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[21458] 【ネタ】真・天の御遣い・プロローグと言う名の一話完結(恋姫無双)・しなかった
Name: 西日◆5a71a127 ID:0246ef06
Date: 2010/08/27 05:01
そこに男が居た。

遠く地平線に至るまでぐるりと視界を遮る物は無い、気持ちよい風の吹き抜ける草原。
天気は快晴にして気温は最適、実に旅日和といった風情である。

しかしそこに佇む男はきっと旅人ではない。
装いは軽く荷物は肩から掛ける鞄が一つ、どちらもこの辺りでは見たことの無い珍しいものだ、まぁ旅をする者の格好ではない。

男の正体はこの場だけを見ては決して分からない、だが幾分か前から見ていた者は畏れを含み答えを口にするだろう、近くにある草地の抉れたような跡が真実の一端。

「よう兄ちゃん、こんなところで無用心に何してんだ。
そんなに無防備じゃあ、怖ーい賊に襲われても文句は言えねぇぜ、あぁ俺たちみたいななぁっ」

体格の良いがっちりとした男が現れた、チビとデbふくよかな体型の方が後に続く、三者三様だが身に着ける黄色の布が唯一共通点を作っていた。

「な、なんだか変わった格好してるんだな」

「へへっ、小綺麗な格好して、どこぞの貴族か商人の坊っちゃんか。今日はついてやすねアニキ!」

「おうよ。官軍を出し抜いて気分が良かったところだが、こんなところで更に稼ぎが増えるとはな、正についてるぜ」

佇む男を置いて話は進む、急激な展開は男を流れの中に孤立させる、物語(大きな流れ)はその中に男を押し込めようと今まさに口を開け呑み込まんとしていた。
そんな中で、男も口を開くのだ。

「よし、西に向かうか」

「あぁん?」
「何言ってやがんだコイツ!」
「い、いつの間にか、な、何か変なものに乗ってるんだな」

全てを置き去りにして男は疾風のように走り去って行く、いつの間にか車輪が二つ付いた奇妙な乗り物に乗っていたのだ、速さで言えば馬にも負けていなかった。
りんりんと遠くから清涼な響きがこだまする。

「な、何だったんでやすかねぇ?」

「見えなかった、奴がアレを出した瞬間が。
超高速だとか妖術なんてチャチなもんじゃねぇ、もっと恐ろしいモノの片鱗を味わった気分だぜ……なんだな」

「デ、デク?お前一体どうしちまった!」

☆☆☆☆☆☆☆


「止まりなさい」

「……あぁなるほど」

一陣の風と化していた男は走り出した辺りから幾ばくか離れたところで呼び止められた、男の進路を塞ぐように人の壁が出来上がっており、見事な威圧感を放っている。

「あなた……何をぶつぶつ言っているの?
それより早く止まりなさい、このまま進むのなら私達が止めてあげることになるわよ」

「止まれと言われて止まるやつは……、ってこれは追われている者の台詞か」

そう言った男は声を掛けてきた少女とその後ろに控える者達の前でピタリと止まった、その動きはまるで慣性を感じさせない、少女の高圧的な眼差しが若干だが更に強まった。

お互いの顔が見えるほどに近い距離、しかし男が少女に到達するには一足以上が確実に必要な間合いである、弓が構えられれば一方的な結果に終わるだろう。

「よしなさい、私達は話を聞きにきただけよ。
まぁ、その後は彼の話の内容次第でしょうけどね」

背後で動きを見せた者達をたしなめた少女は、しかし嗜虐的な瞳でもって男を見据えた。

「あぁ綺麗な顔して怖い奴……、美人にそんな目で見られると一般人は怯えてしまうだろうな。
見ろ、こんなにも足が震えている」

言われた少女はついと乗り物に跨がる男の足に目を向けるがそこは全く震えてなどいなかった、むしろ軽く弛緩している。
からかわれたのだと悟った少女は男に先程とは比べものにならない威圧を放つ、これこそが全ての上に立つ者の風格、王たる格の現れなのだと誰もが息を飲んでいた。

「あなたねぇ……」

そこで少女の言葉が詰まった、戻した視線が一点で止まる。
男の手にはいつの間にかあるモノが収まっていた、見たことのない材質で出来ているが形状からすると『傘』であろうか。
男が跨がっていた奇妙な乗り物は入れ替わるかのように消えていた、だが今さらそんなことに驚くことは少女には出来ない。
一瞬で事を切り替えるのだ、一瞬でも隙を見せることは出来ない、少女の本能は警告を発していた。

「それは……傘かしら?
一体そんなもので何をしようと言うの、大人しくこちらの言う質問に答えなさい、……悪いようにはしないわ」

警戒すると同時に少女は興味を覚えていた。
この近辺に潜むという盗賊を捕えるべく行軍していたら現れた男、馬にも乗らずに出せる速さでは無かった、奇妙な出で立ちだがよく見ると仕立ては上等、一連の流れで感じさせた何かの『技』。
先刻、ふと見上げた空に見えた流れ星、その落下場所へ一応の確認として放った偵察からの報告、少女の脳裏で何かが繋がり、それが少女の心を刺激していた。

「単純明解な答えだ、傘の使い道なんて古今東西雨を防ぐに決まってる」

「戯れ言を、こんな雲一つない空からまさに今、雨が降らんというの?」

「その通り。雨は降る、このように」

…………
………
……

体を叩く幾つもの感触、ザアザアと降りしきる音を聞き、やっと少女は理解した。
雨が降っている、雲一つなく晴れ渡る空の下に、大量の水の雫が降り注いでいた。

「……貴方、一体何をしたの! これは何の妖術だ!」

「何って、俺は傘を広げただけだろう、怖いお嬢ちゃん」

男の言葉に偽りは無い、正に男が傘を頭上で広げた瞬間、それを合図としたように雨が降り注いだ、起こったことはそれだけだ、だが男の口元にある緩い円弧はその短慮な思考を許さない。

「まさか、天を操ったとでも言うの……?」

降りしきる雨水の中、唯一乾いた衣服を着ている男の姿はどこか浮世離れしていた、広げる傘の下から覗く黒い瞳に少女はつい幻惑されてしまいそうになる。

「天の、御使い様だ」

誰が呟いたものであったろうか、その言葉が集団に浸透するに連れ全体に浮き足立った雰囲気が纏りつく。
心の中で浮かび掛けていた言葉が発され、少女は一度だけ小さくビクリと震えた。
だがそれだけだ、目にするは余りにも理解を越えた存在、しかし、だからこそ無様など晒せない。

少女が目指す覇王も常人の理解を越えるべき存在だからだ。
目の前の男がそこに至っているというなら対等以上であることを心掛けるべきである、自身を卑下にして取り繕うことなど絶対にしない、そう彼女の魂が告げていた。

「落ち着きなさい!
この程度のことで取り乱すようでは我が臣下足り得ない、全軍誇りを示せ!」

異様な雰囲気の中、覇気の篭った少女の声が木霊する。
それは場に燻る雰囲気を一瞬で祓う覇王の号令、平静を崩しかけていた兵達も皆即座に自分を取り戻す、ザと姿勢を正す音が重なり一瞬雨の音を打ち消した。

☆☆☆☆☆☆☆


「……やられたわ」

全員の意識が男から外れた瞬間、当然のように男はその間隙を縫って姿を消していた。
少女の視線を誘導して受ける印象を強化させたことと言い、意識の空白を衝くのが妙に上手い男である。

(でも顔は覚えた、次に会ったときは覚悟なさい。
この曹孟徳を虚仮にするかのような今回の戯、後悔させてあげるわ)

様々な感情で歪みそうになる顔を止めるため、雨の中に浮かぶ太陽を睨み付ける少女は口元のみで不敵に笑う。
眩しさに耐えながら見るそれは幾重もの虹を纏って、悔しいほどに綺麗だった。





★★★★★★★
event_log
00000『恋姫†無双』が開始されました。

00001スタートポイントに到着したため、開始前の選択エフェクト★じてんしゃ★が解放されました。

00002華琳とエンカウントしたため、★かさ★が解放されました。
なお、華琳に対し特定の条件を満たすと恋姫限定エフェクト★たいよう★を取得出来ます。

00003華琳に一杯食わせたため、ボーナスが発生しました。
アルバムに『ポカンとした華琳』が追加されます。


★じてんしゃ★
『外見』自転車に乗った姿
『効果』歩行可能な場所での移動速度が上がる。
『効果』呼び鈴を鳴らす。


★かさ★
『外見』傘を持った姿
『効果』傘を広げると雨が降る。
『効果』傘を回す。


とある男の呟き「無駄に難易度たけぇ……」

_____________
とあるプレイ動画を見てたら思い付いた、反省はしていない。
某ゲームのキャラも世界観も出てこないからクロスって訳でもないんだが、この場合は何て言うんだろうな。

思いつきのネタってことで省エネ設計、男がオリ主か魔改造一刀かすら未決定、居るのなら口を挟むべきキャラも明文化してないけどちゃんと居ました。




[21458] プロローグと言う名の次弾見切り発射・ポロリもあるよ
Name: 西日◆5a71a127 ID:c5046c1f
Date: 2010/08/27 05:04
水が撒かれたことで風の吹く草原はとても涼しげな感じになっていた。

すでに白昼の雨は止んでしばらく経つ、曹操たる少女の率いる軍は本来の目的たる盗賊の討伐に向けて立った後だ。
あのとき岩陰に隠れた男は僅かな高低差を利用して出来るだけ遠くに移動していた、げに恐ろしきは車輪を用いながら斜面の上を水平に移動するその運転技術か、全く横転する様子も無かった。
今現在は移動し終わり、とある木陰の下で休息している最中である。

「おや……お兄さん、こんなところで寝てると風邪をひいてしまいますよ。
さっきの通り雨のせいで下がびじょびょですからねー」

「おうおう兄ちゃん、人が話してんだから返事ぐらいするもんだぜ。
ったく、礼儀がなっちゃいねーな」

そこへ頭に人形(?)を乗せた少女が現れた、一応腹話術、ということでいいのだろうか、人形が喋っているように見えるのだが。

「まぁまぁ、お兄さんもきっとお疲れなんですよ。
こんな場所でぐっすり眠るのは無用心ですが風も人のことは言えませんしー……んんっ、おやおや?」

少女が男をくるくる観察していると違和感に気付く、全く濡れていない、急いで木の下へ雨宿りしに行った自分ですら多少濡れているというのに。
よく見ると濡れているはずの草地は男の周りの一角だけ完全に湿り気を失っているのが分かる、少女の眠たげな瞳が若干驚きに見開かれた。

「うーん、なかなか面白そうな出会いかも知れないのですよ。
良ければご一緒したいのですが……後で稟ちゃん達にも相談して見ましょうかー……まぁでも今は……」

☆☆☆☆☆☆☆☆


「風、たき火の用意が出来たぞ、お主も服を乾かすといい」
「………………」
「風?」

「………………ぐぅ」
「………まったく、いくら真っ先に木陰に入ったからといって、そのまま眠っては風邪をひいてしまうぞ」

「……しかし風も良い場所を見つけたものだな。
この木の下には全く水気がない、服を乾かしたらこちらに移動するか」

☆☆☆☆☆☆☆


パチパチと火が焚かれている、ここは先の場所からほど近いところにある別の木の下の臨時休憩所、眠っていた少女は迎えに来た少女に抱えられコチラに移動していた。

「風、ちょっと起きて、風っ」

「……おぉ!?
これは稟ちゃん、風としたことが余りの陽気と涼しさについうっかり寝入ってしまったのですよー」

「貴方のそのうっかりはいつものことでしょ、薪も集めずに何やってるのよ。
それよりも問題が起こったわ、アッチを見て」

風と呼ばれた眠たげな少女が連れである稟と呼ばれた生真面目そうな少女に促される、視線の先には向かい合う二人の男女、女は槍を持ち出してかなり剣呑な雰囲気だ。
片方は少女のもう一人の連れであるがもう片方は……。

「えーとあれ……おおぅ、もしやお兄さんではないですかー。
一体何がどうしたと言うのです?」

「何、風の知り合いなのか?
……この男、いきなり現れては教えてもいないのに私の真名を呼んだのだ。
貴様! 訂正するなら風に免じて許してやるが、即刻訂正せねばその首無いものと思え!」

「……怖いな、この辺りは怖いお嬢さんばかりのようだ。
まぁその細腕でこの首を落とせるものなら落としてみろよ、……星」

「お兄さん!?」
「貴方死ぬ気っ!」
「言ったな貴様ぁ!!」

疾風よりも速く星と呼ばれた少女は間合いを詰める、男は跳ねるように後方へ飛びすさったが明らかに距離が足りない。
滑るように後を追い一条の閃光が煌めいた、その軌跡は男の背後にあった木もろともに深々と走る、当然のように男の首が宙に舞った。

「たわいもない、自ら喧嘩を売っておいてこの程度っ」

「そんな……風の予感は勘違いだったのでしょうかー」

若干しょぼんとした印象を見せる少女は事切れた男の亡骸に目をやった、コロンコロンと転がる頭が段々と回転を緩め……、あれ、回転が止まったはずなのに少女の方に動いてくる……?

「白い、だが旅のせいか少々汚れている」

ハッキリとした意思の宿る瞳が少女の服の中を下から覗いている、ババッと普段の眠たげな様子が嘘のように少女は衣服を両手で押さえて後ずさった。

「下がれ二人とも!
いつの間にかこいつの首から下が消えている、何が何やら分からんがまだ終わってはおらんぞ!」

先ほど降った晴天下の雨といい、今回のコレといい、槍を構えた少女は狐にでも化かされている気分だった、勇んでみても顔はどこか引きつっている。
一同の中で最も血色の良い者が生首であるとは何の冗談か、皆の怯んだ視線は突き刺さるように男(の生首)へ集中していた。

「…………あぁ正直すまん、からかいすぎた」

☆☆☆☆☆☆☆


「まったく、そうならそうと言ってください!」
「いや正直、アソコまで怒るとは思わなくてな、たかが名前だろ?」

四人の状態は先ほどの混沌から一時離れ一応の会話が出来る程度には回復していた、会話の場所はまた移り冒頭であった無湿地帯の中である、結論としては互いが互いに喧嘩を売られていると勘違いしたのが原因らしい。
男は途中から勘違いに気付いていたようだが一寸いたずら心が出てしまったとのことだ、男の五体が当然のように戻っていることにはもはや誰も突っ込めない。

「たかが、じゃないですよ、風達にとって真名はともすれば命よりも大切なものなのです。
無闇に呼べば先ほどのように殺されても文句は言えないのですよー?」

「しかし、そんな簡単に出来ることで命を奪わねば誇りを守れないことになるとは、やはり信じられない風習だろうな。
城攻めの際には相手側の将の真名を呼んでやるのが効果的だってことか?」

「いえいえ、そんなことをしては言った側の誇りをも貶めることになりますから、誰もそんなことはしないのですよー」

話をすることは出来ているようだが互いの持つ常識や価値観が異なるからだろうか、どうにもその内容は平行線を辿ってしまっている。

「もういいさ、真名をつける風習がないところならば、互いに呼ぶのは本当の名だけであったのだろう。
そこに様々なズレがあっても仕方のないことだ、まぁまた私の真名を呼んだときは容赦はしないがな」

「そうか、ありがとう星……」

「ひぅ!」
「ちょ、貴方っ!」
「お主なぁー、怖いもの知らずも……」

「座」
「子供か、お主!」

緑の薫る昼下がり、雫に濡れて太陽に光る草原の一角で、男は現れてから初めて自然な笑みを浮かべたようであった。





★★★★★★★
event_log
00004華琳から一時的に逃げ切ったため、ボーナスが発生しました。
使い捨てエフェクト★ゆめオチ★が与えられます。

00005無断で恋姫の真名を呼んだため、ボーナスが発生しました。
使い捨てエフェクト★ぱるぷんて★が与えられます。

00006星とエンカウントしたため、★なまくび★が解放されました。
なお、星に対し特定の条件を満たすと恋姫限定エフェクト★せいぎのみかた★が取得出来ます。

00007無断で恋姫の真名を呼んだため、ボーナスが発生しました。
使い捨てエフェクト★ぱるぷんて★が与えられます。

00008風、稟、星の3人を怯えさせたため、ボーナスが発生しました。
アルバムに『涙目の風』『青ざめた稟』『ひきつる顔の星』が追加されます。

000093つのボーナスを同時発生させたため、追加ボーナスが発生しました。
使い捨てエフェクト★ゆめオチ★が与えられます。


★なまくび★
『外見』首から上のみの姿
『効果』歩行可能な場所での移動速度が下がる。

★ゆめオチ★×1
『外見』変化なし
『効果』1画面内に対して幻想殺し。

★ぱるぷんて★×2
『外見』変化なし
『効果』???


とある男の呟き「基本エフェクト集める度にこんなかよ……」


____________
次弾装填直後に見切りで出した、反省はする暇がなかった、後悔はしていない。

さてまぁパワーバランスを決定的には崩さない程度の天候操作能力、これは天の御遣いとしてピッタリだろうってことで前回ネタで出したんだが、その辺りは大して反応無かったな、さすがにネタとして弱かったか。
まぁ、裏側を読めばやってることは真どころか偽ですらなくて完全に欺だからな、欺・天の御遣い、地の文は基本カモです、わーにん。



[21458] プロローグと言う名の起承転結の転・深読みするぐらいが丁度良い
Name: 西日◆5a71a127 ID:9df4e4a0
Date: 2010/08/28 07:28
「……なんだお主、何を笑っている」

男の口からは笑みが零れていた、だがそれは暖まる心から浮かんで来たものではないのだろう、自嘲や苦笑、驚きの混じる複雑な笑みだった。

「ふ、ふ……んんっ、いやすまん、抑えきれなかったな。
そうか、まさかそちらに子供扱いされるか……」

「私の方が、子供だと?」

一応は穏やかになりつつあった空気が一瞬で冷却される、まるで先ほどまでが夢であったかのような落差だ、他の二名は急激なその流れに上手く着いていけていない。

「いや、違う、ただ似たようなことを考えていただけで……。
あぁでもやはり、ここでまた一つ喧嘩を売らせて貰うよ、そう、仕切り直しという奴だな」

「仕切り直し?
……あぁ、誤解ということで落ち着いたが結局謝罪も訂正もなかったな、あれはまだ終わらせられていなかったか」

「そんなところ……あっと、二人はあまり木の下から出ない方が良い、せっかく乾かしたのにまた濡れる」

男は木の外へ槍を携える少女を促した、釣られるように他の二人も動こうとするがそこを男に止められる、男の手には既に傘が握られていた。

「なにを」
「説明は、不要だろう」

………再びの雨である、少女の体に天から大量の水の雫が浴びせかけられた。
やはり男が雨を起こしているのだろうか、余りにも間が良すぎる。

「これは……、やはり、先ほどの雨はお主の」

「そうかも知れないな、どうだ星、お前の瞳には俺が何者のように映っている?」

男が再び少女の真名を踏みにじった、少女の槍を持つ手に力が込もる、がそれは振り抜かれない、雨の向こうに見える男の瞳が少女の動きを踏み留めさせていた。

「っ…………正直、何か妖孤のようなあやかしの類としか」

「いいや違う。
俺は『天の御遣い』だ」

初めて男は自らそれを口にした、対面する少女は思わず息を呑む、今巷で最も噂されている占い、所詮眉唾と思っていた少女も目の前のある種幻想的な男を前に上手く否定仕切ることが出来ない。

「天候を操れるのも、お前の斬撃で死なないのも、お前達の真名を、平気で呼ぶのも、全部が全部俺が『天の御遣い』だから。
天の住人が地上の民の誇りなど一々気にするはずがないだろう」

「な…………そのように傲慢な者など今の漢と同じではないか!
もう我らに暴君などいらぬのだ!」

「平和はもたらすさ、居座る積もりも搾取する積もりもない、地上の財など必要ないんだ。
どうする星、お前の誇りで民の希望を奪うのか?」

「…………………ッ」

余りにも非道な問いである、少女の踏みにじられた誇りを守ろうとすればそれが少女の誇りを踏みにじるというのだ、しかも今度は自分から。
これが前回信じられない風習だと男が言っていた理由なのだろうか、ただ、これがこの場において少女に有効打を与えたことは確かなようだ、短刀すら持たず男は少女を追い詰めていた。

「この問いに答えられるなら謝罪でも訂正でも何でもしよう、お前の気が済むまで殺してくれてもいい、どうだ……」

その口調に何故か若干懇願の色が浮かんだ、男にとってこの問いにどれほどの意味があるのだろうか。
貶めからかい誤解だったと言い話を交わし再び喧嘩を売る、この一連の出来事の目的はこの問いの為なのか、そうであるとも思えるし違うようにも思える。
ただ分かるのはこの問いが、真名を預けられるようになれば意味を持たないモノになるだろうということだ。


「お兄さん………お兄さんは何故そこまでそれに拘るのですか?
それを知ったところでお兄さんには何の得もないはずなのです、無意味に星ちゃんを追い詰めてイジめないであげて欲しいのですよ」

流れに着いて行ききれず静観に回っていた少女が口を挟んだ、そう、男の目的がその問いだとすればその問いの目的は何なのだろう、少女を無闇に傷付けるだけではないのか。

「まぁ、なぁ。得どころか大損かもしれない、けど………俺はお芝居をする気も人形遊びをする気もさらさら無いんだ、お前達とどう向き合うべきなのか、早い段階で決めておきたい」

「お芝居は分かりませんが……、もしや人形とは風達のことですか?
それはいくら何でもちょっと失礼を通り越し過ぎているのですよ」

明らかにむっとした表情で眠たげだった少女は男を睨み付ける、そう言えば間延びした口調がいつの間にやら止んでいた、よっぽど腹に据えかねているのだろう。

「だよ、な………だけど俺は、この世界に人工的な部分を感じずには居られない、勿論そこの住人の姿にも。
ならばその心はどうなのか……そう言う問いだ、矛盾の中で自分の答えを出せるなら人である、そう思うことにした。
まぁ、お前達にとっては大概迷惑極まりない話だとは思うんだけど」

「そんなの……っ」

一体男はこの世界に何を見たのだろう、この地に男がやって来てから一日も経っていないのだがその間にそこまでのことがあっただろうか、それともこの地へ降り立つ前に何かが……。


「どうだ星、『正義の味方』の夢を持つ者。
君は人か、人形か?」


男は少女に近付き問いの答えを求めた、星とまた無断で呼ばれた少女はそれには何も返さない、そしてしばし瞑目した、数瞬後スッと空気をないだ音がする。


「……痛ゥ!」

「なんだ、普通に痛がるのではないか……」

少女は神速の振りでもって石突を間合いの中に入った男の顔面に叩き当てた、当てた少女の方が若干呆然としているのが妙に印象的である、避け様も無かった男は呆気ないほど普通に血を流していた。

「……まぁ、一応人間なんでね」

「そうか……」

それだけを返した少女は再び瞑目した、今度は確かに何かを考えこんでいるのが分かる、一体何が少女の琴線を動かしたのだろうか。


「私は人だ、……と言っても意味はないのであろうな」
「そりゃな」

眼を瞑りながら少女は口を開く、駄目元であったのだろう、否定を受けてもさして反応せず再び考え込んだ。
雨に打たれ少女は瞑目する、どのくらいたったであろうか、他の皆も少女を見守るしかない、やがて少女は刮目し男を見遣った。

「ならば言おう、私の答えを。

恥知らずのお主を打ち倒し、私が『天の御遣い』となる。

我が槍に倒れる程度の者なら、そもそもこの地に平和をもたらせるはずがない。
見下され、傲慢に平和だけを与えられて、民が自分たちの歴史を紡げる訳がない。
ならば倒した私がその名を継ぎ、我が槍に掛けて、どれほど血が滲んだとしても必ずやお主以上の希望となることを誓おうぞ。
…………まぁ、お主が本当に地上の民へ頭を下げぬ傲慢極まり無い男なら、という仮定の話だがな」

この少女が、『天の御遣い』になるというのか、その代役でもなく正にその名を騙るというのか、だがその言葉が本気であることを少女の瞳が語っていた。
それは一体どれ程の覚悟か、おそらくは様々な安易を乗り越えて出た言葉なのだろう、自分でも分不相応だと感じているはずだ、その上で出た答えを受けて男は見事に面喰らっていた。


「……その発想は、無かったよ」





★★★★★★★★
event_log
00010恋姫に無断で真名を呼んだため、ボーナスが発生しました。
使い捨てエフェクト★ぱるぷんて★が与えられます。
なお、これで★ぱるぷんて★は所持可能量MAXに達しました。

00011風を表情に出るほど怒らせたため、ボーナスが発生しました。
アルバムに『むっとした風』が追加されます。

00012星の持つ夢を実現させるための決意をさらに強めさせたため、ペナルティが発生しました。
基本エフェクトが一日使用できません。


★ぱるぷんて★×3
『外見』変化なし
『効果』???


とある男の呟き「……まぁそうなる可能性はあると思ってた」


______________
深読みするほど底は無いかもしれないが反省は後でしようと思う、後悔はしていない。

さてまぁ作中において重要なこのエフェクト、基本的にネタ元同様余りそれ自体に意味はない、というか中身が無い。
そこで中身をあると見せ掛けるための試行錯誤が必要なんだが、それを全て書くと文章量が酷いことになる、よって第三者というか現地の観客的な視点で本文を書いて最後にその試行錯誤の内容を臭わせる構成にしてみたんだが、うん、失敗したくさいな、そも本文以外は流し読みの人が多いのを忘れていた、本当に眠った頭で考えるものじゃない。

前回は楽屋裏から見える綱渡り感をネタにしようと思ったんだが、やはりその辺りは大して反応無かったか、男の作為とか嘘やハッタリが結構簡単に見破れるようにしたつもりだったのだが……、むしろネタと認識されてなかったっぽい、まぁ最後のミスリード部分も邪魔だったのやも。
レスの7.も落ち着いて本文以外にも目をやって欲しかっただけなんだが、見事に火に油だったし、いや正直すまなかった。

今回はハッタリのオンパレードだけど割と男の本音も入ってます、割合的には三割ほど。
まぁ本文を読み終わった後、暇があったら軽く色々推理してみて欲しい、………あぁ多分粗ばっかな気がする。
そうだ、これは別に言ってもいいか、男はevent_logから下(呟きと後書き除く)を普通に閲覧出来ます、むしろアレは簡易バージョン。


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