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【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 アジアと協調して危機再発防止 (1/2ページ)
■戦略的円売り介入を提案する
円高要因は資金の偏在
政府・日銀は、円高ドル安の進行になすすべもない。必要なのは米国、さらにアジアを巻き込む「戦略的市場介入」である。これは、外国為替市場で大規模で継続的な円売り介入を行うことを指す。デフレ脱却と国際金融市場の安定の双方を達成するのが狙いだ。
今の円高局面は、米連邦準備制度理事会(FRB)が2008年9月の「リーマン・ショック」後、それまでの2・3倍も市中に流し込んだドル資金が行き場を見失い、国債など限られた「商品」に集中していることが原因である。
日本は世界最大の債権国として経常収支の黒字基調が定着しており、構造的に円高に向かいやすい。通貨価値を減らすインフレを忌み嫌う日銀は約20年間、物価が下がり続けるデフレを容認する基本姿勢を墨守している。このため、外国の投資家には「日本が円高誘導をしている」と映る。原油や穀物と同様の“国際商品”として売買される円はもうかる確率が高い。だからこそ、投資家は大量の円買いに踏み切るわけだ。
この流れに引き込まれ、国内銀行は前年比で10兆円前後も貸し出しを減らす一方、前年比で30兆円前後も国債を買い増している。国内の円の過剰資金は国債に向かって滞留し、生産や消費、設備投資に回らない。そして、デフレ不況が深刻化するという悪循環に陥っている。
もとはといえば、円高サイクルは、ドルというペーパー・マネーの増刷に始まる。米国は、マネーが住宅市場や株式市場に回るようにすれば「景気が上向く」というシナリオを描いた。ところが、7月の住宅販売件数は1963年以来、最低の水準にまで落ち込んだ。かくなるうえは、より一層のドル安と低金利誘導策を進めるしかない。日本が無定見に円売り市場介入に踏み切ったところで、米国は突き放すだろう。それだけに、冷静かつ沈着な思考が欠かせない。
まず、米国債の動向である。グラフが示すように、ドル安になっても余剰資金は米国債に向かっており、米金利を下げている。投機とはいえ、原油先物も売られている。