財源が課題とされてきた北海道新幹線の未着工区間の取り扱いについて、前原誠司・国土交通相は27日の定例記者会見で、着工の条件として「青函トンネルを含む共用走行区間の運行形態」「並行在来線のあり方」「最高設定速度の見直し」の三つを示した。新幹線と共用走行することになる貨物列車の安全確保などを求めたものだ。
前原国交相は「条件が確実に満たされることを確認したうえで着工したい」としているが、課題がすべてクリアできなければ着工は先送りとなる。ハードルはいずれも高く、「札幌延伸」が近づいたとは言えない情勢だ。
3条件のうちの「青函共用走行区間の運行形態」については、新幹線(最高速度260キロ)と貨物列車(同100キロ)が共用走行するため、すれ違った際などに貨物列車が脱線・転覆しないか懸念されている。対応策として政府は、(1)新たな別のトンネルの建設(2)新幹線と貨物列車の運行時間帯の区分(3)すれ違う際の新幹線の減速――など五つの案を検討しているが、費用がかさみ、開発にも相当の時間がかかるとみられる。
「並行在来線のあり方」については、函館市との調整が付いていない。JR北海道は北海道新幹線の札幌延伸が実現する場合に札幌―函館間を経営分離し、運行を取りやめる考えだ。市は新幹線の駅となる新函館(仮称)―函館間を運行するよう求めているがJRは応じておらず、札幌延伸に向けた着工条件の一つの「地元同意」は現時点で難しい状況になっている。
「最高設定速度の見直し」も重い課題だ。現在の国の整備計画では、2015年度末開業予定の新青森―新函館間は最高速度が260キロとされているが、国は乗客の利便性を上げるため最高設定速度の引き上げを検討している。国の検討事項ではあるが、最高設定速度が引き上げられると建設コストもかさみ、道をはじめとする地元負担が増大する可能性がある。(神元敦司)