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卵子提供 日本の現状は
自民党の野田聖子元郵政相(49)が、第三者の女性から提供された卵子と事実婚の「夫」の精子を使って体外受精を行い、妊娠したことを、「週刊新潮」9月2日号掲載の「手記」で明らかにした。
米国で卵子提供を受けたというが、日本では、こうした生殖補助医療に関する法律や基準がまだ整備されていない。現状はどうなっているのか。
国内では1998年に初めて、諏訪マタニティークリニック(長野県下諏訪町)の根津
しかし、国内で提供卵子による不妊治療は、同クリニックを含む、ごく一部の医療機関でしか行われていない。根津院長は「日本ではシステムができていない。生まれてくる子供も含め、当事者を守るための法整備が急務だ」と話す。
現状では、卵子提供による体外受精は、妻の卵巣や卵子に問題がある場合や、高齢で妊娠が難しい場合などに選択されている。2001年、当時60歳の日本人女性が米国での提供卵子で出産したケースもある。
しかし、卵子の提供者に投与される排卵誘発剤には副作用の恐れがあるほか、母と子に遺伝的関係がないことから、将来家族関係が複雑化するという懸念がある。生命倫理に詳しい位田隆一京都大教授は「子供を持ちたいがために、使える技術は何でも使っていいのか」と疑問を呈す。
関係者の間では、野田氏のように米国で卵子提供を受けた夫婦はこれまで少なくとも約1000組に上ると言われている。米国での不妊治療をコーディネートしているIFC(米国)の川田ゆかり社長は「米国では20年以上前から一般的な不妊治療で、これまで日本の約700組の夫婦を手助けしてきた。近年は年に100組以上から相談を受けている」と話す。
国内では、厚生労働省の生殖補助医療部会が03年、法整備を前提に匿名の第三者に限って卵子提供を認める報告書をまとめたが、その後、法整備は進んでいない。関連学会の意見にも温度差があり、日本生殖医学会は09年3月、友人や姉妹からの卵子提供を認める報告書をまとめ、国へ提出したが、日本産科婦人科学会は、法制度が未整備な状況では、提供卵子による体外受精について慎重な立場だ。
こうした状況に、不妊治療を行う医療現場がしびれを切らした。
全国25施設の不妊治療クリニックで作る「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」は08年6月、友人や姉妹からの卵子提供も認める独自指針をまとめ、現在、実際に提供卵子による体外受精を進めているところだ。
生殖医学会倫理委員長の石原理・埼玉医科大教授は「提供卵子が必要な患者は確実に存在し、世界でも体外受精の約3%は提供卵子によるものだ。野田さんの事例で国民の関心が高まり、速やかな法整備につながれば」と話している。(社会部 木下吏、科学部 木村達矢)
(2010年8月27日 読売新聞)
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