日本の安全保障環境について説明し、学生からの質問に応じる山中洋二福岡地方協力本部長=北九州市小倉南区の北九州市立大学
自衛官の募集にあたる自衛隊地方協力本部(地本)が、若手隊員の獲得に向けて大学への働きかけを強めている。少子化や大学進学率の上昇で、高卒者だけでは隊員の必要数を確保できないことが背景にはある。福岡県内の大学では、全国で初めて幹部自衛官による連続講義が行われるなど結びつきが際立っている。
「新たな脅威は予測困難で突発的に発生する可能性が大きい。『自衛隊がいるから手を出せない』という抑止につなげることがベストだ」
7月下旬、北九州市立大学(同市小倉南区)の講堂で、100人を超す学生を前に自衛隊福岡地本の山中洋二本部長(1等陸佐)が教壇に立った。この日のテーマは「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応について」。レンジャー隊員の経験や特殊部隊の立ち上げにかかわった山中氏に、学生からは「テロに巻き込まれたらどうすべきか」「特殊作戦を担う隊員の訓練はどれほど厳しいのか」など率直な質問が相次いだ。
同大学では2008年度から現役自衛官による講義を始めた。昨年度から連続講義に発展し、受講者への単位付与も認めた。今年度はソマリア沖海賊対処で第1次航空隊司令を務めた1等海佐ら国際任務の第一線にいる幹部らが講師を務め、陸海空自衛隊基地の見学も行った。防衛省によると、現役自衛官が講師を務め、単位まで認める連続講義は全国でも例がないという。
■少子化で人材難
自衛隊が大学へ働きかけを強めるのは、少子化と進学率上昇という二重苦にさらされ、高卒中心だった若手隊員の募集では、必要数を確保出来なくなりつつあるためだ。
福岡県内では、1980年に40%を超えていた高卒就職率は09年度に約18%まで低下。大学・専門学校への進学率は45%前後から約76%に跳ね上がった。