横浜開国博“不入り”批判に総合プロデューサーが猛反論

2009.10.05

 有料施設が記録的な“不入り”に終わった横浜開港150周年記念イベント「開国博Y150」。先月27日の閉幕後も議会や市民から責任追及の声がやまず、野田由美子副市長が引責辞任する事態となった。「大失敗」のイメージが定着するなか、イベント全体を統括した現場の最高責任者が本紙の取材に応じ、会期中に辞職した中田宏・前横浜市長に代わって批判に猛反論した。

 「そもそもY150は万博のような収益重視の興業イベントではなく、横浜という街の『観光力』と『市民力』を高めるのがテーマ。その意味でY150は成功だったと断言できます」

 こう語るのは、Y150で総合プロデューサーを務めた小川巧記氏(54)。2005年の愛知万博で市民プロジェクトなどを成功させた手腕を買われ、中田前市長が招聘した人物だ。小川氏が続ける。

 「無料会場も含めた市全体の3エリア8会場では700万人超の来場者を記録し、主体的に参加した市民も10万人を数えます。県外の来場者は今後、横浜のリピーターとなるでしょうし、イベントにかかわった市民も、この街の未来に対する自信を得ました。この実績は必ず、有形無形の財産となって横浜市に還ってくるはずです」

 たしかに、概念としてはそうだろう。しかし、市税が投入された以上、損益は無視できない。総事業費120億円のうち、市が55億円を出資し、協賛金が23億円。残りを入場料収入でまかなうはずが、有料入場者数は黒字ラインとなる175万人に58万人も不足の117万人。収入は24億円にとどまり、18億円の赤字が見込まれる。これについて小川氏は、次のように反論する。

 「数字は厳しいものですが、会期中は横浜中華街の売り上げが約15%アップし、有料会場に近接した商店なども期間中の来客数が150%、売り上げは160%も上がった。市内のホテルも、他の地域が軒並み稼働率を大きく落としているのに対し、前年並みを維持できた。今後の波及も考えれば、経済効果は十分ではないでしょうか」

 ネット上などで「つまらなかった」との悪評が高かった有料会場の出し物についても、「良い評価の声も多かった。ネット上にはもともと、物事を批判する人の割合が高いことを念頭に置いてほしい」と譲らない。ではなぜ、Y150は最初から最後までネガティブイメージがつきまとい、あげくには言い出しっぺの中田前市長が会期中に辞任、野田副市長も終了後に辞任したのか。

 反省の弁として小川氏は「市内に分散した各会場を有機的につなぐ方策を構築できなかった、興業ではなく市民共催の市民事業であるという概念が伝えきれなかった−の2点に尽きます」と唇をかむが、2人の辞職については「私の立場では真意を測りかねますが、こんなに上の人が消えてしまうイベントは初めて」と言及は避けた。

 イベントの成否を判断するには、まだ議論が必要だが、少なくとも世間の批判を堂々と受け止めて反論した小川氏の姿勢を、有料入場者500万人という大風呂敷を広げたまま“敵前逃亡”した中田前市長は大いに見習うべきではないか。