嬉しくない。
恥ずかしくて、もう外を歩けないじゃない。
 
「アンタの娘は元気に暮らしているから、心配しないでドンドコ積んでおくれよ。
 魔理沙や霊夢が妹みたいに可愛がっているからさ。わたしもこの前西瓜を食べさせてもらったよ」
萃香が西瓜を食べるって! 共食いかよ! と親父ギャグで腹を抱えている。
私は腸が煮えくりかえりそうだ。
 
 
「だからアンタはどんどん、どんどんその塔に積んどくれ。
 何の意味もなく、その色つき人形を、ゆっくりあせらず、それでいて正確に素早くね!
 ハハハ。やっぱり親が無くても子は育つってね! 人間も良いことを言うもんだよ」
瓢箪をラッパ呑みして、陽気にはしゃぐ馬鹿鬼。

「まぁ幽香もさ。子離れする良い機会だと思ってみなって。
 もう2度と会うことはないだろうけどさ!! ワハハハハ!」
ハハハこやつめ!と私をさらに思いっきり叩く。もうこれでもかというほど。
こ、この鬼!悪魔!

 
「ちょっ、ちょっと揺らさないで頂戴! また最後の一体で崩れ落ちるわッ!!」

『・・・香! 幽香起きて!』

「うるさいわね! 今集中しているんだから放っておいて!」

『いつまで寝ぼけているの。 いい加減目を覚ましなさい!!」
・・・え?



――――――――――――――――――

・・・え?

「・・・え?じゃないよ幽香。3日間も魘されながら寝てるなんて、頭おかしいよ。
 人形がとか、塔が崩れるだとか、鬼のような形相で呟いてて鳥肌が立ちそうだったわ」
あれが鳥肌が立つという感覚なのねと頷いている毒人形。
台詞にもさりげなく毒が混じっているわ。

ああ、ここは天国かしら。鈴蘭香る我が友人の声が聞こえるわ。
いっぱいいっぱい人形を積み上げたから、きっと天国に繋がったんだわ!
これから私は鈴蘭畑の真ん中で穏やかな眠りにつくのよ。
ごめんなさい、メランコッシュ。私、少し疲れたんだ。

再び瞼を閉じようとした瞬間、首根っこをつかまれて引き起こされる。

「起きたらまず顔を洗って歯を磨く。子供じゃないんだから」
ふらふらと立ち上がり洗面所に向かう。
私は自由? もう二度と積まなくていいのね? フリーダム万歳!

「あと置手紙があったよ。美咲からみたい。
 しばらく魔理沙の家に泊めてもらうから、後はよろしくって」

えーっと。
みさき、とめる、まりさ、だんまく、とっくん、じごく、ねんじろ!
幽香はまいそうされました。気合で這い上がってきました。

うがあああああああああああああ!!
お、思い出したあああああっ!!
こんなことしている場合じゃないわ。今すぐ救出にむかわなければ!!
早くしなければ、むむむ娘がタラシの毒牙にっ!

「・・・行き先は聞かなくてもわかるけれど、ごはんを食べてからね」

「え、ええ、そうね。貴方の言う通りだわ」
瘴気を発しながら、近づいてくるメディスンに思わずうなづいてしまった。
腹が減っては戦はできぬと言うものね。
あといつかあの閻魔泣かす。ついでに子鬼もよ。



伊吹 萃香
密と疎を操る程度の能力
密度を操る程度の能力

メディスン・メランコリー
毒を操る程度の能力
毒を使う程度の能力






[21386] 8話目 踊る毒人形
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/27 01:14

『到着っと。ここが霧雨魔理沙邸だぜ。遠慮せず入ってくれ』
『は、はい。でも母様大丈夫でしょうか。目を覚ましたら、びっくりするんじゃ・・・』
『なぁに大丈夫さ。ちゃんと世話役を手配してあるんだぜ。
 今頃は良い夢を見ているはずさ。これから3日間くらいな』




メディスンが用意してくれたご飯を食べ終えて、私は一息つく。
黄金の一時、コーヒーブレイクというやつよ。
背もたれに寄りかかり、コーヒーを飲みつつ、後片付けをしているメディスンを見詰める。
業火のように燃え滾る怒りを押さえつけ、冷静に物事を考えることにする。
すぐに娘のところに向かわなければならない。当たり前のことだ。
だがその前にひとつだけ、確認しなければならないことがある。


「ねぇメディ。貴方が起こしてくれた時、
 ものすごい勢いで私の顔を叩いていなかったかしら」

「そんなことするわけないじゃない。やだなぁ幽香。
 ちゃんと優しく声を掛けて起こしたよ。心配したんだからね」
ニッコリと微笑みかけてくる。天使みたいな笑顔ね。
いえ堕天使だったかしら。

「あらそう。勘違いかしらね、私の額に赤い痕があるのは。
 まさか貴方が叩いていた、なんてことはあるはずないわよね。ねぇメディ」

「寝転がったときについた跡だよ、きっと! うん間違いないよ」
そう言って、そそくさと食器を台所に持っていくメディスン。


私は音を立てないように後を追い、毒人形の背後にそっと立つ。
ついでに可愛らしい頭を、リボンの上から鷲掴みにしてあげる。
驚いた拍子に毒の瘴気が漏れてくるが、私には全く通用しない。

「ねぇメディスン。何ともないのに、3日間も寝続けるなんておかしいと思わないかしら。
 私はおかしいと思うわ。とても奇妙に思うの。
 あなたは変に感じない? 奇妙に思わない? ねぇ、聞いてる?」
ギリギリと少しずつ万力のように力をこめていく。

「い、痛いよ幽香! ほ、本当に私は何も知らないよ。本当だよ!」

「私は変じゃないかと聞いているのよ。質問に答えなさい」

「ゆ、幽香最近疲れてたから。全然不思議じゃないよ! だから手を離してっ
 これ以上やるなら美咲に言いつけるからね!」
ジタバタと暴れる毒人形。毒がものすごい勢いで噴出される。往生際の悪い。
掴んだ手の力を更に強めて、顔をこちらに向けさせる。


「私が優しく笑っている間に全て話しなさい。今なら普通のお仕置きで済ませてあげるわ。
 後5秒以内に吐かないと、貴方が花畑を滅茶苦茶にした時と同じお仕置きをする。
 一晩中、延々と実行するわ。貴方が泣いても叫んでも喚いても、絶対に許さない」
満面の笑みを毒人形に向ける。

「あ、アレは嫌だよ! お、お願い許してっ」

「5」

「ほんのちょっとだけ魔がさしただけ。ね?」

「4」

「カ、カウントするのをやめて! 全部話すからっ!」

「3」

「こ、これを使ったんだよ! ごめんなさいいっ」
ポケットに慌てて手を入れ、震えながら私に小瓶を差し出す。
黒い丸薬が3粒入っている。・・・何かの毒薬かしら?

「・・・誰に頼まれたの。霧雨魔理沙かしら?」

「う、うん。でも魔理沙はこっちの赤い方を数粒飲ませてくれって。
 良い夢が見れるから、気分がスッキリして疲れが吹っ飛ぶって」
そう言うと、反対のポケットから赤い丸薬が一杯詰まった小瓶を取り出す。

「それで、疲れて気絶してる幽香に飲ませてあげようとしたの。そしたら紫がいきなり出てきて。
 こっちの黒い薬の方が幽香は喜ぶって。だ、だから私は本当によかれと思って」
 
どうやら叩いたのはただの悪ふざけで、この薬を飲ませたのは、本当に私を心配してくれてのことらしい。
問題はこの薬の正体だ。魔理沙の『良い夢を見られる』という台詞から推測すると、
この赤い丸薬は『胡蝶夢丸』と呼ばれるものだろう。数粒で良い夢を見ながら眠りにつくことが出来る。

ではあの不愉快な隙間婆の渡した、この黒い丸薬はなんだろうか。
まぁ大体の予測はついている。だが念のために確認しておこう。
勿論実際に使って。

「良く話してくれたわね、メディ。本当に偉いわ。
 ・・・ところで貴方、この黒い薬をどれくらい飲ませてくれたのかしら。
 赤い方は瓶一杯に入っているのに、黒い方はもう3粒しかないのよ。
 数粒で効果は出るのでしょう? 不思議ねぇ」
話しかけながら、小瓶を開け黒い丸薬を手にとる。

「沢山飲ませたら、もっと効果が出ると思って。
 紫もそれは良い考えねって言ってたよ! だから、もうこれでもかというほど詰め込んだ!」
 
「そう。じゃあ貴方にも私と同じ幸せを味わってもらおうかしら」

黒い丸薬を強引に、毒人形の口に放り入れて飲み込ませる。

「うう、いきなり酷いよ幽香・・・ちゃんと謝ったのに」
涙目の毒人形メディスン。
ほんのちょっとだけ罪悪感に襲われるが、済んでしまったことは仕方ないわ。
未来志向で生きなければ駄目よ。

「もう許したわ。驚かせて本当にごめんなさいね。少し休憩しましょう。
 ほら、なんだか眠くなってきたんじゃないかしら? さぁベッドに行きましょうね」
メディスンの手をとり、寝室に連れて行く。
お仕置きとしては温いけれど、今回はこれくらいで許してあげましょう。
私の可愛い妹分みたいなものですからね。悪戯ばかりするけれど。


――――――――――――――――――


激しく魘されているメディスンにタオルケットを掛け、私は出撃の準備を整える。

クローゼットの奥の方に隠してある、細長い箱の鍵を開け得物を手に取る。
これは優雅な装飾のついた日傘ではなく、相手を撲殺することを目的に作成した特注の日傘だ。
遥か昔、数多くの人妖に血の花を咲かせてきた逸品である。
当然娘に見せたことなどない。知らなくて良いこともある。


準備を終え勢い良くドアを開けると、紫リボンのついた巨大な隙間が私を出迎えた。
あちらもどうやら私とじっくりお話がしたいらしい。

「フフッ。丁度私も貴方に用があったの。
 ゆっくりとお話したかったのよ? ゆっくりとね」
 
日傘をクルンと回転させ、隙間の中に飛び込む。
この落とし前は必ずつけさせてもらうわよ。





胡蝶夢丸
胡蝶になった自分を楽しむという意味で名付けられた赤い丸薬。
寝る前に数粒飲むと悪夢を見ることなく、楽しい夢を見ることができる。


胡蝶夢丸ナイトメアタイプ
スリリングな悪夢を見て魘されることが出来る黒い丸薬。

 







[21386] 柘榴の娘 見習い魔女誕生
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/28 01:00
文々。新聞 号外
『風見幽香氏、危篤状態!? 関係者に直撃取材を敢行!!』
 連日お伝えしている風見幽香氏に関連するニュースだが、急報が入った。
関係者の話によると霧雨魔理沙氏との一戦後、危篤状態に陥っているというのだ。

記者も事実を確認しようと、風見氏の自宅を訪ねたのだが
全く反応がなく、手がかりを掴むことはできなかった。
流石に自宅に侵入するのは躊躇われたので、
事情を良く知ると思われる人物を、急遽尋ねることにした。

風見氏と親しい毒人形のM氏によると
「・・・・・・幽香はね、ちょっとだけ眠っているの。
 良い夢を見てると思うからそっとしておいてあげて」
と悲しそうに語ってくれた。
風見氏の大親友だと自称する、妖怪の賢者Y氏は
「今頃せっせとお人形を積んでいるころじゃないかしら。フフフ」
と意味深な台詞を残し、去っていった。

風見氏の娘と目される人物の行方も現在の所分かっておらず、事態は混迷としている。
我々としては、一刻も早い風見氏の回復を祈るばかりである。
(射命丸 文)



――――――――――――――――

・霧雨魔理沙邸


「よし、まずは服を取り替えるとするか。何事も形から入らないとな。
 私のお古があるから、暫くそれを着ていてくれ」
 
ほれ、と私の方に黒い魔女服を放り投げる。
とんがり魔女帽もセットだ。凄い、はじめて見た。

「あ、ありがとうございます魔理沙さん。
 ちょっと着替えてきますね」
 
奥の部屋に行き、ササッと着替える。
いつもの母様とお揃いの服は、丁寧にたたんで手提げカバンにしまっておく。
鏡を覗くと、背丈は小さいが絵本で読んだ通りの魔女が映っていた。


「おおー似合ってるじゃないか。これで立派な見習い魔女の出来上がりだぜ。
 今度魔女同盟を結成して、お茶会をすることにしよう」
そう言うと、私の頭の上にポンと特徴的な帽子を乗せてくれた。

「うふふ、私似合ってますか? うふふふふふふふ!」
何故かは分からないが微笑が自然と浮かんでしまう。うふふ。
これが魔女娘効果なのだろうか。なんだかテンションが上がってきた。

「そ、その笑い方はあまり宜しくないんだぜ。頼むから、いつも通りにもどってくれ」
何故か引きつった顔を手で抑えて、机にもたれかかる魔理沙さん。
何か嫌なことでも思い出したのだろうか。
仕方ないので、テンションをダウンさせる。

「そんなことより。後で魔力を込めた箒かデッキブラシも作ってやるぜ。
 まだ飛ぶのに慣れてないみたいだし、補助輪代わりになるしな」

「ほ、箒は分かりますが、デッキブラシで空を飛ぶんですか?」

「由緒正しい見習い魔女は、デッキブラシでも空を飛ぶんだぜ。
 その場合、赤いリボンは必須アイテムだな」
そ、そうなんだ。流石は魔理沙さん、魔女の道に通じている。

「じゃあ早速、座学から始めようかといいたいところだが・・・・・
 ひとつ、聞きたいことがある」
さっきまでとは違い、真剣な表情で私を見つめてくる。
なんだか緊張して、思わず背筋を伸ばしてしまう。

「な、なんでしょうか?」

「なんだってそんなに弾幕ごっこの特訓をしたいんだ。
 あいつだって超親馬鹿とはいえ、少しずつ教えてくれるはずだ。
 わざわざ人間の霊夢に頼むことなんかないんじゃないか?」
あの巫女様が教師役なんて、天地がひっくり返っても無理だぜと手を大袈裟に振る。
 
「・・・・・・弾幕ごっこなら勝てるかもしれないから」

「ん?なんだって」

「力の弱いものでも対等に闘える弾幕ごっこなら、
 私でも、母様に勝てるかもしれないから!」
椅子から立ち上がり、力の限り叫ぶ。
そう。私は母様に勝って、認められたいのだ。

「成る程、母親を乗り越えたいか・・・・・・熱いねぇ。嫌いじゃないぜ。
 そういう話は、私は大好きだ」
腕を組んでうんうんと頷いている。

「母様は強くて、優しくて、綺麗で、料理も上手なんです。
 お花達のお世話も上手で、私に野菜の育て方も教えてくれたし、
 服も自分で作れるし、とにかく凄いんです。
 怒ったときはほんのちょっとだけ怖いけど、後で抱きしめてくれるし、
 でも里の人達からは、最恐の妖怪と呼ばれるほど凄いんです!!」
 
「そ、そうか。良くわかったから、冷たいお茶でも飲んで少し落ち着こう。な!」
魔理沙さんの差し出してくれた冷たいお茶を、グイっと一気飲みする。
空になったグラスを机にダン!と叩きつける。

「それに弾幕は華麗で優雅だし、頭にくると日傘を振り回してぶん殴りに行くところや、
 出会い頭に一発、マスタースパークをぶっ放すところなんか特に凄いです!」
天狗の記者さんを一撃で粉砕したのを目撃したときは、興奮して一日眠ることができなかった。
私もいつかあんな風になりたい!

「ふーむ。じゃあその凄い母様に教えてもらえばいいじゃないか。
 今の意気込みを伝えれば、手取り足取り訓練してくれるはずだぜ」
つんつんと私のおでこを突付いてくる。痛いです。

「そ、それでは追い抜くことはできません。
 近づくことは出来ても、母様に勝つことはできないんです。
 だ、だから・・・・・・」 
 
「ま、まさか熱血系娘だったとは。熱くて溶けそうだぜ。
 やっぱりちゃんと話してみないと、人は分からないもんだな」
やはりあの親にして、この子ありだなと呟く魔理沙さん。
 
「お願いです魔理沙さん、私に弾幕を教えてください!」
しっかりと90度に頭をさげた拍子に、とんがり帽子が転げ落ちる。

魔理沙さんは、帽子を拾うとパンパンと叩いて私の頭にヒョイっと乗せる。

「返事は前にしたはずだぜ。もう一度再確認しただけさ。
 まぁ私も紅白巫女様を這い蹲らせるために、まだまだ修行中の身だけどな。
 お互い目標達成のために頑張ろうぜ!」
手を差し出してくる白黒の魔女。
私もギュッと握り返す。
さぁ一日でも早く追いつけるように、これから一生懸命努力しよう。
そして、良く頑張ったわねと認めてもらうのだ。
私の大好きな母様に。


「じゃあ早速授業にするとしよう。そのうち自称都会派の魔女と、
 図書館の引き篭り魔女を紹介するからな。個性的で愉快な奴らばかりだぜ」

風見美咲、見習い魔女頑張ります!



柘榴
ザクロとはザクロ科ザクロ属の落葉小高木、また、その果実のこと。
花言葉は優美、円熟した優美、優雅な美しさ

柘榴の神話
釈迦が、子供を食う鬼神「可梨帝母」に柘榴の実を与え、人肉を食べないように約束させた。
以後、可梨帝母は 鬼子母神として子育ての神になった。
柘榴が人肉の味に似ているという俗説は、この伝説より生まれた。

wiki先生より




[21386] 9話目 本当は怖い、まだ蕾。
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/28 21:15


隙間を通り抜け、見知らぬ大地にゆっくりと降り立つ。
見渡す限り荒野で、生きている物の気配はしない。
辺りを注意深く見回し、警戒態勢をとる。
・・・・・・さっきから何故かは分からないが、嫌な予感がしてならないのだ。
なんというか、既に取り返しのつかない事態が進行しているような。
蟲の知らせというやつであろうか。
いずれにせよ、嫌がらせに精を出す『怪異ムラサキババァ』をさっさと成敗して、
娘のもとに向かうとしよう。
誘いに乗って、隙間に突入したのは訳がある。
無視して、魔理沙の元に向かおうとした所で必ず邪魔が入るはずだ。
ならばこちらから乗り込んで、さっさとケリを付けたほうが早い。


重量のある日傘を肩にトントンと当て、いよいよ歩き出そうとした瞬間。
背後から、胡散臭い口調で声を掛けられる。
一切の気配を漏らさず登場するあたり、相変わらずの化け物だ。


「ハァイ、ゆうかりん。この3日間良い夢が見れたかしら。
 ハラハラドキドキ出来たでしょう? 高かったのよアレ」


問答無用で振り向き様に鈍器を、相手の顔目掛けて、
思い切り薙ぐように叩きつけるが、潰した手応えがない。
紫の顔面付近に生じた隙間でガードされたようだ
強引に叩き潰してやろうと、ギリギリと日傘に妖力を籠める。

その隙に乗じて、背後に複数の隙間を展開するスキマ妖怪。
ぬめりと異質に開いた空間から、ウジャウジャと蠢く触手のようなものが現れる。
使役する妖怪の性格が現れているかのように、混沌として実に不愉快だ。

「いきなりご挨拶ね。そんなことでは良いお母さんになれないわよ。フフッ。
 それより酷いわ幽香、あんな可愛い子を隠しておくなんて。
 後でちゃんと紹介して頂戴ね?」
隙間に腰掛け、口元を扇子で隠して優雅に微笑んでくる。


それに答えることなく、私はバックステップで直ぐに距離を取る。
左手を地面に思い切り叩き付け、能力を発動させる。

「八つ裂きにして、綺麗に消化してあげるわ。さっさとおっ死ね」

大地を割り、轟音を上げながら召還される魔界の食虫植物。
蕾の先が歪に割れて、鋭利な牙が見え隠れする。
目のような物は虚ろに光り、ゆらゆらと不気味に揺れている。
こいつは雑食だから何でも食べる。妖怪だろうが人間だろうがお構いなしだ。
早速目の前にいる妖怪を、綺麗に片付けるように命令を下す。

「そんなものを呼び出したりしてはいけないわ、幽香。
 私の愛する、穏やかで平和な幻想郷には似合わないもの」
 
そう言い放ち指をパチンと鳴らす。
瞬間、展開していた隙間から一斉に触手が伸びてくる。
幾重にも張り巡らせ、食虫植物を絡め取ろうとする。
こちらも、唸り声を上げ、引きちぎりながら前進しようとするが、
その度に隙間から触手が伸びてくる。埒があかない。


「何を考えて、あんな薬を飲ませてくれたのかしら。
 おかげで、素晴らしいナイトメアを楽しむことができたわよ。
 お礼をしてあげないといけないでしょう? ・・・その身体にたっぷりとね」
さらに植物を召還する準備を整える。次はあの婆の左右と背後だ。
四方から喰いついて一気に終わらせてやる。
どうせ殺すことは出来ないだろうが、胃液まみれのぐちゃぐちゃにしてやる。

「フフッ。怖い目ね。あの娘が見たら何て言うのかしら。
 やっぱり柘榴の実がないとダメみたいね。幻想郷の鬼子母神さん」
優雅に扇子を煽ぐ紫。余裕綽々の表情を浮かべている。
・・・今すぐにその綺麗な顔をズタズタに引き裂いてやる!

「別に深い意味はないのよ。昔馴染みとの素敵なお喋りを楽しもうと思って。
 あの薬は、ちょっとしたイタズラみたいなものよ。ごめんなさいね?」
まるで悪びれる様子もなく謝罪してくる。
こいつは昔からそうだった。意味ありげな行動や台詞を吐いて、煙に巻こうとする。
相手にしないのが一番の対策なのだが、今回はそういう訳にもいかない。

「これが最後よ。私の邪魔をしないでくれるかしら。
 お願いじゃなくて命令よ」
 
「・・・・・・それでも角がとれて丸くなったかしら。
 かつての貴方なら人の話など、聞く耳など持たなかったもの。
 歳を経て落ち着いたのね。それは素晴らしいことよ」
 
「アンタはいつまで経っても人の話を聞かないわよね。
 長く生き過ぎて、耳が遠くなったのかしら。お婆ちゃん?」
ついつい毒気を抜かれてしまう。紫の言う通り、私は丸くなったのだろうか。
昔ならば確かに、戦闘中に私から話しかけたりすることはなかった。


「本当なら、ここで一献傾けて昔話に花を咲かせたいところなんだけれど。
 色々とお忙しいみたいだし、ひとつゲームをしましょう。
 もし貴方が勝ったら邪魔はしないと約束するわ」
・・・・・・げ、げげゲーム? ま、まるで意味が分からない。
全然理解できないわ。だって殺し合いの最中なのよ。

「な、なんでそこでゲームが出てくるのよ。二度と私はやらないわよあんなもの!
 それに今は殺り合ってる最中じゃないの!」
私には似合わないのよ、あんな安っぽい遊びは。
もっと高級で優雅なものじゃないと。
というかチャンスだわ。今呼び出せば確実にグチャグチャに・・・

「負けるのが怖いのゆうかりん? 私は悲しいわ。
 それじゃあ仕方ないわね。臆病者のことなんかどうなろうが知らないわ。
 ありのままに起きたことを、美咲ちゃんに伝えるとしましょう」
これでもかというほど面白可笑しくね!と嬉しそうに微笑むゴスロリババァ。

こ、この糞野郎ッ!
どうせあることないこと、娘に吹き込むに違いないのだ。
昔からそうだ。
私が人妖総合友好度最低ランキングNO.1(文々。新聞調べ)に輝いたのも、
半分以上はこいつのせいなのだ。後は天狗の捏造だ。
しかも2年連続って。

紫が何を言おうが娘は信じない。多分信じないと思う。
信じないんじゃないかな。ま、ちょっと覚悟はしておけ。
って、なんたら宣言を歌っている場合じゃないわ。
これは挑発に乗るんじゃない。敢えて乗って上げるのよ。
私は常に冷静よ。

「わ、分かったわよ。やってあげようじゃない。
 それで何で勝負するのかしら。変なのは嫌よ」
 
「実はね、相手をするのは私じゃないの。
 貴方とどうしても遊びたいって子がいるのよ。
 その子と仲良く遊んであげて頂戴。私は審判役を務めてあげるわ」
扇子をパタンと閉じてスッと合図する紫。

「・・・古代中国において、あまりの過酷さ故に
 時の皇帝が禁止したとも伝えられる、伝説の遊戯」

上空に巨大な隙間が現れ、一人の伝説の妖怪が颯爽と荒野に降り立つ。
荒野にというか、私の可愛い食虫植物の上にドスンと落ちてきた。
あれでは再起不能だ。なんということをするの。
角の生えた伝説の妖怪は腰に手を当て、不敵な笑みを私に向ける。


「その名も、超リアル鬼ごっこさ!」
 
なにそれ、こわい。

 


人妖総合友好度最低ランキング
人間、妖怪にアンケートをとり、
幻想郷で最も恐れられる人物を選出する。


八雲紫
境界を操る程度の能力


マダツボミ
こうおん たしつの とちを このむ。
ツルを のばして えものを とらえる ときの うごきは とても すばやい。




[21386] 10話目 渡る世間は鬼だらけ
Name: にんぽっぽ◆534cd6b0 ID:0a30a55a
Date: 2010/08/29 17:46

「やぁやぁ幽香。賽の河原以来だね。中々面白い物を見せてもらったよ」
食虫植物の成れの果てからヒョイと飛び降り、プププと笑う子鬼。


「あれはこのスキマが無理やり見せた夢のはずよ。なぜ貴方がそれを知っているのかしら」

「なぁにちょっとだけあんたの地獄とやらにお邪魔しただけさ。
 それに、どこまでが夢かなんてどうでもいいじゃないか。
 人生なんて胡蝶の夢みたいなもんさ。なんてね」
我ながら上手いことを言うなぁとガブガブと酒を呑む。

「それに今起きていることも夢かもしれない。
 本当のあんたはまだ寝ているのかも。それとも無間地獄に落ちたのか。
 はてさて、どうだろうね」
 
「馬鹿も休み休み言いなさい。鬼の寝言など聞きたくないわ。
 それより早く勝負の内容を教えなさい。
 夏らしく、西瓜割りなんかどうかしら。もちろん西瓜役は貴方よ」
 
「くふふ。まぁまぁそう慌てなさんな、鬼が笑うよ」

「鬼は貴方でしょうに。超リアル鬼ごっこですって?
 ここで仲良く追いかけっこでもするつもりかしら。馬鹿馬鹿しい」
本当に馬鹿馬鹿しい。そういうのは妖精達とやっていればいいのよ。
脳内お花畑でキャッキャッと飛び回っていなさい。

「んー簡単に言うとそうだね。ただし鬼はあんただよ。
 逃げる私をガッチリと捕まえればあんたの勝ち。触れただけじゃ駄目だ。
 そんで力尽きて、あんたが諦めれば私の勝ちさ。ただし反撃はするよ」
 
「・・・なんで貴方が鬼じゃないのかしら。全然リアルじゃないじゃないの」

「いやいや、これからあんた鬼になるよ。間違いない。
 私は嘘をつかないんだ」


そう言うと萃香は紫に視線を送る。
それに答えるようにパチンと指を鳴らし、鏡くらいの大きさの隙間を展開する。
しばらくの間、水面のように波打っていたが、段々と落ち着き始め映像を写し始める。

そこに映っていたのは。楽しそうに魔理沙達とお茶を飲んでいる美咲。

「そうあんたの愛する娘だよ。
 賭けるものはそれだ。人攫いは鬼の本分。それが妖怪だろうが関係ない。
 泣き叫び、悲嘆にくれるあんたを肴にして飲む酒は、さぞかし美味だろうねぇ」

「あの娘に手を出したら、本気で殺すわ」


「いいねぇ、ゾクゾクしてきたよ。あんたときたら私が喧嘩を申し込んでも、
 まるで相手にしてくれないからね。一芝居打ってみたってわけさ。
 鬼は嘘をつかない。お前が諦めたら必ず攫う」
 
「フフフ、素敵ねぇ。娘を助けるために鬼と鬼が勝負するなんて。
 萃香じゃないけど、私も年甲斐もなくドキドキしてきちゃったわ」
扇子で煽ぎながら、高みの見物を決め込む隙間妖怪を横目でジロリと睨む。
 
「攫ったらどうしようかね。じっくりと甚振りながら、喰ってやろうか。
 まだまだ幼くて、実に柔らかそうだ。さぞかし美味いだろうね・・・っと!」
 
言い切らせる前に距離を詰め、日傘を上段から振り下ろす。
鬼は左腕でそれを弾き返すと、右でカウンターの拳を入れてくる。
轟っと唸りをあげる鉄拳。まともに食らったら致命傷を負いかねない威力だろう。
私はすんでのところで回避し、渾身の力を込めた突きを放つ!


「・・・ッ!流石にやるねぇ」
腹部に直撃させ、吹っ飛ばすことに成功したが、
まるで堪えた様子が見えない。流石は鬼といったところか。


「最初はさ、本当に軽く追いかけっこでもするつもりだったんだよ。
 でも気が変わった。弾幕ごっこもあれはあれで面白いが」
そう言って一息付くと、両拳をバンっと叩き付ける鬼。

「単純な殴り合いも私は好きだね。実に分かりやすい!
 特にあんたみたいに、本気で殺しに来る相手が一番楽しいよ!!」
 
「そんなに単純だから、毎回人間にしてやられるのよ。
 大江山の出来事をもう忘れたのかしら?
 恥を知ったら、他の鬼みたいに地底に引き篭もっていなさい」
悟られないように会話を交わしつつ、少しだけ右後方に移動する。
そう少しだけ。

「私はあいつらみたいに、ウジウジしているのが大嫌いなんだ。
 さぁ、もうお喋りはお仕舞いだ。楽しい喧嘩を再開しようじゃないか!」
私目掛けて、ブンブンと拳を回し直線に突進してくる馬鹿鬼。
既に、最初に自分で言ったルールを忘れているらしい。


ふふふ・・・計算通りよ!

「掛かったわね。必ず直線上に突っ込んでくると思っていたわよ。
 馬鹿がつくほど分かりやすいからね。貴方たち鬼というのは」
日傘をドン!と地面に突き刺し、一斉に下僕を呼び出す。

現れたのは紫戦において、地中に展開しておいた食虫植物3体だ。
こんなこともあろうかと、密かに移動させておいたのだ。
後は私が位置を微調整すれば下準備は完璧。
幻想郷の今孔明を名乗れるかも知れないわね。



・・・・・・というわけで哀れな子鬼は、食虫植物の蔓によってグルグル巻きにされている。
3体による拘束なので、それはもうすごいことに。

「うぐっっ! なんだこれ千切れないぞ!
 たかが植物の蔓如き、真なる鬼の力をもってすればっ」

我が左手に封じられし鬼よ、今こそその力を示せ!
と意味不明な叫び声を上げるが、実に無駄無駄無駄無駄。
 
「無駄よ。力だけでは簡単には引き千切れないわよ。
 頭を使わないとね。頭を」
スタスタとグルグル状態の子鬼の方へ近づく。

「馬鹿を言いなさんな。私が本気をだせばこんなもの・・・こんなものッ!
 って、おかしいな。なんだか力が入らないぞ。
 それになんだい、このヘンテコリンな粉みたいなのは」
顔が濡れてしまって力がでないよ的な、情けない表情を浮かべる子鬼。
残念ながら、新しい顔は届かないのよ。残念ね。
 
「勿論、さっきから強力な痺れ粉を撒いているのよ。貴方は特別にいつもの3倍よ。
 心配しなくても大丈夫。命には関わらないわ。
 ・・・さぁ『鬼さん捕まえた』わよ。これでゲームはお仕舞いね」
 
「そ、そんな汚いぞ! こんな不完全燃焼じゃ全然納得行かないよ。
 まだ始まって10分も経っていないじゃないか!
 おい紫、もう一度仕切りなおすから助けておくれよって、いねぇええええええ!」

出口らしき隙間を開いたまま、怪異ムラサキババァは姿を消していた。
相変わらず勘の良い女だ。

「・・・・・・ところで、貴方さっき、面白いことをほざいてくれてたわよね。
 なんだったかしら。良く思い出せないのだけれど」
ポンポンと子鬼の頭を軽く叩いた後、ゆっくりと撫でてあげる。思い切り力を込めて。
 
「ハハハ。冗談に決まってるじゃないか。
 ちょ、ちょっと盛り上がるように、演じてみせただけだよ。
 嘘じゃなくて、お芝居ってやつさ!」
引っ掛かったねハハハ、と引き攣った笑みを漏らす子鬼。
 
「あらあらそうなの。迫真の演技で思わず信じてしまったわ。
 幻想郷一の役者ねぇ。恐ろしい子ねぇ」
両手で萃香の顔を優しく、包むように撫で回してあげる。ふふふ。
 
「そ、そうだろう? だから早く開放しておくれよ。
 急いでいるんだろうし、こんなことしてる場合じゃないはずだよ」

「・・・・・・あの悪夢から目覚めたときね。貴方を必ず泣かすと誓ったのよ。
 賽の河原では随分と好き勝手やってくれて、どうも有難う。
 私はね、言った事は必ず守るようにしているの。
 だから、ゆっくり苛めてあげるわね」
そう宣告し、両手で子鬼の柔らかそうな頬を思いっきり引っ張る。
ぐいーっと、それはもうものすごい勢いで。


「い、痛てててててててっ!! 何するんだ! この鬼ッ!」
少しだけ涙をこぼしてしまう可哀想な子鬼。
本当に可哀想で心が痛んでしまうわ。フフフッ。
ダメよ幽香。笑ったりしてはいけないわ。
これは躾なのだから。

「まだまだ元気が有り余ってそうね。この次はウメボシに、
 デコピン100発のフルコースよ。楽しみにしていなさい」
そう。悪い子にはきちんと、骨身に染み入るまで、
トラウマになるくらいのお仕置きをしなければいけないわ。


「わ、私のそばに近寄るなあぁーーーーーーーッ」

「だがお断りよ。ごめんなさいね?」





邪拳「ウメボシ」
両手の拳を相手のこめかみにあて、グリグリと動かすことにより
恐ろしいほどの激痛を与える、禁じられた技。
一説によると死人が出たとも伝えられる。

恐ろしい子
ガラスの仮面より月影先生
 


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
1.44631910324 / キャッシュ効いてます^^