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辺野古飛行経路で対立 日本、反発恐れ“隠蔽”2010年8月25日  このエントリーを含むはてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録 twitterに投稿する

 米軍普天間飛行場移設の日米協議で、米側が飛行経路の大幅な変更を求めてきた。日本側の従来説明が間違っていると主張する米側と、説明通りに飛行すべきだと主張する日本側に、今のところ妥協点はない。V字とI字の滑走路の形状を話し合う以前に、航空基地の最重要事項である飛行経路をめぐる大きなずれが露見した。騒音被害の拡大を懸念する住民に背を向けた、日本政府の隠蔽(いんぺい)行為の連鎖が代償となり、移設計画を揺るがしかねない事態に発展している。
 23日、防衛省。北沢俊美防衛相と1時間にわたり会談したルース駐日米大使は、暗く疲れた表情で大臣室を後にした。懸案となっている飛行経路について、この日も物別れに終わった。

■激論
 防衛省は2006年の米軍再編の日米合意以降、米軍機は集落から離れた海上を飛ぶと説明してきた。「騒音への影響は最小限にとどめる」と、地元に示した「台形」の線は、今や広く知られた飛行経路図だ。
 だが今年5月以降、代替施設の詳細を検討する過程で、日本側の説明が米軍の運用実態と異なっていることが大きな問題に発展。17日にワシントン郊外の国防総省で開かれた日米協議で、激論となった。
 米政府「代替施設が完成して軍用機が飛行を始めれば、必ず沖縄から『説明通りに飛んでいない』と反発が出る。本来はうその説明をした日本政府に批判が向くはずなのに、軍が批判の対象になってしまう」
 日本政府「米側も日本側の説明を知っていながら黙認してきたではないか。なぜ今になって反論するのか。今さら地元説明は変えられない。米軍が説明通りに飛ぶべきだ」
 両者一歩も引かず、結局、飛行経路問題だけで初日会合を終えた。

■変わらぬ体質
 米政府が強硬な態度に出る背景に海兵隊の圧力がある。もともと海兵隊にとって不満含みだった再編計画は、豪腕でならすローレス国防副次官が政府主導で進めたものだ。そのローレス氏が政権から去り、鳩山由紀夫前首相が普天間の県外国外を訴えたことも加わり、それまで不満を抑え込まれてきた海兵隊が堂々と要求を訴えるようになった。ある日米関係筋は「パンドラの箱が開いてしまった」と語る。
 他方、日本政府が地元に「うそ」をつくのは今回が初めてではない。
 米側は06年、代替施設の環境影響評価で辺野古ダムとキャンプ・シュワブ陸域も対象とするよう日本側に要求した。「完全なアセスでなければ、将来海兵隊が説明責任を負わされる」という懸念からだ。だが防衛省はアセス方法書でそれらに触れず、後に不備を指摘された。
 また、日米特別行動委員会(SACO)最終報告直前の1996年、日米は垂直離着陸機オスプレイ配備について協議。その際、防衛省は地元からの問い合わせを想定し、配備に明言しない答弁を調整していたことも、米文書で発覚した。
 軍に対する沖縄社会からの反発を避けたい米側と、反発を恐れて事実を隠蔽する日本政府。変わらない両者の体質が今回また露呈した。(与那嶺路代ワシントン特派員)


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