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きょうの社説 2010年8月27日
◎小沢氏出馬 政権を立て直す代表選に
民主党代表選で小沢一郎前幹事長が出馬を決めたのは、ここで見送れば菅直人首相の脱
小沢路線が決定的となり、党内での求心力が失われるとの強い危機感があったのだろう。両陣営の対立が激化し、小沢氏も引くに引けぬ状況に追い込まれていた。鳩山由紀夫前首相の支持も背中を押したに違いない。いずれにせよ反首相勢力が代理を立て、小沢氏の傀儡(かいらい)政権をもくろむくらいなら、自ら出馬した方が分かりやすい。急激な円高株安の進行で景気が二番底に陥りかねない危険な状況になってきた。菅政権 の対応は極めて鈍く、現状を打開できるのか甚だ疑問である。一方の小沢氏にしても、検察審査会の議決を控えた身であり、首相候補にふさわしいかという疑問がつきまとう。民主党にとって悩ましさを抱えた選択といえ、それぞれのリスクを背負う覚悟も問われている。 だが、たとえ党分裂につながりかねない争いであっても、政策の徹底的な議論は民主党 に不可欠である。普天間飛行場移設問題で鳩山政権が行き詰まったのも、安保政策で党内議論を避けてきたことが背景にある。対立を乗り越え、政権を立て直す機会になるなら代表選は大きな意味がある。政権党の代表選は首相を選ぶ場である。国民に分かりやすい形で政策論争を展開してほしい。 菅首相は財政再建を重視し、衆院選マニフェストを徐々に修正する姿勢をみせている。 これに小沢氏は不満を募らせ、従来路線の踏襲を訴えているとされる。抜き差しならぬ、この路線対立を放置していては、変動する景気状況に機動的な手を打てないばかりか、来年度予算編成にも混乱の芽を残す。 小沢氏は「鳩山前首相の支援を得られ、不肖の身ながら出馬を決意した」と語ったが、 これだけでは首相を目指す意思は伝わってこない。マニフェストを実行しようとするなら、財源を含めた道筋を明らかにする必要がある。首相になれば党代表、幹事長時代より、さらに説明責任のハードルは高くなる。まず問われるのは自身の政治資金問題である。批判の矢面に立つ覚悟も固めたのなら、国民の理解を得る姿をみせてほしい。
◎民間提案型事業 正規雇用につなげたい
石川県が民間企業やNP0法人の協力を得て実施する民間提案型雇用創出事業は、離職
を余儀なくされた非正規労働者などに、就業機会を提供する試みである。採択された43の事業は、利益を出しにくい介護や医療、観光、農林水産の分野がほとんどで、雇用確保に主眼が置かれていることもあって、成果を挙げるには一層の工夫が必要だろう。それでもインターネットを活用した農産物の売り込みや竹炭生産、高齢者向けの買い物 サポートなど、やってみる価値のある事業が多く、「ダイヤの原石」が意外なところで見つかるかもしれない。雇用される側から見ても、単純労働ではなく、工夫の余地がふんだんにあって、IT技術などのスキルを生かせる働き口は魅力的だろう。民間と自治体が協力し合って緊急避難的な雇用確保の場に終わらせず、正規雇用につなげていく努力を求めたい。 民間企業に雇用創出のアイデアを募る民間提案型雇用創出事業は、県が6月補正予算案 で打ち出した経済・雇用対策の目玉で、県と市町で600人程度の受け皿を用意した。雇用の安全網の拡充と同時に、県内企業の成長戦略を支援する狙いがある。 民間から提案のあった事業の中から県で採択された事業は、北陸新幹線金沢開業に向け た地域の魅力アップや、外国人旅行者へのもてなし向上を目指す「いしかわコンシェルジュ」の養成、農作物のオリジナルカードゲーム制作、県産林産物の販売促進などがある。すぐには収益につながらなくても、長い目で見れば、地域活性化に役立つのではないか。 また、インターネットはもとより、スマートフォンなど音声通話以外にさまざまなデー タ処理機能を持つ携帯電話に対応した事業も目に付く。地域の知られざる食材の発掘や新たな名物料理の紹介、伝統工芸の工房見学のコーディネイトなどの多彩な事業が、それぞれに知恵を競い合って、地域を活性化させてほしい。その切磋琢磨(せっさたくま)の中から、安定的に収益の出る事業が育ち、正規雇用の確保につながっていくことを期待したい。
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