熱血!与良政談

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熱血!与良政談:「小沢報道」やめてみたら=与良正男

 最近、私は政治記者失格ではないかと思う時がある。9月の民主党代表選にまるで興味がわかないからだ。いよいよ小沢一郎前幹事長が出馬か、というような話に接するたびに、「何年、同じことを繰り返しているのだろう」と、逆にうんざりしてしまう。

 それでもこうして代表選話を取り上げて、テレビでもコメントしているのだから、私も大きいことは言えない。いや、私たちメディアは、小沢さんたちに都合よく利用されているだけではないかという気さえする。

 例えば先週、長野県軽井沢町にある鳩山由紀夫前首相の別荘で開かれた懇親会。その数日前から小沢さんの側近たちから一斉に流されたのは「小沢さんは代表選に政治生命をかける」というような話だった。いつもの「小沢さんの意向をそんたくすると……」というヤツ。でも、新聞やテレビは次第に「小沢氏、出馬を検討」と報じざるを得ない状況になっていく。

 で、前景気をあおって、懇親会に小沢さんが登場。滞在時間、わずか50分。「お互いに力を合わせて」などとあいさつするだけだったが、テレビカメラの前に出てくるだけで、これだけ大ニュースとなるのは日本では小沢さんだけだろう。大挙して軽井沢に押し寄せた報道陣が「代表選に出るんですか」と聞いても、もちろん無言。先々週も書いたけれど、結果、「小沢さんは何を考えているか分からないから怖い」といった話が増幅していく。

 週刊誌はもっとすごい。菅直人首相と小沢さんの「最終戦争」だとあおるものから、小沢さんの「究極の一手」は、みんなの党の渡辺喜美代表を一本釣りして首相に担ぐといった話まで。しかし、これまた、この国は相変わらず小沢さんが牛耳っているという神話作りに貢献しているのだと思う。さぞや小沢さんも喜んでいることだろう。

 私は自分の考えをきちんと説明しようとしないという一点をもってして、この時代の首相には不向きだと思うが、小沢さんの「メディアに顔を出さないメディア戦略」に、私たちはまんまとはまっているのではなかろうか。

 「もう小沢報道はやめようって、コラムで書いてもらえませんかね」

 先週、私にこう言ったのは、そんな小沢報道に明け暮れている週刊誌の中堅記者の一人だった。そして、私は「一応、書いてはみるけれど」と答え、こうして、かすかな抵抗を試みているのである。(論説副委員長)

2010年8月26日

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