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白骨遺体 都会の死角…大田の「104歳」
東京都大田区羽田のアパートで、住民登録上「104歳」となる三石菊江さんとみられる白骨遺体が見つかった問題で、この部屋に住む長男(64)が警視庁の事情聴取に対し、2001年6月、当時住んでいた文京区内の自宅で「外出先から帰ったら母親が布団の上で死んでいた」と話していることがわかった。
その後3年間、遺体を押し入れに置き、大田区に転居する際、運びやすいよう遺体を砕いてリュックサックに詰めたと説明。親の遺体と長期間、同居する異常な事態が大都市・東京でなぜ起きるのだろうか。
■2001年6月12日
三石さんとみられる白骨遺体が見つかったのは今月19日午後。蒲田署員が、長男のアパートに立ち入ると、4畳半一間の衣装ケースの裏に隠すように置かれたリュックから、袋に入った骨が見つかった。重さ約1・3キロ、細かく砕かれていた。
部屋にあった長男の日記には、01年6月12日、三石さんが死亡したことが記されていた。当時95歳だった。
長男は、骨が母親のものと認め、死亡後は遺体を数日間放置したが、腐敗したため押し入れに移したと説明。3年後の04年5月、大田区に転居することになり、引っ越しの数日前、長男は風呂場でミイラ化した遺体をバラバラに砕いたという。埋葬しなかった理由を「仕事に就いておらず、葬式代がなかった」と話した。
三石さんは当時、病気がちだったという。同署は、骨をDNA鑑定して身元の特定を進める。
■「母は新潟に」
今月12日、所在確認のため長男の自宅アパートを訪れた大田区職員に対し、長男は「母は新潟の元妻の家にいる」と説明し、連絡先も伝えた。区職員と16日に連絡がついた元妻の家族の返事は「そんな人はいません」だった。
羽田地区を担当する民生委員(63)が5年ほど前、敬老祝い品を届けるためアパートを訪れた際にも長男は「文京区の親類宅にいる」と虚偽の回答。民生委員はこの時、大田区に同居していないのではと伝えたが、情報は生かされなかった。同区の担当者は「記録が残っておらず、そのような報告があったか確認できない」としている。
■不正受給
長男は、三石さんが死亡した01年6月から大田区に転居するまでの約3年間、三石さんの老齢福祉年金を受給していたことを認め、受給額は計約120万円になるとみられている。同庁は、時効にかからない受給分について詐欺容疑で捜査を進める方針。
大田区に転居して以降、長男は年金を受け取っていなかった。同区によると、転居の際に継続受給に必要な届け出がなく、区高齢事業課では「(転居の際は)区の窓口でも、年金について注意喚起するはずだが、どういう事情で受給がストップしたのかわからない」としている。
■文京区での生活
近所の人や関係者によると、三石さんは1956年以降、文京区内で土地を借りて平屋建て住宅に夫と長男の3人で暮らしていた。その後、夫が死亡し、生活が困窮していたという。92年ごろからは、借地代の支払いも滞りがちになった。近所の主婦(67)によると、三石さんは、「小柄で、礼儀正しい古風な人」だった。日本舞踊が上手で、着物の仕立てなどで生計を立てていたとみられる。
行政の介入が必要
都内では足立区でも先月末、「111歳」の男性のミイラ化した遺体が長年、家族の住む家に置かれていたのが発覚したばかり。
(2010年8月21日 読売新聞)
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