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【東京】

貧困から子を守れ 給食ない夏休み…げっそりやせる

2010年8月29日

経済的困窮家庭の切実な状況を語る荒川区の川嵜教育長(右端)=千代田区の弁護士会館で

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 「給食のない夏休みにげっそりやせる生徒がいる」−。就学保障のあり方を考える東京弁護士会など主催のシンポジウム「貧困で子どもたちの可能性を奪わないで」が二十八日、千代田区の弁護士会館で開かれ、貧困に悩む高校生や教育現場から切実な例が報告された。 (井上圭子)

 パネルディスカッションに先立ち、埼玉県の定時制高校に通う母子家庭の男子生徒(17)が登壇。母が病気で働けず、自分と大学生の兄のアルバイト収入で生活費、学費、母の治療代を賄っている実態を語り「働いて学校を休むと授業についていけなくなり無気力に。人間関係もうまくいかなくなった」と、貧困の影響が精神的な面にも長く及ぶことを訴えた。

 パネル討論では、荒川区や足立区などで六年前まで三十五年間中学校の教員だった川嵜祐弘・荒川区教育長が「親が文字を読めないために生活保護のお知らせプリントを読めず、子どもが持ち帰る給食の残りのパンで飢えをしのいでいた」などと実例を挙げ、「どの子も平等に学べるよう社会全体で支援を」と提案した。

 「子どもの貧困白書」を監修した立教大学の湯沢直美教授が「子どもの貧困は影響が多岐にわたる。短期的には成長発達、長期的には就労や家族形成、社会的には他人への共感の薄らぎ」と指摘、授業料だけでなく修学旅行や部活費も含めた教育の無償化を訴えた。

 シンポジウムは十月に岩手県で開かれる人権擁護大会のプレイベントで、東京弁護士会、第一・第二東京弁護士会が主催。教員や学生、社会福祉士など約二百人が参加した。東京都は税収が多く一見豊かなようだが、生活保護に準じる「準要保護率」では全国上位二十位の八つを東京の区が占めるほど貧富の差が激しい。

 東京の三弁護士会は今後、シンポジウムの成果を受け、社会全体での支援体制を整える活動を進めていくという。

 

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