生活保護費を巡り、不動産仲介業者「家のはしら」(大阪市天王寺区)の社長大強起徳容疑者(57)=神戸市灘区=らが詐欺容疑で逮捕された事件で、大強容疑者が自社のマンションに居住させていた生活保護受給者に、大阪府警の捜査や大阪市の調査に協力しないよう口止めしていた疑いがあることが、捜査関係者らへの取材でわかった。
府警は、大強容疑者に保護費を不正請求していた認識があったとみて調べている。大強容疑者は逮捕後の調べに「役所をだましたりしていない」と容疑を否認している。
捜査関係者によると、大強容疑者は同社が7月に府警の家宅捜索を受けた後、大阪市淀川区の自社マンションに「野宿生活でご飯も食べられなかったことを思い出せ。変なことはするな」と書いた紙を掲示。住民の一人は「警察の捜査に協力して実態を話さないようにする圧力と感じた」と話している。
府警や市によると、大強容疑者はマンション住民に、保護費支給の対象となる上限額の家賃を書いた賃貸契約書を市に提出させて保護費を受給させる一方、受給者とは上限額を上回る契約をし、割高な家賃などを徴収していたとみられている。大強容疑者はその際、受給者に「(本物の)契約書は誰にも見せるな」と念を押し、市の調査に協力して契約書を提出した男性には「出て行け」と脅したという。
また、捜査関係者らによると、大強容疑者は囲い込んだ受給者に「今なら生活保護が無条件で…ご相談下さい」などと書いたビラを配らせ、別の生活困窮者を勧誘していたという。昨年7月にはハローワークでも「賃貸営業員」として勧誘役を募集。基本給月13万円、歩合給1件2万円の条件で「生活保護受給者の居宅案内がメーン。活動地域は西成区が中心です」などとうたっていた。