2010年8月25日14時52分
大正時代から千代紙や影絵、色セロハンを使った映画で活躍したアニメーション作家大藤信郎の作品や道具など約100点を紹介する展覧会「アニメーションの先駆者 大藤信郎」が、東京・京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターで開かれている。
大藤は1900年、東京生まれ。大正時代には江戸千代紙を素材にした切り絵、第2次世界大戦後は黒の影絵とカラフルな色セロハンを組みあわせた独特の短編アニメを次々と発表した。だが当時の日本ではアニメは評価されておらず、大藤は戦後、積極的に海外に発表の場を求める。
「くじら」(52年)はカンヌ国際映画祭の短編部門に出品し、ピカソに絶賛されたという。「幽霊船」(56年)はベネチア国際映画祭の短編部門で特別奨励賞を受賞。海外で高く評価された最初のアニメ作家だ。長編「ガリバー旅行記」と「竹取物語」に取り組んでいた61年に死去。翌62年、業績を記念し毎日映画コンクールの中に、日本の優れたアニメに贈られる「大藤信郎賞」が設立された。
同センターは70年の開館時、大藤の姉八重さんから数万枚を超える原画やセル画など大量の資料を寄贈された。このほど整理を終えたことから、初めて一般公開する。
「幽霊船」のセロハン原画のほか映像も公開。海賊船に襲われた貴族船が幽霊船となり海賊に報復する物語が、特異な色彩と踊る女性やうねる波の曲線的な動きに調和して幻想的な雰囲気を漂わす。