シカゴ便り



ブランドン・ロバーツ氏、日本語弁論大会にて大阪姉妹都市賞受賞

1025.jpg 去る3月21日(土)にシカゴ総領事館にて第23回日本語弁論大会が開催されました。小学生から大学生の日本語を勉強する学生40名が朝から独自のスピーチを披露しました。

 大阪姉妹都市賞は準優秀賞であり航空券と一週間大阪でのホームステイが一人の学生に授与されます。今年の受賞者は日本語学習歴1年半のディポウ大学の学生ブランドン・ロバーツ氏です。

 彼の大会後のコメントとスピーチをお楽しみください。

 初めにシカゴ日本総領事館と大阪市シカゴ事務所に私にこの機会を与えて下さって心から感謝しています。大会にスピーチを練習しておいた時勝てるわけはないと思っていました。そして、あの日にとても緊張しており、スピーチを数ヶ所間違えて、私には悲しさが波のように溢れてきました。それで、畑佐先生に名前を呼ばれたとたんにとってもびっくりして、前のステージへ歩みながら当選されたことを信じられませんでしたけれど、本当にありがたいでした。夏を楽しみしています~

 上手に伝えられませんが、この機会を私に与えて下さった皆さん方に本当に感謝しています。大会やこの機会を毎年開催する方へ、礼を申し上げます。スピーチ大会の出場者に成り代わって毎日頑張ったり、大会を大成功にしたり、日本語を学んでいる生徒たちを世話にしたりして下さって、心から感謝しています。そして私の先生と友達に、スピーチを手伝って下さったり、活を入れて下さってありがとうございました。

「試験に決められる将来」
ブランドン・ロバーツ

 一秒で日本の高校生のイメージを思い描いてください。どんなイメージを思い描いたでしょうか。おそらく、勉強家とか制服をちゃんと着て、黒板に書いてあることを書き写してる姿を思い描いたのではないでしょうか。現実は、私の思い描いていたイメージと全く違いました。インターンシップをした東村山高校でその印象が変わったのです。私の中で他の何かも変わりました。その中で一番変わったことは、私の教師についての印象でした。

 去年の夏、東京の東村山高校でインターンシップとして英語のクラスのアシスタントをしました。東村山の高校生は普通でした。「普通」という意味はアメリカの高校のような雰囲気です。全員が一生懸命なわけではなく、勉強しないといけないと思っているロボットのような高校生でもありません。東村山の高校生は普通の子どもで、普通の生徒でした。東京都の公立高校の受験難易度ランキングによると、AからEのうち、東村山はCでした。ですから、私だけではなく、東京都の教育委員会も普通の高校だと評価しています。しかし、日本人の生徒や教師達の意見は違いました。東村山高校は負け組の高校と言われ、劣等生や悪ガキだけの高校という認識がありました。ホームステイの家族にも、「何で東村山を選んだの?他にいい学校を選んだほうが良かったでしょう。」といつも言われました。東村山高校を選んだのは、高校三年生のときのスペイン語のクラスで東村山高校とペンパルプログラムを始めたことにあります。東村山の先生が英語で書いた手紙を交わしてはどうかとスペイン語の先生に頼んでプログラムが始まりました。日本の生徒が英語の手紙を書きたがっていたし、英語を学んだ生徒だったので、東村山高校の生徒は良い学生だと思っていました。1024.jpg

 インターンシップで一番驚いたことは、東村山高校の教師と生徒自身も、負け組の溜まり場のような学校にきてしまった、という考えを持っていたことです。学生とも先生とも話す機会が多くあったので、高校のことを両方がどう思っているかを聞くことが出来ました。生徒によく聞いたのは、この学校は志望校だったか、という事です。いつも同じ「ううん,ぜんぜん。」という返事でした。高校受験という一つの試験におちてしまい、生徒はこの平凡かつ負け組の評判がある高校にむりやり入れられました。このような学生の状況は東村山高校で普通のことかと教師に聞いたら、「はい、そうです。」と冷たい回答でした。学生たちが受験で良い成績を取れなかったので難しくないレベルから教え直さなければならない、とも言っていました。私は、先生には教える前から、学生にはできない、という認識があるように感じました。学生たち自身も勉強のために頑張りたくはなく教育に希望を持てないから、負けたほうが楽、と思っていたように感じました。学生がそのような考えを持っていたので、教師は頑張りたくない生徒を見て、誰のために頑張っているのか、と文句を言っていました。そうして教育に希望を持てないから、教師達も楽な道を選んでいました。良い高校に入れなかった生徒たちの溜まり場のような高校で教師が本気になるはずがありません。生徒を捨てた教師、そのような無責任な教師に希望をなくされた生徒。高校受験という一つの試験が希望に満ちた生徒たちをこれほど絶望のどん底に陥れるのはとても不公平です。

 東村山高校では、思い描いていた勉強家というイメージのかわりに、希望がなく、やる気もない生徒を見ました。東村山高校に行く前は、日本の教師のことをよく知りませんでしたが、この高校の雰囲気を体験して、今は、教師は学問を教えることだけではなく、生徒の心を動かしてどういう風に将来を歩み進めばいいのかも教えるべきだと思っています。これは、日本だけではなく、世界中で言えることです。教師がそうすることで、生徒たちの将来に光を指し、生徒といっしょに前に進むことが出来るのではないでしょうか。

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