死刑囚が刑場に入ってまず連れて来られる「教誨(きょうかい)室」には、大きな棚に据え付けられた仏壇があった。親鸞と蓮如の像。移動式で、死刑囚の宗教によっては神棚や、十字架に変わるのだという。ここで死刑囚は、宗教者の「教誨師」と向き合っていすに座り、茶を飲んだり、まんじゅうなどの「供物」を食べたりできる。
教誨室を出て、約10メートルの無機質な廊下をまっすぐ進むと「前室」にたどりつく。真正面では金色の仏像が見守る。執行室との間にある青いカーテンは、死刑囚が目隠しをされるまで、執行室を見せないように閉ざされているという。
踏み板には、刑務官が数人がかりで運ぶ。執行直前で抵抗しても、「実力行使で立たせる」のだという。
執行室の奥にある、薄暗いボタン室からは、3人の刑務官が「1番」「2番」「3番」とかかれたボタンの前で、幹部職員の指示を待つ。指示があれば、一斉にスイッチを押す。そのうちどれかが、踏み板を開くスイッチだ。執行する刑務官の精神的な負担は相当なものだろう。
「手が震えるほどの緊張感の中、執行されるのは許されない罪を犯した者だ、社会正義のためにやらないと、と自分に言い聞かせている」。刑場公開を前に、法務省幹部は「現場から寄せられた男性職員の声」を読み上げた。(河原田慎一)