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【社会】

東京拘置所の刑場初公開 滑車直下に赤いテープ

2010年8月27日 14時19分

報道機関に公開された東京拘置所の「刑場」の「執行室」。執行の際は、赤く囲まれた内側の四角の中に死刑囚が立つ=27日午前、東京都葛飾区で(代表撮影)

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 法務省は二十七日、死刑を執行する東京拘置所(東京都葛飾区)の刑場を報道機関に公開し、本紙記者も刑場に入った。政権交代後に初めて死刑が執行された七月、千葉景子法相が自ら執行に立ち会ったことを明らかにした上で「国民的な議論に資する」として、八月中の公開を指示していた。写真と映像を含めた公開は初めて。 (社会部・飯田孝幸)

 「厳粛」「残虐」「無機質」。どのような言葉で表現すればいいのか考えながら、死刑を執行する部屋に足を踏み入れた。想像とは全く異なり、木目調の壁面とベージュのじゅうたんが温かな印象を抱かせるほどだった。

 死刑囚の首に掛ける絞縄(こうじょう)は外されていたものの、絞縄を固定する金属製のリングと天井に設置された滑車が異様な存在感を示している。直下にある踏み板の周囲は赤いテープが張られ、ここが死刑の現場であることを、あらためて認識させられた。

 東京拘置所に入った後、運転席以外は四方をカーテンで囲まれたバスに乗せられ、刑場に移動した。どこにあるかは、保安上の理由から明かされない。

 同拘置所の改築に伴って作られた刑場。ここで二〇〇六年十二月以降、十七人の死刑が執行された。

 刑場は二層構造になっており、上に二十三平方メートル(約十四畳)の執行室とボタン室、前室、教戒室、立ち会い室がある。執行室の床には死刑囚が立つ踏み板があり、板が開くと死刑囚が下に落ち、医務官が死亡確認する。

 「刑場は死者の魂のいる場所。無言でお願いします」。法務省の職員から事前に指示があったこともあり、誰も声を発しない。

 拘置所の職員に合わせて、合掌しながら各部屋に入る。香のにおいが漂っている。最初は教戒室。死刑囚はこの部屋で拘置所幹部に遺言がないか聞かれ、読経やお祈りを受ける。それから前室に移り、拘置所長から死刑執行の告知を受ける。

 死刑囚が前室にいる間、隣の執行室との間には青いカーテンが引かれる。死刑囚はここで目隠しをされ、執行室に移されるため、自らの命を奪う絞縄を見ることはない。

 執行室に入った。絞縄は「普段も設置されていない」という理由で、この日もない。

 赤い線で囲まれた踏み板は、執行室の中央にある。一カ月前の七月二十八日、ここに二人の死刑囚が立った。一人は二年前、死刑に反対する団体のアンケートに「死を受け入れるかわりに反省の心をすてた」と記し、死刑への覚悟を示した。彼は最期の瞬間も、同じ気持ちでいられたのだろうか。

    ◇

 刑場への立ち入りは法務省の記者クラブに加盟するマスコミ各社に約三十分間許可された。写真と映像は代表撮影で、撮影位置などは制限された。

(東京新聞)

 

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