防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」の見直しをめぐり、政府の有識者懇談会は27日に開いた会合で、弾道ミサイルやテロなどの脅威に機動的に対応できるよう、自衛隊の情報収集能力の強化や「武器輸出三原則」の抜本的見直しなど、防衛力整備の基本的な考え方を転換すべきだとした報告書をまとめ、菅総理大臣に提出しました。
それによりますと、まず、日本を取り巻く安全保障環境について、北朝鮮による核やミサイル開発の脅威に加え、中国が軍事力を近代化させ日本近海で活動を活発化させていることをあげ、「懸念される傾向にある」と指摘しています。そのうえで、冷戦時代以降、日本の防衛力整備の基本的な考え方とされ、部隊や装備の規模を重視した「基盤的防衛力構想」は、「もはや有効ではない」として見直し、技術や情報を生かして、さまざまな脅威に機動的に対応する「動的抑止力」の考え方に転換すべきだとしています。具体的には、弾道ミサイルやテロなどの脅威が同時に起こる場合も想定し、自衛隊の警戒監視や偵察などの情報収集能力を強化することや、離島地域に部隊を配置することなどを提言しています。また、外国への武器の輸出を禁じている「武器輸出三原則」について、アメリカ以外の国とも装備品の共同開発や共同生産ができるよう抜本的に見直すことを提言しているほか、「非核三原則」について将来的な見直しが課題になることも指摘しています。報告書を受け取った菅総理大臣は「国際的な安全保障環境に対応する観点から、政府として、さらに検討することにしており、報告書は検討材料の1つとしたい」と述べました。政府は、この報告書を基に、年末の「防衛計画の大綱」の見直しに向けた議論を本格化させることにしています。