東京五輪無差別級金メダルのへーシンク氏死去…柔道

東京五輪の柔道無差別級決勝。ヘーシンクはけさ固めで神永に一本勝ち。金メダルに興奮したオランダ関係者が、礼を終える前に畳に上がろうとするのを右手で制した

　１９６４年東京五輪の柔道無差別級金メダリストで、国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）委員でもあるアントン・ヘーシンク氏（オランダ）が２７日、オランダのユトレヒトの自宅で死去した。７６歳だった。複数の地元メディアが伝えた。死因は明らかにされていない。

　日本のお家芸の柔道が初めて採用された東京五輪に出場し、日本武道館で圧倒的な強さを見せつけた。決勝で神永昭夫選手をけさ固めで破って日本に衝撃を与えた。この際、歓喜のあまりに畳に駆け上がろうとしたオランダ人を制したことで「伝統的日本の心を持つ外国人柔道家」と言われた。現役時代は身長１９８センチ、体重１２０キロの巨漢だった。

　日本の伝統競技を世界に「ＪＵＤＯ」として広めた立役者でもあった。柔道が初採用された同五輪で、日本は目標の全階級制覇を逃したが、競技はその後の五輪で発展した。同氏は後に「わたしが東京五輪で勝たなければ、柔道は現在のように国際化しなかっただろう」と語っていた。

　引退後も柔道の普及に尽力し、８７年にＩＯＣ委員に就任した。自ら発案したカラー柔道着では、日本柔道界と対立。柔道着の白色を「日本の心」と十分に理解した上で、テレビ放送には欠かせないと力説した。

　ＩＯＣでは、２００２年ソルトレークシティー冬季五輪招致に絡む買収スキャンダルにかかわったとして、９９年に警告処分を受けた。

　１９７３年には全日本プロレスに入団し、プロレスラーとして日本のリングに上がったこともあった。日本のファンにも親しまれ、９７年に勲三等瑞宝章を与えられた。

　日本オリンピック委員会の竹田恒和会長は「日本のことを知っており、愛してくれていた。招致（０８年大阪、１６年東京）でもアドバイスをいただいた」と、話した。

　◆アントン・ヘーシンク（Ａｎｔｏｎ　Ｇｅｅｓｉｎｋ）１９３４年４月６日、オランダ・ユトレヒト生まれ。１３歳から柔道を始め、１７歳だった５１年の欧州選手権２位。その後、計２１個の優勝タイトルを獲得した。世界選手権は５６年３位、６１年優勝、６５年８０キロ超級で優勝し、同年引退。７３年に日本でプロレス転向。７８年に引退。８７年に国際五輪委員会委員就任。９７年、国際柔道連盟から十段を授与された。欧州柔道連合終身名誉会長。