2008年07月20日
日本にいた孫文の孫
かつて仕事でお世話になった、宮川東一さんは８０歳を越ていまだお元気である。その宮川さんが、中国の革命運動家孫文のお孫さんだった、ということが最近判明した。それを書いた本が昨日届いた。概略は次のようなこと。
まず宮川さんと孫文の関係を整理すると。
孫文にとって、宮川さんは日本での妻、大月薫との間に生まれた娘 冨美子さんの長男ということになる。つまり日本での遺児の末裔である。
そして、時代の流れにしたがうと。
明治３１年、孫文は日本に亡命中だったが支援者が用意した横浜の隠れ家に住んでいた。その家の二階に火事で焼け出された大月家が移り住んでくる。
大月家には当時１２，３歳くらいの娘、薫さんがいた。孫文と薫さんはそこで出会うことになる。一家は、孫文のことを、先生（シンサン）と呼んで親しくしていたそうだが、３年ほど経った明治３４年ごろ孫文は薫さんへ再三にわたりプロポーズをしたようである。それを大月家は承諾する。薫さんが横浜高等女学校に通っていた１５歳ごろのこと。
その後、孫文は海外に渡り日本へ戻ってくるのは明治３８年の夏。そして以前から約束していた薫さんとの結婚を果たす。そこで生れた子が冨美子さんである。
ところが革命運動に奔走していた孫文は毎日が慌しい。間もなく出国した孫文とのあいだで連絡が途絶えてしまう。これを不憫に思った大月家は薫さんを他家に嫁がせることにした。一方、孫文の子として生れた冨美子さんは、まだ乳児だったので横浜市内の宮川家に預けることにした。その宮川家は商家だった。
やがて適齢期になった冨美子さんは、東京の多摩から宮川家に婿養子として迎えた大沢吉次さんと結婚。その長男として生まれたのが宮川東一さんである。
前にも書いたように、孫文は富美子さんが生れてすぐ中国へ帰っていったが、その後の孫文は中国で波乱の後半生を送る。
孫文の中国での結婚相手、宋慶齢やその姉妹については多く語られるが、日本時代に生んだ子供のことはほとんど知られていない。
宮川冨美子さんが、生みの親である大月薫さんと初めて面会できたのは昭和３３年、場所は栃木県のお寺でのことだという。
孫文が日本を去った後、薫さんは日本の男性と結婚したようだが、その後はどんな生きかたをしたのだろうか。そして、長いあいだ自分が誰の子であるかを知らされないままに来た冨美子さんの思いはどうであったのか。
個人の人生は歴史の展開のなかで翻弄させられるのが常だ。
こんど宮川東一さんに会ってお聞きしたいとおもう。
