上井、史上初の快挙！同一大会同一ホールでホールインワン…男子ゴルフ

８番で今大会２回目のホールインワンを決め、石川（左）とハイタッチを交わす上井（中）（右はＳ・Ｋ・ホ）

　◆男子プロゴルフツアー　ＶａｎａＨ杯ＫＢＣオーガスタ第３日（２８日、福岡・芥屋ＧＣ＝７１４６ヤード、パー７２）　２位で出た上井（かみい）邦浩（２７）＝三好ＣＣ＝が、史上初の同一大会同一ホールでのホールインワンで単独首位に立った。８番（パー３、１６５ヤード）で第１ラウンド（Ｒ）に続くエース。米ツアーでも記録した選手がいない大偉業を達成し勢いに乗り、１イーグル、４バーディー、１ボギーで通算１７アンダーとしツアー初優勝に王手をかけた。通算１６アンダーの２位に谷原秀人（フリー）ら３人。単独首位で出た石川遼（パナソニック）は通算１５アンダーの５位に後退した。

　奇跡は２度起きた。人生初のホールインワンを記録してからわずか２日。第２Ｒはパーだった８番ホール。上井のティーショットは、真っすぐピンへと向かっていく。約８メートル手前に落ちたボールは、２度弾んだ後、２メートル前から転がり始める。ラインに乗ると磁石に吸い寄せられるようにカップへと消えた。

単独首位に立った上井

　まるで第１ＲのＶＴＲを見ているかのような光景。猛暑の中集まったファンを、更に熱くさせる史上初の同一選手による同一大会同一ホールでのエース（記録の残る１９８５年以降）の大偉業だ。「ボールが跳ねたのが見えたときに入るかなとは思った」。ティーグラウンドでは大歓声に両手を挙げ、グリーンではボールをギャラリーに投げ入れる大サービス。男子プロで３６００回に１回の確率のホールインワンに「帰りの飛行機が落ちなければいいけど」。会見では冗談を言うなど冷静に振り返ったが、賞金の３０万円を３日間で２度もゲットし笑みがこぼれた。

　同組の遼もびっくりだ。「鳥肌が立った。『優勝するんじゃないですか』と言ったんですが、優勝に一番近いと思う」。数々の記録を作ってきた男も脱帽の一打だ。「８番で気持ちが楽になった」上井は、その後も３つのバーディーを奪い単独首位に立った。

　苦い経験が精神面を強くさせた。５月の中日クラウンズ。第１Ｒから２日連続で首位を守りながら「優勝できると思い」第３Ｒで２位に。最終日を最終組で迎えると重圧に負け５位に終わった。「あれから気持ちが強くなった。落ち着いてゴルフができるようになった」。今は足元をしっかり見ながらプレーしている。

　第２Ｒ終了後には福岡の繁華街・中洲ですしを口にするなどリフレッシュ。この日は同じ芹沢信雄門下の宮本勝昌の３８回目の誕生日で「誕生会があるけど早く帰ります」と決戦に向け準備は万端だ。「２位とは１打差しかないけど、今日みたいに平常心で回ればチャンスは来る」。身長１８０センチ、３００ヤード超えのビッグドライブも連発する恵まれた体。優勝候補と言われて久しい大器が、ついに開花の時を迎えようとしている。

　◆同一大会でホールインワン
  ▽日本ツアー　男子は０８年「ミズノオープンよみうりクラシック」でＣ・プラポール（タイ）が第１Ｒの１７番、最終Ｒの５番で。女子では８１年「北陸クイーンズ」第１Ｒ８番、第３Ｒ１６番で池渕富子が記録している。
  ▽米ツアー　３人。６４年に「マウンテンビューオープン」第１、４Ｒでジャック・ルールが、９４年にグレン・デイが「グレートハートフォードオープン」第２、３Ｒで、同年にボブ・ツェイが「メモリアルトーナメント」第１、３Ｒで達成。
  ▽米シニアツアー　０４年「シニア全英オープン」でグラハム・マーシュが第１、３Ｒの１１番で同一大会同一ホールを記録。

　◆上井　邦浩（かみい・くにひろ）１９８２年１０月２８日、大阪府生まれ。２７歳。１５歳からゴルフを始め、名商大時代の２００２年に中部アマで優勝、０４年には池田勇太らと世界アマに日本代表として出場した。０５年にプロに転向し０８年に初めてシード権を獲得。過去の最高位は０８年コカ・コーラ東海クラシックの４位。師匠は芹沢信雄で藤田寛之、宮本勝昌の弟弟子にあたる。１８０センチ、７８キロ。家族は妻と１男。