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世界の大麻合法化の動き

 ここ数年、世界は大麻合法化の方向に向けて大きく動き始めた。ドイツ、アメリカ、オーストラリア、カナダの例を通して、世界がどこに向かって進んでいるか、日本が取るべき正しい道はどれかを考えてみたい。

ドイツ

 オランダでは事実上、大麻が解禁されているのはよく知られている通りである。ところがここ2〜3年、ドイツがオランダを追い越すような勢いである。この数年のドイツの動きを、新聞記事で追ってみた。

1994年4月30日、毎日新聞の次の記事は非常に衝撃的で、すぐには信じられないものだった。

「ドイツで進む大麻解禁の動き」

「ドイツの連邦憲法裁判所は28日、販売目的ではないマリファナとハシシュを少量なら使用しても罪に問わない」とする判決を下した。
 これに対し政府は、「 判決は大麻から作られる薬物の使用を完全に認めたわけではない」と国民に自制を求めている。「健康を害するたばこやアルコール飲料が法的に認められているのに、マリファナなどの使用が許されないのはおかしい」という訴えを8人の裁判官が審議。判決ではマリファナなどの使用禁止を定めた薬物禁止法の憲法上の正当性は認めたが、警察などの取り締まり当局が少量の使用を見逃してもさしつかえないとの判断をくだした。
  1. 大麻がタバコより害がないというのは世界の常識で、国連の調査でも明らか。厚生省の資料にも、大麻には依存性(禁断症状)がタバコ、アルコールより低く、耐性上昇(量が増えていく)はないとはっきり書かれている。

  2. ドイツでは憲法裁判所(最高裁)で8人の裁判官が審議。ところが我が国では裁判所が大麻の有害性をまともに審議したことはない。取締当局・検察の言い分は、「大麻取締法という法律があり、その法律に触れているから有罪である。大麻なんかなくても生活に困らない」というもの。

  3. 罪に問わない条件に「販売目的ではない」ことをあげている。

それから約2年。状況はさらに進展した。

「ドイツで大麻販売解禁の動き」

 ドイツ北部のシュレスウィッヒ・ホルシュタイン州が、ハシシュなど大麻系の麻薬の薬局販売を解禁する方針を決めた。害が少ないとされる大麻と、ヘロインなどの市場とを分離し、大麻常習者がより強い麻薬に進まないようねらったものだが、乱用者が増加するとの批判も強く、実現には困難が予想される。
 同州のモー ザー保健相がこのほど独紙に語った具体案によると、販売対象は16歳以上とし、当面は三郡で試験的に行う。コード番号だけが書かれたチップカードを提示すれば、1日5グラムまで薬局で購入することができる。価格は警察当局や専門家で構成する委員会で決定するという。薬局販売の解禁には、最終的に連邦薬物医薬品研究所の特別許可が必要で、同州は今月中にも申請、同研究所はドイツ初の事例について、約半年かけて審査する予定。

1997年1月13日、時事通信ニュース速報
  1. 2年前には「販売目的」は取締の対象とされていたが、今回、「販売」まで合法化された。害がないのだから販売しても構わないとするのは当然のなりゆき。インドでもかつては公営ガンジャショップがあったが、現在は非合法である。もしドイツで販売が合法化されれば、西側先進諸国では初めてのこととなる。オランダにおいても、法的にはあくまで「寛容」であって、決して合法化されたわけではない。政府としては、合法化して課税すれば国庫も潤うし、闇売買で犯罪組織を太らせることもなくなる。日本では大麻禁止の理由の一つに「暴力団など犯罪組織との関わり」をあげているが、合法化すれば一気に解決してしまう。

  2. ドイツは日本と同じく第二次世界大戦の敗戦国。当然、アメリカの管理・監視下に置かれてきた。日本で「大麻取締法」が制定されたのは1948年で、アメリカ占領軍によって強制された結果である。ドイツでは法的手続きを踏んで解禁となり、一方、日本では医学的研究やまともな論議すら許されないというのが現状である。この違いについてはじっくり考えてみる必要がある。ただ、ドイツで合法化されれば、日本にもかなりの影響があるのは確実。ドイツの先例を示されれば、取締当局はこれまでのような無茶苦茶な嘘はつけなくなる。

「ドイツ政府、大麻栽培に補助金」

ドイツでは現在557人の農民が政府に大麻の栽培申請を行っている。栽培面積は合計で約3500エーカー(1エーカーは約40アール。1アールは100平方メートル)になる。ドイツ政府は大麻栽培に補助金を出しているが、品種が栽培許可のあるものかどうか確認手続きをおこなっているところである。

NOVA INSTITUTEのニュースから
  1. ドイツでは政府が農業目的の大麻栽培に補助金を出している。国内で生産した大麻繊維から服地を作ったり、洗剤などの化学製品を作って販売する会社もある。ドイツは環境問題に非常に敏感で、選挙ではエコロジー関係の立候補者が常に15%前後の得票率を得ている。ドイツで大麻栽培が進んでいる背景には、政府をあげて環境問題に取り組まねばという真剣な姿勢がある。スイスでは農民が大麻を栽培するにあたって、許可申請義務など、いっさいの規制はない。ヨーロッパではこのような国はほかにないため、スイスの地主が他国の農民に土地を賃貸するというようなこともおこっている。





アメリカ


「マリファナの医療用使用で法案可決」

 1996年11月5日、マリファナの「医療用使用」を認める法案が、米カリフォルニア、アリゾナ両州で、住民投票の結果、賛成多数で可決された。米国ではここ数年、エイズや癌患者の間で「食欲を促し、痛みや不快感を和らげる」とマリファナの合法使用を求める動きが拡がっている。しかし、国際麻薬条約で規制されているマリファナの一部合法化を認める法案成立に、ホワイトハウスのバリー麻薬政策室長は「連邦法に反する」として、患者にマリファナをすすめた医師を逮捕する方針を明らかにしている。

 可決されたカリフォルニア州の法案は、患者とその世話をする人たちが、医師の薦めに基づいてマリファナを栽培・所持・使用した場合、刑法上例外扱いするというもの。またアリゾナ州の法案は、マリファナのほかコカイン、LSDなども含めて医師の処方があれば、治療用として使用できるという内容だ。カリフォルニア州の住民投票では、賛成56%、反対44%だった。

 住民投票は住民が一定数の署名を集めて法案を提案、賛成多数なら州議会の議決や知事の承認などなしにそのまま法律となる制度に基づくもので、医療関係者や患者らが中心になって、「一部合法化」の運動を展開してきた。カリフォルニア州の法案をめぐっては、投機家ジョージ・ソロス氏や前国務長官(日本の外務大臣にあたる)ジョージ・シュルツ氏など著名人も賛意を示し、資金提供を含めて運動を支援してきた。

 これに対し、州警察協会、検察協会、麻薬取締官協会などからなる「麻薬のないカリフォルニアをめざす市民」は、「医療効果について科学的証拠はない。法案は密売業者を潤すだけ」と反対し、訴訟に持ち込むことを含め、対応を検討している。

 マリファナの医療効果については、米厚生省が2年前、「国立健康研究所が研究を続けてきたが、マリファナ吸引が現存する薬に勝る効果を示す結果はでていない」と結論づけたが、研究者の間には「国は真剣に研究に取り組んでいない」との批判もでていた。

 法案の可決について、国連の国際麻薬統制委員会事務局は「医療という名の乱用の可能性もあり、重大な関心を持って推移を見守りたい」と話している。

96年11月6日 読売新聞ニュース速報
  1.  医療用という限定付きではあるが、アメリカでも大麻合法化の動きがでてきた(ドイツの場合、販売の合法化には医療用という限定はつけられていない)。アメリカでは医療関係者が研究を続け、マリファナがエイズや癌、その他の病気の治療に役立つことを明らかにしており、住民もそれを知っている。医療関係者やNORMLなどの解放団体が、20年近く努力してきた成果である。
     アメリカやオーストラリアなどで研究と実際的利用がすすんでいる以上、日本おいても、医学的研究をすすめるべきである。大麻は何千年もの間、漢方で利用されてきたし、日本では昭和33年まで「日本薬局方」で調剤可能な薬品として認められていた。最近、「マリファナ これでも麻薬か」というアメリカ人医師が書いた本が翻訳出版されたが、それを読むと、漢方と重なる処方が多いことに驚かされる。東洋医学と西洋医学の両方に近い日本の位置を考えれば、欧米諸国ではなく日本こそ、率先して大麻の医学的利用を研究しなくてはならないはずである。
     しかし、日本ではそれができないようになっている。
    「大麻取締法第4条2 大麻から製造された医薬品を施用し、または施用のために交付すること」
    (第24条3の2 第4条の規定に違反して、大麻から製造 された医薬品を施用した者は5年以下の懲役に処する。営利の目的で前項の違反行為をした者は、7年以下の懲役に処し、または情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する) 
    「大麻取締法第4条3 大麻から製造された医薬品の施用を受けること」
     医者が患者に処方してもいけないし、また、患者が医者から薬をもらっても罰せられるという法律なのである。第4条の3で、わざわざ「患者が大麻から製造された薬を処方されてもいけない」と念を押してあるのは、モルヒネなどの麻薬でも医者なら処方できるため、患者を罰するぞと脅迫しているわけである。
     このように日本では医者が純粋な臨床試験すらできないようになっており、当然、実際的研究もできないのである。
    (唯一の可能性は、医者が大麻研究免許を取り、自分自身を利用して実験をし、その結果を発表するということである。非常に限定された研究になってしまう が、突破口を開くことはできるだろう。アメリカではエイズ・癌という非常に患者数の多い病気に適用されているのである。私も個人的にではあるが、癌が軽快 したという例を知っている。自ら、癌やエイズで苦しむ人、そして研究熱心な医者の登場を期待したい。)

  2.  この記事でもう一つ見逃してはならないのは、アメリカの経済界が部分的ではあるが、大麻合法化を支持している点である。ニューヨークの著名な為替トレーダー、ジョージ・ソロス氏が55万ドル、新自由主義経済学を提唱したノーベル経済学賞受賞者のフリードマン教授(150ドル)、特にあのロックフェラー財閥のローレンス・ロックフェラー氏が5万ドルを寄付しているのは見逃せな い。彼らは「医療目的の使用」名目で大麻解禁運動に金を出しているが、実際は大麻の資源的価値、それに基づいた巨大産業としての企業化の可能性に気がつきはじめたのである。
     大麻を繊維・燃料・紙・食品・薬品・プラスチックなどの化学製品の原料として利用すれば、莫大な経済的利益が期待できるが、現状の「大麻麻薬論」にもとづいた「大麻規制」がある限り、自由な利用ができない。そこでアメリカ財界は大麻の完全合法化の戦略の一環として、「医療目的」のための大麻解禁を、口実として使い始めたのである。これは1994年のドイツのマリファナ解禁と並行した大麻の資源的利用が成功を収めつつあることを知ったアメリカ財界が、「遅れをとってはならない」と考え始めたことのあらわれでもあるだろう。
     どこの国でも、政府は民衆の利益よりも資本家の利益を優先させるものである。財界の動きが、陰で政府に圧力をかけるいつものやり口ではあっても、大麻全面合法化をすすめるものであれば、いちおうは歓迎しようではないか。それが石油化学産業によって汚染された地球を救うものである限り。

  3.  オーストラリアでは「シドニーでの医療目的のマリファナ使用の合法化」が、数年後に「個人使用目的での栽培合法化」につながっていった。

  4.  カリフォルニアとアリゾナ州の今回の動き以前に、オハイオ州ではもっと画期的な法律ができ、すでに実施されている。1996年、オハイオ州では「個人使用目的なら3本まで大麻を栽培しても罰金100ドル、しかも犯罪歴にも残らない」ことになった。つまり、軽い交通違反のような扱いになったのである。

  5.  アメリカには住民投票という方法がある。「住民投票は住民が一定数の署名を集めて法案を提案、賛成多数なら州議会の議決や知事の承認などなしにそのまま法律となる制度」。選挙による間接民主制の弊害を補う制度だと言えるだろ う。日本では住民が署名を集めて議員を「リコール」することはできても、自分たちで法律を練り、それを投票にかけて法律を作るシステムはない。日本の政治家は政治改革、地方自治の強化を言いながら、民衆に本当の力を与えるような改革は絶対にしない。民衆の要求を、「票」に結びつけることしか考えないのだ。日本でも「国政レベルでの重要案件に対する国民投票」「住民投票」「首相の直接選挙」が実現されるべきである。



カナダ
産業用大麻シンポジウム開催される


大麻解放を訴えるBRIAN市長
 97年2月18日から19日にかけて、カナダのバンクーバーで HEMP SYMPOSIUM が開催された。大麻の産業利用を推進するという目的で、カナダ・アメリカを中心に300人近い参加者があった。日本からも私を含めて5人が参加した。

 大ホールでは2日間にわたって現状報告・質疑応答が行われ、大麻繊維生産者をはじめ、紙、食料など、関係者の熱心な討論が続けられ、カナダにおいて大麻が産業としての地盤を築きつつあるのを実感させられた。

 特にGRAND FORKS市のBRIAN TAYLOR氏は年齢60歳をすぎた温厚な人物だが、数年前、市の道路沿いに「大麻畑」と看板を掲げて大々的に大麻を栽培したことがある。彼は当局に逮捕されたが、その後、市長に立候補、当選を果たし、現職の今も、大麻解放を訴え続けている。日本にもこういう人物の登場が期待されるし、当然、遠からず出てくるだろう。

 別の会場では大麻関連製品の展示即売会やファッション・ショーが開かれた。大麻からは絹のように繊細な繊維から、船を引っぱれるような丈夫なロープまでできるので、衣服ひとつとっても、実に様々な性質の製品ができる。特に、ここ数年、大麻布の開発がすすみ、これまでの麻のゴワゴワして皺がよりやすいというイメージをまったく感じさせないものがでてきた。特に麻60%綿40%の新素材で作ったTシャツは肌触りがよく、日本の湿った風土にはもってこいだ。

 繊維製品はもちろん、石鹸・シャンプー、種から作ったチョコレートなども販売された。

 中国のある大麻繊維製造公司(会社)はバンクーバーに事務所を設置し、シンポジウム当日もブースを借りて、商談に力を注いでいた。日本でも麻素材の開発と利用が進められているが、近い将来、大麻繊維の流行を見越して、中国による公司事務所が設置されることも考えられる。


バンクーバーで開催された
ヘンプ・ファッション・ショー
 製品の中では、トウモロコシの茎から作ったプラスチック製ボールペンが私の目を引いた。このプラスチックは石油プラスチックと違って廃棄後、土中で分解するので環境汚染を防止することができる。大麻を利用したプラスチックの技術は50年近く前にすでに開発されており、自動車メーカーのフォード社も車体への使用を検討していたほど。その直後、アメリカ政府による大麻弾圧政策が始まり、そのあおりを受けて計画は流産、その後、大麻は栽培・利用はおろか、研究まで禁止されてしまったというのは、今や歴史的に証明された事実となっている。大麻の茎にはトウモロコシ以上のセルローズが含まれているため、大麻プラスチックの研究と実用化が期待される。

 昨年行われたバンクーバー市の市長選挙では、HEMP BCのMARC EMERY氏が立候補した。惜しくも3位で当選は果たせなかったものの、カナダの大麻状況にかなりの変化をもたらした。

 ところで、最近、このような「ヘンプ・ファッション・ショー」を含めた会議や展示会が、欧米でしばしば開かれるようになった。大きいものでも、年、5〜6回。特にドイツの展示会は大規模で、新製品が続々登場してくる。大麻堂でも98年の春には、ファッション・ショーを開催したいと考えている。デザイナー、イベント関係者の協力をいただけたらありがたい。


カナダのコーヒー・ショップ
「ダッチ・エンバシー」大使
カナダにもあった「コーヒー・ショップ」

 バンクーバーにはアムステルダムにあるような「コーヒー・ショップ」があると、噂には聞いていた。やはりあった。カナダの若者が「それはダッチ・エンバシーだ」と言うのを聞いて、私は最初、オランダ大使館がモグリでやっているのか、オランダ大使館の隣にあるのかなと思っていた。たまたまカナダ最大のヘンプ・ショップ・HEMP BCに大使(?)がいたので、案内してもらった。

 バンクーバー市の中心街から車で20分、道路わきにバラック建ての小屋がある。それが「ダッチ・エンバシー」という名のコーヒー・ショップだった。大使によると、96年、バンクーバー市の中心地に開館したのだが、当局の嫌がらせを受け、隣接するバーナビー市に引っ越しをした。現在、バンクーバー市内に戻る準備をすすめているということだ。

 大使によれば、「大きめのジョイントが1本10ドル。すべてカナダ国内で調達し、外国から輸入することはない。 午後2時の開館時には、すでに入り口で何人か並んで待っている」ということで、たまに警察が店から出てきた客からジョイントを取り上げることはあっても、大使館そのものが捜索されたり、大使が逮捕されることはないそうだ。「警官が入ってきて、金を払わずにもっていくのが困る。まあ、アルコールで酔っぱらうよりマシかなと思って、黙ってる」ということだ。

 客は「HARM REDUCTION CLUB」の会員になり、マリファナ購入に当たっては「大麻を吸ったら、車の運転はしません」という契約書にサインをしなければならない。大使は普及と同時に社会教育にも力を入れており、パンフや雑誌を発行し、「大麻とどううまくつきあっていくか」を訴えている。「HARM」というのは「害」という意味で、大麻は用い方によっては害があることを認めているところが、逆にマリファナ先進国だなと 思わせる。実際、特に初心者は、あれば朝から晩までやってしまう人がいるし(こういう私もサルに何とかという時期があったっけ)、自動車の運転はしない方がいい。大麻を愛する人たちが、国の管理と刑罰によって規制されるのではなく、自分たちが自分たちでモラルを作っていこうという姿勢、これは、まあ、民主主義や自由を愛する者 にとって基本でもあるし、今後の日本の大麻解放運動においても、重要なポイントになってくるだろう。

 コーヒーショップがあるぐらいだから、マリファナはバンクーバーでは簡単に入手できる。 HEMP BCのあるEAST HASTINGS通りを東に行くと、ダウンタウンがある。

 美しい並木通り、銀行や高層ホテルのある中心地とはまったく雰囲気が異なり、通りは汚いし、商店の看板も壊れたのが目立つ。そこで入手できる。

 この薄汚れた殺風景な通り、ホームレスのような人たちがうろついているが、夜、歩いてもほとんど身の危険を感じない。驚いたことに、アルコールの酔っぱらいはほとんどいない。夜になったら毎日出かけていったのに、酔っぱらって道に座り込んでいるのは、3日間で一回見ただけだ。日本で同じ環境なら、まあ、何十人という酔っぱらいがいて、ゲロは吐くわ、小便は垂れ流すわ、からんでくるわで大変というところだろう。酔っぱらいを見ない分、マリファナの香りが漂ってくることは何度もあった。この香り仕事が終わる5時頃、高級商店や銀行の並ぶ通りでも漂ってきた。

「良識のある人々が多いところだな」というのが、私のバンクーバーの印象だ。
中国


中国山東省・東平大麻紡績工場

最新設備の工場
東平大麻紡績工場
 97年6月中旬、一枚のパンフレットを手に、中国に出かけた。カナダのバンクーバーで開催されたHEMP国際会議で、ある中国人からもらったもので、表紙には「世界最大の大麻紡績工場:東平大麻紡績工場」と書かれていた。

 東京から上海まで飛行機で3時間、上海でのりかえて済南(ジーナン)空港までさらに1時間。「済南空港からだと近い」と聞いていたのに、空港からさらに200キロもあった。やはり中国は広い。タクシーをぶっ飛ばしたが、走っても走っても畑で、どこも小麦の収穫のまっ最中だった。

 この「東平大麻紡績工場」は、オランダの「HEMP TRIBE」という民間の服飾メーカーとの合弁会社で、4年前に建設され、現在、2600人の労働者が働いている。資本金は1億円あまりで、設備はイタリアやフランスの最新の機械を導入しており、茎から繊維を取り出す工程では特許ももっている。もちろん、大麻は中国産のものを使用している。生産は順調で、最近の世界的なHEMPブームを反映して、海外からの引き合いが急増しているという。

 この工場では、麻100%の布地のほか、絹や綿との混紡布地まで、様々な製品を作っている。オリジナル・デザインの洋服の注文は、最低ロットが100ダースということで、私にはスケールが大きすぎた。とりあえず在庫のあった麻100%のサマーシャツを50枚ばかり買ってきた。

 最近、東欧諸国やドイツ・イタリアなどで大麻繊維製品の生産が急増してきており、中国もうかうかしていられなくなってきた。例えばイタリアでは大麻100%で、ガーゼのような柔らかい布地を作ることに成功し、それをドイツが輸入し、パンティーなどの下着を生産するまでになってきた。中国では、この東平工 場でも、Tシャツ用の布地までしかできていない。「研究はしているのだが、まだ、うまくいかない」と工場長が残念そうに言っていた。

 ところでこの東平大麻紡績工場の責任者、私の顔を見るなり、「私はあなたを知っている」。日本の大麻堂も、とうとう中国まで知られるようになったか、そんなはずはないだろう、などと思っていると、「カナダでお会いしましたね。東洋人は少なかったので、よく覚えています」ということで、冒頭に書いたパンフレットをくれた中国人だったのだ。まあ、大麻の世界、広いようで狭いようで、狭いようで広いようで。実際、私は世界のどこで、どの会社がどのような大麻製品を製造し販売しているか、その90%以上を把握しているし、主要なところとは取引もある。この東平工場を訪れた日本人は、私が最初だということだ。




「大麻は天然繊維の王様」「大麻、それは愛情と友情と成功のしるし」
という看板

「チョットだけにしてね」と言われました?


上海の街
 上海の繁華街で洋服屋やブティックを覗いてみても、化繊とコットンが主流で、大麻生地の服はまったくといっていいほど見かけなかった。やはり生産能力と価格の点で、一般に普及するにはまだ時間がかかりそうだ。
 ところで上海の街、中国有数の商都だけあって活気に満ちあふれ、まるで何年か前の香港という雰囲気。ブティックの並ぶ通りを、ミニスカートをはいた女の子がアイスクリームを食べながら歩いているなど、15年前の上海しか知らない私には、別世界だった。イラン人のようなのが、「ハシシ?」と声をかけてきたときには、一瞬、東京にいるような錯覚に陥った。目が青い彼らは中国西域出身者で、顔も習慣もイラン人やトルコ人に近い。「援助交際しない」と話しかけてくる女の子もいた。筆談で「我是腎虚」と書いたら、かわいそうにという顔をして、去っていった。

 中国の麻の産地で有名なのは、中国南部の雲南省大理(ダーリー)だ。見渡す限りの麻畑で、日本人留学生の間では「中国のアムス」と呼ばれたりしている。ここでは手紬・手織の粗い大麻布が生産され、それが山岳民族モン族などの手を通って、タイ北部のチェンマイなどに流れてくる。タイの土産物屋ではヘンプの財布やベストをよく見かけるが、この生地を利用したものだ。この生地は小物にはいいのだが、ゴワゴワして皺がよりやすいので服地にするには適さない。

 ところで大麻の茎からは紙ができるのだが、東平工場の工場長に「麻の表皮から繊維を取り出した後の茎は、どう処理しているのか」と聞いても、「我々は繊維の状態で入手しているので、ほかのことはわからない」ということだった。中国ではエジプトのパピルスよりはるか以前に、大麻を漉く製紙法が発明されたのだが、現在でも、中国では大規模な工場で、大麻から紙を作っている。次回は「中国の大麻製紙工場」を取材してみたい。「大昭和製紙」さん、旅費を出してくれませんか?


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