猛暑のせいで、例年にも増して食品が傷みやすい今年の夏。朝作った煮物が夕方に、夜作った味噌汁の残りが翌朝には糸をひいていた……なんて経験をした人も多いのではないだろうか。
ところで、昔から、水分が多いもの、加熱していない生ものなどはもちろんのこととして、食品によって「足がはやい」と言われるものがある。
たとえば、同じ野菜でも「じゃがいもは傷みやすい」とか「葉物は傷みやすい」などと言われるけれど、これってどういう違いによるものなのか。
東京青果のグループ企業で、食品トレー等包装資材用品の開発・販売や、食品衛生の研究も行っている東光商事担当者に聞いた。
「肉も魚も同じだと思いますが、青果物においても、足のはやいものは“水”とのかかわりが大きいと思います。人間の身体は70%が水で、水分50%を切ると死んでしまうように、植物も収穫前には根から栄養分をとり、水が淀みなく流れているもの。それが、収穫後に滞ることで、傷んでくるんですよ」
つまり、水分量の多いものが、傷みやすいということ?
「いいえ。水分量の違いではありません。青果物の中で傷みやすいものといえば、小松菜やホウレン草、レタスなどの葉物が挙げられますが、これらは水分量が多いというためではなく、“水分の劣化の仕方”の違いですね」
「水分の劣化の仕方は、淀みなく水が流れるかどうかの違い」と言うが、その違いって?
「クラスター理論というのですが、水は、水分子の集団(クラスター)でできています。このクラスターの状態は絶えず変化しているのですが、クラスターが小さい水ほど活性が高く、生命を支える様々な反応が滞りなくスムーズに進むと言われているんですよ」
また、青果物は収穫後も呼吸をしており、その際にエチレンガスなどが発生するが、これは農産物の老化などを促す働きを持っている。そのため、青果物の鮮度保持に関しては、「水分の状態の管理」と、青果物の老化を早めてしまう「エチレンガス」の吸着が重要と考えられてきたのだそうだ。
「ただし、近年は温暖化の影響で、鮮度保持だけでは十分でなくなってきています。たとえば、青果物を保冷しても、袋の中で汗をかいたものが結露し、カビが発生することもあるため、抗菌対策も必要になっているんです」
実は最近、10枚1組の業務用に出していた中国産の大葉から、大腸菌一般細菌が発見されたことがあり、それを防ぐ資材を探して欲しいという発注があったという。これまでの流通では食い止めることの難しい問題も出ているのだそうだ。
「青果物の呼吸量がそれぞれ違うので、それをコントロールする資材の開発もされています。また、近年は、ビタミンCの量を測定する機械も出ていたり、青果物の持つ波動などを利用する資材も出ています。温暖化で食中毒の問題も大きくなってきたいま、従来の鮮度保持だけでは難しい世の中になっており、様々な研究が進んでいるんですよ」
業者による資材や流通の工夫が行われているが、各家庭での管理の仕方も重要なこと。食中毒対策には、十分ご注意を。
(田幸和歌子)