たるんだ報道に喝!18
【ニュースメタボ診断】大相撲中継中止。ニュースを自局PRに使うNHK
(GALAC 2010年9月号掲載) 2010年8月24日(火)配信
文=別府三奈子
7月6日、NHKは大相撲名古屋場所の生中継中止を決めた。福地茂雄会長は、同日午後4時半から記者会見を行った。会見の模様は、当事者のNHKと各民放からさまざまに伝えられた。
ニュースの数字マジック
「寄せられた意見の6割以上が、大相撲の中継は中止すべきという声だった。かつてない厳しいものだと受け止めている」。
福地会長は、生中継中止の理由として、相撲協会による改革の方向性の具体的道筋が見えないことと合わせて、視聴者から連日、厳しい意見が寄せられていることを強調した。同日、NHKのニュースは会長の言い分と今後の放送予定を、これまでのNHK放送史と合わせて伝え続けた。
他局の夕方の報道番組も、会長の記者会見録画映像を使って、ほぼそのまま言い分を伝えた。
「寄せられた意見の7割が反対だ」(日本テレビ)、「14日までの1万1100件のうち、反対は68%、賛成は11%」(TBS)、「寄せられた1万2000件の70%近くが中継に反対」(フジ)、「1万2000件を超える意見や問い合わせの60%以上が中継中止を訴えていた」(テレビ朝日)、「昨日寄せられた声900件のうち、賛成25%、反対67%」(テレビ東京)。
どこも発表ニュース花盛り。その結果、要するに、10人に7人前後が中継に反対しており、NHKも苦渋の英断、と思われ易い伝え方だった。
しかし、このニュースにおける数字の伝え方は、かならずしも正確とはいえない。
22日間に、8600件の中継中止意見と、1600件の賛成意見がNHKに届いている。のべ数で計算すれば、毎日約390件が中継中止、73件が中継賛成、といってきたことになる。大相撲中継は10%前後の世帯視聴率を維持してきている。その多くを占める高齢者は、サイレント・マジョリティとして、全取り組みの生中継を楽しみにしている可能性が高い。今場所初日のダイジェスト放送では、視聴率(関東圏)が12.4%(約218万世帯)となった。NHK会長の発言はNHKの見方に過ぎない。
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