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2010年8月26日

丁半賭博!被告人はあきちゃんチビちゃん…

 さて、今回は、先週金曜(8月20日)に行われた牛頭昭博被告人と他2人の裁判の話。罪名は、賭博場開帳等図利と賭博場開帳等図利幇助。事件の内容は逮捕時の記事から。

 神奈川・横浜市で、サイコロを使った丁半賭博の賭博場を開いていた暴力団幹部らが、警視庁に現行犯逮捕された。
 現行犯で逮捕された指定暴力団稲川会系の幹部・牛頭昭博容疑者(66)ら3人は、5月26日夜から27日にかけて、横浜市鶴見区のビルの1室で、サイコロを使った丁半の賭博場を開いていたところを摘発され、当時店内にいた客6人も現行犯逮捕されている。
 この賭場場は2010年に入って、少なくとも数百万円を売り上げていたとみられていて、警視庁は稲川会の資金源になっていたとみて捜査している。

 他の法廷ではオンラインカジノの裁判も行われているこのご時世に、昔の仁侠映画でおなじみの丁半賭博が行われているとは驚きです。丁か半かの2択だから、ゲーム性も乏しそうだし、面白くないような気がするんだけど。

 牛頭被告人以外は、事実名報道されていないんだけど、人定質問で、

裁判官 「一番左の被告人、名前は?」
牛頭被告人 「牛頭昭博です」
裁判官 「あきちゃんって呼ばれてました?」
牛頭容疑者 「はい」
裁判官 「一番右の被告人、名前は?」
右側の被告人 「○○○です」
裁判官 「アニヤンって呼ばれてたこともあるんですか?」
右側の被告人 「はい」
裁判官 「真ん中の被告人、名前は?」
真ん中の被告人 「○○○○です」
裁判官 「チビちゃんと呼ばれてたこともあるんですか?」
真ん中の被告人 「はい」

 というやり取りがあったので、牛頭被告人以外の2人は、アニヤン被告人、チビちゃん被告人とさせていただきます。

 起訴されたのは、今年の5月26日午後10時30分から、5月27日午前0時5分までの間、牛頭被告人は、横浜市鶴見区のビルの1室で“鶴見の盆”という名前で、サイコロ、つぼザルを使用して丁半賭博をし、テラ銭名目で客から金を取り、賭博場を開いた、という内容。

 チビちゃん被告人とアニヤン被告人は、その手伝いをしていたということで、幇助での起訴になっていました。

 検察官の冒頭陳述によると、牛頭被告人は犯行時、稲川会系の暴力団に所属していて、賭博の罰金前科6犯を含め、前科16犯。チビちゃん被告人は、66歳の無職の男性で、賭博の罰金前科5犯を含め、前科6犯。アニヤン被告人は、78歳無職の男性で、賭博の罰金前科9犯を含め前科10犯であるとのこと。

 牛頭被告人は、去年の1月から9月まで、横浜市鶴見区で“野毛の盆”という名前で丁半賭博場を開いて、アニヤン被告人は“中盆”と呼ばれる接客などの仕事などをしていたという。

 そして、今年2月からは鶴見区に場所を移して“鶴見の盆”と名称を変え、チビちゃん被告人がお金の管理などする“出方”という仕事で加わるようになったとのこと。

 犯行当日である5月27日午前0時頃、鶴見の盆に警察官が立ち入り捜査をし、5人の客が賭博中であったことから、牛頭被告人らを現行犯逮捕して、盆台、サイコロ2個、つぼザル、プラスティックの札14枚、現金15万2700円を押収したというのが事件の詳細です。

 普段聞きなれない“中盆”“つぼザル”といった専門用語が飛び交ってたんだけど、大体こんなかんじ。

 弁護人は、牛頭被告人が組事務所宛に書いた脱退届けを提出し、牛頭被告人の弟を情状証人として呼んで、今後の監督を約束させていました。

 そして、被告人質問。まずは、牛頭被告人から。
弁護人 「あなたは稲川会系の組織にいて、専務理事をしていた、と。何をやっていたんですか?」
牛頭被告人 「特に何かやるわけじゃないです」
弁護人 「今、組とはどうなってます?」
牛頭被告人 「もう6月に(脱退届けを提出した)。年も年だし、色々考えてね」
弁護人 「もう組に戻ることはないですね?」
牛頭被告人 「はい、間違いないです」

 と、暴力団から足を洗うと約束です。
弁護人 「丁半賭博はどれ位の頻度でやってました?」
牛頭被告人 「週に1回、水曜日にやってました」
弁護人 「客の年齢層は?」
牛頭被告人 「70歳前後、若くても50歳くらいです」
弁護人 「定年後の人たちですか?」
牛頭被告人 「はい」
弁護人 「映画なんかで見る、博徒は?」
牛頭被告人 「いやいや、いないです。年寄りばっかりでして……」
弁護人 「映画みたいに、札束ドーーンって賭けたりすることはあるんですか?」
牛頭被告人 「そういうことはないです。賭け金は1000円からで、大きくても1万円が限度じゃないですかね」

 丁半賭博のイメージが掴めないからなのか、映画を引き合いに質問を繰り出す弁護人。

弁護人 「あなたが手にするお金はどんなもんですか?」
牛頭被告人 「一晩で10万円くらいで、そこから経費を引くので、約5万円ですね」
弁護人 「経費って?」
牛頭被告人 「タバコや飲み物はこっち持ちで」
弁護人 「あまりいい商売じゃないね」
牛頭被告人 「不景気なんでね~」

 元々違法な行為なんだから、「いい商売じゃない」という質問は変な気もするんだけど、不景気の波は丁半賭博の世界にまで影響を及ぼしているようです。

弁護人 「胴元って誰でもなれるんですか?」
牛頭被告人 「組関係なら、誰でもなれるんじゃないですか」
弁護人 「今後、胴元は?」
牛頭被告人 「組辞めてますし、やる気もないです」

 最後に、

弁護人 「普通に暮らしていればね、熱いからスイカを食べようとか、秋は月が綺麗とか、月見酒とかね、ゆったり生活ができるんですよ。もう、おじいちゃんなんだから、恥ずかしくない生き方しないと……」

と、一方的に弁護人が語って質問終了。
次は、検察官から。

検察官 「組員だから、胴元になれる、と」
牛頭被告人 「はい」
検察官 「勝手にやると、そこのシマを仕切っている人たちが、潰しにかかるってことがあるの?」
牛頭被告人 「そうじゃないですかね」
検察官 「じゃ、ショバ代とかは?」
牛頭被告人 「うんと稼げばあるでしょうけど、(売り上げが少ないので)納められません、と」
検察官 「請求はされるんですか。じゃ、暴力団の資金にはなってる、と」
牛頭被告人 「今はそういう時代じゃないです」

 と、不況っぷりをアピールして、質問終了。

 最後は、裁判官から。

裁判官 「賭博好きなの?」
牛頭被告人 「好きだったですねー」
裁判官 「胴元はやらないって言ってましたけど、(客として)出入りするんじゃないの?」
牛頭被告人 「いや、お金ないし」

 と、客としても賭博はしないと誓って、質問終了。

 次は、チビちゃん被告人への質問です。

弁護人 「あなたは、去年賭博で罰金50万円の判決を受けていますね。本件は、その50万円を稼ぐために働いていたということですが、普通の仕事をしようとは考えませんでした?」
チビちゃん被告人 「なかなかみつからなくて……」
弁護人 「じゃ、どうやって罰金を払うつもりですか?」
チビちゃん被告人 「労役行って払うつもりです」
弁護人 「今後二人との付き合いはどうします?」
チビちゃん被告人 「どこかで会ったら挨拶はするでしょうけど、プライベートな付き合いは、もう……」
弁護人 「前科がたくさんありますが、誘われたらまたやるんじゃないですか?」
チビちゃん被告人 「きっぱり断ります」

 と、再犯しないことを約束して、質問終了。

 次は、検察官から。

検察官 「今まで賭博で何回捕まった?」
チビちゃん被告人 「大体、……6回だと思います」
検察官 「何度も逮捕されて、その度に勾留されてるのに懲りない?」
チビちゃん被告人 「懲りてはいましたけど」
検察官 「それなのにまたでしょ。そんなに賭博好きなの?」
チビちゃん被告人 「……嫌いじゃないです」

 と、正直に賭博が好きであると答えたところで質問終了。

 最後は裁判官から。

裁判官 「手伝いをして、牛頭被告人に罰金を払ってもらおうとした、と。証拠によると、牛頭被告人からもらった金を、罰金として払わずに半分くらい使ってますよね?」
チビちゃん被告人 「競馬買いすぎちゃって……」
裁判官 「当てて払おうと思った?」
チビちゃん被告人 「はい」
裁判官 「賭け事で罰金稼ぐって、考え方間違ってますよね!」
チビちゃん被告人 「間違ってます……」

 それ以前に、賭博の罰金を賭博場で働いて支払おうという考え方も間違っていると思うんだけど。頼むぜ、チビちゃん。

 続いては、アニヤン被告人への質問。

弁護人 「丁半はよくやってたんですか?」
アニヤン被告人 「全然とは言わないけど、ほとんどやってないです。花札はやってたけど」
弁護人 「前科は全て、花札ですね?」
アニヤン被告人 「そうです」
弁護人 「それなのになぜ手伝ったんですか?」
アニヤン被告人 「(知り合いから)年でできなくなったから、と声が掛かったんですね。でも、(丁半賭博は)やったことないから迷ったんですけど、経済的に困ってて借金もあったから、悪いと思いながら……」
弁護人 「今後どうしますか?」
アニヤン被告人 「78歳ですから、誰にも迷惑かけないで、ボチボチの生活したいです」

と、述べて質問終了。

 次は検察官から。

検察官 「前科は10犯ですけど、ここ20年は位は警察の世話になってないでしょ?」
アニヤン被告人 「こういう仕事があるって言われて、年甲斐もなく……」
検察官 「福祉の世話になったのに、なんで賭博場で稼がなきゃいけなかったんですか?」
アニヤン被告人 「家賃とかが足りなくなると人から借りたりね。それで困って……」
検察官 「賭場が恋しくなっちゃったんじゃないですか?」
アニヤン被告人 「いや、好きじゃないです。(今回は)手伝いでしたから」

 と、他の被告人とは違って、博打好きではないとアピールして、質問終了。

 最後は裁判官から。

裁判官 「久しぶりに勾留されて、どう?」
アニヤン被告人 「年ですから、体がついていけない状況です」
裁判官 「色々決まりもあるし、若い頃よりキツイですよね。刑務所はもっと厳しいですよ。それを考えたら、こんなバカらしいことできないってわかりました?」
アニヤン被告人 「はい」

 と、アニヤン被告人の年齢を考慮したのか、刑務所は厳しいから再犯するなとアドバイスして、全ての質問が終了です。

 この後、検察官は、牛頭被告人に対しては
懲役1年、チビちゃん被告人に対しては懲役10月、アニヤン被告人に対しては懲役8月、さらに現場から押収された、盆台1台、つぼザル1個、サイコロ2個、現金15万2700円、プラスティック製の札14枚没収という求刑をして、閉廷でした。

 新聞記事を読んだときは、「今時、丁半って!」と思ったんだけど、客が数人の小規模なものでしたね。しかも、互いをアニヤン、チビちゃん、あきちゃんとニックネームで呼び合って、客も高齢の人だとすれば、みんな老後の楽しみのひとつとして、クラブ活動みたいなかんじでやってた印象ですね。お金さえ賭けなければねぇ。多分、それじゃ人が集まらないんだろうけど。

注目の裁判

8月23日(月)被告人・大村智(判決)

8月24日(火)被告人・神戸祥夫(初公判25日26日も)

8月24日(火)被告人・佐藤新一郎、他1人(初公判)

8月24日(火)被告人・小林誠市(控訴審判決)

8月24日(火)被告人・大井一真(控訴審初公判)

8月25日(水)被告人・小野克己、他4人

8月25日(水)被告人・大井邦彦(判決)

8月26日(木)被告人・松浦康真

8月26日(木)被告人・西田正希(判決)

8月26日(木)被告人・國見東一

8月26日(木)被告人・松原拓(控訴審判決)


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阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)「裁判狂時代」「裁判狂事件簿」(河出文庫)、「被告人、もう一歩前へ。」(ゴマブックス)、「アホバカ裁判傍聴記」(創出版)。

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