作戦計画5027

OPLAN 5027

 OPLAN 5027は、米韓連合軍司令部の基本戦争計画である。作戦計画5027(CINCUNC/CFC OPLAN 5027)の下、合衆国は、外部の武装攻撃の場合、大韓民国を増援するために部隊を提供することを計画している。これら部隊とその見積到着日時は、CINCUNC/CFC OPLAN 5027別紙A付紙6、時系列部隊配備表(TPFDL)に列挙されている。TPFDLは、米韓の合意を経て、2年毎に更新される。CINCUNC/CFC OPLAN 5027は、米韓の秘密区分SECRETで配布されている。

 平壌は、通常兵力のみでソウルの即事破壊を確実に脅かし得る。北朝鮮軍はまた、DMZを通して浅い足場を確立することもできる。しかしながら、北朝鮮のこれら攻勢作戦を維持し、又はその部隊を更に南進させる能力は、疑問である。米韓空軍は、迅速に航空優勢を確立し、北朝鮮地上軍を撃破することができる。朝鮮における米軍の構築の保障は、北朝鮮の南進を後退させ、北への攻勢作戦を開始させ得る。北朝鮮は、ソウルを荒廃させるか、又はDMZを通して土地を獲得するために、核、化学、又は生物学弾頭を搭載した長射程ミサイルを必要としない。当該兵器は、北朝鮮へのアメリカの反攻を遅延又は破砕するために必要とされる。

 北朝鮮は、ソウルを射程内に、1990中盤水準の2倍、約500門の長射程砲を有している。ソウルは、170mmコクサン砲と200門の240mm多連装ロケット発射機の射程内にある。非武装地帯へのこれら長射程システムの近接は、破壊的攻撃でソウル全体を脅かしている。北朝鮮の砲列の残りの大部分は、旧式で、射程が制限されている。北朝鮮は、12,000門以上の自走砲及び投射兵器システムを配備している。砲列の移動なしに、北は、数時間、連合軍司令部の防御に対して1時間当たり500,000発まで維持することができる。

 北朝鮮の短期電撃戦略は、米国の増援の朝鮮半島到着前に、韓国の一部又は全土を占領するために、戦争の初期段階において、奇襲の成功を想定している。約100万人を数える北朝鮮地上軍は、歩兵、砲兵、戦車、機械化及び特殊作戦部隊を含む約170個の師団及び旅団から成る。計約60個の師団及び旅団が、平壌−元山線南方に配備されている。北朝鮮は、国境近隣の前方基地にその緊要戦力の過半数を配備している。兵員700,000人、砲兵システム8,000門、及び戦車2,000両を含むその現役部隊の70%は、非武装地帯から160km以内で守備に就いている。この戦力の大部分は、前方地域だけで4千ヶ所以上の地下施設を含む地下施設により防護されている。その現在地から、これら部隊は、最小限の準備で攻撃を行うことができる。このことは、韓国に対する奇襲がその部隊の事前再配置なしに、いつでも可能であることを意味する。

 北朝鮮海軍もまた、戦線近くの前方基地に、430隻の水上艦艇と約90隻の潜水艦の内約60%を配備している。戦線近くに配備されたその790機の戦闘機の約40%を以って、北朝鮮空軍は、短時間内に韓国のいかなる場所にも奇襲を掛けることができる。

 朝鮮民主主義人民共和国は、イラクよりも大きな戦力を保有し、これらは、既に韓国国境に沿いに配備されている。戦争は、数週間ではなく、数時間又は数日のみの警戒後に勃発し得る。ペルシャ湾と異なり、この攻撃は、山岳地形の狭い半島に沿って遂行される。攻撃は、恐らく、大量砲撃、コマンド強襲、及び化学兵器を伴うだろう。当初、主戦場は、おおよそ幅125km、縦深100kmでしかないだろう。北朝鮮の攻撃は、築城された陣地で良く準備された韓国軍とペルシャ湾よりも大規模な米軍に対して実行される。ほぼ確実に、北朝鮮の攻撃は、開城−汶山、金化、及び鉄原回廊を前進することにより、ソウル周辺の奪取を狙う。成功すれば、北朝鮮軍は、米国の大増援が到着する前に、半島全体を征服しようとするかも知れない。

 南部障害フェンスは、DMZの南側の一部である。韓国は、半島全体を横断する一連の防衛線を有しているが、これらは、南部障害フェンスを除き、半島を完全に横断して繋がっていない。これらは、増援/逆襲部隊が集結し、浸透を破砕するために派遣される間、攻撃を持ちこたえ、最小の部隊で戦線を維持することを可能にすることを目的とする。

 北朝鮮の南方攻勢の基本目標は、韓国がその国力を完全に動員するか、合衆国からの著しい増援が到着し、配備される前に、連合防衛を撃破することである。北朝鮮の軍事戦略の主目標は、開戦30日以内に北朝鮮の支配下に朝鮮半島を再統一することである。二次目標は、北朝鮮の防衛である。

 これらの野心的な目標を達成するために、北朝鮮は、2つの戦線で戦うことを想定している。通常戦力から成る第1戦線は、DMZに沿って防御する部隊を突破し、防御するCFC部隊を撃破し、半島全体を迅速に進撃することを任務とする。この作戦は、CFCの後方で襲撃及び撹乱攻撃を実行するSOF部隊から成る第2戦線の開設と密接に調整されるだろう。

 北朝鮮の韓国に対する攻勢は、3段階から成るだろう。第1段階の目標は、DMZ沿いの防御を突破し、前方配備部隊を撃破することであろう。第2段階の目標は、ソウルを孤立させ、戦果を固めることであろう。第3段階の目標は、残存戦力を追撃及び撃破し、半島の残りを占領することであろう。

 韓国の人口の約40%が、ソウルから64km以内に居住している。ソウル北方の地形は、野外機動力を制限する水田が支配的だが、ソウル西方の地形は、ソウルへの主侵攻ルートを有する幅広い海岸平野である。鉄原又は汶山回廊 を通ってソウルを攻撃する北朝鮮軍は、漢江又は臨津江(これら河川は、冬季に凍結するが、氷は、重装甲車両を支えられるほど強くない。)を渡河しなければならない。狭い東部海岸平野は、山地が東海岸からの部隊移動を困難にしているにも拘らず、余り配備されておらず、重度に防御されていない。

 米国の計画は、北が各所でDMZを突破するかも知れないことを想定しているにも拘らず、北朝鮮がソウル周辺でその戦果を固めることに失敗し、DMZの反対側に押し戻されるとの信念に基づいている。重大な問題は、北朝鮮が攻撃を準備している明白な徴候の戦略的警戒である。警戒時間は、北朝鮮がその軍事活動を秘匿すれば、約10日から約3日まで短縮されるという。

 米韓の防衛計画は、脅威だけではなく、山岳地形によっても方向付けられる。朝鮮は、一般に、機動地上戦も、重爆撃も招来しない錯雑した歩兵地形と評価されているが、北朝鮮は、突破を利用するのに決定的な大装甲部隊を集結させており、これら部隊は、米空軍力の潜在的な撃破地帯である狭い回廊を通過する。新たな朝鮮戦争は、1950〜53年の紛争への類似性をほとんど帯びないだろう。

 第1段階中、米韓軍は、ソウル防衛を狙いとした力強い前方防衛を実行する。その戦役は、歩兵、砲兵、及び機甲兵で遂行される諸兵科連合地上戦闘が支配する。米空軍と海軍は、近接航空支援、阻止、及び縦深打撃任務を実行する。第1段階後、第2段階における米韓の作戦は、恐らく、緊要地形の奪取、敵部隊に対する追加打撃、及び事後の攻撃の撃退に焦点を当てている。第3段階は、米地上部隊の集結が完了し、韓国軍が補充されたときに始まり、北朝鮮の軍事力の撃破を狙った強力な反攻である。戦争計画は、北朝鮮の狭い腰部への米陸軍及び海兵隊による強襲上陸を想定している。米海兵隊の全資源は、そこに橋頭堡を確保するために流れ、堅実な陸軍の資源が、海岸外作戦を迅速に実行する。

■OPLAN 5027-94

 1994年現在、CINCPACが検討中のOPLAN 5027案は、韓国軍が北朝鮮の攻勢を鈍化させ、FEBA Bravo(DMZ南方32〜48km)で防衛線を安定させられるとの想定に焦点を当てたという。事後、米韓連合軍司令部は、米国の増援が到着すれば、報復攻勢を実行する。北軍に対する主要航空戦役は、反攻が始まる前に要求される。米海兵隊遠征部隊(師団戦力)と第82空中襲撃師団は、韓国師団と協力して、東海岸から北方元山方向に陸上攻勢を開始する。その後直ちに、米韓連合軍は、元山近郊に上陸を試み、平壌に前進する。事後、米韓連合軍は、平壌奪取を狙いとして、ソウル北方から主反攻を実行する。これは、元山の部隊との連携、又は平壌での会合により達成される。

 南にとって好ましい結果は、2つの条件に依存する。第1に、韓国軍は、北朝鮮の攻勢行動の当初の5〜15日間、北朝鮮軍に持ちこたえなければならない。第2に、彼らは、更に15〜20日かかり得る反攻のために米韓軍が動員されるまで、戦線を保持しなければならない。

 米韓の戦争計画は、北朝鮮体制を撃破する反攻を含んだ。韓国国営テレビは、1994年3月24日、ソウルとワシントンが、スターリン主義国家が南を攻撃すれば、北朝鮮政府を打倒することを計画したとレポートした。KBSテレビは、計画が北の部隊を単に追い返すよりはむしろ、平壌を奪取し、金日成政権の転覆を試みるための反攻に備えていると語った(「KBS reports plan to topple Kim Il-Seong」、Washington Times、1994年3月25日、p.16)。1994年、韓国大統領金永三は、「一度主要軍事対決が起これば、北朝鮮は、確実に撃滅されるだろう」と語った(Ranan R. Lurie、「In a Confrontation, ‘North Korea Will Definitely Be Annihilated,’」、Los Angeles Times(ワシントン)、1994年3月24日、p.11)。

■OPLAN 5027-96

 1994年の核危機後、OPLAN 5027は、米国が北朝鮮 との戦争に入った場合、日本の基地が利用できることを保障する新しい協定を含めて、完全に改訂された。1999年5月24日に日本議会が可決し、更新された日米防衛協力ガイドラインは、日本及び太平洋地域 にその軍事力を配備することにより、米国が朝鮮戦争に備えることを可能にしている。

■OPLAN 5027-98

 作戦概念の事後の改訂は、1998年後半に採用されたOPLAN 5027-98で立案された。旧版のOPLAN 5027は、北朝鮮の侵略を停止させ、非武装地帯の反対側に押し返すことが要求されていた。新版の計画は、北朝鮮に対する攻勢作戦により明確に焦点を当てた。米高官は、「我々がやれば、彼らはいかなる種類の軍事活動も行えないだろう。我々は彼ら全員を殺すだろう」と語ったという。改訂された計画の目標は、「機能国家としての北朝鮮を廃止し、その指導者、金正日の支配を終焉させ、韓国の支配下に国を再編する」ことだった。

 新しい優先度は、ソウルに対する化学及び生物学奇襲への対抗にも焦点を当てた。韓国軍は、神経ガスを搭載した50発のミサイルが、ソウル住民1,200万人の38%までを殺し得ると見積もっているという。

 新しい計画は、「彼らを細切れにする」ことを包括する北朝鮮軍及び政府に対する戦役を要求した。作戦は、北朝鮮の攻撃に先立つ活動、北朝鮮の当初の襲撃の停止、逆襲のための再編、そして最後に平壌を奪取するための北朝鮮の完全侵攻の4段階で実行される。

 報告によれば、新しい軍事計画は、情報部が北朝鮮が戦争遂行を準備しているという確固たる証拠を探知した場合、長射程砲及び空軍基地を含む北朝鮮の軍事基地に対する先制攻撃を含んだ。米韓の軍事指導者は、改訂されたこの戦争計画に先制打撃を含めた。北朝鮮が打撃準備の明白な徴候を示し、韓国が攻撃されるまで米国が待たないことを決めた場合、米軍は、既に選定されている北朝鮮の目標とそれを破壊するための兵器を有した。

 OPLANの撃破段階中に遂行される任務は、単に北朝鮮軍を休戦線に追い返すことにより戦争を終結させるよりはむしろ、北朝鮮体制の集結を目標とした非武装地帯北方での機動戦戦略を包括しているという。この段階において、作戦は、米国の北朝鮮侵入、朝鮮人民軍と平壌の北朝鮮政府の撃破を包括する。計画は、国を2つに分断するため、北朝鮮の狭い腰部への海兵隊の強襲上陸を含む。米軍は、北朝鮮を占領し、ワシントンとソウルは、その時、国家としての北朝鮮を廃止し、韓国の統制下に「再編」するだろう。

 この新しい戦争計画が1998年11月にプレスにリークされたとき、合衆国と北朝鮮間の緊張がエスカレートした。北朝鮮は、OPLAN 5027-98を厳しく非難し、北朝鮮侵略のための戦争シナリオであることを責めた。平壌は、OPLAN 5027の改訂でソウルを非難し、北朝鮮軍のスポークスマンは、1998年12月2日、OPLAN 5027を非難するために、軍事部隊及び各種社会組織の大衆集会を開催しつつ、北朝鮮が牽制攻勢を取る権利を有すると声明した。そのような出来事は、OPLAN 5027に対する北朝鮮の敏感な反応を例証した。

 1998年12月2日、北朝鮮人民軍(KPA)総参謀部は、合衆国が新たな戦争を挑発していると警告する冗長かつ横柄な声明を発表した。声明は、KPAが挑戦に立ち向かうことを強調した。「我々は、戦争を避けることを欲しない。戦争が押し付けられれば、我々は、決して機会を見逃さないだろう」と、声明は読み上げた。平壌の公式声明の 独特な様相は、切迫した脅威としての「米国の戦争計画 5027」の先取りである。平壌公式筋は、「戦争計画 5027」が既に実行されていると主張し、公式声明は、しばしば、OPLAN 5027に焦点を当てている。

■OPLAN 5027-00

 2000年12月4日の韓国国防部国防白書によれば、合衆国は、新たな戦争が勃発すれば、朝鮮半島に690,000人までを配備する。合衆国は、明らかに新しい朝鮮紛争に配備される兵員数をかなり増加させた。数値は、1990年代初めに作成された計画中の480,000人から1990年代中盤の630,000人まで増大していた。朝鮮半島事態に対する最新の時系列部隊配備表は、90日以内に米国から配備される兵員690,000人、海軍艦艇160隻及び航空機1,600機から成る。

 韓国国防部は、合衆国が中東と東アジアのような2つの戦争を同時に戦える能力を有することを要求する米国の新しい「win-win戦略」の結果として、増加を説明した。大量破壊兵器に対抗する装備と共に、米国の計画は、戦争の初期段階において敵砲兵部隊を攻撃するために、航空母艦及び最新機の配備に焦点を当てた。

■OPLAN 5027-02

 2002年2月、米軍が9月11日のテロリストの攻撃の結果として、OPLAN 5027を更新していると報告された。これは、北朝鮮指導者、金正日を除去するのに必要な戦力の軍事的見積を含む。

 2002年中盤、国防長官Donald Rumsfeldは、北朝鮮の大量破壊兵器を打撃するための作戦概念を要約した。ブッシュ政権の新しい先制軍事行動ドクトリンの適用におけるこの事例研究は、アメリカの半島の同盟国、韓国との協議なしに実行される即事攻撃を想定した。ブリーフィングの言葉が広まった直後、国務長官Colin Powellと太平洋米軍司令官Thomas Fargo大将を含む行政筋は、計画の事後の議論を打ち消しに掛かった。

■OPLAN 5027-04

 パトリオットは米軍が配備した唯一のミサイル防衛システムだが、国防総省は、ミサイル防衛のための3つの「緊急能力」が、2004年に現れ始めるものと予想している。当該能力は、太平洋試験場の一部としてアラスカに設置されている地上設置中間軌道迎撃機、1隻又は2隻のイージス艦上の海上設置中間軌道迎撃機、空中レーザー試作機である。2004年後半又は2005年初めまでに、アラスカ、Fort Greelyのミサイル防衛試験基地は、北朝鮮のミサイル攻撃に対する緊急能力を提供できるが、極めて限定的なものとなろう。5機の対ミサイル迎撃機がこの基地に配備されるだろう。

 イラク・フリーダム作戦に引き続き、USFKは、OPLAN 5027の空軍構成要素を評価するために、烏山空軍基地において、上級軍事指揮官の会議を開催した。会議は、2003年5月22〜23日に行われ、第7空軍司令官Lance Smith中将によれば、UAVと地上戦術の使用から得られた教訓に適応し、「2003年度の計画と戦略にそれらを適用」するためだった。空軍司令官会議は、特定目標と新技術の影響を審議した。2003年5月24日にStars and Stripes紙により引用されたSmithによれば、戦闘計画は、かなり変更されている。

計画の各段階

bullet第1段階 北朝鮮の攻撃
bullet第2段階 韓国の防御
bullet第3段階 米国の逆襲

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最終更新日:2004/03/19