きょうのコラム「時鐘」 2010年8月29日

 夏休み中のラジオ番組「こども電話相談」が好きだった。「幸せって何ですか」との難問が飛び出し、名回答で知られた先生も答えに窮したのを思い出す

今なら、お年寄りからも質問が来そうだ。「肉親って何ですかね」「家族とはなにか」などと。肉親がそのまま家族ではない。親兄弟が音信不通になることも少なくない。夫婦も元は赤の他人、兄弟は他人の始まりとも言う

この夏、各地で露呈した高齢者の所在不明は、そんな人生の不幸を思い出させた。死亡を隠し、年金詐取で逮捕者が出るまでに発展した。幸せが何か即答できなくても、不幸の形は具体的だ。だが、子どもたちに人生の裏側ばかりを教えるわけにいかない

休み中に、父母や祖父母のふるさとを見て来ただろう子どもたちは、自分の命が孤立しているのではないことを感じたに違いない。それが「幸せとは何ですか」との問いの答えのひとつかもしれない

大都市の片隅での所在不明に加え、猛暑の中での高齢者の孤独死が伝えられるのも辛かった。かつての名回答者の先生方に聞いてみたい。「夏の終りは、なぜ寂しいのでしょうか」