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レアアース輸出拡大、中国側「ゼロ回答」 日中経済対話

2010年8月29日0時43分

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写真:日中ハイレベル経済対話での岡田克也外相(中央)ら=ロイター日中ハイレベル経済対話での岡田克也外相(中央)ら=ロイター

写真:レアアースを沈殿させた池=中国江西省、奥寺淳撮影レアアースを沈殿させた池=中国江西省、奥寺淳撮影

 【北京=琴寄辰男、古谷浩一】日中両政府の経済閣僚が集まる「日中ハイレベル経済対話」が28日、北京で開かれた。ハイブリッド車(HV)や省エネ家電の部品生産に使われる「レアアース(希土類)」の輸出枠を中国が大幅に削減した問題で、日本側は「世界全体に大きな影響がある」などとして削減の再考を求めたが、中国側は採掘に伴う環境問題などを理由に応じず「ゼロ回答」に終わった。

 直嶋正行経済産業相がこの日、中国の李毅中・工業情報相、陳徳銘・商務相との会談で中国側に申し入れ、閣僚がそろう全体会合でも輸出枠の拡大を求めた。日本側の説明によると、中国側は「環境対応で生産量を減らす必要がある」「資源の枯渇が見込まれ、節約が必要だ」と主張し、議論は平行線に終わった。陳商務相はこの日、記者団に「国内でも採掘を制限しており、(日本にも)理解してもらいたい」と語った。

 中国は7月、今年下半期向けの輸出枠を約8千トンと発表。年初からの合計では約3万トンにとどまり、前年比約4割の大幅減となった。世界生産の9割超を握る中国が今後も輸出枠を削減する姿勢を続ければ、HVや省エネ家電の生産にも影響が出る可能性がある。

 日中ハイレベル経済対話は2007年12月に第1回会合が北京で開かれ、今回が3回目。日本側は岡田克也外相、直嶋経産相ら6閣僚が訪中し、中国側は王岐山(ワン・チーシャン)副首相らが出席した。レアアースを巡る議論のほか、マグロ類資源保護での協力や省庁間の定期協議設置などに合意した。

■「戦略資源」高値化狙う

 中国側がレアアースの輸出を制限するのは、ハイブリッド車(HV)や省エネ家電などに欠かせない「戦略資源」を、国内需要向けに計画的に使うとともに、価格支配力を強めて海外にもっと高値で輸出したいからだ。

 「下半期だけでみれば輸出枠は7割減。これはやりすぎだ」

 直嶋経産相は、中国側の関係2閣僚との会談でこう食い下がった。中国が削減の理由に挙げた採掘に伴う環境問題について「日本に技術的に協力できるところがあるかも知れない」とも申し出たが、中国側が譲る気配はまったくなかったという。

 中国国土資源省幹部は今月、地元テレビのインタビューで「乱開発で価格を押し下げられてきた。ある地方政府幹部に言わせれば『大根や白菜のような値段』だ」と不満を表明。中国ではレアアースを国内で加工し、付加価値をつけて高く売ることを目指している。中国メディアによると、広東省河源市の国土資源局幹部は「加工すれば金やダイヤモンドの値段になる」と話した。

 レアアースの世界生産の9割超を握る中国に対し、輸入に頼る日本の立場は弱く、打開策はすぐには見つかりそうもない。液晶テレビのガラス基板の研磨剤などに使われるセリウムの価格は1キロあたり40〜50ドルと、1年前の5〜6ドルから急騰。家電1台あたりの生産に必要な量は少ないため、商品価格がすぐに上がることは考えにくいが、製造過程に支障が出るおそれもある。

 日本の合金メーカー大手の幹部は「これまでも中国は輸出枠を絞ってきたが、今回は日本の景気が回復しつつあり、モノがほしい時に重なった。価格も青天井で上がる気配で、ショックは大きい」と困惑を隠さない。

 輸出規制だけではなく、採掘制限の強化もささやかれている。この幹部は「いまは在庫はあるが、レアアース自体が入ってこなくなることが心配だ。今後は中国国内での生産や、中国以外の調達先を探すことも考えなければならない」と話した。(琴寄辰男=北京、神谷毅)

    ◇

■第3回日中ハイレベル経済対話の主な成果

・レアアースの輸出拡大要請は「ゼロ回答」

・マグロ類資源保護へ、中国が中西部太平洋で大型巻き網漁船を増やさないことで合意

・森林の違法伐採防止のため、日中両国が輸出入する木材などの合法性を証明する仕組みをつくることなどで合意

・経済産業省と中国の工業情報省が次官級の定期協議を設置

・日中共同トキ保護計画を5年間更新

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