県立3病院が労使協定を結ばずに医師らに時間外労働をさせていた問題で、病院側が7月末までに労使協定を締結した。ただ、医師の時間外労働の上限が1300~1440時間という内容で、近畿の府県立病院と比べても突出している。労働基準法の違反状態は解消されたものの、同法が定める上限を大幅に超えており、労働基準監督署は縮減を求めている。背景には、医師不足などによる過酷な勤務実態があり、改善の見通しは立っていない。【阿部亮介】
奈良労働監督署などは今年5月、労使協定を結ばずに医師や看護師に時間外・休日労働をさせていたとして、県立奈良病院(奈良市)、県立五條病院(五條市)と運営する県を労働基準法違反容疑で奈良地検に書類送検した。同様に協定を締結していなかった県立三室病院(三郷町)を含め、3病院は7月末までに労使協定を締結し、労基署に届け出た。
協定では、医師の年間の時間外労働は、奈良が1440時間▽三室が1440時間▽五條が1300時間を上限とし、「特別な事情」があれば協議のうえさらに360~460時間延長できる。
労基法は、時間外労働の上限を年間360時間としているが、労使双方が合意すればこれを超えて上限を決められる。3病院は、救急医らの勤務実態に基づいて上限を決めたという。しかし、「過労死ライン」とされる月の超過勤務80時間を超えており、労基署に届け出た際に縮減するよう指導を受けた。県立病院の担当者は「医師の確保など、縮減できるよう努力したい」と話す。
毎日新聞が近畿の府県立病院と府県庁所在地の市立病院に聞いたところ、労使協定で医師の時間外労働の上限は年間360~800時間だった。ただ、360時間とした病院の担当者は「実際には協定内容を順守できていない」としている。
毎日新聞 2010年8月27日 地方版