現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. 社会
  4. その他・話題
  5. 記事

踏み板の下、薄暗い空間 厳粛さ漂う死刑の刑場(1/2ページ)

2010年8月28日6時55分

印刷印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:刑場の踏み板が開いた状態=法務省提供刑場の踏み板が開いた状態=法務省提供

写真:刑場の立会室から撮影した執行室(画面上部)。下の部屋には開けられた踏み板が見える=法務省提供刑場の立会室から撮影した執行室(画面上部)。下の部屋には開けられた踏み板が見える=法務省提供

図:東京拘置所の刑場拡大東京拘置所の刑場

 入り口に清めの塩が盛られ、お香のにおいが立ちこめる。東京拘置所(東京都葛飾区)の刑場は、厳粛な雰囲気に包まれていた。2006年12月以降、17人の死刑が執行された場所。報道機関の記者として初めて入り、死刑囚の「最期」の姿をたどろうとした。

 木目調の壁に藤色のじゅうたん。思っていたより「執行室」は明るかった。じゅうたんの中央には、赤い正方形。ガーゼで目隠しされた死刑囚の首にロープがかけられ、立たされる「踏み板」の場所を示す枠だ。よく見ると、赤黒いしみのような跡が三つあった。

 枠のそばから、直径20センチほどの大きな金属の輪が、床から壁を伝うように四つ取り付けられていた。ロープは公開されなかったが、執行の際は直径3センチ、長さ約11メートルのロープが、四つの輪を通して天井の滑車にかけられるという。

 空調の静かな音だけが聞こえる執行室。だが、踏み板が開いて死刑囚が下の部屋に落ちるときは、大きな音が響くと説明を受けた。

 「死刑囚がまさに命を絶つ、きわめて厳粛な場所だ」として、階下の部屋への立ち入りは許されなかった。ただ、検察官ら立会人が執行を見届ける「立会室」からは、コンクリートの床の薄暗い部屋が見えた。かすかな消毒液のにおいが、わき上がる。踏み板の真下には、格子のふたで覆われた排水溝が口を開け、「生と死の境」を感じさせた。

 死刑囚が執行室の隣にある「前室」で拘置所長から正式に執行を告げられてから、この部屋に落ちるまで、わずか数分だという。

 法務省幹部によると、執行当日の朝、多くの死刑囚は、日々を過ごしている「房」から出される際に、刑務官のただならぬ雰囲気で執行を察知するのだという。短い間に自分の身に起きることを、どこまで理解できるのだろうか。

前ページ

  1. 1
  2. 2

次ページ

PR情報
検索フォーム

おすすめリンク

冷戦後も維持された日米同盟。地位協定を通して、日本と米国の関係を考えてみると。

消えた100歳問題で重い口を開いた家族。110歳の父とは、約40年前に別れていた。

09年、約3万人が刑務所を出所。「仮釈放」は半数。社会は彼らをどう受け止めるのか。


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介