岡山県など西日本を中心に1万3千人以上の被害者を出した森永ヒ素ミルク中毒事件(1955年発覚)の資料館が24日、当時の被害者団体本部だった岡山市北区番町の民家に開設された。粉ミルク缶の現物、事件を解説したパネル、関係書類などの展示を始めた。
当時の被害者団体「森永ミルク中毒のこどもを守る会」(同所)の全国本部事務局長を務めていた故岡崎哲夫氏の保存資料を一部公開。長男・久弥氏(47)が事件を風化させないようにと自宅の一室を改装して館長に就任し、事件が発表された8月24日に合わせて開館した。
資料館は18平方メートルで、ヒ素が混入していた粉ミルク缶、事件発生を報じた当時の新聞記事、被害者同盟結成を呼びかけた文書、皮膚がただれた被害児の写真を載せた県の報告書など約40点を展示。ヒ素が混入した経緯や被害者団体の活動などを解説したパネルもある。
午前10時からの開館式では関係者5人が出席。久弥館長が「被害者の高齢化で事件を伝えることが難しくなっている。事件について考える場にしたい」とあいさつ。被害者の西田陽子さん(56)=大阪市=が「一生この体から逃れられない、許されない事件。資料館を全国の人に見てもらいたい」と話した。
資料館は28日まで毎日午前11時〜午後4時開館。その後は見学希望者の電話予約(086―224―0737)により開放する。