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鉄屑の塊

プロフィール

やかん

Author:やかん
三流物書き。
合戦の時に兜をなくし、代わりに近くにあった薬缶をかぶったら抜けなくなったとのだいう妄想を抱く馬鹿。
そんなアホだから鉄面皮なのかと思いきや、アルミ缶並にへこみやすいという扱いづらい奴。
注ぎ口から漏れ出すを見る限り、その頭部には脳味噌等の高尚な物は全く存在しないようだ。

最近は、抹茶色のサイトの管理人様に変なものを送りつけては、一人で酷評に怯えている。
『そんなんだったら送るなよ』というツッコミは、かぶり物の反響音で耳に入らない様子。

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SSS―Swallow Soldier Sigma―

SSS―Swallow Soldier Sigma―


真木 棗(まき なつめ)は、スワローソルジャーである。その熱き心とシグマの力で、悪の怪人と戦うのだ。











どうも、やかんです。
「悪堕ちのサイトからリンク張ってもらってるのに、悪堕ち話がいっこも無い現状はマズいんじゃね?」
ということで、とりあえず設定だけ作っていたものをせっこらせっこら書き上げました。
今回のテーマは、『バトル』と『悪堕ち』と『エロ!』でした。
それぞれがどれくらい達成されたのかは不明です。
もしかしたら全然駄目だったのかもです。
『バトル』の前に「厨二」がついたり、『悪堕ち』の後に「(笑)」がついたり、『エロ』の前に「微」とかついてたりしてるかもです。
とにかく、どんなもんか自分ではよくわからないので、コメントとかいただけると泣いて喜びます。
よろしくお願いします。

あ。
エロシーンは後半にならないと出てきませんので、よろしくです。
頑張って読んでいただくか、もしくは最後の方までスクロールしてください。
では、できれば、お楽しみください。













 街には、逃げ惑う人々の悲鳴が溢れていた。
 周囲はまるで大地震の後のように瓦礫が散乱し、ところどころからは白煙が立ち上っている。
 また、その至る所では、己の血で真っ赤に染まったまま動かない人間の身体が幾つも転がっている。身体の一部が消し飛んでいるものもある。
 恐るべきことに、これらの惨状は、たった一人の怪人が為したものであった。
 その怪人は、ハイエナのような外見をしていた。
 全身が灰色の毛で覆われていて、そのあちこちに黒い斑点がある。そしてその姿は、数多くの犠牲者の血で赤く染まっている。
 歯は、長さこそないものの剣のように鋭い。その隙間には、肉片と思しきピンク色の塊が挟まっている。
 特徴的なのが、そのうなじから背中にかけて生えているタテガミである。一本一本の毛が、まるで針のように尖っている。
 怪人は手に持った棍棒を振り回し、辺りを瓦礫の山へと変えていく。

「た……助けて……」

 まだ年端も行かないような少女の、命乞いをする声が虚しく響いた。
 少女は先ほど、自分の父親の頭を怪人の棍棒によって吹き飛ばされたばかりだった。
 だが、それを悲しいと思う余裕は、少女にはなかった。
 ただ自分の命がなくなる恐怖だけに、その心の全てを支配されていた。
 残っていたビルの柱を簡単に砕くと、怪人は、目の前の怯える少女に向かって歯をむき出して嗤った。

「ドグア……ノッモ、ゴキゲゾ。ノッモゴゼヲ、ポワサレ!」

 その怪人はそう言って、手に持った棍棒を少女のすぐ傍に無造作に振り下ろす。
 たったそれだけの動作で、地面が爆ぜた。飛び散った瓦礫が少女の身体を打ち、吹き飛ばす。
 地面に叩きつけられた少女はもはや声も上げられず、全身を襲う鋭い痛みに耐えることしかできない。
 瀕死の少女を見て、怪人は心から楽しそうに嗤う。

「ギハハハハハッ! ガーガ、マボヂギ、マボヂギ。ヒャ、ドゾドゾ、ゴナゲノ、タタボモポロレ、ゴプムメヤズヨ」

 怪人はそう言って、少女の頭上に血まみれの棍棒を振り上げた。
 が。

「グァッ!?」

 いきなり飛来した何かが、その手の棍棒を叩き落した。棍棒は怪人の手から弾け飛び、瓦礫の山の一部に埋もれてすぐに見えなくなる。

「! アゼア!?」

 怪人は手を押さえながら、周囲に向かって叫ぶ。
 と、どこからか、張りのある声が響いた。

「そこまでよ!」

 怪人は、声のする方向に顔を向ける。
 と、そこには。
 ライダースーツに身を包んだ、背の高い人間が、瓦礫の山の上に立って怪人を見下ろしていた。
 ヘルメットをかぶっているためその表情は見えないが、大きく張り出た胸や身体の曲線、そして声の高さなどからしてどうやら女性のようだ。

「幼い子供にまで手を出すその卑劣さ、許さない! 覚悟しなさい!」

 そう叫んで、その人物はヘルメットを脱ぎ捨てた。
 中に収められていた漆黒の長い髪が、風になびく。
 精悍で、美しい顔が現れた。
 真木、棗(まき なつめ)。
 怪人たちの魔の手から街を守る、正義の戦士である。

「来なさい、スワロー!」

 そう叫んで、棗は右手を高く掲げる。
 すると先ほど怪人の手から棍棒を叩き落した何かが、棗の掲げた手にとまった。
 それは、身体の中心に金色の石が埋め込まれた、機械でできたツバメだった。
 ツバメは棗の手に収まると、羽をM字に畳む。棗はそれを、腰の中央に当てた。
 次の瞬間、ツバメから出た帯が棗の腰に巻きつき、ベルトのように自らを固定した。

「変……身っ!」

 棗はそう叫んで、ツバメを横に回転させる。
 ツバメの形が、MからΣへと変わる。

『Sigma!!』

 ツバメに内蔵された電子音がそう叫ぶと同時に、ベルトの前に『Σ』の文字がホログラムのように浮き出た。
 その文字は、高速で回転しながら棗の周囲に風を巻き起こしていく。
 強風に、思わず怪人は目を顰める。
 次の瞬間、棗の着ていたライダースーツが無数の粒子へと分解した。
 漂うそれらは、棗の身体を包む風に乗りながら、色を変えつつ再び棗の身体へと蒸着していく。
 そして最後の風が止むと、そこにはツバメをモチーフにした、空色の戦士が立っていた。
 その顔の美しさを守るかように、頭部の周囲はツバメをモチーフにした装甲によって覆われている。
 大きく前に張り出した胸は、金色で縁取られた、翼をイメージした紋章が刻まれた装甲によって守られている。
 腰とその付近を保護しているのは、柔らかい光を放つ垂れである。その正面には、ベルトと同じく「Σ」の文字が刻まれている。
 しなやかな脚を包んでいるのは、空色の帯だ。細やかな繊維で編まれているのだろう、棗が動く度に、帯は光を屈折させて虹色に輝く。

「この空を泣かせるものは許さない! スワローソルジャー・シグマ、見参!」

 そう言って、棗――シグマは、白い手袋に包まれた指でもって怪人を指差した。

「名乗りなさい、外道!」

 指を指された怪人は、宿敵の登場に血を滾らせながら言った。

「……ガコガリゴス。ヂゲンボゴグ、ガコガリゴスア」

 ガコガリゴスと名乗った怪人は、自分の両手を凝視する。と、その爪がいきなり一メートル近くも伸びた。

「ルン、モンエリビギズ、バムブヌヂモラ、ピダナボ、ポモアッ!」

 そう言って、ガコガリゴスはシグマへと駆け出す。
 鋭い爪から放たれた一閃を紙一重でかわすと、シグマはベルト中央の金色の珠を一回叩いた。

『Sword!』

 電子音と共に、発生した風がシグマの右腕を包む。そして風が止むと、シグマの右手には剣が握られていた。
 シグマはその剣を両手で構え直し、ガコガリゴスに斬りかかる。

「はああああああああああっ!!」
「グルアアアアアアアアアッ!!」

 両者の爪と剣が幾度もぶつかり、火花が幾重にも散り、連続する剣戟音が辺りに響き渡る。
 ガコガリゴスが両手の爪を駆使するのに対し、シグマは一本の剣で相対する。単純計算で二倍の攻撃がシグマを襲っているはずだが、シグマは巧みにそれら全てを受け止め、いなし、かわす。

「――鋭っ!」
「グゥッ……!」

 気合一閃。
 シグマの振るった剣が、ガコガリゴスの右の爪を根元からすっぱりと切断した。
 思わず怯むガコガリゴスに更なる追撃を加えようと、シグマは剣を大きく振りかぶる。
 が。

「……っ!?」

 突如どこからか飛来してきた何かに剣を弾かれ、シグマはバランスを崩す。
 咄嗟に横に飛び跳ねた直後、それまでシグマが居た空間を何かが貫いた。
 それは針だった。
 目標を外れた針は、そのまま近くの死骸へと突き刺さる。と、その死骸は見る間に煙を立てて溶けていってしまった。
 腐食性の猛毒だった。

「く……! 二匹居たの!?」

 遥か上空から雨の如く降り注ぐ針を全て風を纏った剣で叩き落としながら、シグマは歯噛みする。

「ヒャナヲ、ヅズバ、ボルグボドラ! ポギムラ、ゴゼボ、ゲノボア!」

 そうガコガリゴスが上空へ向けて叫ぶ。と、遥か上空から高度を下げてきた新たな怪人が、二人の前に姿を現した。

「ヴヴヴ、ヤザゼドグビ、バムメマプデビ、バビヲ、ギムメズンアパ、カパサ。ピダナラ、ゴモバヂプ、ドポエ、ヂマギエノ、ガダムメゾ」

 ボルグボドラと呼ばれた怪人は、そう言って羽音のような音を立てて笑った。
 スズメバチをモデルとしているのであろうその身体は、毒々しいまでに鮮やかな黄色と黒のマダラ模様をしている。だがそれは捕食者を警戒させるものではなく、被食者に恐怖を与えるためのものだ。
 いったいどこを見ているのかわからない茶色の複眼が、より一層怪人の外見の恐ろしさに拍車をかけている。

「ルラギボゴグ、ボルグボドラア! ギプヘ!」

 そう名乗りを上げたボルグボドラは、腕から毒針を乱射する。

「ピダナビ、モザゼメ、マナズパ! ポギムラ、ゴゼサ、ポゾヅ!」

 ガコガリゴスもそう叫び、残った左手の爪を振るってシグマに斬りかかる。
 これではまずいと判断したシグマは、風の力を借りて一気に十メートル程飛び退った。
 そして自分の腰からツバメを取り外すと、剣の鍔へと装着した。

『Sigma-Drive!!』

 電子音がそう叫ぶのと同時に、ツバメから発生した旋風が剣を幾重にも取り巻く。
 シグマはその剣を八双に構え、ガコガリゴスへと突進していく。

「ルン、ヅピアザペア!」

 そう言ってボルグボドラが撃ち出した針は、しかし全て剣を取り巻く風に弾かれ、シグマの身体へは届かない。

「……ギハハッ」

 その様子を見てガコガリゴスは歯をむき出して笑う。と、ガコガリゴスのタテガミから突如真っ赤な炎が吹き出た。炎はすぐに全身を包み込み、ガコガリゴスは一つの炎の球と化す。
 その炎の中でガコガリゴスは爪を構えなおすと、シグマへと走り出した。
 そして、風と炎が交錯する、刹那。

『Spreme-Sigma-Slash!!!』

 そう剣につけられたツバメが電子音を叫ぶと共に、巨大な風の刃と化した剣が、ガコガリゴスの赤く燃え盛る身体をその鋭い爪ごと真っ二つに切り裂いた。

「ガッ……!」

 身体を上下に切断されたガコガリゴスの身体中に、無数のヒビが入る。
 そしてガコガリゴスは一声呻いたかと思うと、次の瞬間爆発した。
 轟音と共に爆散するガコガリゴスの肉体を見て、ボルグボドラも焦ったのだろう。

「ミッ、ゴコゲメゴペ! ムシラパバザフ、ゴナゲヲ、プダザデメヤズ!」

 そう捨て台詞を残し、全速力で上空へと逃げていく。
 しかし、それをシグマは許さなかった。

「逃がさないわよ!」

 シグマはツバメを剣から外し、再びベルトに装着する。そして、中央の珠を今度は二回叩いた。

『Shooter!』

 電子音と共に風が発生する。そしてその風はシグマが持っていた剣を包み込んだ。
 そして風が止むと、今度はシグマの手にはクロスボウが握られていた。
 シグマはすぐさまツバメを取り外し、それを手に持っているクロスボウに装着する。

『Sigma-Drive!!』

 電子音がそう叫ぶのと同時に風が舞い起こり、周囲の空気がクロスボウの内部へと吸い込まれていく。
 シグマは遠ざかるボルグボドラの背中に向けて、狙いをつける。
 そして、クロスボウの引き金を引いた。

『Supreme-Sigma-Shoot!!!』

 電子音の咆哮に合わせ、ツバメの形をした高エネルギーの矢が、クロスボウの先端から放たれた。
 それは圧倒的な速度で飛び、遠ざかるボルグボドラの胸部を背後から貫いた。

「ガァッ……!」

 エネルギーの余波がボルグボドラの身体中を駆け巡り、ボルグボドラの全身にヒビが入っていく。

「プド……! ポボゴゼサ、ビンセン、ソモピビィィ……!」

 ボルグボドラは、身体中をヒビに覆われながらそう悔しそうに呻く。
 そして。

「散りなさい……」
「グアアアア――ッ!!」

 シグマがそう言って背を向けるのと同時に、ボルグボドラの身体が爆発した。
 シグマは周囲を見渡し、他に敵が潜んでいないことを確認すると、ツバメをクロスボウから取り外し、ベルトに再装着する。
 そしてシグマがツバメを回転させ、M字型にすると、ツバメはベルトを回収し、どこへともなく飛び去った。
 それと同時に変身が解除され、シグマの装甲が元々着ていたライダースーツへと戻る。
 変身解除をしたシグマは、へたり込んでいる少女にすばやく応急処置をすると、バイクに乗って風のように去っていった。



Σ



 地上より約二キロほど下に、その建物はあった。
 城である。
 通称、星魔城。
 地上に跋扈する異形の怪人たちの、その総本山と言える場所だった。
 その最奥、一際大きな空間の中。
 円形の重厚なテーブルを囲むようにして、四人の怪人が座っていた。

「『スワローソルジャー・シグマ』……、パ」

 水晶玉に映るシグマの姿を見ながら、まるで玉座のように荘厳な椅子に座す怪人が、そう呟いた。
 水晶玉の映像は段々とぶれ、そしてやがて何も映らなくなる。

「ガコガリゴスモ、ボルグボドラノ、ヤザゼズモラ……バ」

 そう言って、怪人は小さく息を吐いた。
 怪人の名を、セファイラダスという。この城の主であり、全ての怪人の頂点に立つ者である。
 口元から大きく伸びる、上を向いた二本の牙。そして、太く、硬く、黒光りする長い鼻。
 その象をモデルとしたフォルムは、見る者に理屈抜きの威圧感と畏怖とを与える。

「……ゴナゲラ、ポゼヲ、オグゴノグ、タレアンドラ」
「アパザ、ダギヂョパザ、ギムメマヒャ、バギボダ、コヅ。ゴギムザビラ、ヌジ、アムメダ」

 そう言って、セファイダラスの右隣に座っている、タレアンドラと呼ばれた怪人が肩をすくめた。
 女の怪人である。「人間離れした」とでも表現するほかないような、完璧なプロポーションをしている。
 その全身をくまなく覆う鱗は、濡れたように艶かしく光を反射している。
 時折唇をなめる舌は、ヘビのように二枚に分かれている。吸い寄せられるような程に鮮やかな赤色である。
 と、落ち着いた場の空気を打ち破るように、獰猛な叫び声が聞こえた。

「ムシラ、ゴゼビ、ヤザデメプゼヨ、コヅ!」

 テーブルを叩きながら、セファイダラスの目の前に座っている怪人が、興奮を隠さずに叫んだのだ。

「フギクン、ボジピダベ、プルゲナーヴァ」
「ドジャ、ゾグダ! ラヤプガギムヲ、ポゾヂマプメ、グフグフ、ヂメンアヨ、ゴゼラ!」

 タレアンドラの言葉に、プルゲナーヴァと呼ばれた怪人はそう言って全身を震わせる。
 大きく突き出た巨大な鼻、そしてその下から覗く二本の牙を見れば、その怪人がイノシシをベースにしていることはすぐにわかるだろう。
 いかなる刃物をも通さない剛毛を全身に生やした姿は、まさに生きる戦車と言っても過言ではない。

「ブヒヒ、ガギムボビプ、ヤワザパドグアゾ? ポボゴゼボ、ピカヲ、ムピダヂマザ、ダホパヂ、ピノミサギギオ、ゴノグモ、ノグ、ギメノマムメノ、ギザゼベェンアヨ!」

 そう言ってプルゲナーヴァは再び机を叩く。重厚なテーブルが、その衝撃でまるでプラスチックの下敷きのようにぐらぐらと震える。恐るべき力である。
 と、甲高く、どこか湿った笑い声が空間に響き渡った。

「クケケケケッ! ゴギゴギ、メンゲ、ヨアゼ、マゼメンホォ? ミムマァ、ドボ、カパニマギバプミヲ、モヒマザ、オグアァ」

 興奮のあまり口の端から涎を垂らすプルゲナーヴァを見て、セファイダラスの左隣に座っていた怪人が嘲笑ったのだった。
 その身体は暗い緑をしていて、あちこちからは植物のツタの様なものが無数に垂れ下がっている。
 その触手のうち、いくつかからは様々な色をした粘液が滴り落ち、怪人が座っている椅子、そして床を不気味に濡らしている。
 座っている四人の怪人の中でも、外見の異様さが際立っている。それ程に、その姿は毒々しい。

「ポギムヨジ、ゴゼヲ、ギパデメプゼヨォ、コヅ、ゴゼボログパ、ヨムトオグナプ、ヤゼズダァ」
「バンアモォ? ヤダギソモピサ、ミムホヂボムメンヒャ、ベゲヨ、ストゥラマトリ。ゴナゲラ、ゴモバヂプ、ポグソグデギエノ、ヂメバ、ブヒヒヒッ!」
「グズデェヨォ。ヅプバプモノ、メネェヨジラ、ナヂダァ。メネェバンパ、プグポノノ、ゴパヅポノヂパ、パンサゲザンベェ、オメギボグ、アゾォ? ナ、ノエズサクマヒャァ、ヂョグサベェパァ。クケケケッ!」

 そう言って、ストゥラマトリと呼ばれた怪人は身体をおかしそうに揺する。

「クマヒャベェ! ギボヂヂアム、ムムメンアゾ!」
「ガガ、ダザビセリン、アムマパァ。ワズパムマバァ、クケケケッ!」
「……ポゾヅ!」

 ストゥラマトリの挑発に、プルゲナーヴァは椅子を蹴飛ばして立ち上がる。

「ヤネバギパギ、プルゲナーヴァ!」
「ポゾヅ! ポギムラ、ポゾヅ!」

 タレアンドラの制止も聞かず、プルゲナーヴァは助走をつけてストゥラマトリへと突進する。
 だが。

「……カパサァ」

 勢いよく突き出されたプルゲナーヴァの拳は、ストゥラマトリではなく、何故かプルゲナーヴァ自身の顔を捉えていた。
 ぐしゃりという音と共に、プルゲナーヴァの拳が顔へとめり込む。

「ブ、ブヒィッ!?」
「……レェ、ゴノムマヨジノ、『ソグサルパギ』ンアバァ、ゴナゲラァ」

 そう言ってストゥラマトリは目を細める。

「ス、スゴ、ギメェ……!」
「クケケ、オグアァ、ヒクンボ、メボガヒラァ?」

 自分の顔を抑えてのた打ち回るプルゲナーヴァを、ストゥラマトリは椅子に座ったまま見下す。と、セファイダラスが口を開いた。

「……バズロオ。エラ、ムシラ、ゴナゲサギプ、モギグボアバ、ストゥラマトリ」
「ガガ、ドグアァ」
「……ルヌ。エラ、ゴナゲモ、プルゲナーヴァビ、ムシボ、ダンパペンヲ、ニモネヨグ」

 その言葉に、プルゲナーヴァは跳ね起きて顔を輝かせ、ストゥラマトリは露骨に顔をしかめた。
 セファイダラスは、何か言いたそうなストゥラマトリを制止して言う。

「……ダギソナエ、ピペ。ケムビ、ピョグジョプヂガゲ、モギグムノジラ、バギ。パプヒ、ヅピバモピビ、ヅピバヨグビ、ヂパペズサギギ」
「……ナァ、ドゼバザ、ギギパァ」

 セファイダラスの言葉にストゥラマトリはしぶしぶ頷く。

「ブヒヒ! ドグモピナゼカ、ダムドプ、ギプヘ! ゴギ、ストゥラマトリ、メェアヅバヨ!」
「……ルン。ナァ、ゴゼラ、ピダナサナペマ、ガモビエノ、ギプモ、ヅズダァ。モムモモ、ギムメ、ポゾダゼメ、ポギヨォ。クケケケッ!」

 プルゲナーヴァとストゥラマトリは互いに罵り合いながら、部屋を出て行った。



Σ



 棗は、右手に海の見える高速道路をバイクで疾走していた。
 幾台もの車を軽々と追い抜きつつ、棗は先日のことに思いを馳せる。
 今までは、怪人が白昼堂々、街の中心部を襲撃することなどなかった。
 加えて、怪人が連れ立って現れたのも気にかかる。
 あまり統率が取れてるとは言えなかった為になんとか倒せたが、息の合った攻撃を仕掛けられていたら危なかったかもしれない。
 今はまだなんとかやっているが、そのうち他の者と協力する必要が出てくるかもしれない。
 なるべく早く、誰かと連絡を取ったほうがいいだろう。
 ……と、そこまで考えたところで。


 道路の前方から、車が飛んできた。


「――!?」

 車は棗のバイクの少し手前で地面に落ち、窓ガラスの破片を撒き散らしながら大きくバウンドする。
 棗は咄嗟にハンドルを切り、ブレーキをかけた。バイクが、後輪を滑らせながら倒れる。
 その低くなった棗の頭上すれすれを、車が掠め飛んだ。
 中の人間達と目が合った。
 家族らしき彼らは、信じられないと言った表情のまま後方にすっ飛んでいった。
 少し経って、後ろから悲鳴と破壊音が交じり合ったような音が、棗の耳に届く。

「ブヒヒ! ヅセェヨプ、モンアバ! ヅパムモ、ヅズヘ!」

 そう言って現れたのは、イノシシを象った怪人だった。プルゲナーヴァである。
 その両足の筋肉は、丸太のように膨れ上がっている。
 先ほど棗に向かって飛んできた車は、プルゲナーヴァがその足で蹴り飛ばしたものだった。
 高速で走っている鉄の塊を真正面から蹴り飛ばしたというのに、その身体のどこにも損傷は見受けられない。
 恐るべき筋力と頑丈さだった。

「ダガポギ、シグマ! ソグジピボゴグ、プルゲナーヴァダナサ、ガギメヂメヤズ!」

 プルゲナーヴァはそう言って両手を広げた。
 棗はすぐさまバイクを降りるとツバメを召喚し、それを腰に当てる。

「変……身っ!」

 ツバメを横に倒すのと同時に、棗はプルゲナーヴァに向かって駆け出す。その身体を、巻き起こる風が包む。
 風が止んだときには、既に棗はシグマへと変身を遂げていた。
 瞬時に変身したシグマは剣を出現させると共に、勢いを利用してそのままプルゲナーヴァの脳天へと剣を振り下ろす。
 だが。

「きゃっ!?」

 恐るべきことに、プルゲナーヴァの脳天に振り下ろされた剣は、そのまま逆方向へと弾かれてしまった。

「く……!」

 シグマはすぐさま体勢を立て直し再び斬りかかるが、どのように剣を振るっても、その全てにおいてプルゲナーヴァに少しも傷を与えることができない。
 その硬すぎる剛毛によって、全て弾かれてしまうのだ。
 プルゲナーヴァは大きく笑うと、シグマに向かって大振りの蹴りを繰り出した。
 普段なら造作もなくかわせるはずのものだったが、剣を弾かれたばかりで体勢を崩していたシグマは、回避を諦め咄嗟に剣で防いだ。
 正確に言えば、防ごうとした。

「くあああっ!」

 剣が、プルゲナーヴァの蹴りを受けたところから真っ二つにへし折られた。
 それでもなお衝撃を殺しきれず、シグマの身体が後方へと吹っ飛ぶ。
 遥か後方に吹き飛んだシグマの身体は地面に二、三度跳ねた後、燃え上がる車の煙の中に消える。
 プルゲナーヴァは、更に追撃を加えようと近づく。
 しかし一歩踏み出す前に、煙を突き破って飛び出した幾つもの風の弾丸が、プルゲナーヴァを襲った。
 が。

「プヒヒヒヒ! ヌアア、ヌアア、バンオヤムメノ、ヌアア! ピダナバンパボ、リンヒャプバ、ポグセピサ、ピプモエノ、ゴノムメ、ギズボパ!?」

 それらの弾丸は全て、プルゲナーヴァになんらダメージを与えることなく弾かれてしまう。
 シグマはクロスボウを手に、唇を噛んだ。
 剣も効かず、銃も効かない。こんな強敵は初めてだった。

「ブヒ、ドゾドゾ、ゴワジビ、ヂメヤズヘ!」

 プルゲナーヴァはそう言い、相撲の四股を踏むような体勢をとる。プルゲナーヴァの両足の筋肉が、血を含んで二回りほど肥大する。
 その体勢から繰り出される攻撃は、体当たり。
 何の変哲も無いその技は、しかし鋼の硬度と莫大な速度を与えられることで常軌を逸した一撃となりえる。
 シグマは覚悟を決めると、ベルトの金色の珠を三回叩いた。

『Swift!』

 電子音と共に、発生した風がシグマの右手を包み込む。と、クロスボウは瞬時に粒子となり、風に乗ってシグマの手から消える。
 同時に、シグマの背中に純白の光が迸る。
 それは、一対の翼だった。
 シグマは腰からツバメを取り外すと、中央の金色の珠を叩いてから空に向かって投げる。

『Sigma-Drive!!』

 その声と共に、ツバメはそのまま翼を広げ、上空へと飛んだ。
 後を追うようにして、シグマも遥か空へと舞い上がる。

「ヂベエエエエエエエエエッ!」

 咆哮と同時に、プルゲナーヴァの足の下の地面が爆発した。
 驚異的な筋力により爆発的に加速したプルゲナーヴァの体躯は、一つの鋼の砲弾となって地面を抉りながら駆ける。
 一方、ツバメは遥か彼方からプルゲナーヴァに向けて、空気を切り裂きながら突っ込んでいく。
 それに導かれるように、シグマは上空で一回転すると、重力を利用し全速力で飛んでいく。
 そして、シグマがキックの姿勢をとると共に、前方を飛んでいたツバメが分解した。その部品は風を巻き起こしながら、シグマの足に装甲を形成する。

「ソグネギセピィ!!」
『Supreme-Sigma-Strike!!!』

 プルゲナーヴァの鼻先に、シグマのキックが炸裂した。
 固いもの同士が衝突する、聞く者の全身を震わせるような轟音が響き渡る。
 そして、両者は共に弾け飛んだ。
 吹き飛んだ二人は、しばらくはそのまま動けないでいた。
 しばしの静寂が、周囲を包む。

「……ッ、ブ、ブヒヒ……」

 そして。
 先に立ち上がったのは、プルゲナーヴァだった。
 プルゲナーヴァは立ち上がらないシグマを見て、よろめきながらも笑う。

「ブヒヒ……! ヤムマホ! ゴゼパ、シグマヲ、マゴヂ……ブガッ!?」

 だが、プルゲナーヴァの勝利宣言は、吐血によって遮られた。
 プルゲナーヴァは信じられないものを見る目で、己の口から流れ出た血を見つめる。
 次の瞬間、プルゲナーヴァの鼻を起点とし、一気にヒビがプルゲナーヴァの全身を覆った。 

「プギ、ナ、ナダパ……!」

 プルゲナーヴァは、ヒビ割れた自分の身体を見つめる。そのヒビの間からは、金色の光が漏れ出している。
 それと同時に、プルゲナーヴァの視界の隅で、ふらつきながらもシグマが立ち上がるのが見えた。

「……どうやら、効いた、ようね」

 全身から金色の光を漏らすプルゲナーヴァを見て、シグマは息も絶え絶えに言う。

「プガ……! グ、プドサァ……!」

 ひび割れた身体を無理やり動かして、プルゲナーヴァはシグマに近づこうと歩き出す。
 しかし数歩も歩かないうちに、プルゲナーヴァは膝をついてしまう。
 金色の光に包まれながら、プルゲナーヴァは身体中を震わせる。

「ガ、ガァ……っ! プド、ミプヂョグサ……!」
「……散りなさい」
「プド、シグマァァァァァァァァッ!!」

 そして咆哮と共に、プルゲナーヴァの身体が爆発した。
 何度も爆発を繰り返しながら、プルゲナーヴァの身体はどんどん小さくなっていく。
 そして最後に一際大きく爆ぜた後、プルゲナーヴァの身体は完全に消滅した。

「……ふう」

 もうもうと立ち上がる白煙を見て、シグマは深く息を吐く。
 今までにない強敵だった。
 速さで相手を翻弄しつつ戦うシグマにとって、最悪の相手だったと言っても過言ではない。
 最後の技が効かなかったら、もうシグマに打つ手は無かった。
 なんとか倒せたからよかったが、やはりこれからは誰かと協力しつつ戦わなければいけないだろう。
 ラムダかオメガ辺りにでも、連絡をとろう。
 そう考えた、次の瞬間。


 シグマの両側の地面が跳ね上がり、ばね仕掛けのように閉じた。


「……!?」

 疲労困憊していたシグマは咄嗟に動けず、その中に閉じ込められる。
 それは、巨大な植物だった。
 地面に擬態していた二枚の葉が、まるでハエトリソウのように、シグマを両側からその内側に捕らえたのだ。
 シグマが反応を起こす前に、植物の内側に突き出た何個もの蕾が、一斉に花開く。
 そしてそれらの花から、黄色い花粉のようなものが噴き出した。
 急な変化についていけず、シグマはその粉を吸い込んでしまう。
 吸い込んだ瞬間、甘い香りと恍惚感が、シグマの脳を襲った。

「……マズいっ!」

 シグマはすぐさま剣を出現させ、風で粉を吹き飛ばすと同時に剣を大きく振るう。
 植物は、思いのほかあっけなく切り裂かれた。
 その切れ目から飛び出したシグマは、剣を構えながら周囲を見回す。しかし、どこにも怪人の姿は見られない。
 後ろを振り返れば、植物はシグマに切られたところから煙を出しつつ、急激に萎んでいくところだった。

「逃げられたか……」

 シグマはしばらく周囲を窺っていたが、一向に追撃がこないのを確認すると、変身を解除した。
 そして、倒れたバイクを起こすと、深く抉れた道を避けるようにしてその場から去っていった。

「……クケケ……」

 遠く離れたところからその後姿を見つめる、ストゥラマトリに気づかないまま。



Σ



 それから、一週間ほど経った頃。
 棗は、市内の教会にいた。
 棗の座っているすぐ横に伸びる赤い絨毯は、乙女の純潔を証明するかのように赤い。
 前方の祭壇の前には、黒衣に身を包んだ神父が聖書を手に佇んでいる。
 そして神父の前には、おそらくは人生で一番幸せなひとときを迎えているだろう一組の男女の姿が在った。
 純白のドレスを着た花嫁は棗を見ると、幸せそうに笑う。それにつられて、棗も笑う。
 花嫁の名は、藤川峰子。棗の、古くからの友人だった。
 棗は、峰子に対して微かな羨望と多大な祝福が混じった視線を送りながら、峰子のこれまでについて思いを馳せる。
 峰子は怪人の一人に、大切な弟を殺されていた。
 その怪人は棗が倒したが、それで峰子の弟が帰ってくるわけでもない。
 峰子は荒れ、一時は拒食状態にまで陥った。
 そんなときに峰子を支えたのが、今現在峰子の隣で笑っている、藤川浩二だった。
 彼の愛情、そして献身的な世話により、峰子は徐々に元気を取り戻していった。
 そして今、二人はやっと結ばれようとしている。
 二人がこれまで歩んできた苦しい道のりを思うと、自然と棗の目には涙が浮かんだ。
 涙で滲む視界の中で、神父が花嫁に向かって問いかけるのが見える。

「汝、藤川峰子は、夫、藤川浩二と共に生き、健やかなる時も、病める時も、常にその傍に在り、永遠に愛することを誓いますか?」
「……誓います」

 峰子は、夢見心地といった様子で頷く。

「……では、誓いのキスを」

 神父の言葉に新郎は頷き、花嫁の顔にかけられたヴェールをそっと外す。
 峰子はそっと目を瞑り、軽く上を向く。
 二人の唇が、近づく。
 そして。


 浩二の頭部が、風船のように膨張した。
 そうしてから、風船のように破裂した。


 ぱん、という少し気の抜けるような音と共に、新郎の頭から血と脳味噌の交じり合った液体が飛び散る。
 花嫁の純白のドレスが、美しい顔が、真っ赤な鮮血に染まる。
 血煙が立ち込める中、新郎の頭から何かが生えているのが見えた。
 それは、暗く澱んだ色をした植物だった。
 植物がうねうねと動くと同時に、浩二の身体が見る間に萎んでいく。
 そして浩二の身体が崩れ落ちるのと同時に、その植物も動かなくなった。

「……あーあ、折角のドレスが汚れちゃった」

 しかし。
 目の前で最愛の人間の頭部がなくなったというのに、峰子は全く動じていなかった。
 まるでちょっとした汚れでもついたかのように、峰子は浩二の血液に染まった自分のドレスを見る。

「しょうがないから、これ、脱いじゃおうかしら」

 こともなげにそう言い、峰子はいきなりウェディングドレスを脱ぎだす。
 そして下着も脱いで全裸になると、同様に血まみれになっている神父の方へ向き直った。

「ほら、神父さんの服も汚れてしまってますよ?」

 そう言って、突如峰子は神父の服をも脱がし始めた。何故か、神父はそれにまったく抵抗をしない。虚ろな目をしたまま、峰子のなすがままになっている。
 峰子は瞬く間に神父のパンツまで脱がすと、その股の間にぶら下がっているものを舐め始めた。

「あは……神父様のオチンポ、臭くって、すてきぃ……」

 うっとりとした表情でそう呟きながら、峰子は神父の隆起したペニスに何度も口付けをする。
 大きく口を開けて肉棒にむしゃぶりつくと、峰子はそのまま顔を前後に動かす。空気の出入りするジュポジュポという卑猥な音が、神聖な教会内に響く。
 と、神父の身体が一回大きく震えた。同時に、大量の精液が峰子の口内に放出される。

「んぐ、んぐ、んぐ……」

 峰子は嬉しそうに目を細めると、そのまま喉を動かして精液を嚥下し始めた。

「え……?」

 その一連の出来事に、棗は言葉を発することができなかった。
 目の前で行われていることがあまりに常軌を逸脱しすぎているため、脳がそれを正しく認識できないのだ。
 と。

「クケケケケケケケケッ!!」

 空気を切り裂くように、甲高い笑い声が教会中に響き渡った。
 棗が咄嗟に後ろを振り向くと、そこには触手を全身から生やした奇怪な化け物が立っていた。
 ストゥラマトリだった。
 花嫁の痴態に興奮したのだろうか、その股間に在る肉棒は隆々と勃起している。通常の男性よりも一回りも二回りも大きいそれは、すでに先端から透明な汁を分泌している。
 その異形の姿を見た参列者たちは、しかし棗を除いて全く驚かなかった。
 自らの生命を脅かす存在がいるというのに、何の興味も湧いていないようだ。
 目の前で新郎の頭部がなくなったことも、花嫁が神父の肉棒をしゃぶり続けていることも全く気にかけず、参列者たちはあたかも式が滞りなく進行しているかのように振舞っている。
 ただ一人、棗だけが、この場の異常を認識できていた。
 ストゥラマトリは両手を腹に当てておかしそうに笑いながら、棗に尋ねる。

「クケケケケケッ! どうだぁ、気分はぁ?」
「お前……私たちの言葉を喋れるの!?」

 突如として人語を話したストゥラマトリに、棗は驚く。

「当たり前だろぉ、俺を今までの馬鹿共と一緒にすんじゃねぇよぉ。お前らの言葉くらい、簡単だっての」
「これは、お前が……!?」
「さぁ? そうだと言ったらぁ?」

 棗は、音がなるほど強く奥歯を噛み締めた。

「許さない……!」

 と、どこからともなく機械のツバメが飛来し、棗の手の中に納まった。
 棗はそれを腰に当てると、叫ぶ。

「お前は、絶対に許さない!」

 ツバメの身体から出たベルトが、棗の腰へと巻きつく。

「変……身っ!」

 棗はそう力強く叫んで、ツバメを横に倒す。

『Sigma!』

 電子音と共に「Σ」の文字がベルト中央に浮かび、高速で回転する。
 同時に棗を取り巻くように竜巻が発生し、棗の身体を覆い隠す。
 そして竜巻が止むと、そこには空色の戦士が立っていた。
 棗、いやシグマは目を怒りで燃やしながら、パンティを脱ぎ、床に横たわって股間を見せ付けるように足を広げた。

「この空を泣かせるものは許さない! スワローソルジャー・シグマ、見参!」
「クケケケケケケケケケッ!!」

 ストゥラマトリが爆笑した。

「……え?」

 笑われたシグマは少しの間きょとんとしていたが、やがて自分のとっている行動に気づくと悲鳴を上げた。

「な、なんであたし……いやぁっ!!」
「随分サービスがいいんだなぁ、スワローソルジャーってのはぁ。クケケケッ!」
「こ、この……」

 パンティを履き直したシグマは、怒りと羞恥で顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

「よ、よくも……! あたしに何かしたわね!」
「さぁ? そうだって言ったらぁ?」
「……許さない!」

 そう言って、シグマは腰の珠を一回叩く。

『Sword!』

 電子音が叫ぶと共に、風がシグマの右腕を包み込みながら剣を生成する。

「はあああああっ!!」

 シグマは咆哮と共に、剣を構えてストゥラマトリへと走り出す。
 ストゥラマトリは身体中の触手をうねらせながら攻撃を繰り出すが、シグマは自分へと伸びてくる触手の全てを切り捨てつつ、ストゥラマトリと距離をつめる。
 切り裂かれた触手の切り口から吹き出た液体が、シグマの全身を濡らす。液に触れた部分がじんわりと熱を帯びるが、シグマはそれに全く構わずひたすらストゥラマトリへと突き進んでいく。
 そして、ストゥラマトリの本体が、シグマの間合いに入った。

「もらったっ!」

 シグマはそう叫ぶと、ストゥラマトリへと体当たりをした。そして、そのままストゥラマトリを押し倒す。
 仰向けに倒れるストゥラマトリに馬乗りになりながら、シグマはストゥラマトリの顔へと剣の切っ先を突きつける。

「ここまでよ! その罪、悔い改めなさい!」

 そう言ってシグマは、剣で自分の布地を切り裂いた。胸と股間が、大きく露出する。
 布が無くなったことで見えるようになったのだが、シグマの股間は、既に熱く濡れそぼっていた。
 そのことに気づかないまま、シグマは剣を放り捨てるとストゥラマトリに向かって勝ち誇ったように言う。

「そのエネルギーの全て、搾り取ってやるわ! 覚悟しなさい!」

 そしてシグマは、ストゥラマトリの陰茎の上に、自らガニ股になって腰を下ろした。
 ずぶっ! と言う音と共に、ストゥラマトリの巨大な肉棒がシグマの中に深々と埋まる。

「んはああっ!」

 ストゥラマトリの肉棒がシグマの中に入った瞬間、シグマは嬌声を上げた。軽く達してしまったのだ。
 触手から浴びた、液体の効果だった。
 ストゥラマトリは触手から、既存のものとは比べ物にならない効果の媚薬を分泌することができるのだ。
 そんなことは知らないシグマは、自らの身体の変調に当惑するのみだ。
 シグマはイったことを気取られないよう、顔を引きつらせながらもなんとか笑みを浮かべながら、ストゥラマトリを見下ろす。

「……っふ、ど、どうかしら、あたしの中は? あまり使い込んでないから、よく締まるでしょう?」
「あぁ、確かにこれは……気持ちいいぜぇ」

 それに対し、ストゥラマトリは顔がニヤつくのを止めることができない。
 それを余裕からくる笑みだと捉えたのだろう、シグマはやや焦りながらも気丈に言い放つ。

「ふ、ふん、余裕ぶってるのも今のうちよ。すぐに昇天させてあげるわ!」

 そして、シグマは歯を食いしばりながら、自ら腰を上下に動かし始めた。

「んはぁっ! はぁっ、あっ、はあぁっ!!」

 ストゥラマトリのペニスが膣内を一往復するごとに、シグマの口から嬌声が漏れる。
 異常とも言えるほどに分泌された愛液が、摩擦によって白く泡立つ。
 二人の結合面から、ぐちゅぐちゅという卑猥な音が奏でられる。

「んんっ! あは、んあああっ! な、なんでこんなに……っ! あああっ!」

 今まで経験したことの無い快感に、シグマは思わず身悶える。
 強力な媚薬により発情させられた身体は、人外の大きさのペニスをも悠々とくわえ込んでいる。シグマは信じられない量の快感を味わっていた。
 少しでも気を抜けばすぐさま再び達してしまいそうになるのを堪え、シグマは必死に腰を動かす。
 そんなシグマを、ストゥラマトリは笑う。

「クケケッ! なんだシグマ、お前感じてるのかぁ?」
「なっ、なにがっ! そんな、あんっ、ことっ! あるわけ、ふあああっ! な、ないでしょっ!」
「クケケケッ! そうかぁ。じゃあ、もっと気持ちよくしてやるよぉ」

 ストゥラマトリがそう言うと同時に、シグマの体内でストゥラマトリの陰茎が変形した。
 これまでですら十二分に大きかったと言うのに、更に太く。そして、更に長く。
 加えて、その側面全体に球状の突起が浮き出た。
 その巨大な凶器を、ストゥラマトリは自らも腰を動かしてシグマの胎内に叩き込む。

「あああっ!? な、なにこれぇっ!?」

 自分の体内での陰茎の突然の変化に、シグマの声のトーンが更に上がる。
 今までよりも更に上の快感に、シグマはただただ翻弄されるしかない。
 もはや自ら腰を動かすこともできず、ストゥラマトリから与えられる刺激により、シグマの意識が漂白されていく。

「ああああっ! うあああっ、んあああああっ!! く、ふあああああっ!!」

 既にシグマには、絶頂を堪えることができなくなっていた。
 ストゥラマトリが一突きするごとに、シグマの頭の中で閃光が弾け、意識が飛ぶ。
 視界が真っ白になり、口からは喘ぎ声と唾液が漏れ、股間からは大量の愛液が迸る。
 一方、突き入れるたびに絶頂に達するシグマの締め付けを受け、ストゥラマトリもどんどん頂上へ向けて上り詰めていく。
 そして。

「……クゥッ!」

 呻き声と共に、ストゥラマトリのペニスが大きく震えた。そして、ペニスは何度も脈動を繰り返しながら、大量の精液をシグマの子宮へと注ぎ込んでいく。
 その量は凄まじく、子宮に収まりきらずに溢れ、二人の結合面まで漏れ出てくるほどだった。

「あ……中に、たくさん……」
(これ……妊娠、しちゃうかも……)

 シグマは朦朧とする意識で、そう思った。
 怪人の子を宿す、その事実はおぞましい。が、これでストゥラマトリの力を搾り取ったと信じるシグマは、よろよろと立ち上がりながら言った。

「ど、どう……。これでもう、お前は、無力よ……」

 それを受けて、ストゥラマトリは笑いながら答える。

「クケケケッ! あぁ、そうだなぁ。……面白いから、一旦解いてやるよぉ」

 ストゥラマトリはそう言って、指を鳴らした。
 その途端、シグマは自分が一体何をしていたのかを把握した。
 把握して。
 絶叫した。

「い……いやああああああぁぁぁぁっっっ!!!」

 シグマは自分の頭を抱えて、地にうずくまった。
 自分は一体、どれほど愚かなことをしていたのか。
 混乱と後悔、そして絶望がシグマの精神をかき乱す。
 股間から溢れ出る白濁液が、シグマの絶望を加速させる。
 頭を抱えてうずくまるシグマの身体に、ストゥラマトリの触手が絡みついた。

「きゃ……!?」

 何もできないままに、シグマは何本もの触手に身体を拘束される。
 そしてそれらの触手のうちの一本が、白濁液が滴るシグマの秘所の後ろ、ピンク色の窄まりにその頭部を突っ込んだ。

「ひぁっ……!?」

 予想外の刺激に、シグマの意思とは関係なく口から声が漏れる。
 その開いた口に、別の触手が侵入した。

「むぐっ!?」

 触手はシグマの口の中で大きく膨らむ。と、その先端だけが伸縮を繰り返し始めた。シグマの喉が、触手の先端により蹂躙される。
 同時に、菊門の触手の先端から、どろりとした粘性の液体がシグマの腸内に向けて流し込まれた。

「んん――っ!!」

 シグマは口を塞がれたまま悲鳴とも喘ぎ声ともつかぬ声を上げる。
 侵入した液体はシグマの粘膜に触れると、その箇所に猛烈な快感と更なる疼きを生じさせる。
 ある程度シグマの腸内を満たした液体は、今度は再び触手によって吸い取られる。

「ふぐ、んんんんっ!! んふ、ふううううっ!!」

 排泄感にも似た恍惚感に、シグマは髪の毛を振り乱して悶える。しかし一度液を抜かれた腸内は、更なる刺激を求めて猛烈に疼きだす。
 そこに再び、同じ粘液が注ぎ込まれた。敏感になっている腸壁は、液が侵入する感覚だけで信じられないほどの快感をシグマに送る。

「んふ――っ!! ふあ、んふあああっ!! んん――っ!!」

 何度も注入と排出を繰り返され、その度に狂おしいまでの疼きと未知の快感がシグマを襲う。
 喉を蹂躙する触手ですら、もはやシグマにとって快感を与えるものでしかなくなっていた。
 何度も何度も身体を痙攣させ、絶頂に達し続けるシグマを見ながら、ストゥラマトリは笑う。

「クケケケッ! どうだぁ、俺の媚薬粘液の味はぁ? すげぇだろ? そうそう、折角だから俺の能力を教えてやるよぉ」

 もはや何も聞こえていないであろうシグマに構うことなく、ストゥラマトリは得意げに話し出す。

「この俺の能力は、『断罪』なんだぁ。なあ、生き物って、生きるためには他の生き物を殺すだろぉ? その罪は、どうなると思う? 蓄積、するんだよぉ。『業』としてなぁ。食物連鎖みたいに、どんどん上位のものに、業は蓄積していくんだぁ」

 そこで、シグマの身体が一際大きく震えた。ついで、股間から透き通った黄色い液体がちょろちょろと漏れ出す。とうとう、刺激に耐えられずにシグマが失禁したのだった。
 半ば焦点のあっていない目をしながら股間から小便を漏らすシグマを、ストゥラマトリは舐めるように見ながら続ける。

「お前、俺らの仲間をたくさん殺したろぉ? そんで、そいつらは人間をたくさん殺してる。その殺された一人ひとりの人間が、鳥やら豚やら牛やらを何頭も殺してる。その全ての業が、お前に溜まってるんだよぉ」

 そう言って、ストゥラマトリは両手を広げ、名乗った。

「俺は断罪の王、ストゥラマトリ! 俺は、俺の花粉を吸い込んだ奴の精神を、そいつの業に応じて操ることができるんだぁ」

 それと同時に、触手が一斉にシグマの身体から離れる。支えを失ったシグマの身体は、そのまま床へと崩れ落ちる。その肛門からは、半透明の粘液がとろとろと漏れ出している。
 最後に口から触手が引き抜かれると、シグマは大きく咳き込んだ。

「げほっ、げほっ! はぁ、はぁ、げほっ!!」

 酸素を求めて、肺が喘ぐ。
 そして。

「……う……、ひぐっ、う、うわああああああああっ!!」

 シグマは、ぐったりとしたまま泣き叫んだ。
 ただただ、自分の身に降りかかる不幸を嘆くしか、今のシグマにはできなかった。
 そんな惨めな姿に、ストゥラマトリは嘲笑を浴びせかける。

「泣くなよぉ。俺を倒して、みんなを救うんだろぉ? クケケケケッ!」
(……! そ、そうだ……! あたしは、みんなを救わないと……!)

 ストゥラマトリの言葉で、シグマの目に微かに理性の光が再び灯る。
 そして、なんとか反撃しようと、シグマは剣を求めて周囲を見渡した。
 そこで、シグマは見てしまった。


 教会にいる全ての女が、全ての男を殺していた。


「……え?」


 ストゥラマトリの花粉の影響なのだろう、全く抵抗しない男たちに、女たちは思い思いの暴力を加えていた。
 何度もその頭を掴んで椅子に叩きつけたり、口や目や鼻に無理やり腕を突っ込んだり。
 あちこちで動かなくなった男たちの身体が、その身体から流れ出す血により、ヴァージンロードのように赤く染まっていく。
 そして祭壇の前では、シグマの友人峰子が、今まさに神父のペニスを噛み千切ったところだった。

「あ……あひ……ひぃ……」

 シグマの顔が、真っ青になる。
 自分が守るべきものが、守るべきものを殺している。
 その事実に、シグマの、微かに残っていた理性すら砕け散ってしまった。

「残念だったなぁ。お前が俺の触手に喘いでる間に、お前が守らなきゃいけないものはどんどん殺されていったんだよぉ」
「嘘、うそ……! いや、いやああああっ! やだ、やだよぉっ! やめて、いやああああっ!!」

 ストゥラマトリの言葉を拒絶するように、耳を押さえ、目を大きく開いてシグマは絶叫する。
 必死に、この現実を否定するために。
 自分の存在意義の消失を、認めないために。

「ちゃんと聞けよぉ。いいかぁ、お前が弱いばっかりに、こいつらは死んだんだぁ」
「いや、聞きたくないっ!! やめて、もうやめてよぉぉっ!!」

 だがストゥラマトリは耳を塞ぐ手を掴み、シグマの耳に顔を近づけて囁くように言う。

「お前のせいで、こいつらは死んだぁ」
「あ、あたしの、せい……?」
「そうだぁ。お前が、こいつらを殺したんだぁ」
「あ、あ、あたしが……殺した……?」

 シグマは呆然と、ストゥラマトリの言葉を繰り返す。その目に、既に力は無い。

「あ、あたしが……あたしが……」
「……クケケケッ!」 

 ぶつぶつと呟くシグマを満足げに見て、ストゥラマトリは笑う。

「お前、気に入ったなぁ。お前は、特別に改造してやるよぉ」

 ストゥラマトリは、一本の細い触手をシグマへと伸ばした。
 虚ろな目で佇むシグマは、その触手に対しても既になんら反応を示さない。
 触手は、シグマの目の前まで来ると、その先端が四つに分裂した。
 そして、そのそれぞれが、シグマの鼻と両耳からシグマの頭部に侵入していく。

「が……っ! ぎ……っ!」

 シグマの目がぐるりと裏返り、身体がびくんびくんと跳ねた。脳を直接書き換えられているのだ。
 目からは涙を、口からは涎を垂れ流し、シグマは何度も身体を痙攣させる。
 そして、少しの間その状態が続くと、今度は触手の方に異変が起き始めた。
 触手は、その途中から何本にも分裂し、それら全てが幾重にも絡まりあいながらシグマを包み込み始めた。
 それらはやがてシグマをすっぽりとその中に包み込むと、まるで巨大な蕾のようにその形を変えた。
 その中からは、しばらくシグマの身体が跳ねる音が聞こえていたが、やがて静かになった。
 動かなくなった巨大な蕾を見て、ストゥラマトリが呟く。

「さぁ、こんなものでいいかなぁ? おい、起きろよぉ」
「……」

 するとストゥラマトリの言葉に応えるように、蕾が一回、大きく脈動した。
 そして蕾は、ゆっくりと花開き――



Σ



 夜の街の路地裏を、三人の男女が必死に走っていた。
 特に女の息は上がっていて、その足取りは既におぼつかない。しかし、それでも三人は走ることをやめない。
 と、暗がりから一本の触手が伸びてきた。

「きゃああっ!」

 緑色の触手は、女の足首にすばやく巻きつく。女は、バランスを崩して倒れてしまう。
 男達は咄嗟に、近くに転がっていた角材で触手を叩く。何度か叩いた末に、ようやく触手が女の足から解ける。

「大丈夫か、しっかりしろ!」

 男達は女を助け起こし、再び走り出そうとする。
 しかし、その足はいきなり止まった。
 真正面に、身体中から触手を生やした怪人が立っていたのだ。

「う……」

 ゆっくりと、こちらに歩いてくる怪人。三人の全身から、嫌な汗がどっと吹き出る。

「こ……こっちだ!」

 男の一人が女の手を引き、再び細い路地に逃げ込もうとする。怪人はそれを見て笑い、触手を三人に向けて伸ばす。
 触手の速さは、三人が走るのよりも速い。てらてらと濡れたように光る不気味な触手が、三人の背中に迫る。
 絶体絶命の、その時。
 風を切り裂きながら、一羽の機械のツバメが飛んできた。

「ツバメ……!? そうか、スワローソルジャーだ! 来てくれたんだ!」

 飛ぶツバメを見て、男の一人が叫ぶ。そして三人は希望に顔を輝かせ、再び決意を固めて走り出した。


 その女の足を、ツバメが払った。


 女は全くの予想外の出来事に反応できず、ただただ転ぶしかない。
 そして呆気にとられる男達のうち一人の頭を、再び飛来したツバメが砕いた。
 跳ね飛んだ血が、隣にいる男と地面に倒れる女の顔に降りかかる。

「……え?」

 二人は現状を理解できず、ただ呆然と少し身長の低くなった男を見つめる。
 と。

「だめよ、ご主人様から逃げちゃあ」

 そう、声が聞こえた。
 二人は、ゆっくりと声のした方向を見る。
 ライダースーツを着た、一人の女が立っていた。
 正面のジッパーは一番下まで下げられている。そのため、大きく突き出た胸は乳輪が見えるかどうかというところまで露出しており、下の方も毛がうっすら窺えるほどだ。

「あなたたちの価値は、ご主人様を楽しませることくらいしかないんだから……ね?」

 そう言って、ライダースーツを着た女――棗はにっこりと微笑むと、手の中に飛来した、鮮血で赤く染まったツバメを自分の腰に当てた。
 次の瞬間、ツバメから出た帯が棗の腰に巻きつき、ベルトのように自らを固定する。

「変……身っ!」

 棗はそう叫んで、ツバメを横に回転させる。
 ツバメの形が、MからΣへと変わる。

『Sigma!!』

 ツバメに内蔵された電子音がそう叫ぶと同時に、ベルトの前に『Σ』の文字がホログラムのように浮き出た。
 その文字は、高速で回転しながら棗の周囲に風を巻き起こしていく。
 強風に、思わず二人は目を瞑る。
 次の瞬間、棗の着ていたライダースーツが無数の粒子へと分解した。
 漂うそれらは、棗の身体を包む風に乗りながら、色を変えつつ再び棗の身体へと蒸着していく。
 そして最後の風が止むと、そこにはツバメをモチーフにした、黒衣の戦士が立っていた。
 その顔の美しさを守るかのように、頭部はツバメをモチーフにした装甲によって覆われている。そして、その首には、毒々しいまでの赤色をした首輪が巻かれている。
 大きく前に張り出した胸は、その下半分のみが漆黒の装甲によって隠されている。胸を下から支えて、前に突き出させるための衣装だった。傍目から見てもわかる程に勃起した乳首が強調されている。その乳首には、金色のピアスが光っている。
 腰の部分には、ベルトを除いて布地がまったく存在しない。その結果、下腹部に生えている陰毛と、太ももまで垂れるほどに濡れた秘所が露わになっている。
 しなやかな脚には、赤と黒の二色の帯が、脚の美しいラインを強調するように淫らに巻きついている。隠すためや守るためではなく、その艶かしさを引き立てるために。
 変身をしたシグマは床に横たわると、自分でその豊満な胸を舐めながら、脚をΣの形に開いて言った。

「ご主人様に逆らう者は許さない! セックススレイブ・シグマ、見参っ♪」

 二人は、シグマのそのポーズをただ呆然と見つめるしかない。

「クケケケッ! いやぁ、何度見てもエロいな、そりゃぁ」

 と、いつの間にか二人の後ろに立っていた触手の怪人が、シグマに向けて言う。

「あは……ストゥラマトリ様にそう言っていただけると、おまんこ、濡れちゃいますぅ……あはぁんっ!」

 シグマは触手の怪人の言葉に頬を染めると共に、その股間から軽く潮を吹いた。
 その痴態に固まっていた二人のうち、女の身体に触手が絡みついた。

「――っ!? い、いやあっ! 助けてえっ!」

 しかし女の抵抗をものともせず、触手は女の身体を見る間に拘束する。

「ひ……う、うわああああああっ!!」

 あまりの事態に脳の容量がパンクしたのか、男は弾かれたように走り出す。そして、地面に横たわって股を開いているシグマの横を駆け抜けると、そのまま逃げ出そうとした。
 しかし。

「だめよ……逃がさないわよぉ」

 後ろから声が聞こえると共に、一陣の風が男の足元を吹き抜けた。
 そう思った次の瞬間、男の足首から下が男から分離した。

「うわあああっ!?」

 足を失った男は、バランスを崩して地面へと倒れる。あまりの鋭い斬撃に、切り口からの痛みは全く無い。それが逆に男の恐怖を煽る。
 倒れ伏す男に、シグマは剣を片手に下げたままゆっくりと近づいていく。

「全く、ご主人様から逃げるなんて……。あなたみたいなゴミ、ご主人様の手を煩わせるまでも無いわね。あたしが消してあげるわ」

 シグマはそう言うと、腰からツバメを取り外し、剣の鍔に装着した。

『Sigma-Drive!!』

 電子音が響くと同時に、剣を幾重にも風が取り巻く。
 シグマはその剣をゆっくりと上段に構えると、男に向かってにっこりと笑いながら言った。

「それじゃ、ばいばーい♪」

 そして男が何かを言う前に、シグマは剣を振り下ろした。

『Supreme-Sigma-Slash!!!』

 電子音と共に、巨大な風の刃が、男を綺麗に左右に切り開いた。
 真っ二つに両断された男の身体は、剣から発生する無数の真空刃で切り刻まれ、跡形もなく消し飛んだ。

「クケケケケッ! よくやったなぁ、シグマ」
「あぁ……ありがとうございますぅ、ストゥラマトリ様……」

 背後からの声に、シグマはうっとりと微笑みながら振り返る。
 目の光を失った女に全身をしゃぶらせている、ストゥラマトリが立っていた。

「クケケケケッ!! 対人攻撃への制御を取っ払っちまえば、そりゃあ攻撃力は上がるよなぁ。どうだぁ、今まで守ってきた人間を殺す気分はぁ?」
「はい……」

 そこでシグマは、少しだけ目を伏せてから、顔を輝かせて言った。

「すっごく、快感ですっ! もう、あの柔らかい肉を切り裂く感触なんて……ああ、思い出しただけでイっちゃいそうですっ♪」
「クケケケッ! そうかぁ」
「はいっ! ……それで、あの……」

 シグマは、少し目を伏せ、もじもじしながら言葉を濁す。

「ん? なんだぁ、言ってみろよぉ」
「は、はい……。あの……」

 そしてシグマは、剣を投げ捨て地面に座ると、ストゥラマトリに向けて大きくΣ字に股を開いた。

「頑張った奴隷のシグマに、ご主人様のご褒美、いっぱいくださいっ♪」



<終>


あとがきへ

か……書き上がった……

皆さん、お元気ですか。
やかんは元気です。
ちょっとクーラーつけたまま布団被らずに寝たらおなかを壊しましたが元気です。
そういえばこの前、トイレ行きたいのを我慢して小説を書いていたら、尿意がふっと緩むと同時に右足の先端が熱を持ったように感じました。
とうとう膀胱から逆流した尿が右足に染み渡ったのかと思いました。
今でもときどきなります。
なんなんでしょうね、これ。


そういえばこの前、街を歩いていたらスカウトと名乗る女の人に出会いました。
そのスカウトという女の人はやかんを褒めちぎり、「ダイヤの原石だ」とか「一年後にはスターになれる」とか「自分はアイドルを養成する会社の者である」とか「君の顔なら特別価格で養成プログラムを受けられる。初期費用は二十万だ」とか言いました。
自分はアイドルになれると聞いてすっかり舞い上がってしまいました。
とうとう自分にも初めてのモテ期が来たと思いました。
全国のお茶の間に自分が登場する姿を想像しました。
自分のウインク一つで女の子たちがばたばた倒れていく姿を夢想しました。
自分に群がる女の子の中の一人に「今夜、何々ホテルの何々号室に泊まるんだけど、来る?」と言ってタダで風俗みたいなことが味わえる姿を妄想しました。
でも、そこでやかんはふと落ち着きました。
あまり有名になりすぎても困るとも思いました。
ちょっとした外出にも、常にサングラスと帽子で素顔を隠さなければすぐにファンに見つかってサインを迫られて腱鞘炎になってしまうと思いました。
コンビニでジャンプとかサンデーとかマガジンとか立ち読みしてたら週刊誌に面白おかしく書きたてられてファンの人たちから毎週何十冊も雑誌が送られてきて床が抜けてしまうと思いました。
何より、自分がエロ小説を書いているということがばれてしまうと危険でイメージにかかわるということで小説を書くのをやめなければならないと思いました。
そんな生活は、自分にはどうも合わないと思いました。等身大の幸せだけが自分の求めるものだと思いました。
なので、自分はあえて一流ハリウッドスターになるという道を選びませんでした。
そのことをスカウトという人に話すと、その人は残念そうな顔をして去っていきました。
自分が芸能界に与えた損失の大きさに少し後悔が湧きましたが、それ以上自分にできることは無かったので罪悪感を感じつつその場から立ち去りました。
その話を友人のTくんにしたら、Aくんも同じところで同じようなスカウトの人に会って同じように褒めちぎられたと誇らしそうに言いました。
Tくんははっきり言って自意識過剰で、自分の顔とかを過信しているきらいがありました。
なので自分はTくんに、そのスカウトの人は自分を芸能界に引き入れることができなかったので破れかぶれになってTくんを誘ったのだと教えてあげました。
するとTくんはあろうことか怒り出しました。「お前よりも俺の方がかっこいいに決まってる」「何を言ってるんだ、自分の方がかっこいいのは大自然の摂理だ」「なんだと、頭の中空っぽの癖に」「言ったな、この顔面ヒキガエルが」「やんのかコラ」「上等だこの野郎」「食らえ空手チョップ」「なんの真空蹴り」みたいな感じになりました。
Tくんの空手チョップを、やかんはとっさに身体を反らす事で間一髪で致命傷を避けました。しかしやかんは肩から腹にかけて大きく切り裂かれました。
やかんの真空蹴りを、Tくんは腹の横でクロスした腕でガードしました。しかしやかんのあまりの威力に、ガードした腕ごとTくんの肋骨が折れました。
自分たちはそのまま夜が明けるまで戦い続けましたが、最後にTくんの放った多次元宇宙空手チョップとやかんの放った歪曲亜光速真空蹴りがぶつかった衝撃で、自分たちは共に時空断裂に巻き込まれてしまいました。
断裂した時空ではいろいろなことがありましたが、所詮三次元のこの世界でそれを表現するのは無理なので、ここで記すことはしません。
とにかく紆余曲折の結果、心の広いやかんは、Tくんが自分と同じくらいイケメンだということをとりあえず認めてあげることにしました。表面上の勝敗よりも、Tくんとの友情を優先してあげたのです。
Tくんはそんな自分の細やかな心遣いには気づかないまま、バラバラになった右手と左足を引きずり帰っていきました。
やかんも病院に行って、負傷した右目を機械に取り替えてもらいました。
今では夜でも赤外線で暗視できるのですごく便利です。
現代医学は凄いですね!


などどというやかんの私生活は置いておいて。
小説、一応書きあがりました。
現在はちょっと校正や誤字チェックをしているところです。
つ、疲れた……。
でも、なんかあんまり悪堕ちっぽくない気がしないでもないです。
「とりあえず悪に寝返ればいいんだろ!」って感じで、堕ちる際の心情描写とかあんまりできてないです。というか全くと言っていいほどないです。
ただ単に、怪人に犯されて終わりな感じです。
やかんはいつも、力を入れるところを間違えます。
今回の小説は、MC成分も悪堕ち成分も共に微妙だったり、バトルとかのエロ以外のシーンが無駄に多かったりするので、抹茶に投稿はせず、ここで公開するに留めておくことにします。
サイト限定公開です。
……なんか「限定」ってつくと貴重な気がしません?
なんかこう、付加価値というか、小説そのものは変わってないのになんかよくなった気がする、みたいな。
とにかく、多分日付が変わる前にはアップできると思います。
なんと奇跡的に今週中という目的が達成されました。
需要があるかどうかは知りません。
いいんだよ! 小説なんて所詮は自己満足だよ!
っていつも心の中で叫びながらやかんは小説を書いています。
あ、面白かったら、拍手ボタンやコメントで応援してください。
やかんの執筆意欲は皆さんによって支えられています。
あ、でも、面白くなかったら別にいいです。
自分に正直にお願いします。
できれば、変だったところとか気になったところとかを書いていただけると、今後の参考になります。
よろしくお願いします。

では。

今夜の月は綺麗です

どうも、やかんです。
今日、録画していた仮面ライダーWをもう一度見て、再び涙に濡れたわけですが。
いやー、翔太郎役の桐山君演技うめえなぁ、とか思ってたわけですが。
ふと、劇場版の宣伝を見ていないことに気がつき、見てみました。
……。
い、今なら入場者全員にポストカード配布だと!?
なぜそれを最初からしてくれなかった!?
もう一度見に行けとでも言うのか!?
そういう阿漕なところ……嫌いじゃないわっ!

しかし、関係ないですけど、最近は月が綺麗ですね。
今日の八時ごろなんか、結構大きく見えて。しかもほんのり赤かったりして。
やかんは月を見ると幸せになる人間なので、今日はとてもいい日でした。
やかんは、空を見るのが好きなんです。
太陽よりも、雲や雨の方が好きです。
綺麗な形の雲を見ると、その日はちょっと気分が高揚します。
雨が降ると、外に飛び出して濡れたくなります。
雷が鳴ると、テンションMAXになります。
疲れたとき、ふっと空を見上げられる余裕を常に持ちたい。
そう思いながら、日々を生きています。

小説の話。
完成間近です。
残るはエロシーンだけといっても過言ではありません。
つまり、ここからが長いということです(ォィ)。
やかんはエロシーンが下手という自覚があるので、どうしても時間がかかってしまうんですね、これが。
お前本当にエロ小説書きかよ、という突っ込みは置いといて。
まあぶっちゃけ、今週中は無理かなって半ば諦めてます(ォィ)。
前半のエロ無しシーンだけでもアップしようかとも考えましたが、多分そうすると間違いなく満足して続きを書かなくなるので、我慢しました。
エロシーンをすらすらと書ける人がうらやましいです。
とにかく。
まあ、なんとか頑張って書いています。
来週中には、なんとかアップできるかな、なんて楽天的に考えています。
もしかしたら、本当にもしかしたら、今週中にアップできるかもしれません。
無理かもしれません。
期待はしないでください。
では。

もうはじめの一歩の真似は金輪際しない

どうも、やかんです。
皆さん、お元気でしょうか。
やかんは昨日死にそうになりました。
皆さんに忠告しておきますが、夏に減量ごっこはやめましょう。
死ぬ目にあいます。
つーか学習しろよ自分!

現在の進捗状況。
4/5くらい。
結構進んできました。
残るはエロシーンのみって感じです。
ただ、今更ながらに、「悪堕ち」の醍醐味とは何だろうっていう疑問が浮かんできたりしています。
BeforeAfterの差が大きければ大きいほど、こう、ガッてくるものだとは思うんですが。
それは、MCとかでも多分同じなわけで。
じゃあ、悪堕ち特有の変化って何かな、と考えてみたんですけど。
どうも、MCの範囲に収まらないような価値観の変化というものが大事なのかなあ、と思いました。
つまり。
普通のMCだと、たとえば催眠術だと、堕ちる前と堕ちた後を自由に行き来できる。つまり、本人の意識を操ることで、通常の状態にも戻せるわけです。
でも、悪堕ちだと、あんまりそういうことをしないような気もするんです。間違ってたらごめんなさい。
要するに、悪堕ちは、「戻ることが不可能なほどの徹底的な価値観の変化」っていうのが結構重要になってくるのかな、と思ったりしました。
他の作家の方たちが書かれている悪堕ち小説をいくつか読ませていただいたんですが、そのうち、結構な割合で、「自分がこれまで信じてきたものの否定」が入っていました。
「自分が今まで必死になって守ってきたものは、こんなに醜いものだったのか!」みたいな。
その反動で悪堕ちる、みたいな。
たぶん、そういうことがないと、徹底的な価値観の書き換えってものが達成しにくいんだろうな、と思いました。
そう考えた上で、現在執筆中の小説を見直してみると。
なんか、あんまりガツンってこないな。
って思いました。
というか、価値観を書き換えていくところの描写がほぼ無いです。
加えて、Afterが少ししか書かれてません。
悪堕ち小説として、ちょっとどうなのよ。
って感じです。
もしかしたらこれはただのMC小説なんじゃないかって思いました。
これを悪堕ちだと思うように、誰かからMCをかけられているじゃないかって思いました。
というか、これは本当にMC小説なのかということすら疑問に思えてきました。
そもそもこれはエロ小説なんだろうかということにすら疑問が生じてきました。
もしかしたら自分はMCにかけられて小説を書いた気になっているだけかもしれないという気もしてきました。
第一、自分はいったいなんなんだろう。本当にこの世界に存在しているのか。自分が存在しているという証拠は、果たして信用できるものなのか。
もしかしたらこれまでの自分の人生はただの夢で、本当の自分は交通事故で六十年目を覚まさない老人なのかもしれない。
そんな気になりました。
どうしよう。
これじゃ、本懐が達成されないじゃないか!
やかんは焦りました。
焦って焦って、体温がどんどん上がっていきました。
キーボードが汗で濡れるくらい焦りました。
やかんの椅子の下に水溜りができるくらい焦りました。
多分汗でできたとは思うんですが、もしかしたら失禁していたのかもしれません。
そのくらい焦りました。

んで。

なんか、もういいかなって思っちゃいました(ォィ!)。

今更どーのこーの言ったところで、もう書いちゃってるものは仕方が無いし。
今から書き直すのも、正直疲労度が半端ないし。
とりあえず書き上げちゃって、「これは悪堕ちではない!」って言われたら、その時に反省しようと思いました。
なので、とりあえず、さっさと完成させようと思いました。
というわけで。

目標:今週中にアップ。
すこし自分に優しい目標:来週までにアップ。
かなり自分に優しい目標:来月までにアップ。
すごく自分に優しい目標:来年までにアップ。

さあ、頑張るぞ!

太陽が吠えるように暑い

どうも。
やかんです。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
やかんは昨日、久しぶりに外に出てみました。
太陽がいっぱいでした。
日光がさんさんと降り注ぎやがる中で、やかんは思いました。
ああ、光って凶器だなぁ。
まるで自分の肌がこんがり焼けるようでした。
なんというか、夏的な意味ではなく、料理的な意味で。
さすが、電子レンジや放射線治療やらに使われているだけはあるなぁ、と思いました。
個人的に、「電磁」波を「光」子が伝えるってなんか嫌なんですけど、みなさんはどうでしょうか。
電子じゃねえのかよ! みたいな?

それはそうと。
前にもちょっこし言いましたが、やかんは現在小説を書いています。
一応、悪堕ち物です。
「悪堕ちのサイトからリンク張ってもらってるのに、悪堕ち話がいっこも無い現状はマズいんじゃね?」
ということで、前に設定だけ作っていたものをせっこらせっこら書いています。
現在の進捗状況、大体3/5くらい。
その中に占めるエロの割合、1/10くらい。
……こ、後半をエロくする予定なんですっ!
なるかどうかは微妙ですが。
それにしても、やかん以外の作家の方たちの執筆速度は異常だと思います。
一日に4000文字とか。化け物ですか。
それでかつあのクオリティなんだから、もうやかんはどうしようもありません。
なるべく日の当たらない、暗くてじめじめしたところで生きていこうと思います。
自虐なのか真実なのかよくわからないところあたりが最高に切ないです。
自虐ネタって、相手に「え、それってネタだったの?」って言われたときのダメージが半端ないですよね。
どうすんべか。
どげしようもないべな。

まだまだ暑いので、皆さんもお体にお気をつけください。
では。
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