2010年08月26日
安井 至 | (独)製品評価技術基盤機構理事長、東大名誉教授 | 経歴はこちら>> |
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最近、学校や職場で、ペットボトルのキャップを集め、それを売ったお金で開発途上国にワクチンを贈ろうという運動が急激に普及しているという。
ペットボトルの本体はリサイクルに回すことができるが、キャップは、自治体によっては回収の対象になっていないところもある。どうせ捨ててしまうものが、ちょっとでも有効活用されるなら、というモッタイない感覚、さらに、さりげない形での社会貢献を好むという日本人的感覚の両方にピッタリとマッチしてるのが、普及の理由と言えるだろう。
しかし、一部では問題も起きている。その理由は、リサイクルをすることの価値を検討してみれば、すぐに分かることである。
○貢献とコスト
ペットボトルのキャップは、ポリエチもしくはポリプロという名称のプラスチック製である。キャップ1個が2.5gぐらい。現在、平均的な日本人だと、年間200本程度のペットボトルを購入しているため、年間で約500gのキャップを捨てることになる。
ボトル本体はもちろんPET樹脂製で、大小取り混ぜて平均的には30g/本程度である。年間、6kg程度のPET樹脂のお世話になっている。
キャップの材料であるポリプロなどの新品樹脂の価格は1kg100円程度以下なので、ざっと50円分を無駄にしていることになる。
キャップを大量に集めれば資源になるのも事実で、1kg15円ぐらいで引きとってくれるようだ。500gであれば、7.5円ということになる。
しかし、ワクチンに変えるためには、やはりNPOの活動も支援する必要があり、その分を差し引けば、1年分のキャップ500gで5円程度の寄付をしたことになるだろう。
ここまでの検討では、寄付金額がかなり少額だとは言えるが、だからといって特に問題は無いように思える。
ところが、実際には、隠れた費用が発生する。それは輸送費である。この活動を主導しているNPOのエコキャップ推進協会は、さる運送業と提携をしていて、20枚3150円のダンボール箱を買えば、6kgのキャップ入り1箱の輸送を420円で引き受けてくれる。ダンボール箱の費用を加えれば、577円の輸送費がかかるが、寄付金額は、一箱6kgで60円程度である。輸送費が圧倒的に大きく、寄付額の9.6倍という計算になる。
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