長妻昭厚生労働相は、2010年版の「厚生労働白書」を報告した。保護することが中心だった社会保障を転換し、経済成長の基盤を作るための「参加型社会保障(ポジティブ・ウェルフェア)」にしていくことを提唱。菅直人首相が6月に表明した「強い社会保障」の考え方を前面に打ち出した。
白書では、これまでの社会保障を「消費型・保護型」と定義。お金やサービスを一方的に給付するだけで、消費された後は何も生み出さないものとして、転換する必要性を訴えている。
「参加型」では、労働市場や地域社会、家事への参加を促す目標を設定。行政が子育てや介護などを支援することで働き手を増やし、成長につなげるイメージを分野ごとに例示した。
雇用分野を見ると、従来の再就職支援では失業以外に住宅問題などを抱えていた場合の対応が困難だと指摘。「参加型」では、住宅手当や職業訓練を組み合わせていく。医療や介護分野では、高齢者も地域で暮らし続けられるように、中学校区(全国約1万カ所)ごとの在宅医療や福祉サービスの整備体制なども盛り込んだ。
こうした考えは、菅首相の6月の所信表明演説で示した「強い社会保障」に沿うものだ。長妻氏も26日の記者会見で、「参加型社会保障は、経済の足を引っ張るどころか、経済成長の基盤をつくる」と述べ、参加型社会保障の考えに基づいて来年度予算の概算要求を作成したと説明した。
一方、今回の白書では、冒頭から15ページ分を使って年金記録問題や薬害肝炎事件など厚生労働行政の反省点を掲載。「国民からの信頼を失墜させてしまった」と国民におわびしたうえで、信頼回復のため「役所文化を変える」としてサービス向上策などを示している。全体のページ数は、昨年の246ページから406ページと大幅に増えた。(中村靖三郎)