イオンは27日、傘下の「ジャスコ」「サティ」などグループ内の総合スーパー(GMS)の名称を来年3月から「イオン」に統一する方針を固めた。GMS事業を運営する3子会社も経営統合する。イオンは経営破綻(はたん)したマイカルなどの再建を支援して規模を拡大してきた。だが、国内消費の低迷が続く中、イトーヨーカ堂などに見劣りする収益力のテコ入れが急務で、経営効率化が不可欠と判断した。名称統一でブランド力強化を図る狙いもある。【井出晋平】
来年2月までに、イオンの全額出資子会社で「ジャスコ」を運営するイオンリテール(千葉市)が、「サティ」を運営するマイカル(大阪市)、仏・カルフールから譲り受けたイオンマルシェ(千葉市)を吸収合併する。3月以降、ジャスコ254店、サティ85店の名称を「イオン」に統一。上場子会社のイオン九州、イオン北海道の「ジャスコ」や「ポスフール」など80店、中国、マレーシアの「ジャスコ」など46店もイオンに統一する。イオンマルシェは今年3月、カルフールからイオンに名称変更している。
3社統合による総務部門などの統合や仕入れの共通化で約500億円のコスト削減効果を見込んでおり、成長分野である中国や東南アジアへの展開に振り向ける計画だ。
イオンはこれまで、経営破綻したヤオハンやマイカル、ダイエーなどを支援することなどで規模を拡大してきたが、買収・支援先企業の経営自主性を尊重したため「連邦経営」とも称され、基本的にブランドも残してきた。しかし、サティが不振で営業赤字を続けているほか、複数の店舗名が混在し消費者に分かりにくいという弊害もあり「イオンという社名も定着した」(幹部)としてブランド統一に踏み切る。海外進出の際にも、社名と同じ単一名称の方がブランド力向上を見込めるという事情もある。
ただ「連邦経営」の体制は一部維持する。今回ブランドを統一しGMS3社を統合するものの、イオン北海道、イオン九州は「地域的なまとまりがあり地元に根付いている」(幹部)ため統合対象からは外し、上場も維持。丸紅が筆頭株主で、イオンが株式の19・9%を保有するダイエーも、ブランドなどを含め現体制を維持する。
消費低迷とデフレの影響で、小売業界を取り巻く環境は厳しい。コンビニエンスストアからGMSまで幅広く展開する総合小売りグループのイオンとしても構造改革が必要で、今回のGMS再編もその一環。イオンは今年4月に米国婦人服チェーン「タルボット」を売却したほか、2月には食品スーパー事業「マックスバリュ」を地域ごとの子会社に再編するなど改革を進めているが、市場が縮む国内事業の再編を更に迫られる可能性もある。
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◆イオンの主な拡大の経緯◆
97年12月 経営破綻したヤオハンを支援
01年 8月 ジャスコからイオンに社名変更
01年11月 経営破綻したマイカルを支援
05年 3月 仏・カルフールから店舗を買収
07年 3月 経営破綻したダイエーを支援
毎日新聞 2010年8月28日 東京朝刊