居酒屋のワタミグループが、日本相撲協会とのコラボレーションを申し出た。「ガバナンス(統治)の整備に関する独立委員会(独立委)」の渡辺美樹委員(50)=ワタミ会長・CEO=が26日、東京・中野区の貴乃花部屋で朝げいこを見学した。けいこ後に貴乃花親方(38)=元横綱貴乃花=と約1時間にわたって引退力士の支援策や相撲の普及などについて話し合い、ワタミグループが力士の第二の人生を用意することを提案した。
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見学を終えた渡辺委員が仰天プランをぶち上げた。「親方は力士の職業安定について気にされていた。将来的には(私が)受け皿を用意したい」。居酒屋「和民」だけではなく、介護施設や農場など多様な企業を抱えるワタミグループが、引退力士の再就職先を用意しようというのだ。
貴乃花親方が5月3日にワタミグループの農場や老人ホームを訪れて以来の交流だという。訪問を受けた老人から、感謝の手紙を受け取った渡辺委員は相撲が持つ影響力の大きさを実感。引退力士の採用が、協会と企業のどちらにとっても利益になると判断した。
職場についても「ちゃんこ番で調理をしている。老人ホームの厨房(ちゅうぼう)に入れる。力もあるから農場もいい」(渡辺委員)と具体的なイメージができあがっている。この日の見学は委員としてではなく、個人的なものと強調したが、独立委で支援策を提案する予定だ。
貴乃花親方は以前から、「入門者を増やすためには引退後のフォローが必要」と、引退力士に対する支援の充実を訴えてきた。渡辺委員の提案に「私だけの意見では決められない」としながらも、「せっかく相撲道に属したわけですから、培ったもので(社会に)貢献してもらいたい」と前向きにとらえている。
渡辺委員は「貴乃花部屋のちゃんこを(和民の)メニューに入れるのもいいかも。それだと(独立委が)独立してないと言われちゃうか」と、人材の受け入れ以外の交流もにおわせた。元力士の店員が相撲部屋のちゃんこメニューを給仕する、そんなレストランが誕生する日が来るかもしれない。